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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和58年(ラ)41号 決定 1984年9月01日

抗告人

田中哲次郎

抗告人

南増夫

右両名代理人

佐々木敬勝

西村元昭

玉城辰夫

主文

原決定を取消す。

本件更生計画を認可しない。

理由

一本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二よつて、先ず抗告理由三の(一)について判断する。

本件更生計画は、可決、認可に係る更生計画案第二章第三節ないし第五節によれば、会社の元役員である抗告人田中哲次郎(以下、抗告人田中という)の有する一般更生債権(担保権付より移行分を含む)元利金八五六万三〇五三円のうち貸付金分元利金一七五万一一〇六円(内残元金一三三万五六二九円)について全額免除を受けると定め、他の一般更生債権については元本及び利息損害金(更生手続開始後の利息損害金は除く)については全額を分割弁済する旨定めている(なお、更生手続開始後の利息損害金は全額免除)。右の定めは、会社更生法(以下、法という)二二九条但し書にあたる事由のない限り同条に違反するものである。そこで右事由の有無について検討する。本件記録(管財人当審提出の疎明資料を含む)によれば、抗告人田中は更生会社に関する福井地方裁判所昭和五三年(ミ)第一号会社更生事件(以下、前件更生事件という)において、申立当時の代表取締役として同裁判所に提出した更生計画案の修正条項中に、自己の有する一般更生債権のうち貸付金一五六万二四二九円(前記貸付残金一三三万五六二九円の当初元金)については全額を免除する旨定めていること、しかしながら、他方抗告人田中はその後前件更生事件において自己の提出した右更生計画案を取下げており、また抗告人田中の前記一七五万一一〇六円の貸付残元利金債権免除を定めた本件更生計画案についても原審裁判所に対し修正命令の申立をしていることが認められるから、抗告人田中が前件更生事件において、自己の有する一般更生債権のうち貸付金一五六万二四二九円につき免除する旨定めた更生計画案の修正案を提出した事実は、本件更生計画において、抗告人田中の有する前記債権金一七五万一一〇六円につき他の一般更生債権と異る差別を設ける事由にはならない。また本件記録によれば、抗告人田中は更生会社をして更生手続開始に至らしめたことにつき経営上の責任を有することは否定できないが、単に経営上の責任があるというだけでは、抗告人田中の前記債権につき前記差別を設ける事由にならないというべきである。更に、本件記録によれば、前件更生事件の更生計画案が認可されなかつたことにつき抗告人田中にも責任があることが認められるが、そのことにより違法に損害を蒙つた者は抗告人田中に対し損害賠償を求めれば足り、本件更生計画において、抗告人田中の前記債権につき全額免除をうける事由にはならないと考える。その他記録を検討しても、抗告人田中の前記債権と他の一般更生債権との間に前記差異を設けても衡平を害しない事由は認められないから、本件更生計画の前記定めは法二二九条に違反し違法であるというべきである。論旨は理由がある。

三次に、抗告理由三の(二)について判断する。

本件更生計画は、払込による新株を発行し、新株は元役員を除く更生担保権者に更生担保権の確定債権額にあん分した数量を割当てる旨定め、割当を受ける更生担保権者の中に申立外沢村株式会社(以下、沢村という)が含まれている。所論は、沢村の代表者である赤松稔は更生会社の元役員であるから、沢村に対する割当は元役員赤松稔に対する割当と同視すべきであり、したがつて沢村に新株を割当てながら、更生担保権者である抗告人田中に新株の割当をしないのは、法二二九条に違反し違法であると主張する。しかしながら、沢村とその代表者である赤松稔個人とは、人格が別個であるから、両者を同一視することはできない。したがつて、論旨は理由がない。

四次に、抗告理由三の(三)について判断する。

本件更生計画は、一般更生債権の確定債権(債権額五〇万円以下のもの及び更生会社の元役員の有する一部債権を除く)の元本債権については五回(年一回)の均等分割弁済とし、利息損害金については元本弁済後(六回目より)八回(年一回)の均等分割弁済とし、一般更生債権の更生手続開始後の利息損害金は全額免除をうけると定め、株主の権利については、本件更生計画認可決定時の株式二〇〇、〇〇〇株のうち五株につき一株を消却の方法によつて額面金額(一株当り五〇〇円)により有償減資する、この場合、五株に満たない端株については一株を右額面金額により有償減資する、減資払戻金は前件更生計画により支払済の減資補償金返還請求権(額面の一五%)と相殺し、残額(額面の五%)を認可決定後五ケ月以内に支払うと定めている。ところで法二二八条は、更生計画においては更生債権を株主の権利よりも保護すべき旨定めているところ、本件更生計画の前記更生債権の変更は、株主の権利の変更よりも明らかに不利であると認められるから、本件更生計画は右の点においても、前記法条に違反し違法であるというべきである。

五次に、抗告理由三の(四)について判断する。

抗告人らは、更生会社の財産価額の評定が会社の事業を継続するものとしてなされていないから、法一七七条二項に違反し違法である旨主張するが、右主張を認めるに足りる資料はない。

六そうすると、本件更生計画は前記二及び四の理由により法二三三条一項二号に違反し認可の要件を欠くものである。

よつて本件更生計画を認可した原決定は不当であるからこれを取消し、主文のとおり決定する。

(山内茂克 三浦伊佐雄 松村恒)

(別紙)

抗告の趣旨

原決定を取消す。

本件更正計画を認可しない。

との裁判を求める。

抗告の理由

一、福井地方裁判所は、昭和五七年(ミ)第一号事件につき、管財人が提出した別紙更正計画案に対し、昭和五八年九月三〇日更正計画認可の決定をなした。

二、抗告人田中は、更正担保権金三、五四三、三七六円、一般更正債権金六、八一一、九四七円及び金一、七五一、一〇六円を有し(残余届出債権については係争中)抗告人南増夫は一般更生債権金四、九〇七、六七二円を有するものである。

三、右認可決定は、左記事由により違法不当であり取消さるべきである。

(一) 計画案第三節2において「会社の元役員が有する下記債権については全額免除をうける」として抗告人田中哲次郎が有する一般更生債権金一、七五一、一〇六円の免除を決定した。

しかるに一般更生債権については元本及び利息損害金の全額弁済を決定しているのであるが、このことは一般更生債権につき全額弁済と全額免除という極端な差を設けているものであつて、会社更生法第二二九条に定める「更生計画の条項は、同じ性質の権利を有する者の間では平等でなければならない」という規定に反し違法である。

いわんや計画案第六章において、会社は抗告人田中に対し金一七、五九八、一八三円の損害賠償請求をなしているのであるが、万一右損害賠償が認められた場合、右免除にかかる一般更生債権との相殺ができず、抗告人としては一般更生債権者に比して極めて不平等な取扱いを受けることになり、会社更生法の規定に反することは明白である。

抗告人田中は免除の計画案に反対し、このような計画案は明白且つ違法なものであるとして福井地方裁判所に対し修正命令申立をなしたにも拘らず、一顧だにされなかつたのである。

従つて、右免除に関する計画案が修正されない限り計画案を容認することができないのである。

(二) 計画案第七章第二節において、払込による新株発行の割当方法として「更生担保権の確定債権額(元役員に対するものを除く)にあん分した数量を割当てる。別表一二の通り」として更生担保権者に新株を割当てた。

割当を受けた更生担保権者の中には申立外沢村株式会社(以下単に沢村という。)があるのであるが、沢村の代表者である赤松稔は更生会社の元役員である。従つて沢村に対する割当は、元役員に対する割当と同視すべきものであるから、沢村に割当てるのであれば、更生担保権者である抗告人田中に割当てない場合不平等な取扱いとなり、前記法条に違反し違法である。

(三) 調査委員の調査によれば、昭和五七年一二月一七日現在における会社の貸借対照表では、資本金一〇〇、〇〇〇、〇〇〇円のほかに剰余金六七、六五二、三二二円を有し、資本金を超える資産を有する会社である。(脚注の法人税還付請求額三六、〇八〇、一八二円を加えれば資本金に倍する資産を有する。)このように資産内容が優良である会社の更生計画において一般更生債権者の劣後的更生債権の免除という犠牲において(他方株主の権利を殆ど一〇〇パーセント確保されている)更生債権の弁済計画を認めることは会社更生の名の下に更生会社の利益のみはからんとするものであつて不当である。

会社更生法上株主の権利は債権者の権利より弱いものとして取扱われているのであるから、株主の権利を保護するのであれば、それと同等以上に一般更生債権者が保護さるべきは当然であつて、計画案第五節の劣後的更生債権全額の免除の計画は不平等というべきであり劣後的更生債権全額を弁済してこそ株主と対等の保護を受けたことになるのである。

更にまた、右のように優良な資産内容を有する会社において一般更生債権につき合計一三年にわたる分割弁済を決定しているが、右計画が不当であることについては一般更生債権者才原国治の上申書において主張しているところであるので左記のとおり援用する。

(1) 管財人調査報告書によると、前件更生計画の不認可決定により、更生債権の期日が一時に到来し支払不能の状態が発生したことにより、株主より更生手続開始の申立がなされたと述べられているが、同調査報告書に付された昭和五八年五月三一日現在の貸借対照表並びに調査委員の提出した調査報告書の財務諸表を検討したところ昭和五八年五月三一日手続開始時の資本余剰金一六三、八九〇、九七七円で財務比率も中小企業標準比率と比べ秀れており、とても会社更生手続開始を求めた会社の貸借対照表とは考えられない充実した財務内容である。

(2) 収益状況も良好であり同業他社の収益状況をはるかに上回つている。

(3) 更に管財人の調査報告によれば、設備の老朽化をあげ、設備更新の必要を述べられているが製造設備投資は前更生事件中に於て

第一九期  約一八〇〇万円

第二〇期  約四八〇〇万円

第二一期  約一二〇〇〇万円

が設備投資されている。

また、製造部門の修繕費は

第一九期  約一四〇〇万円

第二〇期  約四六〇〇万円

第二一期  約二七〇〇万円

が支出されている。

以上昭和五五年三月より昭和五七年一二月の三年の間に設備投資及び修繕費の合計額は約二億七千万円に上り、また昭和五七年に倉庫一棟を工場敷地内に建設、これの建築代金を加えると約三億円が三年間で設備の更新と保全にあてられており、設備の老朽化しているとは理解出来ない。

(4) 計画案によると固定資産取得として更に第二三期より五年間に三億二千万円を計上されているがこれは全額収益金により買入される計画になつている。

一方この期間五年間に一般更生債権者に対する弁済計画案額は金一〇七、六三八千円であり残額はその後八年間にわたり弁済するというものであり一般更生債権者にとつては実質弁済されるのは完済されるまでの期間金利を計上すると実質六割に満たないものであり、弁済より設備投資が優先されるこの計画にはとうてい承服しかねる。

この計画案は会社が新規設備金調達の自己努力を全くなさず、債権者にのみ負担をかけるものである。

これではあたかも会社更生法は会社にとり金利なしの長期資金借入方法としか私共一般更生債権者には考えられない。

(四) 調査委員の調査によれば財産の価額の評定がなされているが、この評定は会社更生法第一七七条第二項に定める「会社の事業を継続するものとして」はなされておらず、清算的評価を前提として価額を決定し、甚だ低額である。

従つて法の予定するとおり評価された場合、会社の資産価額は大幅に増額となり、更生計画、更生担保権の認定等が当然に変更されるのであるから、再度財産評定の上更生計画を建てるべきである。

《参考決定》―――――――――――

(名古屋高裁金沢支部昭五五(ラ)第一四号、更生計画認可決定に対する抗告事件、昭57.11.16決定、原審福井地裁昭五三(ミ)第一号)

抗告人 南増夫

右代理人 高木伸夫

寺内清視

抗告人 積水ハウス株式会社

右代表者 田鍋健

右代理人 清木尚芳

榊原正峰

山田俊介

〔主文〕

原決定を取消す。

本件更生計画を認可しない。

〔理由〕

一 抗告人らは「原決定を取消す。」との裁判を求めた。抗告人らの抗告理由は別紙(二)ないし(四)記載のとおりである。

二 よつて先ず、抗告人南増夫代理人高木伸夫、同寺内清視の抗告理由及び抗告人積水ハウス株式会社代理人清木尚芳、同榊原正峰、同山田俊介の抗告理由三について判断するに、本件会社更生事件記録、吉見正博、前川裕司、田中哲次郎、平谷昭吾作成名義の協定書(写)、当裁判所の吉見正博、田中哲次郎各審尋の結果によると、次の事実が認められる。

1 東洋染工株式会社の申立により昭和五三年一二月一五日右会社につき更生手続開始の決定がなされ、管財人に右会社の元代表取締役であつた吉見正博が選任され、次いで同年一二月二二日右会社の大口取引先である沢村株式会社第二事業部長前川裕司が管財人代理に選任された。

2 更生会社代表取締役田中哲次郎は、昭和五四年六月一五日更生計画案を、同年一〇月二五日管財人提出の更生計画案に対する上申書を、同一一月一〇日更生計画修正書を提出した。一方管財人吉見正博は同年八月三一日更生計画案を提出した。

3 管財人吉見正博、管財人代理前川裕司は田中哲次郎をして同人提出の前記更生計画案等を取下げさせるため、昭和五五年一月一二日ニツシャ・トランスプリンツ株式会社顧問平谷昭吾立会のもとに、田中哲次郎との間で、別紙(一)協定書記載の内容の合意をした。

4 右合意に基づき、田中哲次郎は同日、管財人の指名した沢村株式会社に自己所有の更生会社株式四四、五七一株を一株当り五〇〇円(額面額)、総額二二、二八五、五〇〇円で売却し、右会社から右代金と田中哲次郎個人保証債務弁済のための貸付金一〇、〇〇〇、〇〇〇円を受領するとともに、前記自己提出の更生計画案等を取下げた。次いで田中哲次郎は右貸付金をもつてセーレン株式会社から更生債権五、九三二、九八五円を、玉屋商店から更生債権一、七八七、一〇七円を、三谷商事株式会社から更生債権一二、五二三、七二三円を(いずれも田中哲次郎が保証債務を負つていた)買取り、これにより自己の保証債務を消滅させたうえ、右債権を沢村株式会社に譲渡して自己の同会社に対する前記貸付金債務の弁済にあて、右債務を消滅させた。

5 管財人吉見正博は同年一月一九日、同年二月二七日(二通)、同月二八日各更生計画部分修正書を提出し、同日の関係人集会において、管財人提出の修正後の更生計画案(以下、本件更生計画案という)は田中哲次郎も更生債権者として同意したうえ可決された。本件更生計画は、資本金一億円を一〇〇パーセント減資し、株主に対して減資補償金として額面の一五パーセントを支払うと定めている。

以上認定したところによれば、管財人吉見正博は沢村株式会社と共謀のうえ、更生会社の代表取締役であり、かつ大口株主である田中哲次郎に対し、更生計画の条件によらないで、別紙(一)記載の協定内容の如き特別の利益を与えることを約したので、田中哲次郎は同人提出の更生計画案を撤回したうえ、これらの事実を秘して、関係人集会において管財人提出の本件更生計画案に同意したものであり、本件更生計画案の可決は他の更生債権者、更生担保権者、株主らに秘して前記協定がなされたことによるものであると認めることができる。したがつて管財人は更生担保権者、更生債権者を欺罔して本件更生計画案を可決させたものというべきであるから、本件更生計画案決議は誠実、公正な方法でなされなかつたものであつて、会社更生法二三三条一項三号に違反し、本件更生計画は認可の要件を欠くものである。

三 よつてその余の抗告理由について判断するまでもなく、本件更生計画を認可した原決定は不当であるからこれを取消し、主文のとおり決定する。

(山内茂克 三浦伊佐雄 松村恒)

別紙(一)

協定書

東洋染工株式会社(以下会社と称する)の会社更生事件について、吉見正博、前川裕司(以下甲と称する)、田中哲次郎(以下乙と称する)は、平谷昭吾(以下丙と称する)の立合のもとに次の通り合意に達したので協定書を作成する。

1 甲は、乙が福井地方裁判所に提出した会社の更生事件にかかる更生計画案及びそれに関する意見書、上申書等の全てを取り下げ、全ての関係書類を甲に引渡すのと同時に下記(1)(2)(3)項を履行する。

又、更生計画認可時に下記(4)(5)を履行する。

(1) 乙所有の株式四四、五七一株を一株当り五〇〇円、総額二二、二八五、五〇〇円で甲の指名した者が買い取る。

但し代金の授受は立合人の手を通じて行う。

確定債権   更正計画による弁済法

セーレン株式会社   五、九三二、九八五   三、五七二、二八九

玉屋商店   一、七八七、一〇七   一、二五〇、九七五

三谷商事株式会社  一二、五二三、九二三   八、五八一、七五二

合計    二〇、二四三、八一五  一三、四〇五、〇一六

但し、昭和五五年三月末日迄に買取つた債権により担保の入れ換えをする。

(2) 甲が斡旋し沢村株式会社が乙に対し金一〇、〇〇〇、〇〇〇円を乙の個人保証債務弁済のための資金として次の条件のもとに貸付ける。

条件は次の通り定める。

(一) 用途 東洋染工株式会社更生債権買取り資金

(二) 金利 なし

(三) 担保の為に次の通り買取り債権を差入れる。

(四) 返済方法 乙が買取り、担保として沢村株式会社に差入れた会社の確定弁済金の中から一〇、〇〇〇、〇〇〇円を沢村(株)に譲渡する事により返済に当てる。但し譲渡する債権は管財人が提出した更生計画案による最終回の支払分から順次繰り上げて譲渡するものとし譲渡する確定弁済金は五五年三月末日迄に確定させる。

(3) 甲が福井地方裁判所に昭和五四年一〇月一二日提出した会社の更生事件にかかる上申書を取り下げる。

(4) 甲は乙が会社更生に協力した事を文書にて表明する。

(5) 更生計画認可後、会社申立代理人五味弁護士に会社はその労に対し適切な配慮をする。

(6) 乙が買取つた更生債権について、甲はこれを異議なく承認する。

2 乙が会社のために負担する次の連帯保証債務について次の通り取り扱う。

(1) 三谷商事株式会社、ニツシャ・トランスプリンツ株式会社、セーレン株式会社、株式会社福井相互銀行、積水ハウス株式会社、才原国治、小田照夫については、乙が解決する。

(2) 沢村株式会社、株式会社北陸銀行、株式会社寺西機械製作所、松浦株式会社、あおい商事株式会社、トナミ運輸株式会社については甲が責任をもつて処理をする。

(3) 中小企業金融公庫、福井県信用保証協会、福井信用金庫、株式会社大和銀行、丸紅株式会社、福井県労働金庫については甲、乙両者協力して処理をする。但し劣後的更生債権も含め本項に関し甲は乙に金銭的負担を負わせないよう努力する。

3 乙は甲に対し下記事項を履行する事を約す。

(1) 乙はその確定債権一、五六二、四二九円のうち会社が乙の県町民税過年度分として特別徴収し、納付すべき金二二六、八〇〇円を除くその残額一、三三五、六二九円を放棄する。

(2) 乙は、東洋染工株式会社の取締役の辞任届を提出する。

但し辞任の登記は当面留保する。

(3) 乙は会社再建と管財人が提出した更生計画案が認可される様に協力し何等の妨害等背信行為をしない。

(4) 甲乙双方は、本件協定成立を他人に洩らしたり、今日までの経過について言及しない。又、成立後は金銭の要求を含め何等一切の要求をしない。

(5) 乙は協同繊維株式会社名義の会社株式についての紛議に関しては甲及び会社並びに関係者とその相手方(黒川裕美、菅野善仲)双方に対し何等の関係をもたない。

4 丙は、この合意が丙の立会いのもとで成立したことを認め甲乙双方がこの条件を履行することを監視し、不履行を生じ又は生じる恐れのある場合は、協約を履行されるよう努力する。

以上

追、以上の協定は昭和五五年一月一二日に実行する。

昭和五五年一月一〇日

別紙(二)、(三)、(四)<省略>

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