名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(う)163号 判決
戸別訪問罪は選挙に関し投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて連続して戸別に選挙人を訪問することによつて成立し多数継続の意思に出たるや否やは問うところでないものと解すべきところ、原判決挙示の証拠によれば被告人は専ら候補者内藤隆に投票を得しめる目的をもつて、原判示のとおり、選挙人秋元松太郎外三名の宅を順次訪問したことが明らかであるから原判決が戸別訪問罪に問擬したのは正当であつて原判決には事実の誤認はない。所論は被告人の検察官に対する昭和三十年三月十九日附供述調書中「この四軒の家へ行つたのはこの時に全然内藤の票を頼む以外に用はなく、ただその用事で行つたもので」との供述は、真実を自供したものではなく、全く信憑力がないものである、しかるに原判決がこれを事実認定の資料に供したのは失当であるというのであるけれども、右被告人の供述調書自体及び原審証人秋元松太郎、村上信雄、八島吉作、村上謙三の各供述並に同人等の検察官に対する各供述調書を綜合すれば右被告人の検察官に対する供述は真実性が認められるので原判決がこれを事実認定の資料に供したのは相当であつて違法の点はない。論旨は理由がない。
(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)