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和歌山地方裁判所御坊支部 昭和23年(ワ)11号 判決

反訴被告(原告)は反訴原告(被告)に対し金三万円並にこれに対する昭和二十三年十一月二十八日より完済に至るまで年六分の割合による金員を支払わなければならない。

反訴原告(被告)の反訴被告(原告)に対するその余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用中本訴の分は原告(反訴被告)の負担とし反訴の分はこれを十分しその三を反訴被告(原告)その七を反訴原告(被告)の負担とする。

この判決中反訴原告(被告)の勝訴の部分に限り反訴原告(被告)において担保として金一万円を供託すれば仮に執行することができる。

二、事  実

原告(反訴被告)(以下原告という)訴訟代理人は本訴につき被告(反訴原告)(以下被告という)は原告に対し金十五万円及びこれに対する昭和二十三年五月八日より支払済に至るまで年六分の割合による金員を支払わなければならない。訴訟費用は被告の負担とする。との判決並に担保を条件とする仮執行の宣言を求め、反訴につき被告の請求を棄却する。との判決を求めた。

本訴の請求の原因並に反訴の答弁として、被告は原告に対し昭和二十三年三月二十二日金額十五万円支払期日同年五月五日支払地振出地共御坊町支払場所株式会社紀陽銀行御坊支店とする約束手形一通を振出し交付したので原告は右手形の所持人となつた。そこで支払期日の二日後である昭和二十三年五月七日支払場所において右手形を呈示して支払を求めたが、その支払を受けることができなかつた。そこで原告は被告に対し右手形金並にこれに対する呈示の翌日である昭和二十三年五月八日から支払済に至るまで年六分の割合による金員の支払を求めるため本訴に及んだのである。

被告の答弁並に反訴の請求原因の事実中原告が昭和二十二年十一月九日訴外西村徳次郎より金三万円弁済期昭和二十三年一月三十一日利息月一割の貸金債権を負担していること、債権者西村徳次郎より原告に対し昭和二十三年十一月十一日その債権を被告に譲渡したる旨の債権譲渡の通知ありたること、同月八日訴外岡本長太郎より原告に対し金二万三千二百五十円の賃金債権を被告に譲渡した旨の通知ありたることは何れもこれを認めるが、西牟婁郡三川村大字五味日向金三郎山外二ケ所の木材の搬出は総て原告において訴外森下要太郎に請負わしたもので、訴外岡本長太郎にその搬出を依頼したことなく同訴外人は訴外森下要太郎より下請負したに過ぎないから、原告としては訴外岡本長太郎に対し木材搬出の賃金債務を負担するものではない。しかも訴外森下要太郎に対する木材搬出の賃金はすでに支払済である。従つて被告が右岡本長太郎より譲受けたという金二万三千二百五十円の相殺の抗弁は失当である。又原告は西村徳次郎よりの金三万円貸金債権の利息として借受けた当日より昭和二十三年四月十二日までの月一割に相当する金一万円はすでに同人に支払済である。

次に被告主張の如く原被告間に昭和二十三年三月二十二日和歌山県西牟婁郡三川村大字五味及び同郡日置川沿岸所在の原告所有の木材約四千五百石の売買契約を締結したことは争わないが、その売買契約は所謂メツソウ売買で即ち売買の目的物である木材を予め寸検しないで目算によつてその売買代金を定め後日に至つて数量に過不足があつても当事者双方において異議をいわず代金の増減を主張しないということを内容とする契約である。しかも本件木材につき原告と訴外碓井彌太郎との間に昭和二十二年十二月十日材積五千石以上として一石百七十七円の割で売買契約を締結し、原告は同訴外人から契約金として三万四千円及び第一回分の代金として金三十万円を受領したが、第二回分の代金は造材全部を川に投入後十分の三を支払う約定であつたので原告においてすでに造材全部を川に投入したのに拘らず、右訴外人は僅に金十三万一千円を原告に支払つたのみでその余の支払いに応じなかつたので、巳むを得ず原告は右碓井彌太郎に対し売買契約を解除し損害金を請求する旨通告したが、同訴外人はすでに代金の一部として支払つた金四十六万五千円を損害金に充当するから売買の目的物たる木材は原告において自由に処分しても異議がない旨申出たので、原告もその申出を承諾しここに同訴外人との売買契約は解除になつたのである。しかるにその後訴外森下要太郎、杉原誉七の斡旋によつて被告と該木材の石数を約四千五百石としその代金を金三十五万円と定め、所謂メツソウ売買の契約を締結するに至つたのである。しかるに売買契約書を作成するに当つて被告より右碓井彌太郎から支払つた金四十六万五千円を代金の内に加えておいてくれとのたつての懇請があつたので、原告としては同訴外人より受取つた金四十六万五千円はすでに損害金として没収したのであるが、被告と右碓井彌太郎との関係をも考慮しあたかも原被告間の売買代金の内金として受領したように契約書に記載したのである。さような次第で本件売買代金は売買契約書記載のように八十一万五千円ではなく三十五万円である。そうして右売買契約当時被告より内金二十万円を受取り残金十五万円についてはその支払のため被告より本件手形の振出しを受け売買の目的物たる木材を被告に引渡したのである。さような次第でしかも本件契約当時において木材の公定価格は石百二十七円であつたから本件木材がメツソウ売買であつても公定価格以下であるから被告のいうが如く価格統制令違反とはならない。そればかりでなく本件売買は所謂メツソウ売買であるから被告の減額請求は失当であつて到底これに応じられない。殊に昭和二十三年七月二十日前後は日置川に出水があつたので相当数量の木材が流失したものと思われるから被告の主張するように売買の目的物である木材の数量に不足があつてもそれは原告の責任ではない。なお被告主張のように本件木材のメツソウ売買が仮りに契約当時においては統制に違反するものとするも本件売買契約の昭和二十三年三月二十二日当時木材の売買価格が法令により統制されていたことはこれを争わないが、右統制法規はすでに廃止せられ現在においては自由販売価格によることを認められている。そうして統制法規なるものはある時代における社会的経済的必要によつて制定されたものであつて、これに違反する行為の効力が論ぜられるのはその行為それ自体が法の理想に背馳するためというよりはむしろ該法規が宣明する一時的経済政策に副わないためにかかる行為をそのまま有効に認めるならば、右政策の遂行を阻害し延いては国民が当時有していた目的の達成を阻害するために過ぎないからである。従つて該法令の施行中これに違反してなされた契約でもこの法令が目的とする経済政策が必要としない時期が到来し、殊に該法令が廃止された場合にはこれを履行し契約内容を実現せしめても何等当時の政策に牴触することもなく、且つ本来の反倫理的反社会的色彩を帯びたものではないからそのため法律的社会的秩序をみだす恐れも少しもなく、逆にその無効を主張するの日すでにその法令が目的とする政策の必要が消滅したるに拘らず紛争を招く結果を来たすに過ぎない。従つて被告が主張するように本件売買を統制違反行為であるから無効であるということは、今日においては許されないものと解すると述べた。

被告訴訟代理人は本訴につき原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、反訴につき原告は被告に対し金十九万五千六百四十一円五十三銭並にこれに対する反訴状送達の翌日である昭和二十三年十一月二十八日より完済に至るまで年六分の割合による金員を支払わなければならない。反訴費用は原告の負担とする。との判決並に仮執行の宣言を求めた。

本訴の答弁並に反訴の請求原因として、被告が原告に対し原告主張の日時にその主張するような内容の本件手形を振出し交付したること、原告がその主張の日にその支払場所に右手形を呈示したが被告においてその支払を拒絶したこと、相殺債権三万円の利息の内入れとして貸付当日より昭和二十三年四月十二日までの月一割に相当する金一万円を訴外西村徳次郎において受領したること、並に木材のメツソウ売買というのは原告のいうが如く売買の目的物たる木材を寸検しないで目算によつてその売買代金を定め後日に至つて数量に過不足があつても当事者において異議をいわないという趣旨の売買契約であることは何れも争わないが、被告は原告より昭和二十三年三月二十二日和歌山県西牟婁郡三川村大字五味相川川入として杉檜丸太材約四千五百石を一石百八十一円十一銭の割で代金八十一万五千円として買受ける旨の売買契約を締結し、原告に対し内金六十六万五千円を支払い残金十五万円についてはその支払のため原告に対し本件手形を振出したのである。そうして本件木材の受渡し場所は三川村大字相川で受渡期日は昭和二十三年三月二十三日より同年五月五日までの間で原被告立会の上寸検して受渡しする約束であつた。ところが被告の度々の請求にも拘らず原告は言を左右にしてその引渡しに立会わず、当時木材の相場の変動が烈げしかつたので巳むを得ず被告は本件木材を御坊町まで輸送することとし、昭和二十三年七月二十一日より同年八月十二日までの間に日置川口の木材林産組合で通関検尺したところが驚く勿れその数量は実に二千八百九十三石七五に過ぎなかつた。即ち契約高約四千五百石の内一千六百六石二五の不足である。そこで被告は原告に対し民法第五百六十五条の規定に基き本件売買代金八十一万五千円より売買価格一石百八十一円十一銭の割で不足分千六百六石二五その価額二十九万九百七円九十三銭の残額を本訴において請求する。従つて本件手形金十五万円は最早被告において支払う義務がない。もし右減額の請求が認められない場合は被告は次の二口の債権を譲り受け各債権者から債務者たる原告に対しすでに譲渡の通知をなしたから本件手形債権とその対当額において相殺する。即ち、

(イ)  金三万円及びこれに対する本件反訴状送達の翌日たる昭和二十三年十一月二十八日以降年六分の損害金、これは譲渡人西村徳次郎が原告に対し昭和二十二年十一月九日貸付けた貸金債権で弁済期限昭和二十三年一月三十一日利息月一割の約(但し利息として貸付当日より昭和二十三年四月中までの月一割に相当する金一万円はすでに右西村徳次郎において受領済)譲渡通知同年十月十一日

(ロ)  金二万三千二百五十円及びこれに対する本件反訴状送達の翌日たる昭和二十三年十一月二十八日以降年六分の損害金、これは譲渡人岡本長太郎が原告に対し有する木材の伐採運搬の賃金債権支払期限昭和二十三年二月末日譲渡通知同年十一月八日

前述の如く右減額請求の金二十九万九百七円九十三銭より本件手形金額十五万円を差引いた残額と前述の(イ)(ロ)の二口の債権とで被告の原告に対する債権額は合計十九万五千六百四十一円五十三銭となるから、原告に対し反訴として右金十九万五千六百四十一円五十三銭とこれに対する反訴状送達の翌日たる昭和二十三年十一月二十八日より完済に至るまで年六分の割合による金員を請求する。原告が主張するように訴外森下要太郎が原告から本件木材の搬出を請負同訴外人より岡本長太郎に対しこれを下請負さしたという事実並に昭和二十三年二月二十日大雨により本件木材の一部が流失したという事実は否認する。

次に原告は本件木材についてさきに原告と訴外碓井彌太郎との間に売買契約が成立したが、同訴外人の不履行により同訴外人から代金の一部として支払つた金四十六万五千円を損害金として没収してその売買契約を解除し、さらに同一木材につき原告と被告との間にその代金を金三十五万円と定め、所謂メツソウ売買の売買契約を締結したのであるから本件売買は価格統制違反とはならない旨主張するけれども、本件の木材は昭和二十一年十二月十日原告より日新組代表者碓井彌太郎に売渡し、被告においても右碓井彌太郎と持分二分の一の割合で組合を組織しておつたので内部的には協同購買の形式をとつたものである。そうしてその売買契約によれば引渡場所は日置川口着とし寸検の上引渡すこと、代金は一石金百七十七円の約であつたところがその後その売買契約は解約され前述の如く改めて原被告間の取引となつたのであつて、その取引の際被告は石百七十円と主張したが原告の切なる懇請によつて約四千五百石その代金を元の代金七十六万五千円に五万円だけ祝儀として増額することとし金八十一万五千円としたのである。それは被告が右碓井彌太郎より内部的に同人と原告の間における売買契約上の権利を譲受けたのでさきに右碓井彌太郎が原告に対し代金の一部として支払つた金四十六万五千円を原被告間の売買代金に充当し、さらに契約の際被告より原告に金二十万円を支払い、残金十五万円については被告より原告に対し本件手形を振出したのである。従つて原告主張のように本件売買契約はメツソウ売買即ち目算によつて代金額を定め後日その数量に過不足があつても当事者は異議をいわないという約款付売買ではなく検量売買である。

仮に原告が主張するように本件木材がメツソウ売買でありとすれば価格の統制が行われている当時においてはかかる売買行為は価格の統制を紊すところの脱法行為であつて、厳に法の禁止するところであるから本件売買契約は無効の行為であり、従つて本件手形行為も無効であるから被告は右手形金十五万円を支払う義務はないのであると述べた。

<立証省略>

三、理  由

被告が原告に対し昭和二十三年三月二十二日金額十五万円支払期日同年五月五日支払地振出地共御坊町支払場所株式会社紀陽銀行御坊支店とする約束手形一通を振出し交付し、原告がその所持人となつたので右支払期日の二日後である昭和二十三年五月七日支払場所において該手形を呈示して支払いを求めたがその支払いを受けることができなかつたこと、右約束手形は原被告間の木材の売買残代金十五万円の支払いのため被告より原告宛に振出されたものであることは何れも当事者間に争いないところである。そうして原被告間の木材の売買契約は原告のいう所謂メツソウ売買であるか或はまた被告のいう検量売買であるかどうかを考えてみるに成立に争いない甲第三号証同第五号証ノ二証人太田好雄、杉原誉七(第二回)の各証言を綜合すれば、原告は日新組(碓井彌太郎、太田好雄、辻本春雄の三名で組織する組合)の代表者碓井彌太郎に対し昭和二十二年十二月十二日和歌山県西牟婁郡三川村字五味外二ケ所の杉、檜材五千石以上を価格一石につき金百七十七円の割で引渡場所日置川口着の約束で売渡し、右碓井彌太郎よりその代金の一部として原告に金四十六万五千円を支払つたが、その後右売買契約は解約となり改めて原被告間に昭和二十三年三月二十二日同一木材につきその石数を約四千五百石その代金を八十一万五千円と定め売買契約を締結し、同時に被告がさきに碓井彌太郎に対し本件木材の買受資金として支出しておつた関係上同人がすでに原告に支払つた右金四十六万五千円を被告において肩代りをし、これを本件売買代金の一部に充当し更に被告より原告に対し金二十万円を支払い、残金十五万円についてはその支払いのため被告において本件手形を振出し原告に交付し、なお右契約と同時に売買の目的物たる木材全部はたとい日置川流域に流止するものであつても被告の所有とし、被告において如何に処理するも原告に何等異議ない旨を約したることを認めることができる。しからば係争木材全部は売買契約と同時に寸検もしないで直に被告の所有に帰し自由に該木材を処理することができることであり、しかもその売買契約前後において被告または被告の代理人等においてその木材の現物を実地につき検分した事実のなかつたことは被告の本人訊問の結果に徴し明かであり、また寸検の時期並にその方法についても売買当事者間に何等の定めもなかつたことは前示甲第三号証並に原告の本人訊問の結果により明かである。しからば右認定の各事実並に証人杉原誉七(第一、二回)森下要太郎(第一、二回)の各証言原告の本人訊問の結果を綜合すれば、本件木材の売買契約は売買契約の当事者である原被告の見込みによつて寸検をせずして数量を約四千五百石その売買代金を金八十一万五千円と定め、契約と同時に売買の目的たる木材は買主たる被告の所有に帰せしめその処分に委し、後日その数量に過不足があつても原被告共に異議をいわないという所謂原告主張のメツソウ売買であることを窺知することができる。被告は本件木材の売買は数量を約四千五百石と定め原告に対し祝儀として五万円を出すこととしてその代金を金八十一万五千円と定めた外は訴外碓井彌太郎の有するさきに原告と締結した売買契約上の権利義務を被告において全面的に承継したもので、従つて本件売買は検量売買であるというけれども、この点に関する証人宮脇弘被告の本人訊問の結果(第一、二回)は措信し難く、その他の被告の立証をもつては右認定を覆すにたらない。

次に被告は本件木材の売買契約が原告のいうが如く所謂メツソウ売買であるとすれば価格の統制が行われておる当時においてはかかる売買行為は価格の統制を紊すところの脱法行為であつて法の禁止する処であるから、かかる売買契約は無効の行為であると抗弁するをもつて、更にこの点について按ずるに本件売買契約当時木材につき価格の統制があつたことは公知の事実であり、また当事者間においても争いない処である。そうして本件木材の売買契約がさきに認定したように売買当事者間において予め木材の検尺もなさず単に見込みによつて数量を定めそれによつて一定の代金額を定め後日になつてその数量に増減があつても当事者間において何等異議をいわないという契約は、その取引の結果についてある種の偶然性を伴う射倖的投機的行為であつて価格統制の下においてかかる取引が一般に行われるにおいては統制を紊すことになり、法のかたく禁止する処であつて一定数量の価格が統制価格を超過する場合と異なりかかる売買行為はそれ自体全部無効であると解するを妥当とする。原告は原告と訴外碓井彌太郎との売買契約において同訴外人に契約不履行があつたため代金の一部として受領した金四十六万五千円は原告においてその損害としてこれを没収したので、原被告間の本件木材の売買代金は三十五万円であり、その当時における木材の公定価格は一石百二十七円であつたからたとえ本件木材の売買が所謂メツソウ売買であつても価格統制令違反とはならない旨主張するけれども、その点に関する原告の本人訊問の結果は信をおき難く、その他原告の立証をもつては右事実を認め難い。

更に原告は木材の価格統制が廃止せられ自由売買によることを認められた今日においてはたとい本件木材の売買が所謂メツソウ売買でありその当時は統制違反行為であつたとするも、社会的経済的に価格統制を必要としない現状においてはこれを無効とすることは許されないと主張するけれども、前述の如く本件木材の売買が所謂メツソウ売買でありその取引が価格統制令に違反する無効の取引である限り、現在において社会的にもまた経済的にも統制の必要がないとして木材に対する統制が廃止せられ一般に自由販売が認められるようになつたからというてすでに無効の売買が今更有効であると解することはできないから、原告の右主張は採らない。

以上認定の如く本件木材の売買が全面的に無効である限りその売買に基因する本件手形行為は勿論被告の売買代金減額請求もその理由がなく、従つて被告の反訴請求中代金減額の請求を原因とする請求も失当であるといわねばならぬ。

次に被告の反訴請求中譲受債権の請求について見るに、訴外西村徳次郎が原告に対し昭和二十二年十一月九日金三万円を利息月一割弁済期昭和二十三年一月三十一日(但し利息の一部として貸付当時より昭和二十三年四月中までの月一割に相当する金一万円はすでに同訴外人において受領済)と定めたる貸金債権をもつており、同訴外人より昭和二十三年十月十日被告に譲渡し、同日同訴外人より原告に対し債権譲渡の通知をなしたことは当事者間に争いないところであつて、しかも右債権は本件木材の伐採搬出に関する資金として原告が同訴外人より借受けたるものであることは原告の明かに争わないところであるから、原告は被告の反訴請求中右三万円及びこれに対する本件反訴状送達の翌日である昭和二十三年十一月二十八日以降支払済に至るまで年六分の損害金を支払う義務がある。次に被告は訴外岡本長太郎が原告に対して有する木材の伐採運搬の賃金債権二万三千二百五十円の譲渡を受けたと主張するけれども、原告の本人訊問の結果により真正に成立したものと認める甲第四号証並に右原告の本人訊問の結果証人森下要太郎の証言(第二回)を綜合すれば、右賃金債権は原告において本件木材の搬出を訴外森下要太郎に請負わしその結果生じたる債権であつて、訴外岡本長太郎は単に右森下要太郎よりその搬出を下請負したるに過ぎないのであつて原告において右岡本長太郎に対し直接該債権を負担しておるものでないことが認められる。右認定に反する証人岡本長太郎の証言は措信しない。

以上説明するところにより被告の反訴請求中原告に対し金三万円及びこれに対する昭和二十三年十一月二十八日(反訴状送達の翌日)より完済に至るまで年六分の割合による金員の支払いを求むる部分はその理由あるも、原告の本訴手形金の請求並に右認容した以外の被告の反訴請求は何れも失当として棄却すべきものである。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十二条を、仮執行の宣言につき同法第百九十六条第一項を適用し主文のように判決する。

(裁判官 河田栄左右)

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