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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(ネ)29号 判決

控訴代理人は原判決を取消す(イ)別紙目録記載の宅地に付昭和二十三年十月二十七日石川縣能美郡粟生村農地委員会が爲した買收並に賣渡の決定に対する控訴人の異議申立を却下した決定に対し、控訴人が爲した訴願につき昭和二十三年十二月二日被控訴人の爲した裁決、(ロ)別紙目録記載の宅地につき昭和二十三年十月二十七日同村農地委員会が爲した買收並に賣渡の決定及被控訴人が爲した承認は之を取消す、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた(控訴人は当審に於て右粟生村農地委員会が昭和二十三年十一月十五日爲した右買收並に賣渡の決定に対する控訴人の異議申立を却下した決定に対し取消しを求める請求は減縮)。当事者双方の事実上の陳述は控訴代理人に於て(一)本件宅地の買收並に賣渡処分は昭和二十四年六月二十日法律第二百十五号の改正自作農創設特別措置法第十五條に依り買收すべき土地なりや否やを判断して爲さるべきに拘らず、改正前の自作農創設特別措置法第十五條に基き爲されたものなれば不当である。(二)同改正法第十五條の必要とは土地の客観的状況並に生計所得が農業にある客観的必要に依つて決せらるべきは法文上で明かである。(三)同改正法第十五條第二項第一号(同法第八條とあるは誤記ならん)には賃借権ある宅地については賃借権及同居の親族の主たる所得が農業以外の職業から得られた場合には買收しないことが明記されて居るが、之は宅地買收についての本來の趣旨を明文化したに過ぎぬ。(四)本件宅地買收申請者十名中青山隆、柴田寛治、市田豊策、森仁三郎、吉光隆二の五名は農地の賣渡しを受けて居ないから同人等には賣渡処分を求め得る資格がない。(五)本件宅地の買收申請者は夫々若干の田畑を耕作し居るとしても其の耕作農地の所在が不明であるから、村農地委員会が如何なる方面の幾何の土地を買收し賣渡しをなすのか、又本件宅地との間の必要性如何が不明である。(六)更に本件宅地申請者中前示の青山外四名を除く西田賢、太田茂、吉岡吉次、八木甚二、柴田宗俊の五名の農地は賣渡処分を受けた本件宅地より一丁乃至五丁内外距つて居つて宅地とは何等の関連性も從属性もないから本件買收賣渡処分は此の点よりするも不当である。尚被控訴人の爲した本件訴願却下の裁決書の謄本が二十三年十二月十四日控訴人に送達されたことは之を認めると陳述し、

被控訴代理人に於て控訴人の当審に於ける主張に対し、

(一)  本件宅地の買收賣渡処分の当否は其の処分当時施行されて居た自作農創設特別措置法によつてなすべきであつて、其の後に改正された昭和二十四年六月二十日法律第二百十五号による改正法によるべきでないのみならず、同改正法によるも買收賣渡処分をなすべきものに該当して居る。而して改正法第十五條第二項第一号は当然の事を明文化したものでなく新なる制限を加へたものである、故に控訴人主張の(一)(三)は理由がない。

(二)  本件買收処分申請者西田賢外九名(買收賣渡処分申請者)は何れも農業を以て生活の根源となし、今次の農地改革に際し夫々同法第三條に依り農地の開放を受け自作農となつたもので、本件宅地が農業経営上必要なものであることは既に第一審に於て陳述した処である。從つて控訴人主張の(二)は理由がない。

(三)  控訴人主張の青山隆外四名が控訴人所有の農地の賣渡処分を受けて居ないことは認めるが、同人等は今次農地改革に際し他の者より小作地の賣渡を受けて居る。控訴人所有の農地の賣渡処分を受けなければ同人所有の宅地の賣渡処分を受け得られない理由は毫もないから控訴人主張の(四)(五)も其の理由がない。

(四)  又控訴人主張の様に西田賢外四名の賣渡処分を受けた農地と本件宅地の間には一丁乃至五丁余り距りがあるからとて其の関連性從属性がないとは断じ得ないのみならず、却つて其の関連性從属性が認め得られるものであるから控訴人主張の(六)も理由がない。

尚柴田宗俊が買受けた本件宅地の四十五番四十三坪六勺は本件宅地は四十九坪一勺であつたが内五坪九合五勺は賃借人の住家の内店舖の敷地となつて居る爲、此の部分を除外するを相当と認め右宅地を四十五番ノ一、四十三坪六勺と四十五番ノ二、五坪九合五勺とに分筆し四十五番ノ一四十三坪六勺に付買收賣渡処分の決定をなしたのである。本件裁決書の謄本が控訴人には昭和二十三年十二月十四日送達されたと陳述した。(立証省略)

三、理  由

本件訴願却下の裁決書の謄本が昭和二十三年十二月十四日控訴人に送達されたことは当事者に爭ないところである。

第一、依て先づ控訴人が当審に於て新たに主張した事実について逐次審案するに

(一)  本件買收賣渡処分の当否は其の処分当時の自作農創設特別措置法に依つて判断すべきであつて、其の後の改正法(昭和二十四年六月二十日法律第二百十五号自作農創設特別措置法)に遡及規定なき限り、之に因るべきものでないことは言ふを俟たぬ処であつて、改正規定にはかゝる遡及規定がないから控訴人の(一)の主張は其の理由がなく、從つて之を前提とする(二)の主張も亦其の理由がない。

(二)  控訴人は前示改正法の第十五條第二項第一号は買收賣渡処分の原則を明文化したものだと主張するが、該條項は旧法の不備不当を補正する爲新たに追加された制限規定であつて、控訴人主張の様に当然の事を明文化したものと解すべきでない。而して旧法にはかゝる規定はないから該規定を以て前示処分の当否を云々するは当らない。

(三)  控訴人は本件買收賣渡処分申請者中青山隆外四名は農地の賣渡処分を受けて居ないから、本件宅地買收処分申請の資格なしと主張するが、原審証人青山隆の証言によつて眞正に成立したと認められる乙第二、三号証及成立に爭のない同五号証と原審証人吉岡吉栄、市田豊策、森仁三郎、吉光まさを、青山隆及原審並に当審証人藤本義弘の各証言を綜合考量すると同人等は今次の農革に於て何れも控訴人以外の者より農地の賣渡しを受け、既に自作農となり本件宅地に農業経営に尤も必要なる住家、納屋其他の施設を所有して農業の経営該農地の爲利用し來つたことが認められる。甲第三乃至第五号証のみを以ては右認定を覆すに足らぬ。而して本件宅地の賣渡処分を受け得るものは其の所有者たる控訴人より農地を買受けた者に限るべき規定もなく又條理もない。而して同人等の買受農地も前示の様に明かであり本件宅地との関係も明かであるから控訴人の(四)(五)の主張も亦其の理由がない。

(四)  控訴人は其の他の申請者五名(西田賢外四名)の賣渡処分を受けた農地と本件宅地とは一丁乃至五丁有余の距離があつて何等の関連性も從属性もないと主張するが、本件宅地の從属性関連性は農業の経営農地の利用上必要なりやに在りて両土地間に控訴人主張の様な距離が存するとしても農地の利用上必要なしと断じ得ないのみならず、前示乙第二、第三、第五号証並に前示証人吉岡吉栄、市田豊策、森仁三郎、吉光まさを、青山隆、藤本義弘、原審証人西田賢、太田茂、八木甚二、柴田宗俊、柴田せつ、吉岡吉栄の各証言並に原審に於ける檢証の結果を綜合考察すると同申請者は何れも以前より農を営み居り、控訴人より本件宅地を賃借し農業の経営(買收農地を含む)の爲に利用し來つたことが看取されるから控訴人のこの主張も採用出來ぬ。

第二、次に其他の控訴人の本訴請求原因事実について当否を判断するに控訴人の主張事実が何れも其の理由がなく、本件買收賣渡処分が正当であることは原判決の理由として記載せる処と同一であるから茲に之を引用する。

然れば控訴人の本訴請求中、被控訴人を相手方とし粟生村農地委員会の爲した本件買收賣渡処分の決定の取消を求むる請求は不適法として却下すべく、其の余の請求は不当であるから棄却すべきであつて之と同趣旨に出でた原判決は正当で本件控訴は其の理由がない。

仍て民事訴訟法第三百八十四條第一項第九十五條第八十九條を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 斎藤省一郞 吉村国作 村上久治)

(目録省略)

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