大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(う)25号 判決

しかし覚せい剤取締法第十四条にいわゆる所持とは、覚せい剤を自己の支配し得べき状態に置くことをいい、直接所持しなくても他人の行為を介して、自己の所持を実現したものと認められる場合にはなお所持の責を免れ得ないものと解すべきところ、原審証人大村光男こと李泰珉の検察官との問答中、問、「その前に証人は輪島市に来たことがあるか。」答、「本年九月頃輪島市の橋本方に遊びに来たのであります。」問、「その頃橋本方に橋本一人居たのか。」答、「橋本さんの使つているという若い男の人一人とおばさん一人が居りました。しかし橋本はその若い人と話をするなということでありましたので私はその人と話したことはありません。勿論ヒロポンのことも橋本から直接頼まれたのであります。」問、「それからどうしたのか。」答「私が東京に帰える時旅費として三千円を橋本から貰い東京に行つてから五千円を送つて来ました。尚その他にも三千円を送つて来ました。それで私はその金でヒロポンを買つて、橋本が私に書いて渡した田中一郎宛にして能登市之瀬駅止として送つたのであります。」問、「証人は申在休という人の顔を知つているのか。」答「顔は知つて居ります。本日証人として出廷して居た眼鏡をかけた若い人で、この人が橋本と一緒に居た人です。」との供述部分。被告人の検察官に対する第三回供述中「大村光男が輪島にやつて来て私の処に訪ねて来たのは、十月三日のことでありますが、本人は柳川と一緒にやつて来ました。私はこの時に、大村にヒロポンを買う代金として、三千円を渡し市之瀬駅止山田三郎宛に送れと申しましたが、その金は高橋が大村にやつてくれというので、私が受取つて大村に、ヒロポンを買うのに三千円だけ渡すから先に持つて帰れと申しますと、大村は私にそれでは残金の五千円を送つてくれたらすぐ現物は送るようにするから、と申しておりましたが大村が東京に帰つた翌日の四日の日だつたと思いますが、私は高橋から五千円の金を受取り輪島の本局から電報為替で大村のところに送金してやつたのであります。」「四日の日に私が五千円の電報為替を送金してやると、大村が約束通りすぐ現物のヒロポンを市之瀬駅止にして送つてくれたもので、それを私が受取るべく横山に頼んで十月八日取りに行かせたのが警察に引つかかつたもので云々。」との供述部分、その他原判決挙示の証拠を綜合すれば、各所論のように単に被告人は申在休に頼まれて、運搬人の世話をしたというのではなく、被告人と申在休は共謀の上情を知らない横山信秀を介して本件覚せい剤の所持を実現したものであることが明らかであるから本件覚せい剤所持の責を免れない。従つて、被告人と申在休との共謀による覚せい剤所持を認定した原判決には各所論のような違法はない。論旨はいずれも理由がない。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 岩崎善四郎)

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