名古屋高等裁判所金沢支部 昭和29年(う)306号 判決
所論の要旨は、本件公訴事実によれば被告人山本末松が被告人竹内五作、同竹内卯に対し金十五万円を供与し、被告人竹内五作は、竹内卯と共謀の上右十五万円を収賄したというのである。これに対し原判決が原判示第一の(一)に記載のように、被告人山本末松、同竹内五作は共謀の上、竹内卯に対し金十五万円を贈賄したと認定したことは、事実の同一性を欠くものであるから原審は審判の請求を受けない事件につき審判した違法があるというのである。しかし検察官は原審第十五回公判期日において、公訴事実第一の(一)を「被告人竹内五作と共謀の上昭和二十四年九月中頃……並に謝礼の趣旨で同議員竹内卯に対し金十五万円を供与し」公訴事実第二の(一)を「被告人竹内卯は同月中頃足羽郡麻生津村役場において………同工事下請人山本末松及び竹内五作より第一の(一)に記載の如き謝礼の趣旨で贈与せられるものであることを諒知して金十五万円を受取り」と変更し、若しそうでないとしても公訴事実第一の(一)に対して「昭和二十四年九月中頃………飲食費並に謝礼の趣旨で被告人竹内五作を介し同議員竹内卯に対し金十五万円を供与し」と、また公訴事実第二の(一)に対して、「被告人竹内五作は同月中頃同校建設工事に関し前記下請人山本末松より第一の(一)記載の如き謝礼の趣旨で贈与せられるものであることを諒知して金十五万円を受取りこれをその頃足羽郡麻生津村役場において、足羽中学校組合議員並に同校建設委員竹内卯に対し供与の斡旋をし右犯行を容易ならしめ」と訴因を予備的に追加していることが記録上明かである。そこで所論の収賄の公訴事実と前記の贈賄または贈賄幇助の事実との関係について審究すると被告人山本末松が十五万円を贈与したこと、被告人竹内卯が贈与を受けたこと、被告人竹内五作がこれに関与していること、はいずれも基本的事実関係を同じうするものであつて、被告人竹内五作を被告人竹内卯との共犯と見て起訴したところ審理の結果右竹内五作は贈賄側であつたことが判明したというに過ぎないのであり、被告人竹内五作が竹内卯と共謀の上被告人山本末松から十五万円を収賄したという事実と、被告人竹内五作は被告人山本末松と共謀の上被告人竹内卯に十五万円を贈賄したという事実は前叙の如き意味合に於て異る事実を形成するものではない。従つて原判決が所論のように収賄の公訴事実に対し贈賄の事実を認定したからといつて審判を受けない事件につき審判をしたという違法はない。この点につき論旨は理由がない。
(中略)
弁護人Oの控訴趣意第一点(事実誤認又は理由のくいちがい)について、
所論の要旨は原判決が被告人宇山次一に金五万円を追徴したのは失当であつて金二万円の追徴が相当であるというにある。原判決挙示の証拠によれば被告人宇山次一は西村斉と共謀の上原判示のとおり額面金十万円の小切手一通の供与を受けて収賄し右両名においてこれを分配費消した事実が認められる。思うに、二人以上共謀して賄賂を収受し共同してこれを費消し、又は、これを分配した上費消し、しかも右分配額が明でないような場合においては平等に分割して追徴を行うを相当とするも分配額が明らかな場合において、その費消した賄賂を追徴するに当り、若し共犯者各自に対し、その収受した賄賂の額を、平等の割合によつて追徴するときは、多額の分配を受けた者をして、不当に利益を得しめ、少額の分配を受けた者をして過度の負担をなさしめることになり不公平な結果を生ずるのでかかる場合の追徴は、分配により共犯者各自が実際に収受した利益の額に従つて行うを相当と解すべきところ、原判決挙示の証拠によると、十万円の賄賂のうち被告人宇山次一は二万円、西村斉は八万円の分配を受けたことが明らかであるから、被告人宇山次一に対しては金二万円を追徴すべく、賄賂額の二分の一に相当する金五万円を追徴すべきでない。しかるに原判決が同人から金五万円を追徴したのは、法令の解釈適用を誤つたものというべくこの誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであるからこの点において原判決中被告人宇山次一に対する部分を破棄すべきである。論旨は理由がある。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)