大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(う)172号 判決

原判決挙示の証拠に依り、原判示第一乃至第十八の各贈賄の事実を肯認することが出来る。弁護人は「被告人等の本件供与行為の相手方である中田恒彦は、当時、小松税務署直税課所得税第一係総括班に勤務し、形式的、機械的な雑務に従事していた一介の雇員に過ぎず、原判示の如く、所得税に関する異議申立理由の有無を調査したり、所得税に関する誤謬の訂正をするような、職務権限を持つていた者でない。」旨主張するけれども、しかしながら被告人木崎三次に対する贈賄被告事件原審第三回公判調書中証人中田恒彦の供述記載、中田恒彦に対する検察官作成昭和二十八年九月二十五日付供述調書謄本(被告人豊島豊作外十八名に対する贈賄被告事件記録第百二十七丁以下の分)の記載、中田恒彦勤務記録カード謄本(証第一号)の記載、所得税総括班平常事務分担表謄本(証第二号)の記載、税務署処分細則税務署事務分掌規程抄本(証第七号)の記載等を綜合すれば、(一)中田恒彦は昭和二十三年三月小松税務署に臨時雇として採用され、翌年四月一日付を以て雇員と為り、昭和二十七年八月以降昭和二十八年六月一日東京麻布税務署に転勤する迄、同署直税課所得税第一係総括班に所属していたこと、(二)右総括班に於ては、所得の予定、確定、修正各申告について各種の集計を作成し、国税局に対しこれを報告し、申告された所得額について更正決定、誤謬訂正決定など各種の決定を為し、さらに異議申立があればこれに対する各種の調査を為すこと等を以て、その主たる担当事務としていたものであり、中田恒彦は、右総括班に在つて、所得に関する集計の作成、誤謬の訂正、帳簿の整理等、班の一般事務に従事していた外、なお異議申立の手続に関しては、上司の決定に従い、その指示する金額を所定用紙に記入する方法に依り、更正決定決議書又は誤謬訂正決議書などをそれぞれ起案した上、上司の決裁により増減された所得額を、納税義務者に通知する等の事務を担当していた者であつたこと、(三)中田恒彦は前記総括班の事務全般に亘り、上司の命に依り、随時上司の事務処理を補助すべき地位を占めていた者であつたこと等の諸事実を肯認し得べく、以上を綜合すれば、中田恒彦は、小松税務署直税課所得税第一係総括班に於て、原判示の如く所得税に関する異議申立理由の有無の調査並に所得税に関する誤謬訂正の職務を担当していた者であつて、所論のように、単なる機械的雑務に従事していた者ではなかつたことが明かである。尤も中田恒彦が所管事務に関し、最終的な決定権を持つて居なかつたことは、まことに所論の通りであるが、それだからと言つて、同人鞅掌の事務を、単なる形式的、機械的雑務であると為すを得ないことは勿論である。仮令中田恒彦に減税の権限がなかつたとしても、その故により、同人の行為を以て、その職務に関するものでないと言うべきでない。従つて弁護人の前記の主張は、その理由がないと言わなければならぬ。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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