大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和33年(う)101号 判決

原判決別紙犯罪一覧表三、四、八、九、一〇、一一、一三の各事実誤認の控訴趣意について。

記録によれば原判決は右掲記の各公訴事実につき被告人の自白以外に之を認むべき補強証拠がないから無罪を宣告したことは所論のとおりである。よつて原審において取調べた証拠の外、当審において取調べた証拠により補強証拠の存否を検討する。

(一) 山田ヲクニの司法警察員に対する昭和三十三年十一月十一日附供述調書によれば同人の夫山田義雄は富山市西堤町十一番地において山田新なる屋号で衣料品商をなし、商売はよく繁昌し常に客は多数混雑し、女店員約二十一名を使用しているも店員の目が行届かず、万引にかゝることが多い旨の記載。

(二) 山田義雄の司法警察員に対する昭和三十三年四月十六日附供述調書中同人の供述として (イ)昨年頃より同人方の店へ時折り買物客に混つて年齢六十七、八才位、丈五尺二寸位、中肉丸顔、頭は禿げ上り白髪混りの丸刈、眉が稍つり上り太い眉のお爺さんでネズミ色のオーバを着た人が来ていたが、いつも買物はしないで、いつの間にか店から出て行つていたので万引に来るのでないかと気を配つていた旨(記録三十丁裏) (ロ)本年一月末頃その老人が店へ来ていたので注意をしていたところ、男物スボン一着を盗んで行こうとしたのでその老人を捕えて詰問したところ、ありや間違えたなどと云つて、品物を置いてそそくさと出て行つた旨(記録三十一丁) (ハ)その後もその老人が引続き店へ来ていたが、お客で混雑している時等はいつの間にか出て行つて居ないので此の爺さんにズボン等を盗まれているものと想像していた旨(記録三十一丁)の記載

(三) 右同人の司法警察員に対する昭和三十三年四月二十一日附供述調書中同人の供述として (イ)原判決別紙犯罪事実一覧表記載の二、六、七、一二、一四(以下番号のみを略記する)の各被害品(領置された賍品)はいずれも自分の店で盗まれた品である旨、(ロ)三、四、八、九、一〇、一一、一三の各被害品は被告人が自分の店で盗んだと自供しているなら其の色、柄、品質等から自分の店で販売しておる商品であつて、被告人に盗まれたものであると思う旨の記載(記録三十五丁)

(四) 原審第三回公判調書における証人山田義雄の供述記載中 (イ)被告人に盗まれた品物は全部純毛の高級品で、余り多くは売れないため、一度に大量の仕入はせず、毎日の売上は一々記帳していないけれども、大体の残量は勘で判つており、時々販売した以上に商品が減つていたことがあり、そのような場合には盗まれたものと思つていた旨 (ロ)被告人が自分の店で盗んだと云つている商品のうち、現物の出て来たものは勿論、現物の出て来ない品も其の商品の種類品質、陳列場所等から全部自分の店で盗まれたものであることが後日判明した旨の記載(記録百十二丁以下)

(五) 岸ヤイの司法警察員に対する昭和三十三年四月十七日附及び同年六月六日附各供述調書を綜合すれば同人の供述として、三、四、八、九、一一、一三の各被害品を夫々その被害発生後間もなく被告人より質受け又は買い受けた外、一四の被害品も被害発生日頃被告人より買い受け、そのうち三、(毛糸丸首シヤツ)一一(白色生地)一四(茶色セータ)は手許に残つているので任意提出する、その他の物品は夫々売却処分した旨の記載(記録三十九丁以下)

(六) 山田義雄の司法警察員に対する昭和三十三年六月六日附供述調書によれば司法警察員が岸ヤイより任意提出にかゝる毛糸丸首シヤツ一点(三の被害品)白色生地一ヤール三分(一一の被害品)を夫々山田義雄に提示したところ同人は自己の被害品であることを確認していること。

(七) 佐藤すいの司法警察員に対する昭和三十三年四月十八日附供述調書によれば同人の供述として一〇の被害品をその被害発生日頃たる昭和三十三年三月七日頃被告人より買い受けその後他へ転売した旨の記載(記録五十四丁裏)

以上の各証拠の内容を被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書の内容と対照検討するに、犯罪の日時、場所、被害者山田義雄方店舗内の状況、被害衣料品の品目、数量、品質、色彩、模様、被告人の被害品の処分状況等において符合一致し其の間に齟齬するところがなく、被告人の原審公判廷における自白は、前掲各証拠に補強支持せられ真実に適合するものであつて、仮空の供述ではないと認められる。換言すれば前記三、四、八、九、一〇、一一、一三の各公訴事実は被告人の自白及び前掲補強証拠によつて証明せられたものと謂わねばならない。されば原判決が右各公訴事実につき自白以外に之を認むべき証拠がないと判断し無罪の言渡をしたことは証拠の価値判断を誤つた結果事実を誤認したものであり、此の誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は全部破棄を免れない。論旨は理由がある。

(裁判長判事 山田義盛 判事 沢田哲夫 判事 辻三雄)

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