大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和59年(う)77号 判決

1 論旨は要するに,被告人の本件所為は,本件ポーカー式遊技機を設置した中沢某に対する貸金70万円の回収を図るため,その売上金の半分を集金取得したに過ぎず,被告人は何ら自己の財物を睹けていないのであるから,自己の財物の喪失もなく,したがって,財物を睹することを構成要件とする睹博罪に該当しないのに,原判決が被告人を睹博罪に問擬したのは法令の適用を誤ったものであって,これが判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。

所論にかんがみ,記録を調査して検討すると,なるほど本件において被告人らが自らの財物を現実に提供していないことが認められるけれども,財物を睹するというためには財物の得喪を約束する行為があれば足り,必ずしも現に財物を醵出し,提供することを要しないと解すべきところ,本件ポーカー式遊技機の遊技方法は,まず,客が機械に1,000円札を投入すると,同遊技機盤上に100円を1点に換算した客の持ち点10点が表示され,次いで,客は機械を操作して,持ち点の範囲内で点数を掛け,盤面上に表示されるトランプで,トランプのポーカーゲームと同様の方法,すなわちカードの組み合わせによって役を作り,役ができて客が勝った場合は,役に応じた点数に掛け点を乗じて得た勝ち点を,1点を100円の割合で換算して営業者において現金を客に渡し,役ができなかったときは,客の負けとして,掛け点=金銭を喪うという方法で行われており,右機械の操作によって得られる役は全くの偶然によるものであって,機械が介在している点で典型的な睹博と異なる面があるものの,右のような方法によって営業者及び遊技機の設置者と客との間で金銭の得喪を争うことの了解のもとに,営業者らが遊技機を使用させ,客がこれで遊技をすれば,右所為が睹博に当たることは明らかである。

ところで,記録によれば,本件ポーカー式遊技機は,もともと被告人の属する暴力団北友会紺谷組杉岡興業の桜井及び中沢が,喫茶店「モア」の経営者である原審相被告人塩崎信二との間で,「儲けは折半する,機械の電気代は塩崎が負担する,儲けの集金は月1,2回とする,客が勝った場合は塩崎の方で立替払するか,ゲーム機の中の料金箱から払ってもよく,後日精算する」旨の約束で同店に設置して睹博を行わせていたものであるが,その後同人らが行方をくらましたため,昭和58年8月10日過ぎころから,被告人が中沢らの跡を継ぐという形で,右機械がいわゆる睹博ゲーム機であることを十分認識しつつ,中沢らと同じ条件で引き続き同店に右機械を設置し,約束に従い被告人において同店に毎月1,2回取得した睹金の集金に赴き,これをいずれも自己の遊興費等に費消したものであることが認められ,叙上の事実関係に徴すれば,被告人が自らの手で右機械を設置せず,またその処分権能を有するかどうかにかかわりなく,被告人は原審相被告人塩崎と共謀のうえ本件睹博を行ったものといわなければならない。

2 論旨は要するに,被告人は睹博罪の前科を有しないばかりでなく,睹博を好まず,また,本件ポーカー式遊技機は被告人が設置したものではなく,前記のとおり,中沢らが設置したものを引き継いで,同人への貸金回収の目的で本件所為に及んだにすぎないものであって,被告人には何ら睹博の常習性がないのに,原判決が被告人の所為に常習性を認めて常習睹博罪に問擬したのは事実を誤認し,ひいては法令の適用を誤ったものであって,これが判決に影響を及ぼすことが明らかである,というのである。

所論にかんがみ,記録を調査して検討すると,被告人は,本件ポーカー式遊技機が睹博の道具としての機能を有し,その性質上これによって客との間で自動的に睹博行為を反覆累行するものであることを十分に認識しながら,昭和58年8月中旬ころから,前記塩崎の店舗において,かねて前記中沢らが設置していた右遊技機によって,所在不明となった同人らにかわって,右塩崎との間で前示のように,同店の不特定多数の客を相手に睹博行為をなさしめ,これによって得た利益を折半する約束のもとに,昭和59年2月28日までの約6か月の長期にわたり,多数の睹客を相手として,多数回にわたり原判示の睹博行為を反覆累行し,その間被告人は,月1,2回程度右塩崎の店舗へ集金に赴いて相当多額の利益を得ていること等の事実に徴すれば,被告人には睹博を反覆累行する習癖が形成され,その発現として本件睹博をなしたものと認められ,被告人が自ら本件遊技機を設置しなかった点や被告人に睹博罪の前科のない事実はいずれも右の認定,判断を左右するものではない。

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