大判例

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大分地方裁判所 平成9年(行ウ)19号 判決

原告

三建不動産株式会社

右代表者代表取締役

世木沢洋介

右訴訟代理人弁護士

永井津好

被告

大分市長 木下敬之助

右訴訟代理人弁護士

岩崎哲朗

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  本件土地の所有、利用等をめぐる事実関係について

1  原告は、平成三年三月二七日、株式会社テレビ大分から本件土地を買い受け、平成六年五月ころから、本件土地上に別紙施設概要記載のとおりの平面式駐車場(以下「本件駐車場」という。)を設置し、その利用に供してきた(〔証拠略〕)。

2  原告は被告から、本件土地に係る平成六年度分、同七年度分、同八年度分の各特別土地保有税の納税義務の免除認定を受けた(争いのない事実)。

3  原告は、平成八年一〇月二九日、株式会社三栄都市(以下「三栄都市」という。)に対し、本件土地を売却した(〔証拠略〕)。

右売買契約によれば、<1>原告は三栄都市に対し、本件土地を平面式駐車場の現況のままで売却し、平成九年四月三〇日、三栄都市が原告に対し売買残代金全額を支払い、右支払と引換えに本件土地の所有権が三栄都市に移転するとともに、原告が三栄都市に対し、本件土地を右現況のままで引き渡すこととする、<2>原告は、管理者との管理委託契約を解約のうえ、駐車場賃借人との賃貸借契約を解約し占有を解除して本件土地を三栄都市に引き渡すが、この際、フェンス、照明灯、看板、プレハブ式管理棟等の付帯設備やアスファルト舗装については現況のままとする、<3>右平成九年四月三〇日までに駐車場賃借人の解除明渡しができない場合には、残代金の支払・引渡期限を同年六月三〇日に変更するなどとされていた(〔証拠略〕)。なお三栄都市は、マンション建築目的で本件土地を購入し、原告もこれを了解して本件土地を売却したものである(〔証拠略〕)。

また原告は右同日、本件駐車場の駐車場賃貸借契約の解約、明渡し等の管理業務を株式会社幸建(以下「幸建」という。)に委託した(〔証拠略〕)。

4  本件駐車場の駐車台数は、その開設から平成八年一一月ころまで、二三〇台前後で推移していた(〔証拠略〕)。

幸建は、平成八年一一月一一日ころ、原告の代理人として、本件駐車場の各駐車場賃借人全員に対し、各賃借人との自動車保管場所賃貸借契約につき、同年一二月三一日をもって解約する旨の解約予告通知をした(〔証拠略〕)。そして、原告と幸建との協議に基づき、右解約の意思表示が各駐車場賃借人に到達したことを周知させるため、同年一二月ころ、本件駐車場内に、原告と幸建の連名で、本件駐車場は平成八年一二月末日をもって閉鎖する旨の表示のある立看板が設置された(〔証拠略〕)。

また原告は、同年一二月二八日、本件駐車場を同月末で閉鎖することによる入庫車両及び不審者の排除のため、株式会社日公警備保障(以下「日公警備保障」という。)に対し警備委託をした(〔証拠略〕)。日公警備保障は、平成九年一月六日から同年二月六日にかけても右委託に基づき本件駐車場の巡回警備業務を行った(〔証拠略〕)。

5  平成八年一一月以降の本件駐車場の月初め駐車台数(幸建作成の駐車料金徴収名簿の記載による。)は、同年一一月が二三一台、一二月が一五四台、平成九年一月が三一台、二月が一〇台、三月が〇台であった(〔証拠略〕)。平成九年一月以降も若干の駐車台数があったのは、代替駐車場を物色中であるとか、法人契約者で社員等が利用する必要があるなどの申出のあった駐車場賃借人について、原告がこれに応じて出入庫を認めたことによるものであった(〔証拠略〕)。

大分市財務部資産税課職員らは、平成九年一月一〇日午後三時から四時三〇分までの間、同年三月一二日午後一時三〇分から二時までの間の二回にわたり本件駐車場の現地調査をしたが、いずれの調査時においても、本件駐車場内には自動車が一台も駐車していない状況であった(〔証拠略〕)。

6  原告は、平成九年四月三〇日、三栄都市に対し、同社との前記売買契約に基づき、本件土地を現況のまま引き渡し、右同日、本件土地の所有権は三栄都市に移転した(〔証拠略〕)。

三栄都市は、平成九年五月八日、大分市建築主事に対し、本件土地上に建築予定の一五階建共同住宅について建築確認を申請し、同年六月一七日、右建築確認を受けた(〔証拠略〕)。同年七月二四日の大分市財務部資産税課職員らによる本件土地の現地調査の際には、既に本件駐車場施設の取壊し、右共同住宅の建築工事が着工されていた(〔証拠略〕)。

二  争点1の(一)について

1  特別土地保有税は、土地の投機的取引を抑制し、併せて遊休土地の供給を促進するための市町村税であるところ、既に社会通念上相当程度の利用がされている土地については、右のような特別土地保有税の性格からみて、税負担を求めることが適当でないという趣旨に基づき、このような場合の課税の適正を図るための措置として、法六〇三条の二による特別土地保有税の納税義務の免除制度が設けられており、右免除の前提として、市町村長が、当該土地が同条一項各号に定める土地のいずれかに該当する旨の認定が必要とされ、同項の委任を受けた施行令五四条の四七各項において、右各号の要件をそれぞれ具体化した基準を定めている。

また、右各基準に適合するかどうかの認定にあたっては、法五九九条一項の規定により、当該特別土地保有税の税額を申告納付すべき日の属する年の一月一日(基準日)の現況によるものとされている(法六〇三条の二第七項、五八六条四項)。

そして、法六〇三条の二第一項二号では、建物、構築物その他の工作物及びこれらと一体的に利用されている土地により構成されている施設(特定施設)で、恒久的な利用に供するものとして政令で定める基準に適合するものの用に供する土地であることが免除の要件とされ、同号の委任を受けた施行令五四条の四七第二項は、右基準について、その整備状況が同一又は類似の用途に供される施設について通常必要とされる整備の水準と同程度の水準に達しているものであること(同項一号)、その利用が相当の期間にわたると認められること(同項二号)、その効用を維持するため通常必要とされる管理が行われると認められること(同項三号)と規定している。

本件土地は、前記特定施設である駐車場の用に供する土地として、前記恒久性の要件の有無が問題となるところ、前記の特別土地保有税の免除制度の趣旨に鑑みれば、右各基準のうちの「その利用が相当の期間にわたると認められること」とは、特定施設としての利用が当該特定施設に係る通常の利用期間にわたると認められることと解される。そして、その認定に当たっては、前記のとおり基準日の現況に基づいて行うべきであるが、「その利用が相当の期間にわたると認められること」の基準に適合するかどうかについては、基準日現在の一時的な現況のみによってはこれを判定することが困難であるから、当該基準日を中心とする一定の期間における土地の利用状況、所有者の利用意思をも勘案して行う必要があると解される(最高裁昭和六〇年(行ツ)第一七九号同六三年四月二一日第一小法廷判決・判例時報一二八〇号六七頁参照。昭和五三年四月一日付自治固第三八号自治省税務局長通達「恒久的な建物、施設等の用に供する土地に係る特別土地保有税の納税義務の免除の取扱いについて」(以下「本件通達」という。)第二―五も同旨である。)

また、右認定にあたっては、所有者の利用意思、特定施設の具体的な利用状況等を総合的に勘案すべきほか、駐車場などのような土地自体の利用を主たる目的とする特定施設については、その使用頻度、具体的にはピーク時における利用率(駐車場については、駐車台数が収容定数に占める割合)等をも考慮することが必要であると解される(本件通達第二―三2(2)、二2(2)、同日付自治省税務局固定資産税課長内かん「恒久的な建物、施設等の用に供する土地に係る特別土地保有税の納税義務の免除の運用について」一1ウも同旨である。)。

2  そこで本件についてみると、前記認定した事実によれば、原告は、平成八年一〇月二九日、三栄都市によるマンション建築のため、同社に本件土地を売却し、右契約に基づく平成九年四月三〇日までの本件土地の引渡しを実現するため、平成八年一〇月二九日付けで幸建に本件駐車場に係る解約、明渡し等の管理業務を委託し、同年一一月から一二月にかけて、各駐車場賃借人に対する解約予告通知や立看板の設置によって、本件駐車場を同年一二月末日をもって閉鎖する旨の意思を明らかにし、また平成九年一月上旬から二月上旬にかけて、日公警備保障に本件駐車場の閉鎖に伴う警備業務を行わせるなどの措置を採ったものである。したがって、原告は、遅くとも、基準日である平成九年一月一日(以下「本件基準日」という。)において、同年四月三〇日の本件土地引渡時までに、本件駐車場を閉鎖し、もはや駐車場としての利用を停止する意思を有していたものであり、そのことは、本件基準日における本件土地の現況(立看板)によって、外形上も容易に窺えるところであったというべきである。

そして、前記認定したとおり、平成八年一一月以降本件駐車場の駐車台数が漸次減少し、本件基準日(一月の月初め)においては駐車台数(三一台)が収容台数(二四一台)の一割強に過ぎず、同年三月には〇台となったものであり、また同年四月三〇日には本件土地が三栄都市に引き渡されて、同年七月ころには三栄都市が本件駐車場施設の取壊し及び共同住宅の建築工事に着工しており、このような本件基準日前後における利用状況及び使用頻度の点からみても、本件基準日において、本件土地の駐車場としての利用が通常の利用期間にわたると認めることはできない。

したがって、本件土地は、本件基準日の現況において、本件駐車場としての利用が相当の期間にわたるものとして、施行令五四条の四七第二項二号の基準に適合しているとは認められず、法六〇三条の二第一項二号の特定施設に係る恒久性の要件を欠いているというべきである。

3  なお、原告は、本件土地が右要件を充足するとして、その根拠をるる主張するが、いずれも独自の見解に立って主張するか、右認定を左右するに足りない事由に基づき主張するものであって、原告の主張を採用することはできない。

三  争点1の(二)について

1  原告は次のとおり主張する。

(一)  原告は、平成六年度に本件土地について特別土地保有税の免除認定を受け、平成七年度、八年度と、それぞれ特別土地保有税の申告書の「免除認定」の不動文字記入欄に○印を記載して申請し、特別土地保有税審議会への付議を経ないで、簡略な手続により認定を受けていた。

(二)  原告は、平成九年度分についても、本件駐車場の利用実態が従前どおりであることを主張し、平成九年五月二〇日ころ、従来と同様、特別土地保有税の申告書の「免除認定」の不動文字記入欄に○印を記載し、「免除認定中」との表示をして被告に送付した。

(三)  ところが、被告は右申告書を受理することなく放置し、全く新規に免除認定を申請するように原告に強要した。そこで、原告がやむなく同年六月二四日、新規に免徐認定の申請書を提出したところ、被告は右申請書に六月二四日付受理印を押印したものと、今まで放置していた前記申告書の控えに五月二八日付受理印を押印したものを、原告に返却したものである。

(四)  このように、被告が原告に対し、免除認定の二重申請を強要したのは、公平な行政手続の原則に違反している。というのは、被告は、既に原告が提出している「免除認定中」との先行申請に対する態度を留保し、これに対する判断を示すことなく、特別土地保有税審議会に付託するため、いわば原告の担当者を騙して、新規の免除認定申請をさせたものであるから、このような手続を経てされた本件否認処分は不公正の謗りを免れない。

2  原告主張の右事実のうち、(一)の事実、(二)のうち原告が平成九年度分について、平成九年五月二〇日ころ、従来と同様、特別土地保有税の申告書の「免除認定」の不動文字記入欄に○印を記載し、「免除認定中」との表示をして被告に送付したこと、(三)のうち原告が同年六月二四日、免除認定の申請書を提出したこと、被告が右申請書に六月二四日付受理印を押印したものと、前記申告書の控えに五月二八日付受理印を押印したものを原告に返却したことは当事者間に争いがない。

ところで、特別土地保有税の納税義務の免除認定を既に受けた土地について、当該認定に係る事情に変更がなく、かつ、当該土地の所有者に変更のないときは、免除認定の申請をする必要がないが、当該認定に係る事情に変更があれば、再度免除認定を受けるためには、免除認定申請書の提出が必要である(法六〇三条の二第二項、施行令五四条の四八第一項)。そして、前記認定判断したところに〔証拠略〕を総合すると、本件土地については、前年度までの免除認定に係る事情に変更があり、平成九年度分の特別土地保有税について免除認定を受けるためには、再度免除認定申請書の提出が必要であったこと、右平成九年度分については、本件土地は法六〇三条の二第一項二号の恒久性の要件を欠いており、原告が免除認定申請書を提出しなければ、原告が被告に送付した前記申告書の納付税額が更正されるべき状況にあったこと(法六〇六条一項)、右申告書の記載から、原告が免除認定を受ける意思があると判断されたため、大分市財務部資産税課職員から原告に対し、免除認定申請をするかどうかの意思確認がされ、これを受けて原告が前記免除認定申請書を提出したことが認められる。

右認定したところによれば、本件否認処分について被告がした手続に、二重申請を強要したとか、公平な行政手続に違反したとか、不公正な点があったなどということはできず、原告の主張は採用することができない。

四  争点2について

原告は、本件異議決定について、本件駐車場の駐車台数に関する理由不備・事実誤認、地方税法六〇三条の二第一項の解釈を誤った違法があると主張して、本件異議決定の取消しを求めているが、右主張は実質的には、本件否認処分が適法であるとした本件異議決定の実体的判断を論難するものであり、裁決固有の瑕疵を主張するものではないから、主張自体失当である(行政事件訴訟法一〇条二項参照)。

五  結論

以上によれば、本件否認処分及び本件異議決定ともに取り消すべき違法事由はなく、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 一志泰滋 裁判官 山口信恭 大西達夫)

施設概要

所在:大分市東春日町一四〇番他五筆

敷地面積:五、五七〇m2

施設名:三建リソーパーキング(有人式・月極駐車場)

収容台数:二四一台(二・五m×五m/台・専有使用面積率五四%)

舗装率:一〇〇%(アスファルト、路盤鉱砕厚さ一五〇m/m、表層密粒度アスコン三〇m/m)

その他:管理棟(五m2、水洗簡易トイレ付)、照明灯一式

金属フェンス(H=一・二m)一式、表示看板・消火器具他

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