大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和31年(う)370号 判決

原判決挙示の証拠に依り、原判示の事実、すなわち被告人は富山県技術補(富山県営富山土石採取事務所勤務)たる自己の職務(所管神通川、井田川流域に於て施行する土石採取事業に関し、土石採取行為の監督、使用個所の調査、無届採取の取締、土石売渡数量の調査等)に関し、原判示の頃原判示の各場所に於て、前後十八回に亘り、佐藤宗一その他の者から現金四千円の供与及び合計金一万九千余円相当の饗応を受け、以て賄賂を収受したものであることを、肯認するに十分である。弁護人は「富山県内の河川敷地の土石は、富山県土木部河港課の所管であり、該土石の無断採取を取締る権限は、所管当局である富山県土木部河港課に属し、県営土石採取事務所に属さない。従つて県営土石採取事務所の職員である被告人は、原判示の如く土石の無断採取を取締る権限を有しないものである。」旨主張するけれども、しかしながら富山県土木出張所設置規則(記録第六五七丁以下参照)河川管吏員設置規程(同第六五九丁以下参照)土石採取規程(同第六六五丁以下参照)直営土石採取事業管理者富山県知事高辻武邦名義、富山県知事高辻武邦宛土石採取許可願書の記載、(同第六二八丁以下、同第六四三丁以下)同許可書の記載、(同第六三九丁以下、第六五四丁以下)県営土石採取事務所規程(同第六七〇丁以下参照)富山県営採取土石売払規程(同第六七三丁以下参照)原審第八回公判調書中証人矢内保夫の供述記載、当審証人矢内保夫の供述、被告人に対する検察官作成各供述調書の記載等にこれを徴すれば、(一)富山県に於ては、自治団体たる県が一個の企業体となり、行政庁たる県の許可を受け、県内の一定地域(河川、海岸等)から、一定期間内、一定種類、一定数量の土石を採取し、その販売に依る利益を、自治団体たる県の収入としていたこと、(二)企業体である県は、土石の採取に関する事務を処理するため、県営土石採取事務所規程を設け、一定の職員を該事務に従事せしめ、直営又は請負工事を以て土石を採掘し、採取した土石を販売するため、富山県営採取土石売払規程を設け、買受人の資格を公共事業の執行者、県の指定した土石販売人、其の他大口需要者等に限定し、一定の対価を得て、これ等の者に土石を販売していたこと、(三)富山県の土木部河港課は、一般的に管内各河川並に海岸の土石を、管理する権限を有しているけれども、他方、県営土石採取事務所は、許可を受けた区域に於て、許可された期間内、許可された種類数量の土石を採取する権限を有し、被告人は同事務所の職員として、右事務所の権限の範囲内に於て、監視その他の方法に依り盗掘を防止し、盗掘する者を発見した場合には、制止その他適切な措置を講ずべき職務権限を有していたことの諸事実を肯認するに足り、以上を綜合すれば、被告人は原判示の通り、県の定めた法規に基き、一定限度内に於て、土石の無断採取を取締る権限を有していたことが明かであるから論旨は理由がない。弁護人は「前記の土石採取事業は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定に違背するのみならず、国の行政権を、広汎な範囲に於て、侵害するものであつて、従つて、被告人等、該事業に従事する者の職務権限を定めた県営土石採取事務所規程は、法律上無効であり、斯る無効な規程によつて定められた職務に関し、収賄罪は成立しない。」旨主張するけれども、しかしながら、前記の資料に依れば、富山県営の土石採取事業は、これに因つて県の収入の増加を図り、一面県民の負担を軽減すると共に、他面、県の活動を助長することを、目的として行われたものであつて、若干の営利性及び排他性を帯びているけれども、畢竟するに公益の目的より発し、公益に反しない方法で経営されたものと認むべく、しかるに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律は、これを要するに公益に反する私的独占、不公正取引等を禁止するものであつて、叙上のような公益に反しない行為を禁止するものでないから、富山県営の土石採取事業は、所論のように私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に違背するものと言うを得ないのみならず、また県営土石採取事務所の職権職務には、既に認定した通り、時間的、地域的、行為的な各種の制限が加えられて居り、行政庁たる県土木部の権限を、所論のように広範囲に浸蝕するものでなく、従つて県営土石採取事務所規程は、所論のように違法且無効なものでない。論旨は理由がない。

(裁判長判事 高城運七 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

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