名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(ネ)16号 判決
控訴代理人は原判決を取り消す。被控訴人は「昭和二十三年度第一回及び第二回昭和二十四年度第一回の山代町諸会計臨時出納檢査の結果報告を求むる件昭和二十二年度山代町諸会計の決算書を議会に提出方を求むる件」の議案につき石川縣江沼郡山代町の議会を招集せよ。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
控訴人主張の請求原因事実は原判決事実摘示と同一であるからこゝに引用する。
被控訴人は答弁として控訴人の主張事実は爭はないが行政廳に対し処分を爲せと求むる訴は不適法であると陳述した。
三、理 由
控訴人等は石川縣江沼郡山代町議会議員として議会定員の四分の一以上をしめるものであるが昭和二十四年十月八日被控訴人町長に対し地方自治法第百一條に基き請求の趣旨掲記の議案を示して臨時会の招集を請求した事実被控訴人が右請求に應じない事実は当事者間に爭のないところである。控訴人は右の如き町長の不作爲は明に右法規の違背であり裁判所は一切の法律上の爭訟を裁判する権限があるのであるから違法な不作爲につきその作爲を求める本訴は適法であると主張する。しかしながら本件は町の執行機関である町長と議決機関である町議会の議員との間に町長の議会招集権の行使について生じた爭でいわゆる機関爭議に外ならない。およそ行政機関相互の間においてその主管権限の行使等について爭が生じた場合にはそれは行政機構内部における爭であるから原則として行政権自らの機能によつてこれを解決すべく、特別の定めなき限りいわゆる法律上の爭訟として裁判所に出訴し得ないものと解するを相当とする。しかのみならず我国に於ては一般的な制度としていわゆる職務執行命令が認められていないのであるから特別の定めなき限り、裁判所が行政機関である町長に対し議会の招集を爲せと命ずる権限はないといわなければならない。本件の場合には被控訴人が議会の招集をしないのはその職務の懈怠になるとしても、これが対策として町長に対する不信任決議等の処置に出ずるは格別地方自治法第百七十六條第百四十六條の如き特別の定めを以て出訴権が認められていないのであるから、本訴は不適法として却下するの外なく、理由において異るところはあるが原審がこれと同旨の結論を爲したのは相当であるから、本件控訴を棄却することゝし民事訴訟法第八十九條第九十五條を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 観田七郎 吉村国作 村上久治)