大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(う)69号 判決

記録を検するに、原判決は、その理由中に於て、第一、被告人山本定次郎は、(一)単独にて別紙第一貸金一覧表記載のとおり、(二)被告人飯田吉蔵、同三沢成家と共謀して別紙第二貸金一覧表記載のとおり、第二、被告人飯田吉蔵は、(一)被告人山本定次郎、同三沢成家と共謀して別紙第二貸金一覧表記載のとおり、(二)被告人三沢成家と共謀して別紙第三貸金一覧表記載のとおり、(三)単独にて別紙第四貸金一覧表記載のとおり、第三、被告人三沢成家は(一)被告人山本定次郎、同飯田吉蔵と共謀して別紙第二貸金一覧表記載のとおり、(二)被告人飯田吉蔵と共謀して別紙第三貸金一覧表記載のとおり、それぞれ金員の貸付をなし、以ていずれも貸金業を営んだものである旨、事実を認定した上、被告人等の右所為に対し貸金業等の取締に関する法律第五条第十八条第一号刑法第六十条等を適用し、所定刑期並金額範囲内に於て主文掲記の如くそれぞれ懲役刑と罰金刑とを併科し、なお、刑法第二十五条第一項により主文掲記の如く被告人等に対し右体刑の執行をそれぞれ猶予しているものであることを認め得る。以上に依れば一見恰も原審は、別紙第一乃至第四貸金一覧表の記載に従つて、被告人等の貸付行為を四個に区分し、同一被告人の所為について、各貸付一覧表毎に、独立した数個の貸金営業行為を認定したものであるかの如き観がないでもないけれども、しかしながら、原判決の擬律中併合罪に関する規定が見当らないことよりすれば、原審は、決して同一被告人の所為につき、一覧表別に独立した数個の犯罪の成立を認めた訳でなく、包括一個の集合的犯罪を構成すべき個々の行為につき、犯罪の態様(殊に共犯者との関係)を明確ならしめるため、前記の如き叙述方法を採用したに過ぎず、多数同種行為の集合によつて成立した一個の営業犯を認定するものに外ならないことが明白である。ところで、集合的一罪を構成する個々の反法的行為については、その各行為それ自体が完成した一個の犯罪現象たり得る性質を帯有する点に着眼し、或は個々の行為ごとに公訴時効の進行を肯定せんとする見解もあり得るであろうけれども、しかしながら、法律上の一罪を構成する数個の行為については、その各個の行為につき各別に時効の完成を認むべきでなく、その最終行為の終了時を起点とし、この時よりはじめて時効の起算を為すべきであると考える。従つて牽連犯、想像的競合犯等と同じく、本件の如き所謂集合的一罪に於ては、その罪を構成する個々の行為について、公訴時効の進行完成を各別に認めるべきでない。蓋し一罪の一部につき時効の完成を認めるが如きは、公訴不可分の原則と矛盾するものだからである。前行行為が終了し、公訴時効期間満了後、後行行為が発生したような場合には、前行行為と後行行為との間に犯意の継続を認定すべきでなく、斯る事例の存在は、毫も前記のような法解釈の成立を妨げるものでない。これを本件につき観るに、被告人等の前記所為に対する公訴時効の起算点は、各被告人等の最終行為完了の時、すなわち、昭和二十六年十月四日であり、本件公訴提起は、昭和二十八年十月十九日であるところ、貸金業等の取締に関する法律第十八条の法定刑は三年以下の懲役、三十万円以下の罰金であつて、刑事訴訟法第二百五十条第五号に該当し、本件犯罪行為に対する公訴時効は三年であり、未だもつて犯罪終了後公訴提起迄の間に、公訴時効期間を経過していないことが記録上明かである。そうして見れば本件犯行につき、公訴時効既に完成せりとする論旨はその理由がないと言わねばならぬ。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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