大判例

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大分地方裁判所 平成2年(ワ)608号 判決

(抄録)

「一 請求原因1、2、6及び7の各事実は、当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、請求原因3及び4の各事実が認められる。

二 そこで、抗弁について判断するに、抗弁1(一)の事実のうち被告一枝が本件売買契約の締結当時未成年者であったことは当事者間に争いがなく、抗弁1(一)のその余の事実及び1(二)の事実を明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

三 原告は、本件売買契約は民法五条にいう処分を許された財産の随意処分にあたる旨主張し、その根拠として右契約の割賦金が法定代理人により処分を許された財産で賄い得ることを挙げており、本件売買代金支払のために締結された本件立替払契約では毎月四万円程度の分割弁済とされていることは前記認定のとおりである。

しかし、売買契約を締結した未成年者は売買代金全額の債務を負担することとなるから、同条にいう財産の随意処分にあたるといいうるためには、未成年者が負担する一回の割賦金の全額ではなく、代金支払債務の総額が法定代理人により処分を許された財産で賄いうることが必要であると解すべきであり、本件の場合、売買契約の目的物が総額一一六万円の振袖であることは当事者間に争いがなく、被告一枝がかかる金額に相当する財産の処分を同人の法定代理人である父太郎から許されていたことを認めるに足りる証拠はない。

四 以上によれば、本件売買契約は有効に取り消されたものというべく、本件売買契約の目的物である振袖は割賦販売法二条所定の指定商品であるから、同法三〇条の四により、被告一枝は、丙原に対する本件売買契約の取消をもって割賦購入あっせん業者である原告に対抗することができる。したがって原告の同被告に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がなく棄却を免れない。

五 原告は、被告乙川が被告一枝が未成年であることを知りながら被告一枝の原告に対する本件立替金債務を連帯保証したのであるから、民法四四九条により、被告一枝の本件売買契約の有効な取消にもかかわらず、それを信販会社に対抗しえない旨主張するので、以下この点について判断する。

1 本件売買契約が、有効に取り消されたことは前示のとおりであるが、被告乙川が本件立替払債務の連帯保証をした当時、被告一枝が未成年者であることを知っていたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、被告乙川の経営するスナックに客として出入りしていた丙原は、同店の従業員であった被告一枝に対して成人式用の着物の購入を勧誘し、平成二年二月一六日ころ、被告一枝との間で本件売買契約を締結したこと、前同日、丙原は、本件売買契約の代金支払を目的として甲第一号証の用紙を提示して被告らに署名押印ならびに必要事項の記載を求め、これを原告に送付して本件立替払契約が成立したこと、本件売買契約及び本件立替払契約はいずれも被告一枝の法定代理人である父太郎の同意を得ずに締結され、被告乙川は右事実を承知していたことが認められる(なお、被告乙川は被告一枝が法定代理人の同意を得られないとは思っていなかったので、取消原因の存在を知らなかった旨主張するが、被告一枝が法定代理人の同意を得ずに本件立替払契約を締結することを認識していた以上、法定代理人の同意が事後的に得られる可能性を認識しただけでは、取消原因の存在を認識していなかったということはできない。)。

2 被告乙川は、被告一枝の有する本件売買契約の取消による売買代金債務の消滅という抗弁権を原告に対して主張するものであって、被告一枝と原告との間の本件立替払契約の取消による主債務の消滅を主張するものではない。被告一枝の有する右抗弁権と本件立替払契約の取消による主債務の消滅とは別個の主張と考えられるから、本件では、民法四四九条の適用が直接問題となるわけではないが、被告乙川は、右抗弁権の主張が認められれば本件立替払契約が取消されたのと同様の法的効果を享受することができるから、民法四四九条の類推適用により、被告乙川が被告一枝の右抗弁権を主張することが許されないか否かについて検討する。

購入者と割賦購入あっせん業者(信販会社)との間の立替払契約は、購入者の売買契約に基づく代金の支払を目的として締結されるものであり、販売店と信販会社との間にも加盟店契約等による一定の契約関係があるから、立替払契約と売買契約との間には経済的には密接な関係があるというべきであり、立替払契約の法的性質をどのように考えるかを別にしても両者の間に一定の法的な関連性を認めることはできる。しかし、立替払契約と売買契約とは法的には別個独立の存在として成立するのであるから、当事者間に特約があるなど特段の事情がない限り、売買契約の成否やその効力の消長が直ちに立替払契約の成否やその効力に影響を及ぼすものではない。本件全証拠によっても原告と被告一枝との間に本件立替払契約の効力の消長を本件売買契約の効力の消長にかからしめる旨の特約の存在を認めることはできないし、本件立替払契約の効力の消長を本件売買契約の消長にかからしめるべき特段の事情の存在を認めることはできない。したがって、被告一枝の法定代理人である父太郎による本件売買契約の取消によって直ちに本件立替払契約がその効力を失い、被告一枝の原告に対する立替金支払債務が消滅したということはできない。

仮に、被告一枝の原告に対する立替金債務が消滅するとしても、民法四四九条の類推適用によって、被告乙川が被告一枝の立替金債務とは独立の債務を負担すると推定するのは相当ではない。

すなわち、民法四四九条は、無能力によって取り消すことを得べき債務を保証した者が保証の当時取消原因を知っていたときは、主たる債務が取り消された場合、主たる債務と同一の目的を有する独立の債務を負担するものと推定する旨規定している。右規定は、取り消し得べき債務の保証人となる者は、主たる債務が取り消されたことによって債権者が被るべき損害を担保する意思を有するものと推測して規定されていると思われるが、取り消し得べき債務の保証人が通常右のような意思を有するものと推測することの合理性には疑問があり、また、債権者の側にもこのような損害担保の目的のために保証を求める意思を一般的に有するということもできない。そして、民法四四九条は、保証契約としてなされたものについて、その附従性に反する内容を含んでいると推定するのであるから、右規定の適用は慎重になされる必要があり、右規定は、取り消し得べき債務そのものが取り消された場合に適用され、その他の原因により取り消し得べき債務が消滅した場合には適用がないと解するのが相当である。本件では、立替払契約は取り消されておらず、売買契約の取消の効果として本件立替金債務が消滅した場合であるから、民法四四九条の適用はなく、また、前記理由から、右規定を類推適用して被告乙川が原告に対し被告一枝と独立の債務を負担するものと推定するのも相当でない。そうであるとすれば、民法四四九条の類推適用により、被告乙川が被告一枝に有する本件売買契約の取消による売買代金債務の消滅の抗弁権を主張することが許されないということはできず、その他、本件全証拠によるも右抗弁権の主張が信義則等許されないという事情の存在を認めることはできない。

したがって、原告の再抗弁2の主張は採用することはできない。」

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