和歌山地方裁判所 昭和63年(行ウ)9号 判決 1998年12月25日
和歌山県有田郡湯浅町吉川五六一番地
亡勘佐藤夫訴訟承継人A事件原告兼B事件原告
勘佐繁夫
同所
亡勘佐藤夫訴訟承継人A事件原告
勘佐竹子
和歌山県有田郡吉備町大字明王寺二九一番地
亡勘佐藤夫訴訟承継人A事件原告
江川伸弘
右三名訴訟代理人弁護士
上野正紀
由良登信
小野原聡史
和歌山県有田郡湯浅町湯浅二四三〇―七六
A・B両事件被告
湯浅税務署長 加用俊栄
右指定代理人
関述之
長田義博
山本弘
三田村義信
田村学
小坂雄二
福本光記
足立孝和
安田英生
主文
一 被告が、昭和六二年六月一一日付でした亡勘佐藤夫の昭和六〇年分の所得税についての更正処分(ただし、昭和六二年九月二五日付異議決定で一部取消後のもの)のうち、総所得金額が金七二八万八七八五円を超える部分及びこれに対応する過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。
二 原告らのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五〇分し、その一を被告のその余を原告らの各負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 A事件
被告が、昭和六二年六月一一日付で亡勘佐藤夫(以下便宜的に「A原告」という。)に対してした次の各処分を取消す。
1 昭和五九年度分の所得税の更正処分(ただし、昭和六二年九月二五日付異議決定で一部取消後のもの)のうち、総所得金額が金四二万五七八〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分。
2 昭和六〇年度分の所得税の更正処分(ただし、昭和六二年九月二五日付異議決定で一部取消後のもの)のうち、総所得金額が金四三万八〇五四円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分。
二 B事件
被告が、昭和六二年六月一一日付でB事件原告(以下「B原告」という。)に対してした昭和六一年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取消す。
第二事案の概要
本件は、蜜柑生産農家であるA、B原告(以下「原告ら」と呼ぶこともある。なお、両名は、親子である。)が、被告から、昭和五九年分以降同六一年分までの所得税確定申告が過少だとして更正処分等を受けたのに対し、その処分等の取消を求めた事案である。
一 前提事実(争いのない事実及び当裁判所に顕著な事実)
1 原告らは、和歌山県有田郡湯浅町で、蜜柑の生産等を行っている農家であり、いわゆる白色申告者である。
2(一) A原告は、昭和五九年度分、昭和六〇年度分の所得税に関し、別紙1「確定申告」欄記載のとおりの確定申告をしたが、被告において、事業所得金額を否認し、同別紙「更正処分」欄記載のとおりの更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を行った(以下、右更正処分を「本件A更正処分」といい、右過少申告加算税の賦課決定処分を「本件A賦課処分」といい、これらを合わせて「本件A各処分」という。)。
(二) B原告は、昭和六一年度分の所得税に関し、別紙2「確定申告」欄記載のとおりの確定申告をなしたが、被告において、事業所得金額を否認して、同別紙「更正処分」欄記載のとおりの更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分をした(以下、右更正処分を「本件B更正処分」といい、右過少申告加算税の賦課決定処分を「本件B賦課処分」といい、これらを合わせて「本件B各処分」という。また、本件A更正処分と本件B更正処分を合わせて「本件各更正処分」と、「本件A賦課処分」と「本件B賦課処分」を合わせて「本件各賦課処分」と、「本件A各処分」と「本件B各処分」を合わせて「本件各処分」という。)。
3 原告らは、本件各更正処分につき、それぞれ被告に対し異議申立てをしたところ、別紙1、2記載のとおり、本件A更正処分については一部認容の、本件B更正処分については棄却の異議決定を受けた。
原告らは、更に国税不服審判所長に審査請求したが、別紙1、2記載のとおり、棄却の裁決を受けた。
4 原告らは、右裁決を受けた後、適法な期間内に本件各訴訟を提起したが、A原告は本件訴訟係属中の平成元年一一月二五日死亡し、A事件の原告の地位を、同人の相続人である勘佐繁夫(B原告)と勘佐竹子及び江川伸弘が承継した。
二 当事者の主張の要旨(A・B事件とも)
(被告の主張の要旨)
1 本件各賦課処分の取消しを求める訴は、審査請求前置主義との関係で不適法である。
2(一) 原告ら本件各係争年分の総所得金額は、別紙3(A原告)、別紙4(B原告)のとおりであり、その金額の範囲内でなされた本件各処分は適法である。
(二) 事業所得の金額は、原告らが税務調査に協力的でない等のため、その実額把握はできなかったので、推計課税を行わざるを得なった。すなわち、原告らの出荷先の反面調査により把握した本件各係争年度の収入金額(A原告につき別紙3<1>欄、別紙5、B原告につき別紙4<1>欄、別紙6)に、同業者の平均算出所得率(A原告につき別紙3<2>欄、B原告につき別紙4<2>欄)を乗じて特別経費控除前の算出所得金額(A原告につき別紙3<3>欄、B原告につき別紙4<3>欄)を算出した。
ところで、右平均算出所得率は、抽出した複数の同業者の収入から一般経費(必要経費から、建物減価償却費、利子割引料、地代家賃、貸倒損失、税理士報酬、固定資産等の除去損の特別経費を除いたもの)を控除し、算出所得金額を出したうえ、収入金額と算出所得金額の比率を求め、これを平均化したものである(別紙7、8)。
そして、算出所得金額から、特別経費の額(別紙3、4の各<4>欄)、事業専従者控除(別紙3の<5>欄)を差し引いて事業所得の金額(別紙3の<6>欄、別紙4の<5>欄)を算出した。
(原告らの主張の要旨)
1 被告の主張要旨1について
本件各賦課処分は、本件各更正処分で算出された税額に五パーセントを乗じることにより自動的に決まるものであり、本件各更正処分が取消されれば、本件各賦課処分も課税根拠を失い当然取消されることになる。したがって、原告らが行った本件各更正処分に対する異議には、本件各賦課処分に対する異議を当然内包しているのであって、被告の主張は失当である。
2 被告の主張要旨2について
(一) 本件各処分は、推計課税の必要性も、合理性もなく行われ、しかも本件各処分に際し行った税務調査(以下「本件税務調査」という。)も違法であるから、本件各処分は取り消されるべきである。
(二) 本件係争年分のA原告の事業所得の実額は別紙9のとおりであり、B原告のそれは別紙10記載のとおりである。
したがって、本件各処分は、原告らの事業所得金額の認定を誤った違法があり、取り消されるべきである。
三 争点
1 本件各賦課処分の取消しを求める訴の適法性(争点一)
2 推計課税の必要性、本件税務調査の違法性(争点二)。
3 推計課税の合理性。
(一) 推計過程(推計方法)の合理性(争点三)。
(二) 推計された所得金額の合理性(原告らによるいわゆる実額反証が成功しているか。)(争点四)。
4 特別経費の額(争点五)。
四 争点二(推計課税の必要性、本件税務調査の違法性)についての当事者の主張
(被告の主張)
本件各処分に至る経緯は、以下のとおりである。これによれば、推計の必要性が認められるし、被告部下職員が行った調査に何等違法な点は存しない。
1(一) 被告部下職員は、原告らの本件各係争年度分の所得調査のため、昭和六二年四月二七日以降、同年五月二九日まで、前後六回にわたって、原告らの自宅に赴き、原告らに帳簿書類の呈示等をして調査に協力するよう求めた。特に、同年四月三〇日の面談の際には、それまで、B原告が、被告側の調査協力の要請に対し、「近いうちに連絡する。」と答えるだけで要領を得なかったため、「五月六日までに連絡して欲しい。連絡がなければ、反面調査をせざるを得ない。」旨告知している。さらに、被告部下職員は、このほか昭和六二年五月二八日、電話で調査協力を依頼したり、翌二九日、重ねて原告ら方を訪ね、あるいは、翌日、被告税務署を訪れたB原告に対し、反面調査で把握した調査金額を説明して、調査協力を要請する等している。
(二) 原告らは、被告部下職員の調査協力依頼に対し、「帳簿類は、民商(民主商工会のこと、以下同様)に相談してからでないと出してはいかんと言われている。」、「相談せんといかんから近いうちに連絡する。」、「近いうちや。」などと答えて、先延ばしするだけで、具体的日時を答えず、調査に協力しなかった。そして、最終的に、「更正決定するかどうか、そっちが決めることやろ。勝手にせえ。」、「裁判でしか帳面はださんよ。」などといって右要請を拒否した。
(三) そこで、被告は、やむを得ず反面調査で把握できた原告らの収入金額を基礎に、推計による本件各処分を行った。
2 原告らに所得調査に応じる意思のなかったことは、原告らの前記態度に加え、B原告が、「調査理由を開示すれば帳簿書類を見せる。」と述べたり、被告税務署を訪ねて調査に対する抗議をしたこと、さらには、原告らに調査が行われていた昭和六二年五月一九日、B原告の所属する有田民商(有田民主商工会のこと)の会員多数が、被告税務署前で抗議集会を開催していること等から明らかである。
3 被告は、このように、原告らに税務調査に協力する姿勢が見られず、帳簿書類を閲覧・検討することもできなかったため、やむを得ず推計による本件各処分を行ったものである。したがって、推計の必要性があったことが明らかである。
4 原告らは、後記のとおり、本件税務調査は、調査の必要性等がないのに行われた違法なものだと主張するが、以下に述べるように、本件調査には、何等違法は存しない。
(一) 所得税法は、調査の必要がある場合、税務職員が質問検査権を行使することを認めている。右「調査の必要」とは、過少申告の疑いがある場合は勿論、申告の真実性・正確性を確認する必要のある場合をも含むものである。本件では、原告らの確定申告書の収入金額欄・必要経費欄に数額の記載があるものの、所得金額の算出過程を明らかにする収支内訳書等が添付されておらず、所得算出の過程が不明であるし、昭和五九・六〇年度と昭和六一年度では、確定申告の名義人が異なっているので、申告の真実性・正確性を確認する必要があった。
(二) ところで、質問検査権の行使に当たり、法に定めのない実施の細目は、それが社会通念上相当な限度に止まる限り、実際に質問検査権の行使に当たる税務職員の合理的な裁量に委ねられている。したがって、<1>調査日時を事前に通知するか否か、<2>調査理由を告知するかどうかといった点は、税務職員の合理的裁量に委ねられており、これを告知しなかったからといって、違法の問題は生じない。
(三) さらに、反面調査の時期・範囲・程度等も、調査を行う税務職員の合理的裁量に委ねられている。したがって、納税者の事前承諾がある場合や、納税者自身に対する調査が不可能な場合だけに反面調査が許されると解すべき根拠はない。本件で、反面調査をしたのは、前述のとおり調査に対する協力が得られなかったからであり、このような場合に、納税者の事前承諾なしに反面調査ができないとすれば、租税債権の確保・租税負担の公平等の要請の実現が不可能となることが明らかである。したがって、この点でも何等違法はない。
5 仮に、百歩譲って、本件調査手続に違法な点があったとしても、調査の違法は、課税処分の効力に何等影響を与えない。なぜなら、国税通則法二四条、所得税法二三四条ないし二三六条で規定された調査手続は、課税庁が課税要件の内容をなす具体的事実の存否を調査するための手続にすぎず、右調査手続自体が課税要件となる訳ではないからである。また、更正処分等の取消訴訟は、客観的な所得の存否を争う訴訟であるから、違法な調査手続によって収集された資料に基づき右更正処分等がなされたとしても、それが客観的な所得金額に合致するものである以上、課税処分の効力を左右するものではない。もっとも、調査手続の違法の程度が刑罰法規に触れたり、公序良俗に反するような場合には、収集された資料を課税処分の資料として用いることができず、課税処分が違法として取消されることがあり得る。しかし、本件調査には、刑罰法規に触れたり、公序良俗に反した違法のないことは明らかである。
(原告らの主張)
1 原告らに対する税務調査は、有田民商会員だけを狙い撃ち、推計課税の口実をもうけるために、大量かつ集中的に行われたもので、税務調査とは名ばかりの形式的なものであり、推計の必要性を根拠づけるものではない。その理由は、以下のとおりである。
(一) 原告らの調査を担当したのは、湯浅税務署職員並びに他署から期間を限って派遣された者達であった。同人らは、わずか二ヵ月間で、一人当たり約一〇件もの調査を終えなければならなかった。しかし、まともに調査をすれば、短期間にこのように大量処理を行うことなど不可能である。そこで、同人らは、当初から、実額把握の意図などなく、税務調査の外形だけを整えて、推計課税を可能にするため、農家の特に忙しい時期に原告らの家を訪問し、調査理由を説明しないまま資料提供を要求し、原告らが、これに直ちに応じないと税務調査を拒否したものとみなして、所得を推計して更正処分を行った。右経過だけからみても、被告部下職員が行った税務調査が形式的なもので、「推計の必要性」が認められないことが明らかである。
(二) 被告は、原告らが具体的な調査理由の開示を求めたことを捉えて、調査拒否があった旨主張する。しかし、所得税は主権者である納税者の申告により確定する。申告内容について、任意調査を求められた場合、調査理由の説明を求め、その理由が正当かどうかが判断できなければ、任意調査に応ずべきかどうかも判断できない。したがって、調査理由を聞き、それに調査員が答えるよう求め続けることは、納税者の当然の権利であり、だからといって、「推計の必要性」を根拠付ける調査拒否には当たらない。
(三) サンフルーツの荷造りに忙しい多忙期に、事前連絡もなく訪問を受ければ、後に協力するから待って欲しい旨要請するのは当然である。被告においても、調査時点では、時効まで、なお、二、三年の時間的余裕があったのだから、調査スケジュールのみを優先させるので無い限り、一ヵ月しか待てないなどということは考えられない。したがって、忙しくなくなってから連絡するといったまま、二ないし三週間程度連絡がないからといって、「推計の必要性」を根拠付けることにはならない。
2 また、本件税務調査には、次のような背景事情がある。
(一) 被告は、これまで管内の農家に対し、毛見方式(地区役員が田畑の位置や土質等を参考に田畑の等級(数値)を決め、これに面積を掛けて売上を算出し、右売上に税務署が決めた経費率を掛けて経費を出して、所得を算出するというもの。)や、経費率方式(実際の売上高に前記経費率を掛けてこれを控除し、所得を算出するというもの。)に基づく課税を行ってきた。
(二) このような課税の仕方は、封建時代の名残ともいうべき不合理なもので、これを悪用する「えせ同和」団体なども出てきて、市民の批判を浴びるところとなった。
(三) 原告らは、このような状況のもとで、有田民商のメンバー数十名と一緒に、申告納税制度の趣旨に沿った、正当な申告を行った。
(四) ところが、被告は、「えせ同和」団体等が行う不正な納税への市民の批判をかわし、かつ、税務当局の意向に沿わず、自主申告を行う有田民商を弾圧するため、税務調査の具体的必要性などないのに、推計課税の口実をもうける目的だけから、形式だけの調査を行い、前記のように調査拒否の事実などないのに、原告らが調査を拒否したとして反面調査を行い、推計を行った。
3 A原告は、昭和五八年に昭和五七年度分の申告の更正請求をなした。その際、被告は、これを承認し、税金の還付を行った。その更正請求の内容は、通帳から、売上を把握し、必要経費は、通帳と小切手の半片から、減価償却費は、記憶等をもとに計上したところ、その大半が認められたものであった。
原告らは、右更正請求が認められたため、昭和五八年度から昭和六一年度までの申告において、収入・経費を、右更正請求と同様の方法で計算した。
このように被告の見解を信頼して、その信頼に基づき行動している原告らに対し、突然(何等の指導もなく)、これと異なる方式で本件各処分をすることは、信義則に反して許されないし、そもそも推計の必要性そのものが存しない。
4 以上のとおり、本件税務調査は、その目的において、不法であるうえ、そのやり方も極めて形式的で、およそ、税務調査とはいえないようなものである。また、原告らは、前記のとおり、税務調査を拒否していない。したがって、右いずれの観点から考えても、本件では、「推計の必要性」を肯定することができず、本件各処分は違法である。
五 争点三(推計過程の合理性)についての当事者の主張
(被告の主張)
被告は、被告の主張の要旨で述べたとおり、特別経費控除前の事業所得金額を算出するに当たり、実際の収入金額に平均算出所得率を乗じるという推計の方法によったが、その推計過程に合理性があることは次のとおりである。
1 収入金額
被告が、反面調査から把握した取引先別明細は、昭和五九・六〇年分については、別紙5の各年分の取引先別に記載したとおりであり、昭和六一年分については、別紙6に記載したとおりである。したがって、原告らの昭和五九・六〇年分の収入(A原告)は、別紙3の収入金額欄(<1>)に、昭和六一年分の収入(B原告)は、別紙4の収入金額欄へ<1>)に記載された金額を下回ることはない。
2 平均算出所得率
(一) 推計の基礎となる同業者の選定
被告は、同業者の選定に当り、大阪国税局長が発した一般通達に基づき、被告の管内において所得税の確定申告書を提出している農業を営む個人(主として蜜柑を生産する者に限る。)のうち、次の六項目全てを満たす者を抽出した。
(1) 青色申告者であること。
(2) 個人または出荷組合を通じて出荷しているものであること。
(3) 蜜柑(雑柑を含む。)販売に係る収入金額が、昭和五九年分は、七九〇万円以上二三九〇万円未満、昭和六〇年分については、一一〇〇万円以上三三二〇万円未満であること、昭和六一年分については、一〇〇〇万円以上三〇一〇万円であること(右収入金額は、被告が把握し得た原告らの本件各係争年分の収入金額をもとに、上限を約一・五倍、下限を約〇・五倍としたものである。)。
(4) 年間を通じて事業を継続して営んでいること。
(5) 他の業種目を兼業していないこと。
(6) 対象年分の所得税について、不服申立てまたは訴訟が係属していないこと。
(二) 以上の基準で抽出された同業者は、原告らと生産形態・規模・立地条件が類似するものである。そして、帳簿書類が整い申告の正確性が担保された青色申告者であるので、算出された数字は正確である。しかも、その抽出は、大阪国税局長の通達に基づき機械的に行われたものだから、右過程に被告の恣意が入り込む余地はない。また、抽出された同業者は、昭和五九年分で一三件、昭和六〇年分で九件、昭和六一年分で八件に及んでおり、右各年分の平均算出所得率は、正確性と普遍性を担保されたものである。
したがって、被告が、原告らの事業所得を算出するに当って用いた推計は、原告らの所得を算出するうえで合理的なものである。
(三) 原告らは、被告が採用した推計方法は、耕作地の立地条件や、植付品種・樹齢等から収入や経費率に大きな差を生じる農業の特性を無視しており、合理的でない旨主張している。しかし、右主張は、以下の通り理由がない。
(1) 同業者比率による推計は、対象納税者と類似性のある同業者を選定して、その平均値に基づき対象納税者の所得金額等を推計しようとするものであるが、その資料となる業者それぞれに、事業内容や業態の差があることは当然の前提である。
(2) しかし、これらを平均化することによって、同業者間に通常存在する個別・具体的な事情は捨象され、客観性・普遍性を持つことになる。
(3) 原告らが、推計の合理性を覆そうとする場合、原告らにおいて、右平均値に吸収しきれない、劣悪な特殊条件の存在を立証する必要があるが、原告らは、右特殊条件を立証していない。したがって、被告が行った推計の合理性に疑問を生じる余地はない。
(原告らの主張)
1 推計課税は、所得の実額を把握する直接資料がない場合に、やむを得ず、間接資料から、所得を推計しようとするものである。したがって、推計の方法は、実際の所得に最も近似した数値を算出し得る合理的なものでなければならない。
2 ところが、被告の主張する同業者比率は、昭和六一年分をみれば、抽出された八業者の所得率が三五・七四パーセントから五四・二五パーセントと大きなばらつきがあり、その格差は、一八・五一パーセントに及んでいる。右ばらつきは、立地条件や植付品種・樹齢等で、収入や経費率に大きな差を生じる農業といった特殊な分野に同業者比率法を用いる不合理さを示している。
3 農業といった個別性の強い特殊な事業者の所得を推計しようとする場合、最も合理的な方法は、「本人比率」方式を採ることである。この方式は、当該納税者本人の一定期間の実績を基に所得を推計するものだから、実際の所得に最も近似した数値を算出することができる。
4 ところで、推計方法が二方法以上ある場合には、より直接資料に近いものを基礎に推計すべきであるが、この点に差異がみられない場合には、得られた数値のうちより低いものを採用すべきである。
5 前記争点二に関する原告らの主張3に述べたとおり、A原告は、昭和五八年に昭和五七年分の申告の更正請求をなした。その際、被告は、これを承認し、税金の還付を行った。また、昭和五八年分の所得税についても右更正請求と同様の方法で計算して申告した。
したがって、被告によって承認済みの昭和五七年分の更正後の所得率及び翌年度の申告内容の所得率から、実際の所得に近似した本件各係争年分の所得を推計することが可能である。
6 このように、本件では、「本人比率」方式を採ることによって、実際の所得に近似した所得を把握することが可能であるから、これよりも誤差の大きい同業者比率に上る推計方法を採ることは、不合理であり、採用することが許されない。
六 争点四(原告らの実額反証)について
(原告らの主張)
1 原告らの本件各係争年分の事業所得の実額は、別紙9・10のそれぞれ<7>欄に記載したとおり、昭和五九・六〇年分(A原告)については、九〇万〇四二六円あるいは四一四万二五二六円の所得が生じ、昭和六一年分(B原告)については、四九一万三五五五円の赤字が生じている。そして、収入及び経費の内訳は、同別紙の各項目に記載したとおりであるが、その算出根拠は以下のとおりである。
(一) 収入について
本件各年分の収入は、別紙9・10の売上金額欄(<1>)及び家事消費欄(<2>)に記載したとおりであり、その合計は合計金額欄(<3>)のとおりである。
これらの金額は、送り状・出荷台帳・預金通帳などから把握したものである。
右金額には、運賃及びダンボール箱代が含まれているので、これらは、経費として計上した。
(二) 経費について
別紙9・10の必要経費欄に記載したとおりである。これらの中には一部裏付け資料のないものがあるが、いずれも実際に支出されたものである。
そして、右経費の項目並びにその内訳は、別紙11の1ないし24頁の各科目毎の「原告主張額」欄に記載したとおりである。
2 なお、被告は、原告らが所得実額を立証すべきである旨主張するが、課税標準である所得の立証責任は、あくまで、課税庁が負うべきである。したがって、原告らに収入・経費の実額立証を要求することなど許されない。
(被告の主張)
1(一) 推計により算出される所得金額は、真実の所得金額に近似した金額に過ぎないが、前記のように推計課税の要件を満たす場合、真実の所得金額に代わって、これを基礎に課税することを法が許容している。
(二) したがって、実額主張が、本来の優位性をもって推計の適法性を覆すためは、右主張・立証が、完全なものでなければならない。
(三) ところで、所得税法は、「事業所得金額」とは、総収入金額から「必要経費」を控除した金額だと定義する一方、「必要経費」については、総収入金額を得るために、直接要した費用、及び、販売費・一般管理費、その他、右収入を生ずるのに要した費用だと定義している。
(四) 右所得税法の定義によれば、原告らが所得金額を実額で立証しようとする場合、<1>売上金額が売上のすべてを含んだ総収入金額であること、<2>経費が、右総収入金額を得るため、直接要した費用(直接費用)、あるいは、業務遂行上、通常必要な支出であること(間接費用)、以上二点についての立証が尽くされない限り、所得金額を実額で算定することは許されない。
(五) したがって、原告らが、実額反証によって、被告のなした本件課税処分について所得金額の推計を覆そうとする場合、総収入金額を主張・立証した上で、それぞれの経費について、直接費用については、収入金額との個別対応の事実を、間接費用については、期間対応の事実をそれぞれ立証することが必要となる。
(六) 要するに、原告らが実額反証を行おうとする場合、売上金額及び必要経費を断片的な取引資料や領収書等で主張するだけでは足りず、すべての取引事実を記載した帳簿書類及びその裏付けとなるべき原始記録をすべて提出して、その主張する実額が真実の所得金額に合致することを合理的疑いを入れない程度に立証しなければならない。
2 原告らの実額主張の問題点
(一) 収入についての問題点
原告らの主張する金額は、被告が種々の制約の下、反面調査により把握した金額を、追認したものに過ぎず、全取引に関する取引資料並びに帳簿が提出されていない以上、これらが、真実の収入に合致しているとは考え難い。さらに、次の点を問題点として指摘できる。
(1) 原告らの主張している収入金額(自家消費分を除くもの。)が、収入金額の全てを網羅しているとは、以下の理由から、考えられない。
<1> 原告らは、「仕切書」及び「送状」を基に収入金額の主張をしているが、右「送状」には金額の記載がなく、また、「仕切書」は、原告らの主張の一部について提出されているに過ぎないから、原告らの収入金額のすべてを網羅的に立証できているとはいえない。
<2> 原告らが提出した取引口座の中には、原告らが自認している以外の入金が認められる。これらの点を、被告が指摘したところ、原告らは、その大半が収入漏れだと認めている。右事実から考えれば、他にも収入に漏れがあると考える方が、自然である。
(2) 原告らは、被告から自家消費分が抜けているのは不自然だと指摘され、毎年一万円程度である旨主張している。しかし、法(所得税法三九条)は、自家消費をした場合、その商品や製品の通常の販売価額を総収入金額に算入する旨規定しており、右主張のみから、原告らの主張を認めることはできない。
(二) 必要経費に関する問題点
(1) 原告らは、本件各係争年分の必要経費を各科目毎に主張している。しかし、右主張には、別紙11で各年度別に各科目毎に「問題点等」の欄で指摘した問題、(種苗費)・(肥料費)・(農薬費)については、これに加え、「共通の問題点」で指摘したとおりの問題がある。要するに、これら経費には証拠書類が部分的に提出されているだけで、使途が明らかでなく事業上の経費かどうか不明なもの、明らかに家事費であるものなどが含まれており、原告ら主張の経費金額を実額と認めることなど到底できない。
(2) なお、原告らは、蜜柑樹等の減価償却の計算において、取得額について、記憶や農林水産省農林統計局の基準をもとにしている。しかし、法令は、減価償却費を算定する前提として、当該資産の取得年月日や取得価額が明らかであることを要求しており、固定資産の評価標準額に過ぎない前記農林水産省の基準や原告らの曖昧な記憶でこれに代用させることはできない。
(三) 支出から推計される原告らの事業所得
事業者が、その年度に支出した総支出金額のうち、家族の収入や借入金額によって支払われたもの以外は、事業の利益によって支払われたものだと推認することができる。したがって、総支出金額から家族の収入及び負債の増加額を差引いた残額が事業所得ということになる。右前提のもと、原告らの総支出金額から負債の増加額を控除すると別紙12記載のとおり、昭和五九年は四五四万一四六七円、昭和六〇年は一〇六〇万四四〇三円、昭和六一年は五七九万〇六〇六円となるので、少なくとも、右各年度にこれら金額の事業所得があったものと推認され、原告ら主張の所得金額が、甚だ不合理であることが明らかである。しかも、原告らは、この外にも、趣味のために購入していた船を改造したり、第三者に金を貸付けたりしているが、これらの支出も事業所得からなされているものと解されるので、原告らの主張する事業所得は、支出面からみても信憑性がなく、到底実額に基づいたものとは考えられない。
第三当裁判所の判断
本件では、推計の必要性・合理性が認められ、一部収入が減少する点を除けば、被告の行った所得算出方法に不合理な点はなく、原告らの実額立証もできていないので、本件推計による所得捕捉は適法である。しかし、一部、収入に疑問が生じる分、総所得金額が減少し、昭和五九年、昭和六一年分については、それでもなお更正処分の総所得金額(ただし異議決定により一部取消し後のもの)を上回っているので、原告らの請求は理由がないが、昭和六〇年度分については、それを下回っているので、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の一部取消しを免れない。その理由は、以下のとおりである。
一 争点一(本件賦課処分の取消しを求める訴の適法性)について
1 甲A五号証、B三、四号証によれば、原告らが被告に対して、明示的に異議申立てしているのは、本件各更正処分の取消しだけであり、本件各賦課処分に対しては明示的にその取消しを求めていないことが認められる。
2 ところで、国税通則法一一五条一項本文は、異議申立てできる処分については異議申立てに対する決定を、審査請求できる処分については、審査請求に対する裁決を経なければ取消訴訟を提起できない旨定めている。
3 しかし、加算税は、納付すべき本税の全部もしくは一部に対し、一定の割合を乗じて賦課徴収されるものであり、前提となるべき本税の処分が取消された場合には、自動的に課税根拠を失い、納税義務が消滅する運命にある。
4 両者の間に、このような関係が認められる以上、原告らが基本となるべき本件更正処分に不服申立てを行った意思の中には、加算税の賦課処分(本件賦課処分)に対する黙示の不服申立も含まれていると考えられる。
5 したがって、本件賦課処分に関する取消訴訟が不服申立て前置の要件を欠いて、許されない旨の被告の主張には理由がない。
二 争点二(推計課税の必要性、本件税務調査の違法性)について
1 証人白山忠男(以下「白山」という。)の証言、B原告(以下「繁夫」という。)の供述及び弁論の全趣旨を総合すると、被告が、原告らに対し、本件各処分を行うに至った経緯として、以下の事実が認められる。
(一) 白山は、昭和六二年四月当時、湯浅税務署に所属し、原告ら有田民商関係者の税務調査に従事していた。
(二) 白山は、同月二七日、申告所得金額確認のため、原告ら方を訪ねた。その際、応対に出た繁夫に対し、原告らの所得調査に赴いた旨告げて帳簿書類の提示等を依頼した。これに対し、繁夫は、「収入は、農協に対する入金を合計して把握している。経費については、頭で計算している。帳簿書類は、民商に相談してからでないと出したらいかんと言われている。相談せんといかんから近いうちに連絡する。」旨答えて、帳簿類を提示しなかった。そこで、白山が、繁夫に対し、帳簿書類を提示する日時を確定日付で答えるよう求めたが、即答しなかったため、「今日中に連絡がなければ、明日また来る。」旨言い残して帰った。
(三) 白山は、繁夫から連絡がなかったので、翌二八日午後一時過ぎごろ、原告ら方に赴いた。そして、繁夫に対し、再度、調査に協力するよう要望した。しかし、同人は、「近いうちに連絡する。」旨答えるだけであった。そして、白山が、「帳簿書類を確認させて貰えないのであれば、取引先等を調査する。」旨伝えたところ、繁夫は、「それは困る。近いうちに連絡する。」と言い残してどこかに行ってしまった。
(四) 白山は、同月三〇日、藤沢調査官と一緒に原告ら方を訪ねた。そして、繁夫に調査協力の依頼をしたが、その際にも、「近いうちに連絡する。」旨繰り返すばかりであった。そこで、「連休明けの五月六日までに連絡をして欲しい。仮に連絡がなければ取引先等に反面調査をせざるを得ない。」旨告げた。
(五) 白山は、五月六日までに連絡がなかったので、統括官の指示を仰いで、金融機関等に対する反面調査を行い、所得金額を推計した。その上で、同月二五日、原告らの元まで赴き、繁夫の父親であるA原告に調査依頼を行った。ところが、同原告が、「申告のことは繁夫に任せており、自分には分からない。」旨答えたので、翌日、繁夫に湯浅税務署に来て欲しいと伝達した。
(六) 白山は、繁夫が税務署を訪れなかったので、五月二七日、繁夫を訪ね、帳簿類の呈示を求めた。これに対し、繁夫が「調査理由が納得いけば呈示する。」旨答えたので、「反面調査で把握した収入金額と申告された収入金額が一致しない。」旨説明した。そして、三時間程、説得を繰り返したが、繁夫は、「相談してから決める。相談したら連絡する。」と繰り返すのみで、帳簿書類の呈示等はしなかった。
(七) 白山は、同月二八、二九日にも、繁夫方に電話をしたり、自宅を訪れて調査協力を依頼した。しかし、繁夫は、「どこがおかしいか言ったら見せる。更正決定するかどうかはそっちが決めることやろ。勝手にせえ。」と言うのみで、調査に協力しようとはしなかった。
(八) 白山は、翌三〇日、繁夫が税務署を訪れたので、調査額について説明するとともに、「収入・経費を確認させて欲しい。」旨要望した。しかし、繁夫は、「裁判でしか帳面は出さん。」旨答えて、調査に応じようとはしなかった。
(九) そこで、白山は、統括官の指示に基づき、反面調査の結果に経費率を掛けて、所得の推計を行い、本件各処分を行った。
2(一) ところで、税務調査の権限は、申告納税制度の下では、ともすれば過少申告等の不正行為が行われがちであるが、このような事態を放置すれば、租税負担の公平が損なわれ、国家財政が危うくなりかねないため、納税者が行った申告内容に虚偽がないかを検討して、真実の所得額を把握するためのものである。
原告らは、申告により税額が確定する(国税通則法一六条一項一号前段)から、税務調査を行うためには納税者の承諾が必要だと主張する。しかし、右国税通則法がいう税額の確定とは、更正がないことを前提にした一応の確定に過ぎない。ましてや、白色申告者の場合、後記のように申告内容についての客観的保証がないのだから、税務調査を行うため、納税者の承諾を要するとの考えを採ることはできない。
(二) しかし、税務調査は、納税者その他の私的権利を侵害しかねないものだから、右調査権限を行使できるのは、所得調査の「客観的必要性」が認められる場合に限られ、その具体的手段・方法等については、右必要性と納税者の私的利益とを比較衡量したうえ、相当な範囲で行われることが必要である(比例原則)。
(三) 原告らは、前記のとおり、いわゆる白色申告者であるが、白色申告者には青色申告者のような帳簿備え付け義務等はないので、申告金額が正しいという客観的保証は存在しない。そうすると、申告内容に疑義等が生じる場合、申告内容の正確性等を調査する「客観的必要性」が認められることになる。
(四) 原告らが行った昭和五九年分から昭和六一年分までの所得税の確定申告の内容は、甲A一・二号証、甲B一号証のとおり、収入が常に一四〇〇万円を超えているのに事業所得金額は、〇、もしくは、極めて低い金額で、いずれも納付すべき所得税額が〇円という、異常とも思えるものである。したがって、税務署において、申告の適否並びに申告金額の正確性を確認するため調査を行うのは当然である。そうすると、本件では、税務調査の「客観的必要性」が認められる。
(五) 原告らの指摘する事前通知と理由開示等の問題は、法律上、これらは税務調査の要件とはなっていない。したがって、税務調査の必要性と右事前通知等を行わないことによって侵害される利益とを比較衛量して、その要否が決められるべきである。
本件税務調査の理由が、申告金額の正確性の確認にあることは、特に理由開示を待つまでもなく明らかである。前記のとおり、白色申告者には、申告金額の正しさについての客観的な裏付けがないから、これを超えて具体的理由の開示を要求することは相当でない。
また、事前通知の点も、当初こそ、抜打ちで調査に赴いているものの、その後は、何度も連絡等を依頼しており、これにより、特に、原告らの利益が侵害されたなどとは考えることができない。繁夫は、本件税務調査が行われたのが農繁期であったため、帳簿の呈示等ができなかったかの供述をする。しかし、原告らに税務調査に協力する意思があれば、提出可能な範囲で手持ちの書証等を呈示することもできたはずである。ところが、原告らは、右行為にすら及んでいない。これらの点から考えると、右供述部分は採用することができない。
最後に、反面調査については、白色申告者の申告内容には、前述のとおり、客観的保証がないので、申告の正確性を確認するため、反面調査を行う必要性が認められ、これを制限していたのでは税務調査の目的は達せられない。したがって、申告内容に疑義が生じた場合には、何時でも反面調査を行うことが可能だと考えられる。
3 右1、2において認定判断したとおり、被告部下職員らが、税務調査の際に、再三にわたって調査に協力するよう説得したが、納税義務者である原告側の協力が得られず、所得実額の把握に必要な帳簿書類等の資料の入手ができなかったものであり、しかもその税務調査の客観的必要性が存するうえ、その手段・方法においても、原告らの利益を過度に侵害する等、不合理と認めるべき点は存しないのであって、本件にあっては推計の必要性を肯認することができる。
4 そこで、右推計の必要性についての判断を覆すに足りる事情ないし証拠の有無につき検討する。
(一) 弁論の全趣旨によれば、その当時、原告ら有田民商関係者に対する税務調査が集中的に行われた事実が認められる。しかし、少なくとも原告らについては先に述べたとおり税務調査の客観的必要性が認められることと照らし併せれば、右の集中的な税務調査の事実から直ちに本件税務調査は有田民商関係者への政治的弾圧を意図してなされたと推認するのは難しいし、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(二) 原告らは、昭和五七年度分の更正の請求において、通帳から、売上を把握し、必要経費は、通帳と小切手の半片から、減価償却費は、記憶等をもとに計上したところ、その大半が認められた、その後の申告についても、昭和五七年度と同様のやり方で申告しているのであって、推計の必要性は存しないし、これを認めないのは信義則に反する旨争点二に関する原告らの主張3で記載したとおりの主張をしている。
しかしながら、被告においてある年度の更正の請求を認めたことをもって、その後の年度につき、原告らの確定申告のとおり認める趣旨を含んでいたとは到底解することができず、原告らの右主張は採用できない。
(三) その他、前記3の推計の必要性についての判断を覆すに足りる事実関係を認めるに足りる証拠はない。
三 争点三(推計過程の合理性)について
1 収入金額について
(一) 乙A三ないし九号証及び乙B三ないし六号証(いずれも枝番を含む。)及び証人滝川通の証言によれば、A原告は昭和五九・六〇年分について別紙5記載の各販売先から同表記載の各金額を、B原告は昭和六一年分について別紙6記載の各販売先から同表記載の各金額を、いずれも蜜柑等の代金として受け取った事実が認められる(なお、その内訳は、別紙16、17のとおりである。別紙16の乙号制は、乙A号証をさし、別紙17の乙号証は、乙B号証をさす。また収入が、当該年度の二月から、翌年度の一月までとなっているのは、所得税法四一条が、農産物の所得の把握に関して、収穫時を基準とすることを定めていることによる。)
(二) ところで、繁夫は、「右収入の中には、友人・知人(江川義隆、貞満里子、松下八重子)が私の名前で光苑果実、果久に出荷したものが含まれており、これらについては、経費を差引いて、代金を本人に渡した。」旨供述している。そして、右江川らから、「繁夫から合計四二九万一二八八円を受け取った。」旨の証明書(甲B一〇号証)が提出されている。しかも、右証明書の内容は、預金通帳(甲A一八、一九号証、甲B一三号証)の出金状況に合致している外、小切手帳半片(甲A一四、一五号証、甲B一一、一二号証)の記載にも一応沿ったものである。確かに、右事実だけからでは、せいぜい、右証明書の各金額が、江川らに支払われたといえるのみで、これらが繁夫の供述するように出荷物の対価として支払われたものだとまでは言い切れない。しかし、知人や友人の出荷物を自分の物と一緒に出荷してやるといったこともあり得ないことではないし、支払金額やその時期などに照らすと、これらが出荷物の代金として支払われたのだと考えても不自然ではない。そうすると、前記証明書に記載された金額が、原告らに帰属してない可能性が残り、これらを収入に含めることには疑問が残る。
(三) 以上のとおりであるので、原告らの収入について、昭和五九年分は一五万〇八七七円、昭和六〇年分は二一八万六二六〇円、昭和六一年分は一九五万四一五一円について、それぞれ疑問が生じる(甲B一〇号証参照。)。したがって、被告が立証できている原告らの収入は、昭和五九年分が一五七三万七四八七円、昭和六〇年分が一九九〇万八一七四円、昭和六一年分が一八〇七万九〇五〇円ということになる。
なお、原告らは、昭和六〇年度の売上が、これを上回る二三〇八万七八六八円である旨主張している(別紙9)。しかし、右売上把握の基準時等が定かではなく、被告とは前提を異にしている可能性が高い(同年度の売上は大きいが、反面、昭和六一年分の売上は大幅に低い。)うえ、原告らが右金額を主張する趣旨は、被告の推計に対する反証であること、後記のとおり、被告も、右売上について争っている点等考慮すれば、自白が成立する余地はない。
2 平均算出所得率について
乙A・B一号証及び証人橋本稔の証言によると、平均算出所得率は、次の方法で算出されたことが認められる。
(一) 大阪国税局長は、原告らの事業所得を推計する上で必要となる同業者を抽出するため、平成元年三月三一日付けで、被告に対し、所得税の確定申告書を提出している農業を営む個人(主として蜜柑を生産する者に限る。)のうち、次の全ての項目を満たす者の「収入金額」、「一般経費」(必要経費のうち、特別経費である建物減価償却賀・利子割引料・地代家賃・貸倒金・税理士報酬・固定資産等の除去損を除いたもの。)、そして、「収入金額」から「一般経費」を控除して算出した「算出所得金額」を調査・報告するよう求めた。
(1) 青色申告者であること。
(2) 個人または出荷組合を通じて出荷している者であること。
(3) 蜜柑(雑柑を含む。)販売による収入金額が、昭和五九年分は七九〇万円以上二三九〇万円未満、昭和六〇年分は一一〇〇万円以上三三二〇万円未満、昭和六一年分は一〇〇〇万円以上三〇一〇万円未満であること。
ただし、右収入金額は市場手数料を控除した金額とする。
(4) 年間を通して事業を継続して営んでいること。
(5) 他の業種目を兼業していないこと。
(6) 対象年分の所得税について、不服申立てまたは訴訟が係属していないこと。
(二) 被告は、右通達に基づき、右基準に該当する同業者(昭和五九年分で一三件、昭和六〇年分で九件、昭和六一年分で八件。)について、右各項目を調査し、別紙7・8と同旨の同業者調査表(乙A・B二号証)を作成・提出した。
(三) 右調査結果によれば、同業者各人の「収入金額」・「算出所得金額」・「算出所得率」は、別紙7・8の該当欄に記載したとおりであった。
3(一) 算出所得率算定のため、被告が前記基準に基づき選定した同業者は、いずれも被告の管轄区域内の者であるので、蜜柑栽培の条件等は、原告らとほぼ類似しているものと考えられる。しかも、同業者の選定に当たり、専業の蜜柑農家で、雑柑を含む蜜柑の販売高が、原告らのほぼ〇・五倍から一・五倍までと、原告らの販売高に近似した者を選定しているので、原告らと規模的に近似した者が比較的多く選択されている(前記のとおり、原告らの収入は、若干減少しているが、右収入を基礎にしても選択された同業者は、いずれも前記基準を満たすものである。)。そして、選択の基準が、このように明確で、客観的なものだから、右選択に当たって、恣意が入らず、しかも、選択の対象とされた者は、いずれも帳簿類が整備された青色申告者で、税額等についても争いがないので、その数値も正確なものである。加えて、選択された原告ら類似の蜜柑農家の「算出所得率」を平均しているので、個別特殊な条件は捨象されている。したがって、このようにして算出された平均算出所得率は、農業という特殊分野で推計を行う場合、被告において、採用可能な推計方法の中で最も合理的なものだと考えられる。
(二) 原告らは、「耕作地の立地条件・植付品種・樹齢等から、収入や経費率にかなりの差が出る農業のように個別性の強い事業に同業者比率法を用いることはできない。現に、前記調査表の算出所得率にもかなりの幅が認められる。仮に、推計の必要が肯定されるとしても、原告らが、自己の特殊性を主張して争うことができるように各農家の栽培条件等を明らかにすべきであるし、守秘義務等の関係からこれが不可能だというのなら、「本人比率法」を採用すべきだ。」等争点三に関する原告らの主張で記載したとおりの主張をする。
しかし、そもそも推計課税とは、納税者の協力が得られず、所得実額を把握できない場合、かといって、課税を見送れば、租税負担公平の原則等に反し、国家財政を危うくすることにもなりかねないため、社会通念上合理的と考えられる方法で、実額に近い所得金額を算出して、これを基に課税することを法が許容したものである。したがって、推計により算出された所得が、必ずしも真実の所得とは合致していないことを前提として、可能な範囲で真実の所得に近似した所得を捕捉しようとするものである。また、その性格上、通常範囲での個別的事情は捨象せざるを得ない。そして、このように解しても、収入が捕捉可能な範囲に限定されていることや、納税者は、自己固有の特殊事情を主張・立証し、あるいは、日頃から帳簿類を整備することによって、実額を立証することもできるので、酷だとはいえない。
また、どのような推計方法を採用するかは、それが合理的なものである限り、課税庁の判断に委ねられている。
ところで、原告らは、同業者の栽培条件を具体的に明らかにするよう要求している。しかし、選定された同業者が原告らの近隣者である点等を考慮すれば、これらを明らかにすることは右同業者の特定につながり、そのプライバシーを侵害することにもなりかねない。他方、推計については、前記のように推計の必要性・合理性等が要求されているし、原告らは、実額を立証することにより、右推計の合理性を否定し、実額による課税を受けることも可能であるので、右のような弊害を無視してこれらを明らかにすべきだとは考えられない。しかも、原告らが主張する「本人比率法」は、収入・経費の基礎資料が揃い、前後の年度の所得が捕捉可能なことが前提となるが、本件では、その前提を認めるべき証拠がなく、「本人比率法」を採用することはできない。
(三) さらに、原告らは、蜜柑農家の個別性・特殊性を強調しているが、近隣の蜜柑農家に比べて、特に不利な栽培条件等にあったと認めるべき証拠はない。
4 そうすると、原告らの本件各係争年の特別経費控除前の事業所得金額につき、昭和五九年分については、その収入金額一五七三万七四八七円にその平均算出所得率四四・七二パーセントを乗じた七〇三万七八〇四円、昭和六〇年分についてはその収入金額一九九〇万八一七四円にその平均算出所得率四二・五七パーセントを乗じた八四七万四九〇九円、昭和六一年分についてはその収入金額一八〇七万九〇五〇円にその平均算出所得率四三・一七パーセントを乗じた七八〇万四七二五円であると、合理的に推計することができる。
四 争点四(原告らの実額反証)について
1 原告らは、収入・経費の各実額を主張して、前記推計の結果が、真実の所得金額を上回る旨争点四に関する原告らの主張に記載したとおり主張する。
推計による課税は、直接資料による所得実額の捕捉が不可能な場合に、間接事実から所得を捕捉することを法が許容したものである。推計による課税が、このように補充的かつ代替的なものである以上、推計の必要性、合理性が存して推計による課税が行われても、納税者が所得の実額を主張・立証する場合には、右推計による課税を免れることができるものと解される。しかし、法が認める課税を覆して、自己に有利な所得実額に基づく課税を受けようとする以上、納税者において、右所得実額についての主張・立証責任を負うのは当然であり、原告は、収入及び経費双方の実額並びに収入と経費の対応についても立証しなければならない。したがって、このような場合にも、課税庁である被告に所得の立証責任があり、納税者である原告は反証で足りるとすることばできない。
そこで、以下、原告らが、収入・経費双方についての立証を遂げているかを検討する。
2 収入について
(一) 原告らは、昭和五九年度から昭和六一年度までの取引先に対する売上金は次のとおりであり、このうち、いずれの年度も<1>の取引先の売上は、仕切書・送り状・預金口座によって裏付けられ、その余は、預金口座の入金額等から裏付けられる旨主張している。
(1) 昭和五九年度 一六一九万五七〇四円
<1>光苑果実 一五六六万一八〇〇円
<2>和歌山青果(株) 一八万四〇二四円
<3>農協ジュース 二万一〇〇〇円
<4>作業委託費 一四万〇一八〇円
<5>農協果樹共済 一八万八七〇〇円
(2) 昭和六〇年度 二三〇八万七八六八円
<1>光苑果実 二一三五万六二九〇円
<2>和歌山青果(株) 一四万一九七三円
<3>墨田青果 七五万三〇八三円
<4>大阪北部中央青果 七五万五〇五三円
<5>農協ジュース 八万一四六九円
(3) 昭和六一年度 一二三一万六二四〇円
<1>果久(株) 一〇二九万五九〇〇円
<2>墨田青果 一二三万七二三七円
<3>和歌山青果(株) 七六万五七五七円
<4>農協ジュース 一万七三四六円
(二) 確かに、預金通帳には、これら金額の入金の記載があり、また、一部とはいえ、原告らの主張を裏付ける仕切書も存在している。したがって、原告らが、右取引先から、少なくとも、これらの売上を得ていたことは確実だといえる。しかしながら、預金への入金の内容が全て判明している訳ではないし、また、現金売上も考えられるのであって、入金されているもの以外に全く売上がなかったとも通常考えられないことであり、結局右金額以外に売上がなかったことを認めるに足りる証拠はないといわなければならない。
(三) また、自家消費分も、収入に含められるべきであるが、繁夫は、これらが毎年一万円程度だと述べるだけで、その具体的根拠を全く示していない。したがって、右繁夫の供述を信用して、自家消費分の金額を決定する訳にはゆかない。
(四) そうすると、原告らが自認している以外にも収入があるのではないかとの疑いを払拭できず、原告らが、自己の収入実額を立証できているとは到底いえない。
3 一般経費(必要経費のうち特別経費を除くもの)について
原告らは、別紙11の1ないし24頁の各科目につき、「原告主張額」欄に記載したとおりの、減価償却費につき別紙13ないし15記載のとおりの経費の存在を主張している。
しかし、右経費主張のうち特別経費を除く部分については、領収書等の裏付けがなく、その存否・時期等に疑問があったり、事業との関連等に疑問が残るものが多く、到底、これらについての立証が尽くされているとはいえない。
したがって、原告らにおいて、経費の存在及び金額、さらには、経費と収入との対応関係のいずれについても立証ができているとは言えない。
4 以上のとおりであるので、収入・経費ともに原告らも実額反証は成功しておらず、右三で合理的に推計した原告らの算出所得金額(特別経費控除前の事業所得金額)につき、その認定判断を覆すことができない。
五 争点五(特別経費)について
原告らが主張する経費のうち、右三で認定した算出所得金額を算定する際には折り込まれておらず、個別、特殊な事情に基づく特別経費として別途考慮が必要になるのは、建物減価償却費・利子割引料・固定資産除去損の三点である。
ところで、課税標準である所得の立証は、被告課税処分庁において行うべきであり、純理論的な意味で立証責任の分配の観点からすると、収入のみならず経費に関しても、被告がその立証責任を負っていると解される。しかしながら、右の特別経費については、個別、特殊な事情に基づくものであり、存在しない場合も希でないし、仮に存在する場合には、原告が容易に立証できるものであるから、具体的訴訟の場における立証の必要性の観点からみれば、原告において、基礎資料を提出して、一応の立証を尽くす必要性があり、その立証のない限り、右特別経費は存在しないものとして扱わざるを得ない。
以下、右の観点から、建物減価償却費・利子割引料・固定資産除去損の特別経費につき検討していくこととする。
1 利子割引料
原告らは、別紙11の昭和五九、六〇年勘佐藤夫科目(支払利息)(6頁、14頁)、昭和六一年勘佐繁夫科目(支払利息)(22頁)記載の利息を各支払った旨主張している。しかし、原告らは、預金通帳(甲A一八ないし二〇号証、甲B一三ないし一五号証。)等で、右支払いの事実を立証するのみで、容易に提出可能だと思われる借入証書等を提出せず、繁夫のこの点に関する供述も曖昧なものだから、原告らの主張する金額が、本当に借入金の利息だけか、右借入金が事業のためになされたものかどうかが疑わしい。したがって、原告らにおいて、主張金額が、事業のために行われた借入金の利息であるとの点の一応の立証すらなされているとはいえない。したがって、被告が認めている金額(別紙3、4の各<4>欄)を超える支払利息があったとすることはできない。
2 建物減価償却費
法令は、減価償却の要件として、当該資産が事業に供されるものであること、計算方法として定額法等によることを定めている。したがって、減価償却が認められるためには、事業との関連性が認められることはもちろん、所得価額、取得時期等について、原告らが一応の主張・立証を尽くすことが不可欠である。
ところで、原告らが、別紙13ないし15で減価償却費として主張しているもののうち、倉庫・貯蔵庫・ハウスに関しては、その性質上、事業との関連性が認められるから、その取得価額・時期等に関して、一応の立証がなされれば、減価償却費として認められる余地がある。しかし、原告らは、通常、存在するはずの請負契約書等も提出しようとしない。
そうすると、右倉庫等の取得時期や所得価額が全く不明であるから、これらが当該年度の減価償却の対象となり得べきものか否か、その価額等が全く不明であるので、原告らにおいて、一応の立証さえできているとはいえず、これらを経費として認めることはできない。
3 固定資産除去損
A原告が、昭和六〇年分の減価償却費と主張しているもののうち、サクドー(索道)の除去損(別紙14のNo.1)は、形式的には、これに該当するが、その主張金額には、何らの根拠も示してないので、これを経費として認めることばできない。
4 右のとおりであり、特別経費の額は、結局被告主張のとおり、別紙3、4の各<4>欄に記載の金額となる。
六 右三で認定した算出所得金額から右五で認定した特別経費の額、弁論の全趣旨により認められる事業専従者控除の額(別紙3<5>欄記載の額)を控除した額である、昭和五九年分(A原告)は五八三万一三一六円、昭和六〇年分(A原告)については七二八万八七八五円、昭和六一年分(B原告)については七五五万四一七七円がその事業所得の金額となる。そして原告らは他に所得がないので、右金額が総所得金額となる。
第四結論
以上の次第で、昭和六〇年分の更正処分(異議決定により一部取り消された後のもの)のうち、総所得金額につき右認定の総所得金額七二八万八七八五円を超える部分及びこれに対応する過少申告加算税の賦課決定処分は違法であるので、この部分を取り消し、その余の本件各処分(異議決定により一部取り消された後のもの)は右認定の総所得金額の範囲内でなされた適法なものであるから、原告らのその余の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 東畑良雄 裁判官 和田真 裁判官 大垣貴靖)
別紙1
課税の経緯
<省略>
別紙2
課税の経緯
<省略>
別紙3
原告の総所得金額
<省略>
別紙4
原告の総所得金額
<省略>
別紙5
原告の収入金額
<省略>
別紙6
原告の収入金額
<省略>
別紙7
同業者の算出所得率表
<省略>
別紙8
同業者の算出所得率表
<省略>
別紙9
<省略>
別紙10
<省略>
別紙11-1 (※ 原告主張額は、原告第8準備書面の別紙「経費明細表」による。)
昭和59年勘佐藤夫 科目 (公租公課)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(種苗費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(肥料費)
<省略>
別紙11-2
昭和59年 勘佐藤夫 科目(農具費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(農薬費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(諸材料)
<省略>
別紙11-3
昭和59年 勘佐藤夫 科目(修繕費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(作業用衣料費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(農業共済)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(荷造運賃費)
<省略>
別紙11-4
昭和59年 勘佐藤夫 科目(雇人費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(電気費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(水道費) No.1
<省略>
別紙11-5
昭和59年 勘佐藤夫 科目(水道費) No.2
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(燃料費)
<省略>
別紙11-6
昭和59年 勘佐藤夫 科目(カン水費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(支払利息)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(通信費)
<省略>
別紙11-7
昭和59年 勘佐藤夫 科目 (会費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(研修・旅費)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(交際費)
<省略>
別紙11-8
昭和59年 勘佐藤夫 科目(新聞・農業)
<省略>
昭和59年 勘佐藤夫 科目(よ)
<省略>
別紙11-9
昭和60年 勘佐藤夫 科目(公租公課)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(種苗費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(肥料費)
<省略>
別紙11-10
昭和60年 勘佐藤夫 科目(農具費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(農薬費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(諸材料費)
<省略>
別紙11-11
昭和60年 勘佐藤夫 科目(修繕費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(損害保険料)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(荷作運賃)
<省略>
別紙11-12
昭和60年 勘佐藤夫 科目(作業衣料費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(水光熱費) No.1
<省略>
別紙11-13
昭和60年 勘佐藤夫 科目(水光熱費) No.2
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(雇人費)
<省略>
別紙11-14
昭和60年 勘佐藤夫 科目(カン水費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(支払利息)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(通信費) No.1
<省略>
別紙11-15
昭和60年 勘佐藤夫 科目(通信費) No.2
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(会費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(研修旅費費)
<省略>
別紙11-16
昭和60年 勘佐藤夫 科目(交際費)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(農業新聞)
<省略>
昭和60年 勘佐藤夫 科目(よ)
<省略>
別紙11-17
昭和61年 勘佐繁夫 科目(公租公課)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(肥料費)
<省略>
別紙11-18
昭和61年 勘佐繁夫 科目(種苗費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(農具費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(農薬費)
<省略>
別紙11-19
昭和61年 勘佐繁夫 科目(諸材料)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(修繕費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(損害保険料)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(作業衣料費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(給料賃金)
<省略>
別紙11-20
昭和61年 勘佐繁夫 科目(水光熱費) No.1
<省略>
別紙11-21
昭和61年 勘佐繁夫 科目(水光熱費) No.2
<省略>
別紙11-22
昭和61年 勘佐繁夫 科目(荷作運賃)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(カン水費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(支払利息)
<省略>
別紙11-23
昭和61年 勘佐繁夫 科目(通信費)
<省略>
別紙11-24
昭和61年 勘佐繁夫 科目(会費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(研修・旅費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(交際費)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(新聞農業)
<省略>
昭和61年 勘佐繁夫 科目(よ)
<省略>
別紙12
原告の支出から見た事業所得金額
<省略>
別紙13 No.1 59年
<省略>
No.2 59年
<省略>
No.3 59年
<省略>
別紙14 No.1 60年
<省略>
No.2 61年
<省略>
No.3 60年
<省略>
別紙15 No.1 61年
<省略>
No.2 61年
<省略>
No.3 61年
<省略>
別紙16 売上金額の明細
<省略>
別紙17 売上金額の明細
<省略>