大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

和歌山地方裁判所 平成10年(わ)167号

本店の所在地

和歌山県有田市初島町里一二四六番地の一〇

法人の名称

紀乃国工業株式会社

代表者の住居

和歌山県有田市初島町里一二四六番地の一〇

代表者の氏名

代表取締役 谷畑高弘

本籍

和歌山県有田市初島町里一二四六番地の一〇

住居

右同所

会社役員

谷畑高弘

昭和三二年五月二三日生まれ

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官北英知、弁護人渡部一郎各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人紀乃国工業株式会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人谷畑高弘を懲役一年に処する。

被告人谷畑高弘に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人紀乃国工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、和歌山県有田市初島町里一二四六番地の一〇に本店を置き、レントゲン光線による配管、貯蔵タンクの破損部分検査業等を営むもの、被告人谷畑高弘は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括するものであるが、被告人谷畑高弘は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  平成六年三月一日から平成七年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が四二七七万四六〇九円で、これに対する法人税額が一五二八万〇二〇〇円であるにもかかわらず、架空外注費を計上するなどして、右事業年度の所得金額が三八四万四七六一円で、これに対する法人税額が一〇七万六三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、同年四月二五日、和歌山県有田郡湯浅町湯浅二四三〇の七六所在の所轄湯浅税務署において、同税務署長に対し、右確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右事業年度の法人税一四二〇万三九〇〇円を免れた

第二  平成七年三月一日から平成八年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が一億〇九三六万五四四三円で、これに対する法人税額が四〇二五万一八〇〇円であるにもかかわらず、前同様にして、右事業年度の所得金額が二七四万三七四二円で、これに対する法人税額が七六万八〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を作成し、その所得の一部を秘匿した上、同年四月二三日、前記湯浅税務署において、同税務署長に対し、右確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右事業年度の法人税三九四八万三八〇〇円を免れた

第三  平成八年三月一日から平成九年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七〇〇〇万九三六六円で、これに対する法人税額が二五四九万三三〇〇円であるにもかかわらず、前同様にして、右事業年度の欠損金額が四五三万五〇七二円で、納付すべき法人税額はない旨の内容虚偽の法人税確定申告書を作成し、その所得を秘匿した上、同年四月二八日、前記湯浅税務署において、同税務署長に対し、右確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、右事業年度の法人税二五四九万三三〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目-かっこ内は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠の甲乙の番号である。)

判示事実全部について

一  被告会社代表者兼被告人谷畑高弘の当公判廷における供述

一  被告会社代表者兼被告人谷畑高弘の検察官に対する供述調書(乙一)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲一、三、五、七ないし一三、一五)及び報告書(甲二一)

一  登記簿謄本(乙三)

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲二)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲六、一四)及び「証明書」と題する書面(甲一八)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲一六)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の「証明書」と題する書面(甲一九)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(甲四、一七)及び「証明書」と題する書面(甲二〇)

(法令の適用)

罰条

被告人谷畑につき いずれも平成一〇年法律第二四号附則一二条により、同法による改正前の法人税法一五九条一項

被告会社につき いずれも法人税法一六四条一項、平成一〇年法律第二四号附則一二条により、同法による改正前の法人税法一五九条一項、二項(情状による。)

刑種の選択 被告人谷畑につき懲役刑を選択

併合罪の処理

被告人谷畑につき 平成七年法律第九一号(以下「新法」という。)附則二条二項により刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

被告人会社につき 新法附則二条二項により刑法四五条前段、四八条二項

刑の執行猶予 被告人谷畑につき新法附則二条二項、三項により刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、配管の破損部分検査などを業とする被告会社の代表者である被告人谷畑が、三事業年度にわたって同会社の法人税を脱税したという事案である。

被告人谷畑は、平成六年に父親が亡くなったことから、同年八月に被告会社の代表取締役社長に就任したが、将来、子ども達のために資産を残してやろうと考えたことや、税金の使途に納得がいかず、一生懸命働いて稼いだ金を税金として取られたくないという思いなどから、社長に就任したころより架空の領収書を作成するなどして架空の外注費を計上するようになり、これにより所得を隠蔽して確定申告を行い、本件各犯行に及んだもので、自己中心的かつ利欲目的の犯行動機に特段酌むべき点は認められない。犯行態様は、知人に手数料を支払って架空の領収書を発行してもらい、架空の外注費を計上してその金額を被告人谷畑個人名義あるいは母親名義の口座に預け入れることによって所得を隠蔽した上、内容虚偽の申告書を作成して提出するというものであるところ、本件による脱税額は三事業年度分の合計で約七九〇〇万円と少なくない上、脱税率も三事業年度分の通算で九七・七パーセントと極めて高率であり、以上によれば、犯情は悪質である。

他方、本件における所得秘匿の手段はさして巧妙なものではなく、被告人谷畑は、国税局の査察を受けるや、素直に事実を認め、調査にも協力していること、脱税した金額については、修正申告の上、本税、延滞税、重加算税のほとんどを納付済みであること、被告人谷畑は本件を深く反省し、今後二度とこのような脱税行為はしない旨誓うとともに、税理士を頼むなどして、今後、二度と脱税をすることのないような手段を講じていること、妻と二人の子どもがあり、これまでに前科はなく、本件を別にすれば仕事も真面目にしていたこと、などの被告人らのために酌むべき事情も認められるので、被告会社を罰金二〇〇〇万円、被告人谷畑を懲役一年に処するとともに、右懲役刑については刑の執行を猶予するのを相当を認めた。

(検察官の科刑意見 被告会社に対して罰金二五〇〇万円、被告人谷畑に対して懲役一年)

(裁判官 柴山智)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!