和歌山地方裁判所新宮支部 昭和34年(ワ)54号 判決 1962年10月10日
主文
被告は別紙目録記載の家屋につき、原告が所有権を有することを確認する。
被告は右家屋につき、和歌山地方法務局本宮出張所昭和三四年三月九日受附第一八八号を以つてなされた建物所有権保存登記の抹消登記手続をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、
一、原告は、昭和二五年四月被告の実父である亡恵木理喜之助(以下理喜之助と略称する)と事実上の婚姻をなしたが、理喜之助は右婚姻届未了のまゝ、昭和三三年一二月七日に死亡した。
二、被告は、原告が理喜之助と右婚姻当時よりその婿養子である訴外恵木利市と共謀の上、多額の借財をつくり、右理喜之助所有の山林をほしいまゝに売却したゝめ、同人の怒りを買つたので、被告等は理喜之助方に同居できなくなつて一時田辺市等に別居していた。
三、理喜之助は生前に老後を専ら原告を頼りとしていたところ、自己の財産が被告等のためにほしいまゝにされるのを憂えるとともに、原告の生活を安定させるために、昭和二八年一月訴外杉山隆朗より和歌山県東牟婁郡三里村切畑四六六番地所在の同人所有にかゝる二階建家屋(通商納屋)延べ二四坪(以下旧家屋と略称する)を代金一一五、〇〇〇円て買取つて、原告に贈与した。
四、旧家屋は売買当時右杉山との間でいわゆる「取り家」として解体移築する契約であつたので、原告は理喜之助の世話で昭和三二年暮頃よりその解体撤去にとりかゝり、右材料に新らしい材料を加え、結局原告所有の山林を売却して得た金三五万円の費用を投じ、翌三三年三月別紙目録記載の家屋所在地に旧家屋を移増築し、別紙目録記載の家屋(以下本件家屋と略称する)を建築した。従つて本件家屋は原告が原始的に取得したのであるから、原告所有に属する。
五、これより先、被告等は原告を疎外しようと企て、理喜之助に原告を中傷したので、理喜之助も家庭内にこれ以上紛争を起こさせないために、昭和三二年一一月頃原告を納得させて一応その実家に帰らしめたが、原告はその後理喜之助が病床に就くや、実家より同人方に通いながら、同人の看病に当つていたところ、被告は原告の不在を幸いとし、何らの権限がないのにほしいまゝに本件家屋を占拠し、原告の請求にも拘らず本件家屋を明渡さないのみならず、昭和三四年三月九日本件家屋を自己の所有として主文掲記の所有権保存登記の手続を終えた。
六、しかしながら、本件家屋は右保存登記にもかゝわらず、原告の所有に属するから、原告は主文同旨の判決を求めるために本訴請求に及んだ、
と述べた。
(立証省略)
被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する」との判決を求め、答弁として、原告の請求原因事実中、第一項の事実、本件家屋に被告が居住している事実及び本件家屋につき、原告主張のとおりの所有権保存登記がなされている事実を認め、その余の事実を否認した。
(立証省略)
当裁判所は職権によつて、原告本人の尋問(第二、三回)を行つた。
目録
和歌山県東牟婁郡本宮町切畑五二五番地
家屋番号同所一〇二番一号
一 木造瓦葺二階建居宅
建坪 一三坪 外二階坪一三坪