和歌山地方裁判所 昭和45年(ワ)425号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告配送は、同社所有の加害車に被告近鉄の店名のマークをつけて、同社の荷物を専属的に配送しているものであることは、当事者に争いのないところ、この争いのない事実と<証拠>の結果を綜合すれば、
(一) 被告配送は、自動車七台を保有し、これに全部被告近鉄の店名マークをつけて、同社の依頼に基づき、同社の顧客の購入した商品をその指図先まで個別に配達することを主たる業務としているものであつて、同社の配達を一手に引受けており、同社以外からの依頼による運送業務は行つていない。
(二) 被告配送の本店所在地には、女事務員一名が常駐する事務所があるのみで、被告近鉄が二階を従業員寮としている建物の階下を同社より借受け(ただし、賃料の支払はない)、同所に車輛を常駐させ、従業員を同所に出勤させて同所を作業場として現実の配送業務を行つている。
(三) 配送依頼の商品は、被告近鉄から、右の作業場まで届けられ、被告配送の従業員の責任において、配達区域別に仕分けし、各地区担当者運転手がそれぞれ配達する仕組みになつている。区域外の遠距離の配達依頼は、さらに別の運送業者に下請けさせている。
(四) 被告配送において配達業務に使用する車輛は全て同社の所有であり、これを運転して配達業務に従事する従業員も全て同社に雇傭されている者である。
(五) 被告配送は、その資本面、人事面においては、被告近鉄とは何らの関係を有せず、独自の経営を行つており、運転手の雇傭、自動車の運行の指揮、監督も独自に行つている。
以上の事実が認められ、右事実によれば、被告配送の行なう運送事業は、被告近鉄の営業とは別個の独立した事業活動であることは明らかであるが、しかし、被告近鉄に専属するものであつて、他からの運送委託は引受けないのでありしたがつて、その存立の基礎はすべて同社からの運送依頼とそれに基づく運送賃収入のみに依存するものであり、事業活動の実際においても、同社の使用する建物の一部を無償使用することを許されて同所に車輛全部を常駐させ、ここを営業活動の本拠としているものであり、しかも、車輛の全部に同社の店名マークを表示しているのであるから、被告配送の行なう運送業務は、その実質において、被告近鉄が顧客に対する商品配達部門を独立採算制によつて運営しているに等しい関係にあるといえる。したがつて、被告近鉄もまた、被告配送の行なう運送事業のための自動車の運行を支配しこれにより利益をえているものというべきであつて、自賠法三条による運行供用者責任を免れることはできない。 (全沢英一)