名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)135号 判決
村議会議員が村議会に対し自ら議案を提出する権限を有するにも拘らず、該権限を行使せず、専ら、村長をして村議会に、一定議案を提出上程せしむべく、勧誘し斡旋するが如きは、村議会議員たる者の職務行為それ自体ではないとしても、尚其の職務と密接な関係を有する行為であると言うことが出来る。従つて斯る行為に関し、報酬を受けるが如きは、刑法第百九十七条以下に所謂、「公務員其の職務に関し、賄賂を収受したるもの」に該当することが明白である。これを原判決挙示の証拠に徴するに、被告人は、自ら原判示議案を村議会に提出したものでなく、村長南部平兵衛をして、これを議会に提出せしめ、且、議題としてこれを議事に上程せしめたものであつたこと、並に、被告人小坂田松から、前示議案の上程及び可決に関し、尽力することを依頼され、その報酬として金五万円を受取つたものであることを認め得べく、叙上の法理によれば、被告人の右所為は、該報酬が議案上程又は議決の、いずれに対して支払われたものであるかを論ずる迄もなく、それ自体一個の行為として、原判決引用の法令に牴触すること勿論であつて、原判決は、被告人の職務権限の範囲に関し、事実を誤認したものでもなければ、法令の解釈適用を誤つたものでもないから、此の点に関する論旨は理由がない。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿郎 判事 沢田哲夫)