名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)368号 判決
次に職権を以て原審法令適用の当否を審究するに、被告人の前科調書(記録第一九八丁以下)並に金沢刑務所長作成回答書の各記載、被告人に対する恐喝被告事件、傷害被告事件、暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件の各判決謄本の記載に依れば、被告人は(一)昭和二十二年七月十九日富山地方裁判所に於て暴力行為等処罰に関する法律違反の罪に依り懲役六月(三年間執行猶予)に処せられ、同年七月二十五日該裁判は確定し(二)昭和二十三年五月三十一日同裁判所に於て傷害罪に依り懲役六月に処せられ、同年九月二十九日該裁判は確定し(三)同年九月二十一日同裁判所に於て恐喝罪に依り懲役三年に処せられ、同月二十九日該裁判は確定し(四)昭和二十四年一月十日富山簡易裁判所に於て前記(一)の罪の刑の執行猶予を取消され、該取消決定は同月十四日確定し、昭和二十七年四月二十八日政令第百十八号に依り(一)の罪の刑を徴役四月十五日に減刑され、同日政令第百十九号に依り(二)及び(三)の罪について復権され、昭和二十三年九月二十一日より昭和二十七年七月二十六日迄の間に、これ等各罪の刑を間断なく執行され、昭和二十七年七月二十七日満期釈放となつたものであることを認め得べく、右前科の存在により、被告人の本件刑責については、すべからく累犯の加重を為すべきであるにも拘らず、原判決を検討すれば、原審は被告人の本件所為に対し、刑法第五十六条第五十七条の適用をしていないことを認め得る。尤も既に判示した通り叙上前科調書の記載に依れば、被告人は前掲政令第百十九号復権令に依り前示(二)(三)の各罪について復権を得、法令の定めるところに依り喪失し又は停止された資格を、これによつて回復するに至つたことを認め得るが、右復権令は、刑罰の効果として剥奪されたところの、人の資格の或るものを、これに基いて回復させるに止まり、刑の加重減免に関する刑法の規定の適用に対し、何等の影響を与えるものでないと解すべきであるから、従つて、叙上のような復権があつても、それだからと言つて、前記(二)(三)の罪に依る受刑の事実を目して、刑法第五十六条以下の適用に関し、累犯加重の原由たり得ないものと言うを得ない。そうして見れば原判決は前科の存在を看過したものでなければ、累犯加重に関する法令の解釈適用を誤り、その結果適用しなければならぬ刑法第五十六条以下の規定の適用をしなかつたものであつて、その誤りは判決に影響するから、原審量刑の当否に関する論旨について判断する迄もなく、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十二条、第三百八十条に則り、原判決を破棄した上、同法第四百条但書に従い次の通り判決する。
(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)