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墨田簡易裁判所 昭和34年(ろ)243号 判決 1959年6月20日

被告人 熊岡敏男

昭一一・三・二五生 無職

主文

被告人は無罪

理由

公訴事実によれば被告人は法定の除外事由がないのに昭和三十四年一月二十八日午後二時二十分頃、神奈川県公安委員会が道路標識によつて一方通行と指定した横浜市鶴見区鶴見町五五八番地先道路において一方通行の出口方向より入口方向に向い小型乗用自動車を運転通行したものであるというのであるが

当公廷に於ける被告人の供述、在廷証人薗部宏二の供述、その他検察官提出の証拠を綜合判断すれば(1)判示の場所において神奈川県公安委員会が国鉄鶴見駅前の交通混雑を緩和規正する目的を以つて昭和三十一年三月十日同委員会告示第六号により横浜市鶴見町五五八番地(判示場所)から同町五六三番地(国鉄鶴見駅前)に至る区間道路を一方通行と指定し右駅前に一方通行入口標識を、又判示場所には一方通行出口標識(通り抜け禁止標識)を設置し、同年四月一日から右交通の制限と禁止とを実施したこと(2)然し判示の日時及び場所で被告人が国鉄鶴見駅前の方へ通り抜けた時には前記の一方通行出口標識がなく、該禁止標識は昭和三十一年八月頃から既に何人かによつて撤去されて判示の日時迄そのままになつていたことが認められる、而して公安委員会が通行禁止制限を行うときは道路標識令の標識によつてしなければ有効でないのであるから被告人の判示の日時場所に於ける通り抜け行為は法令の禁止違反とならないものとするを妥当とする処(道路交通取締法第六条第一項同法施行令第五条道路標識令第一条参照)外には此の判断を覆すに足る証拠による本件公訴事実の証明がないから刑事訴訟法第三百三十六条により主文のとおり判決する。

(裁判官 伊藤香象)

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