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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和26年(う)426号・昭26年(う)425号 判決

しかしながら、農業協同組合法第四十二条第一項は、「組合は会計主任を選任し、其の主たる事務所又は従たる事務所に於て、其の業務を行わせることが出来る。」旨規定し、また、富山県信用農業協同組合連合会定款(記録第三十九丁以下)第三十八条は、「この連合会に会計主任一名をおくことが出来る。」旨定めているけれども、会計主任そのものの職務権限について何等定めるところがないに反し、同会定款第三十四条によれば、其の第一項に、「会長は理事の過半数の決議に従つて業務を総理し、此の連合会を代表する。」旨、其の第二項に「専務理事は会長を補佐する。」旨、それぞれ規定し、また、農業協同組合法第四十二条第二項によれば、「会計主任の選任及び解任は理事の過半数によりこれを決する。」旨の規定が存するから、これ等の法規並に定款の定めに従えば、富山県信用農業協同組合の会長は、理事会の決議あることを条件として、会務の全般を総理するものであり、また、専務理事は会務の全般につき、会長を補佐するものであつて、両者は、会長を主宰者とし、専務理事を其の協力者とし、理事会の決議に基き、相携えて同会の経理を掌握し、会計主任を其の補助者として、会の公金を保管する責任者たる地位にあるものであることが明かである。証拠によれば、被告人堀四郎は、富山県信用農業協同組合連合会長、被告人吉沢正平は同会専務理事であつて、いずれも理事会の決議により前叙の権限を有していたものであつたことが明かであるから、「富山県信用農業協同組合連合会の公金を保管する者は、会計主任であつて被告人等でない。」旨の論旨は、其の理由がない。

弁護人Aの論旨第二点、弁護人Bの論旨第一、第三、第四点について。

富山県信用農業協同組合連合会定款第三十七条は、「理事及び監事の報酬は、総会に於て、これを定める。」旨規定しているから富山県信用農業協同組合連合会長及び専務理事が、理事及び監事の全員に対し、其の名義如何に拘らず、実質上報酬であると認むべき金員を支出しようとする場合には、必ずこれを総会の議に附し、其の決議に基いて、これを為すべきであり、若し然らずして、役員会の決議のみに依り、或は役員会の決議をも経ることなく、敍上の如き性質の金員を、理事、監事等役員たる地位に在る者に支給するときは、其の行為は、自己の占有する他人の物を、自己又は第三者の利益のために、自己の権限を超えて、すなわち、不法領得の意思をもつて、処分するものに外ならないことが明白である。証拠によれば、被告人両名は、総会の決議によることなく、役員会の決議のみによつて、理事、監事より成る役員の全員に対し、自己の保管する連合会の公金中より、金三十二万円を、貯蓄増強敢闘手当名義の下に、其の実、これ等の者が平素会務に精励したことに対する報酬として、支給し交付したものであること、すなわち、自己の占有する富山県信用農業協同組合連合会所有の金員を、自己及び理事監事全員の利益のために、換言すれば、不法領得の意思をもつて、擅に処分したものであることを肯認するに足るから、「被告人等に不法領得の意思がなかつた」ことを主張する論旨はこれを採用するを得ない。なお、弁護人は、「被告人等は、組合事務を処理するため、屡々出張することがあり、其の際、自己の負担に於て支出した旅費其の他の必要経費につき、改めて組合の予算中より、其の弁償を受けたに過ぎず、公金を不法に領得したものでない」と主張するが、しかしながら、原審第四回公判調書中、証人佐伯進の証言により明かなように、役職員の出張旅費等は富山県信用農業協同組合連合会役職員旅費規定により其の支弁を受くべきものであつて、敢て貯蓄増強敢闘手当名義を用いる等迂遠且姑息な手段を用いる要なくしかのみならず証拠によれば、本件金員は、決して所論のごとく役員の自弁に係る旅費等を清算の上、其の弁償に充てるため、交付されたものではなく、被告人等役員の、所謂お手盛りに依る報酬の山分けとして総会の議に附することを故意に回避し、役員会の決議のみにより、これ等役員各自に対し、適宜分配されたものであることが明瞭であるから、論旨は是認し難い。

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