大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大分地方裁判所 昭和46年(行ウ)5号 判決 1983年3月30日

大分市長浜町三丁目六番三号

原告

葛城啓三

右訴訟代理人弁護士

臼杵勉

内田健

大分市中島西一丁目一番三二号

被告

大分税務署長

渡部喜代美

右指定代理人

田中清

山下碩樹

水野隆昭

森武信義

山本輝男

岩下輝義

主文

1  被告が原告の昭和四一年分の所得税につき、昭和四四年八月一八日なした更正処分のうち、課税総所得金額一、四六七年六、〇七四円を超える部分を取消す。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

事実

第一申立

一  原告

1  被告が原告の昭和四一年分の所得税につき、昭和四四年八月一八日なした更正処分を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

第二主張

一  請求原因

1  原告は被告に対し、昭和四一年分の所得税について昭和四二年三月九日に総所得金額を損失額一、〇二三万九、〇六八円とする確定申告をした。

2  被告は、昭和四四年八月一八日総所得金額を一、七五五万八、三一九円と更正し、右更正処分に対する原告の異議申立を審査請求として、熊本国税不服審判所長は昭和四六年五月三一日右審査請求を棄却する旨の裁決をした。

3  しかし被告がした右更正処分は原告の所得を過大に認定したもので違法である。

よって被告がした更正処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1、2の事実は認めるが、同3は争う。

原告の昭和四一年分の所得税につき被告がなした更正処分は、被告の主張の項で述べるとおり、適法である。

三  被告の主張

1  原告の昭和四一年分所得税の確定申告額、被告の更正決定額および異議申立額ならびに被告主張額を示すと別表(一)のとおりである。

2  原告の昭和四一年分所得税の事業所得の金額について、原告の主張額とそれに対応した被告主張額および差額を示すと、別表(二)のとおりである。

3  総収入金額四、二一七万七、八四九円について

(一) 原告の昭和四一年分所得税の事業所得の金額の計算上総収入金額は四、二一七万七、八四九円である。

(二) 原告はこれに対し、総収入金額は一、五三三万二、四三〇円であると主張し、その理由として別表(三)の1の土地(以下甲グループの土地という)及び同表の2の土地(以下乙グループの土地という)は昭和四一年三月三一日付をもって大分県に新住宅市街地開発法による用地として買収され、その代替地として別の土地を取得したからこの取得土地は、昭和四四年法律第一五号による改正前の租税特別措置法(以下「措置法」という)第三一条第一項の代替資産に該当するから、譲渡所得として課税延期(譲渡資産の譲渡がなかったものとする)の適用を受けるとする。

(三) しかしながら前記の大分県に売却した土地は、原告の不動産売買業における「たな卸資産」に該当するから、本土地の売上金額計二、六八四万五、四一九円(その内訳は、別表(三)の1の土地の売上金額二、二一一万八、六一九円、同2の土地の売上金額四七二万六、八〇〇円)については措置法第三一条第一項の適用はない。

4  必要経費二、五六一万〇、一六五円について

(一) 原告の昭和四一年分所得税の事業所得の金額の計算上総収入金額から差引く必要経費は、売上原価一、一九二万七、三一五円と販売費および一般管理費一、三六八万二、八五〇円の合計額二、五六一万〇、一六五円である。

(二) 売上原価一、一九二万七、三一五円について

(1) 売上原価は、資産の取得価額の合計額一、一八二万八、三〇〇円に、当該資産の取得に要した費用の合計額九万九、〇一五円を加算した一、一九二万八、三〇〇円は、これに関する原告の主張額九〇二万八、三〇〇円に、甲グループの土地の取得価額八〇万〇、〇〇〇円と乙グループの土地の取得価額二〇〇万〇、〇〇〇円との合計額二八〇万〇、〇〇〇円を加算した金額である。

(2) 原告は、不動産の取得時から売却時までの経過利子四万八、一六五円を必要経費に算入すべきであると主張する。しかしながら、所得税法第二七条第二項は「事業所得の金額は、その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする。」と規定し、さらに必要経費については同法第三七条第一項で「当該収入金額を得るために直接要した費用の額、およびその年中における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき事業について生じた費用(償却費以外の費用でその年中において債務の確定しないものを除く)の額とする。」と規定している。

従って当年前に発生したものとしての経過利息を売上原価に加えて必要経費として控除することはできない。

(三) 販売費および一般管理費について

(1) 公租公課六万六、五四〇円の否認について

原告が支払った不動産取得税で、次の金額は、昭和四〇年中に確定した金額であるから、昭和四〇年分の必要経費として認容したので、本年分としては否認する。

(納付年月日) (金額) (債務確定時)

昭和四一・三・三 二二、一三〇円 昭和四〇年一〇月

昭和四一・三 三 四二、七八〇円 昭和四〇年一一月

昭和四一・四・一五 一、六三〇円 昭和四〇年随時分

(2) 賦課金否認一万二、七〇〇円について

大南地区の林道負担金であり、事業所得の必要経費とならないから否認する。

(3) 手数料否認四〇万〇、〇〇〇円について

イ 昭和四一年九月二九日支払いの三〇万〇、〇〇〇円と五万〇、〇〇〇円は、所得税の課税処分取消請求事件についての訴訟費用の支払いであり、事業所得の必要経費とならないから否認する。

ロ 昭和四一年四月二三日支払いの五万〇、〇〇〇円は、大分市長浜町三丁目六番二六号春山ハルから昭和四一年四月二二日土地(宅地)を取得したときの世話料であり、この物件は本年末(昭和四一年)現在でまだ原告が所有している「たな卸資産」である。よってその資産の取得原価に算入すべきものであり否認する。

(4) 支払利息否認三二六万九、一九一円について

イ 支払利息の否認については、原告主張額である昭和四一年中の支払額一、四九五万一、二九〇円のうちから、そのうちの未経過分として昭和四二年分に負担させるべき金額、および重複計上分、並びに誤った過大計上分等の合計額四〇一万一、〇三九円を否認する。

ロ 次に前年分の必要経費から控除した七四万一、八四八円を本年(昭和四一年)分の必要経費として追認する。

ハ 以上のとおり否認額四〇一万一、〇三九円から追認額七四万一、八四八円を差引いた三二六万九、一九一円が支払利息の否認額である。

(5) 原告主帳のマイクロバスの湯布院町に対する寄付は、昭和四二年法律二〇号による改正前の所得税法九一条の寄付金控除の対象たる寄付金であって事業所得の必要経費とならないから否認する。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張の1及2の各事実は認める。

2  同3及び4の各主張事実のうち、課税の基準となる事実関係及び法律の適用に関する原告の主張として挙示する部分は認めるが、その余は否認し、法律上の主張は争う。

3  被告は、原告の昭和三九年分の所得税の更正処分及び異議棄却決定において、原告の乙グループの土地の取得が山林業の種苗地の収用のための代替資産の取得であると認定判断していたものであるから、信義則上昭和四一年分の所得税の決定に際しても乙グループの土地を代替資産であると認定するべきである。

4  原告は、昭和四〇年一一月一〇日湯布院町に対し、大分県大分郡湯布院町大字川西字ユム田一二〇一番一原野一〇町歩を売却することを約し、右売買契約締結後の際の同町からの要請に応じ、昭和四一年八月三日マイクロバス一台(代金一二七万円)を同町に寄付した。

右のマイクロバスの寄付は、もし原告が拒絶すれば土地売買が成立しなかったものであるから、原告が土地代金を得るために直接要した費用、すなわち事業所得の必要経費として控除するべきである。

第三証拠

一  原告

1  甲第一号証、第二号証の一、二、第三号証、第四号証の一ないし三、第五ないし第七号証、第八号証の一ないし四、第九ないし第二三号証、第二四号証の一、二、第二五ないし第二八号証、第二九号証の一ないし三、第三〇ないし第四三号証、第四四号証の一ないし六、第四五号証

2  原告本人

3  乙第八四号証の一ないし四、第八七号証の一ないし四、第八八号証、第九二号証の一、二、第九三号証の一ないし八、第一〇一ないし第一〇三号証、第一〇四号証の一ないし五、第一〇五号証の一ないし三、第一一四号証、第一二二号証、第一二五号証、第一二八、一二九号証、第一三四ないし第一四六号証、第一五五号証の一ないし四、第一五六号証の一ないし三の各一、二の成立は不知。その余の乙号各証の成立は認める(第一五八号証の一、二、第一五九号証の一ないし三は原本の存在及び成立とも)。

二  被告

1  乙第一号証、第二号証の一ないし一三、第三ないし第七七号証、第七八号証の一ないし六、第七九号証の一ないし四、第八〇号証の一ないし三、第八一、八二号証の各一ないし四、第八三号証、第八四号証の一ないし四、第八五、八六号証、第八七号証の一ないし四、第八八ないし第九一号証、第九二号証の一、二、第九三号証の一ないし八、第九四号証の一ないし三、第九五ないし第九七号証の各一、二、第九八ないし第一〇三号証、第一〇四号証の一ないし五、第一〇五号証の一ないし三、第一〇六号証の一ないし四、第一〇七ないし第一五四号証、第一五五号証の一ないし四、第一五六号証の一ないし三の各一、二、第一五七号証、第一五八号証の一、二、第一五九号証の一ないし三、第一六〇ないし第一六三号証

2  証人岩元靖

3  甲第八号証の一ないし四、第一一号証、第一七、一八号証の成立は不知。その余の甲号各証の成立は認める(第四五号証は原本の存在及び成立とも)。

理由

一  請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。

二  次に被告の主張の1及び2の各事実は、当事者間に争いがない。

三  そこで同3及び4の各主張事実及び法律上の主張について順次検討する。

1  事業所得の総収入金額について

(一)  甲グループの土地の取引による所得の種類について

(1) 原告が甲グループの土地を昭和三五年一〇月一〇日代金八〇万円で取得し、昭和四一年三月三一日これを代金二、二一一万八、六一九円で売却したことは当事者間に争いがない。

(2) 成立に争いのない甲第七号証、同第三三号証、同乙第一一一号証ないし第一一三号証及び弁論の全趣旨によれば、原告は酒造業(有限会社葛城酒造場)及び山林業を営んでいたものであるが、酒造業を営んでいた土地が買収されることになり、右有限会社葛城酒造場は昭和三六年五月六日都酒造株式会社に吸収合併され、同年八月には酒造業を廃業するに至ったことが認められる。

また、成立に争いのない乙第一五三号証により真正に成立したものと認められる乙第一四六号証によれば、原告は昭和三五年から昭和三九年にかけて筆数にして七〇余筆の土地を購入し、その大半を昭和四一年までに他に売却していることが認められる。

(3) ところで原告は、甲グループの土地は、山林経営のため取得したと主張し、甲第三号証及び同第三九号証中の原告の供述記載中にはこれにそう部分があり、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一一号証によれば、原告は昭和二八年に一〇筆、同三三年に一〇筆の山林を購入していることが認められるが、原告が甲グループの土地を購入して以来売却するまでの間、原告において実際に同土地に植林等を行なったことを認めるに足る証拠はない。

(4) 成立に争いのない乙第八五、八六号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一三六号証によれば、大分県は、昭和三三年に大分臨海工業地帯建設(第一期計画)の構想をまとめ、昭和三四年に大分市弁天町地先より鶴崎市家島地先に至る臨海工業地帯造成のための埋立計画が決定され、それに即応して、工場用地、住宅用地の取得、造成等のため昭和三五年一〇月一日財団法人大分県開発公社が同年九月六日の大分県議会全員協議会における協議を経て設立され、甲グループの土地周辺の土地の買収が開始されたこと、そして同地域が住宅用地として買収の対象になるのではないかとの風評は同年九月ころからあったことが認められる。

また、前記乙第一四六号証、成立に争いのない乙第四四ないし第五七号証並びに弁論の全趣旨によれば、原告は昭和三五年末に、甲グループの土地の近くの別表(四)の土地(以下丙グループの土地という。)を代金約四四〇万円で取得していることが認められるところ、成立に争いのない甲第三九号証、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一〇三号証、同乙第一三五号証によれば原告は、甲、丙各グループの土地購入を昭和三五年の八月頃丸井九十九に依頼したこと、その際同人に対し、甲グループの土地付近一帯の土地を指定し、時価の二倍以上の価格で早急に買いとるよう指示したことが認められる。

(5) 以上のとおり、原告が甲グループの土地を取得した時期が酒造業を廃棄した年の前年であり、また大分県開発公社が甲グループの土地周辺の土地の買収を開始する直前であったこと並びに甲グループの土地取得の経過、同土地の管理状況及び原告がその後不動産業をするようになった時期等を総合すると、原告は、甲グループの土地を転売による利益を得ることを目的として取得したものと認められ、右土地の譲渡による所得は、事業所得と認められる。

(二)  乙グループの土地の取引による所得について

(1) 原告が乙グループの土地を昭和三九年七月五日代金二〇〇万円で取得し、昭和四一年三月三一日これを代金四七二万六、八〇〇円で売却したことは当事者間に争いがない。

(2) 弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一八号証及び弁論の全趣旨によれば、原告が昭和三九年二月二九日と同年一〇月二二日にわたり、山林業の種苗地であった大分市大字上戸次字脇ノ津留四六九九番の一畑、同所四六九三番の二畑、同所四六九九番の四畑を国道一〇号線改良工事のため収用されたこと並びに同年五月一九日大分市大字上戸次字山崎四七五四番畑など三筆を衛藤直に、また同年六月九日大分市大字上戸次字一町畑など三筆を高橋忠一にいずれも種苗地としての管理が困難となったため売却したことが認められる。

(3) ところが、昭和三九年ころは、乙グループの土地周辺が明野住宅団地の予定地とほぼ決っていたことは前記甲三九号証中の原告の供述中で原告が自認するところであり、成立に争いのない乙第五八ないし第七六号証及び弁論の全趣旨によれば、前記(一)の(4)で認定した大分県開発公社がその設立目的にそって昭和三六年二月一八日に乙グループの土地に隣接した別表(五)の土地を買収していたことが認められ、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一〇一号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一〇二号証によれば、乙グループの土地の所有者栗木セイは、原告に同土地を売渡す前に右大分県開発公社から買収の交渉を受けたが、これに応じないで、その直後に右公社の買収申出価額よりも高額で買受けの申込みをした原告に売却したことが認められ、更に前記(一)の(2)、(4)で認定した諸事実並びに乙グループの土地の購入から売却までの期間が短期間であったことを総合すると、原告は乙グループの土地を不動産業における売買の一環として取得し売却したものと認められる。

(4) なお、原告は、被告が原告の昭和三九年分の所得税の更正処分及び異議棄却決定の際、原告の乙グループの土地の取得が山林業遂行上の代替資産の取得であると認定判断しているから、信義則により昭和四一年分の所得税の決定に際し、乙グループの土地を従前の認定と同じ代替資産であると主張するけれども、課税はもっぱら客観的事実に基づいてなされるべきであるから、本件において認定される事実が前記のとおりである以上、右事実を基礎として課税をすることを信義則に違背するということはできない。

2  事業所得の必要経費について

(一)  公租公課について

弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一五五号証の一及び弁論の全趣旨によれば、原告が昭和四一年中に納付した不動産取得税のうち、昭和四一年三月三日の二万二、一五〇円、同日の四万二、七八〇円、同年四月一五日の一、六三〇円は、いずれも昭和四〇年中に債務が確定していた分であり、原告の昭和四〇年分の所得税の決定の際に必要経費として計上されていることが認められる。

(二)  賦課金について

弁論の全執旨によれば、賦課金一万二、七〇〇円は、原告所有の山林の林道負担金であることが認められるから、右支出は、原告の山林所得にかかる収入金額から控除すべき必要経費であり、事業所得の必要経費ではないというべきである。

(三)  手数料について

原本の存在及び成立に争いのない乙第一五八号証の一、二、成立に争いのない同第一六三号証及び弁論の全執旨によれば、原告は課税処分取消訴訟の提起のための手数料として、昭和四一年九月二九日に訴訟代理人弁護士に金三五万円を支払ったことが認められる。

訴訟代理人弁護士に対する報酬等は、これが不動産業者の業務の遂行上生じた紛争又は当該業務の用に供されている資産につき生じた紛争を解決するために支払われたもので、あれば、これを業務遂行上の必要経費と解することができるけれども、課税処分に関する紛争を解決するために支払われたものはこれを業務の遂行上直接必要なものと解することはできない。

次に、弁論の全趣旨によれば、原告が昭和四一年四月二三日土地家屋売買手数料として支出した五万円は春山ハルから不動産業のため取得した土地は昭和四一年末においてまだ売却されていないことが認められるから、右世話料は、当該物件を売却したときに必要経費として計上すべきものであり、昭和四一年分の事業所得の必要経費には含まれないというべきである、

(四)  出張旅費について

原本の存在及び成立に争いのない乙第一五九号証の一ないし三及び弁論の全趣旨によれば、原告が出張旅費として主張している昭和四一年二月二二日から二四日の四万〇、〇六〇円、同年三月一五日から一七日の三万七、八八〇円、同月二四、二五日の一万一、八一〇円は、いずれも原告が所得税に関する紛争処理のため支出した旅費であることが認められ、右支出は、原告の不動産業の業務遂行上直接に必要なものであると認めることができないから、事業所得の必要経費にあたらないというべきである。

(五)  支払利息及び経過利息について

借入金をもって土地を購入した場合に支払った利子は、これを売上原価に算入することができると解すべきであり、右利子が前年度以前に発生しているとの理由で必要経費として控除することができないものではないと解されるけれども、右支払利子が必要経費にあたるとするためには、原告において個別的、具体的に各土地取得についての金員の借入状況、利息の支払状況を明確にすべきであり、ただたんに土地取得時と売却時との間に日月の差があるというだけで、その間の利子相当額が必要経費になるものではないというべきであるから、右の点が明確でない本件においては、被告が昭和四一年分の現実支払利息の総額についてのみこれを必要経費としたことは適法というべきである。

そして成立に争いのない乙第二号証の六ないし一一、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第一五五号証の二ないし四、同乙第一五六号証の一ないし三の各一、二によれば、昭和四一年分として原告が主張する支払利息のうち、未経過利息、重複計上利息及び過大計上利息の合計は金四〇一万一、〇三九円であること、原告主張額以外に金七四万一、八四八円の必要経費として計上すべき支払利息があることが認められる。

(六)  マイクロバスの寄付について

成立に争いのない甲第四四号証の一ないし六及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四〇年一一月一〇日湯布院町との間で、大分県大分郡湯布院町大字川西字ユム田一二〇一番地一原野一〇町歩を湯布院町に代金四、〇〇〇万円で売渡す旨の契約を締結したこと、その際代金の支払については、「契約の日から向う一か年以内に全額の決済を終るものとする。但し双方協議の上、下記により交換の方法をとることができる。1大分郡湯布院町大字川西字ユム田一二〇〇番地の六原野一〇町五反三畝二一歩 2金員八〇〇万円也」との約定をなしたこと、原告は昭和四一年三月に湯布院町から金八〇〇万円を受領したこと、同年七月二日原告と湯布院町は、同町は原告に残代金三、二〇〇万円を同年八月一六日までに支払うが、原告は同町の右代金調達に伴う銀行利子一〇九万一、二一〇円を負担し、これを右代金から差引くほか、原告は同町にマイクロバス一台を寄贈する旨を約したこと、原告は同年七月三〇日同町から、右残代金三、二〇〇万円から銀行利子負担金一〇九万一、二一〇円及びマイクロバス一台の代金一二七万円を差引いた金二、九六三万八、七九〇円を受領したことが認められ、右の事実に照らすと、原告が負担した右金二三六万一、二一〇円は、原告が右売買による収入金額を得るため直接に要した費用又は右売買による売掛金について生じた損失として、昭和四一年分の事業所得の必要経費に算入すべきものと認められる。

四  以上のとおりであって、原告の昭和四一年分の事業所得は、被告主張額金一、六五六万七、六八四円から前記金二三六万一、二一〇円を減じた金一、四二〇万六、四七四円と認められるから、課税総所得金額は、金一、四六七万六、〇七四円となる。

したがって原告の昭和四一年分の所得税につき昭和四四年八月一八日被告がなした更正処分は、課税総所得金一、四六七万六、〇七四円を超える部分は違法というべきであり、その余は適法というべきである。

よって、原告の本訴請求は、右認定の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井義明 裁判官 白井博文 裁判官 塚本伊平)

別表(一)

<省略>

別表(二)

<省略>

<省略>

<省略>

別表(三)

<省略>

<省略>

別表(四)

<省略>

<省略>

別表(五)

<省略>

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例