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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)34号 判決

所論の要旨は被告人篠田一夫及び山川富治の本件粳精米買受けの行為は営利を目的としたものではなくまた継続的反覆性もないもので食糧管理法施行規則第四十条にいわゆる営業の目的で政府以外の者から原判示の粳精米を買受けたものではない。しかるに原判決が被告人の行為につき食糧管理法第九条第一項、同法施行令第七条、同法施行規則第四十条を適用したのは法令の解釈適用を誤つたものである。また松川清実と林実間の米穀売買契約は被告人篠田一夫、同山川富治の関知しないところである。しかるに原判決が被告人篠田一夫、同山川富治、同松川清実(清美とあるは誤記と認める)は共謀の上林実より原判示の粳精米を原判示の代金をもつて買受けたものと認定し刑法第六十条を適用したのは法令の適用を誤つたものであると主張する。

論旨援用の資料に依れば、被告人両名が、個人的な利益を追及する目的の下に本件粳精米を買受けたものでないことを認められるけれども、原判決挙示の証拠によれば本件日本車輛株式会社は汽車電車等の車輛の製造並に販売を業とする商事会社であつて、被告人篠田一夫は右会社の勤労部厚生課主任として従業員の福利、厚生、衛生、文化に関する事項を担当し、被告人山川富治は右厚生課員として、被告人篠田一夫の下において当時食堂方面の事務特に物資購入、配給、給食等の事務を担当していたものであるが、従業員に対する労務加配米の量り込みによる不足分に対する補充としての現物支給、右会社の食堂再開について従業員に対する夜食の支給、右会社の業務上の来客に対する接待等に使用する目的で被告人両名は右会社の業務に関し松川清実と意思連絡の上右松川において買付を担当し原判示のとおり林実から粳精米を買受けたものであることが認められる。以上のような用途に使用する目的で、粳精米を購入したことは右会社の事業遂行上附随的になされたものであるから営業の目的をもつて使用するために買受けたものと認めざるを得ない。従つて原判決には事実の誤認はなくまた所論のような法令の適用に誤りはない。所論は独自の見解に立つて原判決を攻撃するものであつて論旨は理由がない。

同第二点(理由不備)について、

前段説示のとおり被告人両名は汽車電車等車輛の製造並に販売を業とする本件日本車輛株式会社の従業員であつてそれぞれ前示の事務を担当し右会社のため前段説示のとおりの用途に使用する目的で粳精米を買受けたものであつて右会社の事業遂行の必要上会社の目的とする事業に附随してなされたものであるから結局食糧管理法施行規則第四十条に所謂営業の目的をもつて使用するために買受けたものというべく、原判文は措辞不十分であるが結局同一見解の下に、原判示第二の事実を認定したものと認められるから、原判決には所論のような理由不備はない。論旨は理由がない。

同第三点(事実誤認)について、

原判決挙示の証拠中松川清実の検察官に対する昭和二十八年八月五日附第一回供述調書及び林実の検察官に対する第一、二回供述調書によれば昭和二十八年七月十四日頃松川清実方においてなされた松川清実と林実間における米穀の売買契約は松川清実において粳精米三十俵を一升当り百二十五円(一俵当り五千円)の割合で合計金十五万円で買受けること、内金十四万四千円を前払いし残金六千円は現物引渡後に支払うこと、引渡場所は林の買付先部落の適当な場所の約定であつたことが認められるけれども、原判決挙示の被告人篠田一夫、同山川富治、松川清実、林実の検察官に対する各供述調書を綜合すれば、被告人篠田一夫及び山川富治が松川清実から本件米穀を買受けたものではなく、原判決が説示しているように被告人両名は松川清実と共謀の上本件米穀を他より買受けることとし、右松川において買付けを担当し被告人山川は被告人篠田と合意の上右松川に対し三国港駅までの運賃その他一切で一升当り百四十円の枠内で買受けるべく告げ予め買付資金として三十俵の代金として十六万八千円を交付し右松川は右の趣旨で右金員を受取り林実に代金の前渡しとして金十四万四千円を渡し原判示第一の(二)の日時場所において松川清実及び被告人山川において本件粳精米の引渡を受けたものであることが認められる。以上のように右松川及び被告人山川は本件粳精米買受けの共謀者の一員であるから同人等が、林実からその引渡を受けた以上共謀者たる被告人両名及び松川清実の全員に対し本罪が成立するものである。従つて原判決が被告人篠田一夫、同山川富治、松川清実は共謀の上原判示のとおり林実より原判示の粳精米を買受けたものと認定したのは正当であつて、原判決には所論のような事実の誤認はない。論旨は理由がない。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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