墨田簡易裁判所 昭和41年(ろ)867号 判決 1967年3月17日
主文
被告人を罰金五、〇〇〇円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二五〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
右罰金に相当する金額を仮に納付すべきことを命ずる。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和四一年一二月一一日午后二時八分ごろ、東京都品川区旗の台六丁目三番一三号地先の交通整理の行われていない左右の見とおしのきかない交差点において軽四輪自動車を運転通行するに際し徐行しなかつたものである。
(証拠の標目)(省略)
(被告人の主張に対する判断)
被告人は本件交差点は見とおしのきかない交差点ではなく、かつ東京都公安委員会による三十キロメートル毎時の速度規制に従つて走行したもので被告人の行為は法的に適正であり無罪である趣旨の主張をするので左にその判断をする。
道路交通法第四二条に定める左右の見とおしのきかない交差点とは、その交差点に入る前の段階において建造物その他道路の状況により、その車両等が進行している道路に交差する道路の左右の見とおしのきかない交差点をいうものと解すべきであり、証人三宮忠夫の証言によれば被告人の車両の進行方向交差点の手前は右側に高さ一、九メートルのブロツク塀左側に高さ二、一五メートルの石垣があり且つ右交差点の手前五メートルの地点では進行方向に向つて左側が五、二五メートル右側が五、三メートル位しか見とおしがきかないことが認められる。かかる場所は右に説明した左右の見とおしのきかない交差点に該当する。
又三十キロメートル毎時の速度制限のある指定場所においても交通整理の行われていない左右の見とおしのきかない交差点においては道路交通法第二条二〇号にいう車両等が直ちに停止することができるような速度で進行すべきことは当然であり三十キロメートル毎時の速度で運転進行したことは徐行したものとは認め難い。
結局被告人の主張は独自の見解に基づくものでいずれも之を採用することができない。
右の交差点が交通整理の行なわれていない点及び被告人が右の場所を三十キロメートル毎時で軽四輪自動車を運転走行したことについては被告人の自認するところであり以上の事由に照し犯罪の証明は明かである。
(法令の適用)
法律に照すと、被告人の判示所為は道路交通法第四二条第一一九条第一項第二号罰金等臨時措置法第二条第一項に該当するので所定刑中罰金刑を選択しその範囲内で被告人を罰金五、〇〇〇円に処し刑法第一八条により罰金を完納することができないときは金二五〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、刑事訴訟法第三四八条に従い右罰金に相当する金額を仮納付すべきことを命じ訴訟費用は同法第一八一条第一項本文に則り被告人に負担させることとする。
よつて主文のとおり判決する。