大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)274号 判決

原判決挙示の各証拠を綜合すれば、原判示第一、第二の各事実、すなわち被告人が、原判示の頃原判示の場所に於て、石垣玉次郎及び大谷内義一に対し、原判示のような言動を示し、同人等を畏怖せしめ、因て右石垣より金千円を、右大谷内より右千二百円を、いずれも仲介手数料分配金名下に、喝取したものであることを肯認することが出来る。弁護人は右第一、第二の各事実につき、「被告人は石垣玉次郎及び大谷内義一に対し、仲介手数料の分配を請求すべき民法上の権利を有するものである。」旨主張し、また原審第三回公判調書中証人吉村一枝こと吉村和子の供述記載、原審第一回、第三回各公判調書中被告人の供述記載、被告人に対する司法警察員並に検察官作成各供述調書の記載中には、所論の趣旨に照応するかのような記載部分があることを認め得ない訳でないけれども、しかしながら、原審第二回公判調書中証人山崎勝次郎、同石垣玉次郎、同大谷内義一、同石垣はつの各供述記載を綜合すれば、(一)かねて山崎勝次郎から家屋売却の仲介方を依頼されていた石垣玉次郎は、被告人に対し、その知人である薬師某との間に、売買の交渉を進めて呉れるよう、依頼すると同時に、若し被告人の努力に依つて、該契約が成立するに至つた暁には、仲介料の一部を被告人に分与すべき旨、申入れたことがあつたに止まり、その後被告人と薬師某との交渉は不調に帰したため、石垣玉次郎より被告人に対し、仲介手数料を分与すべき義務は、全く発生せずに終つたものであつたこと、(二)石垣玉次郎の仲介に依り、山崎勝次郎と干場某との間に、家屋を売買する商談が成立し、石垣玉次郎等関係人が手金を授受する目的で、山崎勝次郎方に赴いた際、被告人は同人等に追随して同所に到り、さらに石垣玉次郎等が佐野屋旅館に引揚げた際、被告人は再び同人等に追随して同所に至つたので、其の意を察した石垣玉次郎が、被告人に対し、その義務がないにも拘らず、金二千二百円を分与しようとしたところ、被告人は「馬鹿にするな。これ位の金なら要らない。」等と怒号し、該金員をその場に投げ付ける等の行為を為し、その後石垣玉次郎及び大谷内義一に対し、原判示のような所為に及んだものであつたことを認め得べく、右認定と相容れない叙上被告人の弁疏及びその内縁の妻吉村和子の証言は、到底措信し難いから、以上によれば、被告人は、石垣玉次郎及び大谷内義一に対し、仲介手数料の分配を請求すべき民法上の権利を有するものでもなければ、また斯る権利があると自ら信じていたものでもなかつたことが明かであるのみならず、仮令被告人に於て、斯る権利を有して居り、または、斯る権利を有して居ると自ら信じていたとしても、権利者が権利行使の方法として、義務者に暴行又は脅迫を加えるなど、社会通念上認容すべき程度を逸脱する手段に訴えた場合、なお該行為について恐喝罪の成立を妨げないと解すべきであるから、(昭和三十年十月十四日最高裁判所判例参照)以上のいずれの観点よりするも、論旨はその理由がないと言わなければならぬ。

(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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