名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(う)298号・昭30年(う)302号・昭30年(う)294号・昭30年(う)293号・昭30年(う)297号・昭30年(う)300号・昭30年(う)301号・昭30年(う)296号・昭30年(う)295号・昭30年(う)299号 判決
原判決が被告人池田時雄に対する事実第二において、「昭和三十年二月二十五日頃前同所(候補者関芳太郎方)に於て前記田畑六三郎より嶽義政並に干場弥助に対し同候補者の為の運動報酬並に費用として供与をさせる目的を以て交付されるものであることを諒承しながら現金三千円の交付を受け」同第三において、「同日同候補者に当選を得しめる目的を以て同町字川島清屋新宅方面に於て嶽義政並に干場弥助に対し同候補者の為の運動報酬並に費用として現金参千円を供与したものである。」と認定しいずれも原判示第一の所為との併合として処断していることが判文上明らかである。原判決挙示の証拠によれぱ被告人池田時雄は、原判示の頃田畑六三郎より選挙運動者たる嶽義政及び干場弥助に対し候補者関芳太郎に当選を得しめる目的をもつて、同候補者への投票並に投票取まとめの費用並に報酬として供与する目的をもつて自己に交付されることの情を知りながら現金三千円の交付を受け被告人は更にその金員を右両名に供与したものなることが明らかである。かように他の選挙運動者に供与せしめる目的をもつて交付されることの情を知りながら金員の交付を受けた者が更にその金員を該選挙運動者に供与した場合はその交付を受けた点は後の供与罪の一過程にすぎないから後の供与罪に吸収されて供与罪のみが成立し別罪を構成しないものと解すべきである。しかるに原判決は原判示事実を認定しながら、供与罪の外別に交付罪が成立するものと認定被告人池田時雄に対する判示第一の所為とともに併合罪として処断しているのは法令の解釈適用を誤つたものというべく、この誤は判決に影響することが明らかであるから、この点において被告人池田時雄に対する原判決を破棄すべきである。
(裁判長判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫 判事 吉田彰)