名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)261号 判決
強盗予備の行為とは行為者が金品の強奪を企てこれが着手を準備する行為をいうものと解すべきところ、原判決挙示の証拠によれば被告人は崔在学、張応学と共謀の上拳銃等を携帯しこれらを使用して進行中の貨物自動車を襲い自動車運転者等に暴行又は脅迫を加えてその反抗を抑圧した上貨物自動車及び積載貨物の強奪を企て、原判示第三、(一)乃至(四)のとおり拳銃一挺並に実包六発を携帯し(原判示第三、(一)の場合は刄渡十五糎五耗の短刀一口をも携帯)貨物自動車を物色しながら徘徊したものであり、また被告人は崔在学と共謀の上拳銃等を携帯しこれを使用して強盗をなす目的で原判示第四、(一)(二)のとおり拳銃並に実包を携帯し原判示の場所を徘徊したことが明かであつていずれも強盗の着手を準備したものというべく、従つて原判決が右被告人の所為を強盗の予備をしたものと認定したのは正当であつて、原判決には事実の誤認はない。所論は原判示第三、(一)乃至(四)及び第四、(一)の強盗の目的は布地類を積載せる貨物自動車を襲い布地類を奪取するにあつた。ところが京阪神国道は夜間五、六十粁の速度で絶え間なく通行する貨物自動車の中で布地積載の車を物色することは不可能であるから本件の強盗予備罪は成立しない。と主張するのであるが、援用の資料によつては、いまだもつて斯る行為の不可能なることを認定し難いのみならず強盗予備は前説示のとおり強盗に着手以前の行為をいうものであるからたとえ所論のように布地を積載せる貨物自動車を物色することが不可能であるとしても本件の強盗予備罪の成立に消長はない。また所論は原判示第四(二)記載の場所には金岡岩雄は居住していなかつたものであるから同人の居宅を目的として計画された被告人の本件犯行は不能である。従つて原判示第四(二)の強盗予備罪は成立しないと主張するのであるが、被告人の検察官に対する第二回供述調書、崔在学の検察官に対する供述調書、同人の司法警察員に対する第四回供述調書、検察官の昭和二十八年二月二十七日附作成の実況見分調書(図面二棄を含む)によると原判示の場所に金融業金岡岩雄こと金丘広が居住し居ることが明かである。従つて論旨はいずれも理由がない。
同B(法令適用の誤)について、
所論の要旨は、本件強盗予備と拳銃の所持は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから刑法第五十四条前段を適用すべきである。しかるに、原判決が刑法第四十五条前段を適用し併合罪として処断したのは法令の適用を誤つたものであるというのである。しかし強盗予備と拳銃の不法所持とは犯罪の構成要件及び被害法益が異り強盗予備と拳銃の不法所持とは別個の行為であり別個の犯罪と見るべきであつて一個の行為と見ることはできない。従つて原審において被告人の判示行為に対し刑法第五十四条第一項前段を適用せず同法第四十五条前段を適用したことは正当であつて法令の適用に誤りはない。論旨は理由がない。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)