名古屋高等裁判所金沢支部 昭和28年(う)82号 判決
先づ職権をもつて原判決の事実の認定並に法律の適用を審査すると原判決は其の判示事実として起訴状記載の事実を引用しているのであるが、起訴状を見ると本件公訴事実として被告人は正当の事由がないのに昭和二十七年、七月十八、九日頃から十一月二十六、七日頃までの間前後十二回に亘り別紙犯罪事実一覧表記載の通り上野倚世子外四名から芸妓として稼動したいから雇主を世話して貰いたい旨求職の依頼を受け新湊市放生津一五四七番地料理業「松葉家」事片口久江外九名に紹介し同人方へ夫れ夫れ前記上野倚世子外四名を芸妓として雇入れさせ右片口久江外九名からその紹介手数料として合計金三万千五百円を受取り以て有料の職業紹介事業を行つたものであると記載されている。従つて原判決は右と同一の事実即ち被告人が、右の如き内容の有料職業紹介事業を行つた旨の事実を認定したものに外ならない。然るに原判決は右事実に法律を適用するのに職業安定法第三十二条第一項本文第六十四条第一号罰金等臨時措置法第二条を適用して罰金刑を選択した上更に刑法第四十五条前段、第四十八条第二項の併合罪規定を適用して被告人を罰金三万円に処しているのである。然しながら判示職業安定法第三十二条第一項本文第六十四条第一号の犯罪構成の要件事実は法定の除外事由がないのに有料の職業紹介事業を行うことであるからその犯罪としての類型は職業犯の定型に属することは明白である。故に原審としてはその認定した被告人の有料職業紹介事業に対し職業安定法第三十二条第一項本文、第六十四条第一号を適用処断するに当つてはこれを包括一罪として取扱い若し判示のように罰金を選択した場合には単純にその法定罰金額の範囲内で処断すべきであることは当然のことである。然るに原判決は、被告人の有料職業紹介事業を構成する個々の事実毎に犯罪が成立するものとの錯誤に基き刑法第四十五条前段、第四十八条第二項を適用して法定罰金額に対して右事業を構成する個々の事実の回数を乗じた罰金額を罰金量刑の最高限に求めた結果法定刑の多額一万円を超える罰金三万円を被告人に科するに至つたものであり、右は判決に影響する法律の適用を誤る違法を犯したものと云わなければならない。