名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)251号 判決
原判文によれば原判決が本件の漁船につき総屯数を明示せずまた「いわし」を漁獲したことをも判示していることは所論のとおりである。しかし原判決は判文に示すとおり被告人等は共謀の上原判示の期間の夜間若狭湾沖合において、原判示の如く漁船第一、第二青洋丸により集魚灯を使用して中型まき網漁業並に指定中型まき網漁業を営み、いわしあじ、さば等を漁獲したものである。との事実を認定し、漁業法第六十五条、第六十六条の二、第百三十八条、まき網漁業取締規則第十六条第一項、第二十九条、昭和二十七年農林省告示第八十七号に問擬していることが明らかである。右漁業法第六十六条の二は中型まき網漁業は船舶ごとに都道府県知事の許可を受けなければ営んではならないとし、その中型まき網漁業とは総トン数五トン以上六十トン未満の船舶によりまき網を使用して行う漁業(第六十五条第一項の規定に基いて主務大臣の許可を必要とする漁業を除く)をいう旨規定し、またまき網漁業取締規則第一条は、「指定中型まき網漁業」とは所定の海区において総トン数十五トン以上六十トン未満の船舶によりまき網を使用して所定の魚類をとる漁業をいうと規定し、中部日本海区における魚類を「あじ」「さば」と定めている。同規則第二条は大型まき網漁業又は指定中型まき網漁業は船舶ごとに農林大臣の許可を受けなければならない旨規定している。また同規則第十六条第一項(昭和二十七年三月十三日農林省令第八号)は、農林大臣が定める区域又は期間内においては農林大臣が定める漁具又は漁法により特殊まき網業を営んではならないとし昭和二十七年農林省告示第八十七号において前示規則第十六条第一項の規定(昭和三十年十月十五日農林省告示第八三四号により一部改正あるも本件に関係がない)に基き指定中型まき網漁業につき禁止すべき漁具又は漁法及び禁ずる期間又は海域を定め、中部日本海区においては集魚灯の使用を禁止していることが明らかである。以上によれば総トン数五トン以上六十トン未満の船舶による中型まき網漁業を営むためには漁業法第六十五条第一項の規定に従い主務大臣の許可を必要とする漁業を除き、すべて都道府県知事の許可を必要とするものであり、また総トン数十五トン以上六十トン未満の船舶により中部日本海区において「あじ」「さば」を採捕する漁業(指定中型まき網漁業)を営むについては船舶毎に農林大臣の許可を受けかつ集魚灯を使用することは特に許可のない限り禁止されているのである。本件において被告人等が使用した第一、第二青洋丸はいずれも二十九、八十五トンであることは被告人八百梅吉の検察官に対する供述調書、原審相被告人松崎金治の検察官に対する供述調書、原審証人大野金保の供述により明らかである。従つて被告人等の本件第一、第二青洋丸による漁業が漁業法第六十六条の二にいわゆる中型まき網漁業なること及び右第一、第二青洋丸がいずれもまき網漁業取締規則第一条に規定する指定中型まき網漁業の範ちゆうに属する船舶なることが明らかである。それゆえ原判決が第一、第二青洋丸のトン数を記載しなかつたからといつて原判決に欠ぐるところはない。原判決挙示の証拠を綜合すれば被告人等は指定中型まき網漁業につきまき網漁業取締規則第二条による許可を受けていたものなることは認められるも被告人等は漁業法第六十五条の二による福井県知事の許可を受けないで原判示の期間十九回に亘り「いわし」を捕獲しまたまき網漁業取締規則第十六条第一項、昭和二十七年農林省告示第八十七号に違反し集魚灯を使用して中部日本海区の若狭湾沖合において原判示の期間十九回に亘り「あじ」「さば」を捕獲したことが明らかである。従つて原判決が「いわし」を捕獲した旨判示したのは相当である。判決には所論のような事実の誤認及び訴訟手続に違反はない。論旨は理由がない。
同第二点(法令適用の誤)について、
しかし、原審証人大野金保の供述によれば、被告人等はまき網漁業取締規則第一条第二条による指定中型まき網漁業につき農林大臣の許可を受けていたものなることが認められる。従つて同規則第二条の違反とならず前段説示のとおり同規則第十六条第一項、昭和二十七年農林省告示第八十七号に違反するものというべく原判決が漁業法第百三十八条の外に同規則第二十九条に問擬したのは正当である。所論は誤つた前提に立つて論議するものであつて論旨は理由がない。
(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)