名古屋高等裁判所金沢支部 昭和32年(う)243号 判決
弁護人は「被告人の原判示第一(一)乃至(四)の各粳米買受の所為は、短期間内に、省略同一の地域に於て反覆された同種の行為であつて、単一の意思発動に基く包括一罪と認むべきものであり、また、原判示第二の粳米輸送の所為は、前記第一(二)(三)の所為に因り取得した粳米の運搬に関する行為であつて、所謂事後行為の一態様に属し、前記第一の罪に吸収され、これと包括一罪を構成すると解すべきであるにも拘らず、これ等の各所為を併合罪と認定し、刑法第四十五条、第四十七条、第十条を適用した原判決は、畢竟するところ法令の適用を誤つたものである。」旨主張するけれども、しかしながら原審証拠調の結果を検討すれば、原判示第一(一)乃至(四)の各所為は、比較的に近接した地域に於て、しかも時間的に相前後して、それぞれ行われたと言うに止まり、各所為の行われた時及び場所、並に行為の相手方を各異にするものであつて、これを単一意思の実現に基く包括一罪と見るよりは、寧ろそれぞれ別個の意思実現に依る数罪と認定するのが相当であると考えられるのみならず、また、原判示第二の所為は、所論のように原判示第一の行為の事後行為として、その内に当然吸収される性質の行為ではなく、構成要件を異にする別個独立の犯罪であると認むべきであるから、論旨はいずれもその理由がない。
論旨第二点は原審量刑の当否に関するものであるが、これについて判断するに先立ち、職権を以て原判決の記載内容を調査するに、原判決の主文第一項には、被告人を懲役八月及び罰金五万円に処する旨の記載が存するにも拘らず、その理由中法律適用の項には、被告人を懲役壱年及び罰金五万円に処する旨の記載があることを、それぞれ認め得る。ところで刑事訴訟法第三百七十八条第四号後段にいわゆる「理由にくいちがいのある」場合とは、ひとり判決理由の前後に矛盾がある場合だけに限らず、前記のように、判決の主文と理由との間に不一致の存在する場合をも、広く包含する趣旨であると考えられるので、主文と理由との間に叙上のような撞着の存在する原判決は、畢竟するところ刑事訴訟法第三百七十八条所定の場合に該当するものと言わざるを得ず、原判決はこの点に於て破棄を免れないものである。
(裁判長裁判官 山田義盛 裁判官 沢田哲夫 裁判官 辻三雄)