大判例

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大分地方裁判所 昭和60年(行ウ)8号・昭61年(行ウ)1号・昭60年(行ウ)10号 判決

原告(昭和六〇年行ウ第八号)

清家湛(X1)

同(昭和六〇年行ウ第一〇号)

三葉工業有限会社(X2)

右代表者代表取締役

菊地一夫

同(昭和六一年行ウ第一号)

酒井ジュウ(X3)

右原告ら二二名訴訟代理人弁護士

岡村正淳

西田収

安東正美

吉田孝美

柴田圭一

古田邦夫

被告(全事件)

佐伯市(Y)

右代表者市長

佐々木博生

右訴訟代理人弁護士

山本草平

右指定代理人

芦苅昌朗

山野内真人

吉良新市

松本清隆

大良才二

白石芳明

伊藤大蔵

伊達益次郎

安森和義

原尻真二

大串法光

事実及び理由

第三 争点とこれに対する判断

五 恣意的な従前地評価の有無、路線価と不動産鑑定評価との著しい不均衡(争点5)

1  原告らの主張

(一)  本事業施行地区の地価は、事業計画書によれば、山林部分(未造成)を除き、農地(未造成)及び宅地価格は七〇〇〇円~二万八〇〇〇円/m2、山林六〇〇円/m2と、地価の最高、最抵の割合は四六対一であるが、本事業実施前の従前地の路線価指数は、最高、最低の割合が二対一と決められ、その結果、従前地評価は、原告らのように既開発の住宅地の場合不当に低く、評価委員が多数を占める地主の山林・原野は不当に高くなった違法がある。

(二)  甲六からも明らかなように、被告は従前地について恣意的に路線価評価をしているが、隣接同一地目についても路線価指数につき恣意的評価が行われた結果、原告元谷、同後藤、同室、同井澤と、武石の各従前地の評価及び減歩率の違いの説明が合理的にできない。

(三)  路線価法においても、不動産鑑定評価は極めて重要な地位を占めるべきものであるところ、原告ら所有地の路線価は、いずれも不動産鑑定評価の○・八ないし一・二倍であるのに対し、鑑定番号23番(地権者高木栄治、平和不動産有限会社)、27番(地権者深津高則)の各土地の路線価(単位評価額)は、不動産鑑定評価の七倍、三・四倍と著しい不均衡、格段に有利な評価を受けている。このことは、両地の不動産鑑定評価額と単位評価指数を比較してみると明瞭である(〔証拠略〕)。

(四)  原告石田、同神崎、同宮脇の各換地は、本件換地の結果各従前地の形状と変更はないのみか、従前地からあった約四mの道路が掘り下げられ、同石田の駐車場は道路からの出入りが困難となり、同永野の従前地は、里道に接していたのに換地により里道は用途を廃止されて袋地となり、かつ、工事に伴い隣地の雨水がすべて流れ込むようになり、従前地に比較して不便劣悪な環境になった。

2  被告の主張

(一)  原告らの主張(一)ないし(三)について

不動産鑑定評価法と土地区画整理事業における路線価法とが、<1>評価の目的(評価すべき価値)の視点において、前者は、対象土地が取引市場において有する交換価値(経済的価値)の把握を目的とするのに対し、後者は、事業による宅地の利用価値の増進の度合いを計測するため区画整理事業施行の前後における宅地の利用価値の把握を目的とし、<2>評価要因についても、前者は、当該土地の売買代金(交換価値)に影響を与えるすべての要因を総合的に考慮することとなるのに対し、後者は、対象土地の物理的な状況に即し、利用価値に影響を与える要因のみを考慮し、<3>評価の手法においても、前者は、特定の対象土地だけを個別的に評価するいわば点の評価であるのに対し、後者は、事業施行地区内の極めて多数の宅地の全てを同時に評価するいわば面的な評価であるから、施行地区内の各地域間の地価の高低の傾向を十分考慮するだけでなく、連綿と連続する各宅地相互間における均衡にも厳密に配慮しなければならない点にその違いがあることを、原告らは理解せず、誤解している。

また、単位評価指数の単位は「個」であり、不動産鑑定評価額の単位は「円」であるから、単位を同一にするため後者を指数換算して、両者を比較すると(〔証拠略〕)、原告ら主張と違い、原告ら主張の鑑定番号23番(地権者高木栄治、平和不動産有限会社)、27番(地権者深津高則)の各土地の路線価相互及び単位評価指数相互の相関関係は近似していることが分かる。

被告が従前地について恣意的に路線価評価をしているとして援用する甲六は、細則の解釈、適用を誤ったものである。

(二)  原告らの主張(四)について

原告石田と同宮脇については、地区内の他道路との接続の関係上、両原告の従前地が接していた四m道路は掘り下げられたけれども、日常生活に差し支える程の段差ができたわけではないし、従前未舗装であったのが舗装され、道路が若干移動したため、両原告の宅地の各地積は増加した。また、原告石田の駐車場が道路から出入り困難となったことはない。

原告神崎の従前地が接していた四m道路は、未舗装で、従前地から奥行き二五m程度のところで山林にぶつかり、行き止まりになっていたが、本事業により、六m道路に拡幅され、他道路と接続したのみか、道路の若干の移動により地積も増加した。

原告永野の従前地は、四名の所有地に囲まれ公道に接していなかったが、本件換地により、間口二・五一m、奥行き一六・九三mの長方形の自己所有地によって幅員八mの区画道路に接するようになり、隣地の雨水が流れ込むようになったのは、隣地所有者(清家正子)が自費で数十cm嵩上げしたためである。

3  当裁判所の判断

(一)  原告らの主張(一)ないし(三)について

本件換地をするに際してとられた路線価法は、各路線(街路)ごとに標準的な間口と奥行きをもった宅地を基準地として定め、この宅地の単位面積当たりの価格(路線価)を算定し、同じ街路に属する他の宅地については、これを基礎として個々の宅地の位置・形状の善し悪しによる修正を行い、各宅地の価格を算定するもので、この路線価は、宅地の価格に影響を及ぼす諸要素、すなわち、基準地そのものが有する価値、基準地が接する街路によって受益する価値、基準地が近隣にある諸施設によって受益する価値あるいは損失する価値を一定の算式によって評定し、算定されるものであり、その性質上、施行者に裁量が認められるものであり、路線価の定め方及び画地の特殊性に基づく修正方法が適正にされるなら、合理的な評価方法であるといえる(細則は、「路線価は、道路に接する標準宅地(間口一〇~一五m、奥行二〇m程度で路面高と等高のもの)の単位面積(m2)の平均単価を表すもので、換地作業中は指数をもって取扱うものとする。路線価指数は、街路係数、接近係数及び宅地係数の和によって求める。」旨(一五条。いわゆる評定算式)、「画地とは、一筆地又は一宅地として使用する数筆の宅地の意で、道路との関係で角地、盲地、袋地、正背地、普通地の五種に分つものとする。」(二条一号)と規定している。)。

〔証拠略〕によれば、土地区画整理事業において鑑定評価の占める割合が大きいこと(〔証拠略〕)、路線価法においても、不動産鑑定評価を参考とし(このことは、細則一五条二項も規定しているところである。)、これとバランスを保っていることが重要である(〔証拠略〕)こと、路線価と不動産鑑定評価額との間における相関関係及び比例関係の成立が、土地区画整理事業における土地評価の検証になる(〔証拠略〕)が、必ずしも、不動産鑑定評価と一致する必要はないものと解される。

ところで、原告らは、鑑定番号23番(地権者高木栄治、平和不動産有限会社)、27番(地権者深津高則)の各土地(従前地)の路線価(単位評価額)は、不動産鑑定評価の七倍、三・四倍と著しい不均衡、格段に有利な評価を受けているが、このことは、両地の不動産鑑定評価額と単位評価指数を比較してみると明瞭であるとして、甲五を援用するので検討するに、〔証拠略〕によれば、路線価を不動産鑑定評価額と比較して検証を行うには、指数で評価された路線価と同じように、不動産鑑定評価額も指数に換算して標示し、比較することが必要であると認められるから、不動産鑑定評価額と単位評価指数を比較した甲五をもって、路線価と不動産鑑定評価額との間における相関関係及び比例関係が成立しないと主張するのは当を得たものとはいい難いところ、右のように不動産鑑定評価額を指数に換算したもの(〔証拠略〕)によれば、右両地についても、路線価相互と不動産鑑定額相互の相関関係及び比例関係が、施行者の裁量の範囲を超えて違法であるとまで評価すべきものということはできない。

たしかに、〔証拠略〕によるも、右両地の路線価が、他の不動産鑑定評価の対象地に比較して、不動産鑑定評価額と差があることが認められるが、土地区画整理事業における宅地の評価の目的が、土地の売買を行うための取引市場における交換価値を把握するものではなく、土地区画整理事業によって増進する宅地の利用価値相当額を把握しようとするものであり、また、広汎な範囲の宅地を限られた期間内に評価する必要があること、清算金の性格が換地相互間の不均衡是正を目的としているので、清算金を徴収される者と交付される者との均衡を考慮して評価する必要があること、事業開始時から換地処分の日までに相当の期間の開きがあるのにかかわらず、評価は同一時点でしなければならないこと等の特殊事情を勘案した上で、〔証拠略〕を検討すれば、不動産鑑定評価法と土地区画整理事業における路線価法とは、被告主張のように、評価の目的(評価すべき価値)(〔証拠略〕)が違うから、その目的に応じて、評価要因及び評価の手法においても違いがあるものというべく、したがって、その結果、評価された金額に差が生じてくることが招来されることもやむを得ないものと解される(〔証拠略〕)。

そして、〔証拠略〕によれば、右27番の土地(平和不動産有限会社所有。同会社の代表者高木栄治は、本事業における土地区画整理審議会の委員(法五六ないし六五条参照)であった。)は、地区内を循環している主要道路である幅員約二・五mの道路面からの高差が約四六mある純然たる雑木林の山林、右23番の土地は、行き止まりの幅員約一mの山道からの高差が一mで、山林のほぼ中腹にあるミカン畑であることが認められ、同事実によれば、不動産鑑定評価の立場からは、右両土地は山林であるため、社会的・経済的要因により、その交換価値は低く押さえられ、評価額は相当低くならざるを得ないとしても、土地の実質的利用価値の把握という区画整理評価(路線価法)の観点からは、〔証拠略〕により認められる、右山林周辺の土地における宅地化は急激に進行し、局辺部の利用価値が大きく上昇していた地域である事実から判断すれば、実質的に高い利用価値を有していることになるし、右23番の土地は、道路面からの高差が一mで、容易に宅地化できる土地であるから、純然たる山林である右27番の土地と全く同様に扱うこともできないと解されることをも合わせ考慮すると、本件清算金決定処分が違法であるとまでいうことはできない。

また原告後藤芳幸は、〔証拠略〕に基づき、被告が従前地の街路係数、接近係数、宅地係数について恣意的に路線価評価をしている旨供述するので検討するに、細則(〔証拠略〕)によれば、街路係数とは、街路の系統、連続性、幅員、構造、曲線、修景等による利用価値を表す係数、接近係数とは、交通、慰楽、公共等の諸施設との相対的距離関係及び施設の種類、性質等による受益、受損価値を表す係数、宅地係数とは、宅地自体がもつ利用度、文化性を表す係数(二条一四ないし一六号)をいい、その各係数の取り方については、細かく規定(一六ないし一八条)されているから、従前地の街路係数、接近係数、宅地係数について恣意的に路線価評価されていると主張するのであれば、右根拠規定に従って具体的に主張、立証しないと判断の限りでないところ、原告らは、右以上に具体的に主張するのでもないし、その証拠もない(甲六も原告らの主張する結果のみを記載したものにすぎず、具体性を欠くことに変わりはない。)から、判断の限りでない。

(二)  原告らの主張(四)について

〔証拠略〕中には、原告石田、同神崎、同宮脇及び同永野の各従前地と換地に関する主張に沿う部分があるが、他の〔証拠略〕をも合わせれば、被告の主張どおり認められるから、原告主張の違法はない。

六 基準地積決定の違法の有無(争点6)

1  原告らの主張

(一)  一部地権者の従前地の地積が恣意的な基準日によって決められ、かつ、広大に評価された。すなわち、本事業の土地区画整理審議会委員高木栄治は、昭和四二年五月、佐伯市長嶋五二八〇番二の山林(登記簿上の地積二〇〇m2)を取得し、同地が本事業の対象地となったことから、昭和四六年同地の地積更正をして、一六二七m2とした。同所五二八〇番一の山林についても同様である。また、同人の地積更正が正しい実測に基づき行われたかどうかについても疑問があるのみか、同人に対する換地は、市の中心部の一等地にされている。

同じく、地積更正の際の測量図面を比較すれば、深津高則所有の五三一六番の一の山林が、五三二四番、五三二五番、五三一六番の土地より異常に増加しており、深津高則所有山林の不正な増加が判明した。

こうして、本事業地区における地元有力者は、四箇所の山林について、従前地面積を約一万七〇〇〇m2以上も不正に増やした。

(二)  従前地の総面積は、整理前各筆地積評価計算書上三八万〇四七四m2であったのに、換地計算書従前地換地明細書上三九万八九〇二m2と一万八四二八m2増加している。

(三)  佐伯市長嶋地区平面図によれば、山林面積は、本事業地区において四万八八四六m2であるのに、事業計画書によれば七万二六三四m2五二と約二万四〇〇〇m2増加している。

2  被告の主張

(一)  被告は、基準地積を、事業計画認可の公告があった日(昭和四六年一二月一六日)から起算して三〇日を経過した日(昭和四七年一月一五日・以下「土地登記簿締切期日」という。)現在の土地登記簿に記載された地積によることを原則としているところ(条例二〇条一項)、高木栄治の場合、地積更正により登記簿の記載が変更されたので、被告は条例に従い処理した。被告は、高木栄治の地積更正手続が正しいかどうかを検証すべき権利も義務もない。また、同人に対する換地が市の中心部にされたのは、本事業の事業計画と換地設計上の都合により、だれの換地にもなっていない調整地を配当したからである。

同じく、深津高則所有の五三一六番の一の山林の地積更正登記は、昭和四六年一〇月二七日申請され、同日登記簿に記載されたので、被告は同記載に従い処理した。

被告は、一部従前地につき、右土地登記簿締切期日後にも、特例として地積更正し、清算金は、更正した地積に基づいて算定したが、これも適法である。

(二)  換地計画総括表に記載された従前地の総地積は、登記簿地積を合計したもので、三九万六八〇〇・三〇m2あり(〔証拠略〕)、整理前各筆地積評価計算書上は三八万〇三二八・六〇m2であるが、基準日後の地積更正及び地目変更による地積増加分一四〇二・八一m2及び一二・二九m2、整理前各筆地積評価計算書綴りから脱落していた地積一万一八一一・九七m2、法九一条三項、九五条六項に該当し、換地が交付されない従前地にかかわる地積四〇二・六八m2及び三〇六六・一八m2を加算し、これから、基準日後の地積減少分一八・六八m2、登記簿地積を整理前各筆地積評価計算書へ転記する際の誤記分八七・五一m2及び従前地の一部が本事業施行地区の内外にまたがっているため換地計算書上の地積に算入されていない分一一八・〇四m2を控除すると、三九万六八〇〇・三〇m2となり、換地計画書上の地積と一致する。

(三)  事業計画書上の山林面積は、登記簿上の地目を基準としたもので七万二六三四m2五二である。登記簿上の山林が現況宅地となっているところもあるから、現況測量図上の山林と食い違いがでてくるのは当然である。また、現況測量図上の山林面積が四万八八四六m2であるとの原告ら主張については、客観的な根拠がない。

3  当裁判所の判断

(一)  基準地積とは、換地計画の基準となる各筆の土地面積のことであり(細則二条八号は「基準地積とは、換地を定めるための従前の地積の取扱いであって、条例二〇条に規定する地積をいう。」と定めている。)、〔証拠略〕によれば、基準地積の決定については、「換地計画において換地を定めるために必要な従前の宅地各筆の地積は法五五条九項の規定による事業計画の認可の公告があった日から起算して三〇日を経過した日(以下「土地登記簿締切期日」という。)現在の土地登記簿地積によるものとする。2 宅地所有者は、前項の地積に異議があるときは、土地登記簿締切期日から起算して三〇日以内に、実測図及び境界についての隣接地所有者の同意書を添えて、市長に同項の地積の訂正を申請することができる。」(条例二〇条一、二項)と規定しているところ、高木栄治及び深津高則は、同規定に従って、その各所有地につき登記簿上の地積更正手続をし、その結果、登記簿の地積が変更されたので、被告は、条例に従い(法五五条九項の規定による事業計画認可の公告があった日が被告主張の昭和四六年一二月一六日であることは、原告らも争わない趣旨と認められる。)、土地登記簿締切期日である昭和四七年一月一五日現在の土地登記簿に記載された地積によって処理したことが認められるから、被告の右処理は適法である。

また、〔証拠略〕によれば、被告は、右土地登記簿締切期日後にも、特例として地積更正し、更正した地積に基づいて清算金を算定したことが認められるが、〔証拠略〕によれば、これも適法と解される。

なお、原告らは、右高木及び深津両名の各地積更正の内容の真正に疑問があるとも主張するが、疑問点につき具体的に主張しないし(〔証拠略〕をもってしても、原告ら主張事実を認めるには足りない。なお、登記簿上の地積更正登記手続では、土地実測図の添付が義務付けられ(不動産登記法八一条一、二項)、同図面は土地図面綴込帳に編綴されて(同法施行細則一五条の二第一項)、永久保存される(同細則三七条ノ四第一項)し、同登記の権限を有するのは、いうまでもなく登記官(同法一二条)であって、被告ではない。)、また、原告ら主張の高木栄治に対する換地が市の中心部の一等地にされたとの主張も、具体性を欠くから、いずれも、判断の限りでない。

(二)  右(一)認定の事実と〔証拠略〕によれば、本件換地計画書(昭和五七年)中の換地計画総括表に記載された従前地の総地積は、基準日(昭和四七年一月一五日)における登記簿地積を合計した三九万三三三一・四四m2である(乙三二)ところ、法九一条、九五条六項に該当し、換地が交付されない従前地にかかわる地積四〇二・六八m2及び三〇六六・一八m2(〔証拠略〕)があったこと、これらを加えると三九万六八〇〇・三〇m2となるが(したがって、以上だけで、三四六八・八六m2も増えたことになる。)、また、被告は、右基準日後にも、特例として地積更正を認め、その結果地積増加した分が一四〇二・八一m2あることが認められること(〔証拠略〕)に照らすと、被告が主張する、その他の各誤記分の地積の過不足分についてはこれを認めるに足りる証拠はないことを勘案しても、原告ら主張のとおり、本件清算金決定処分を違法とするまでのものとはいい難い。

(三)  原告らの(三)の現況測量図上の山林面積が四万八八四六m2であるとの主張事実については、これを認めるに足りる証拠はないから、この点については、これ以上、判断の限りでない。

七 被告のお手盛り土地評価の違法の有無(争点7)

1  原告の主張

(一)  被告は、財団法人佐伯市開発公社(以下「公社」という。)から取得した埋立地二万九四六七m2を九三五四万八〇〇〇円で買収しながら、従前地評価としては五億六二三七万七九八〇円以上(約六倍)の水増し評価をしている。

(二)  被告は、整理前路線価図(〔証拠略〕)によれば、埋立地の南東側に幹線道路があるとして路線価を設定しているが、路線価が算定された時点は昭和四六年一二月一六日(本事業計画公告の日)であり、同時期には埋立地の中江川沿いの幹線道路は敷設されていない(埋立ての認可は、昭和四七年四月五日である。)から、存在しない幹線道路に路線価を設定し、埋立地の従前地評価を行うことは許されないにもかかわらず、路線価を想定して評価を行い、これにより被告は不当に大きな利益を獲得した。

2  被告の主張

(一)  被告は、原告ら主張のとおり埋立地を買収したが、この従前地評価は四億五九六九万七四〇九円である。売買価格は種々の要因によって決定されるから、従前地評価との差のゆえに、被告が右埋立地につき水増し評価をしたことにはならない。そもそも、右買収価格は、通例に従い、公社における土地の取得原価(埋立て造成費、銀行借入金利息等)に、その原価の三%程度の金額を事務費として加算したにすぎない。

(二)  公有水面埋立事業によって造られる道路と、土地区画整理事業の施行によって造られる道路とは区別して取り扱われるべきものである。本件における公有水面埋立事業は、公社が、公社の公有水面埋立予定地を含む区域において、土地区画整理事業を予定していた被告及び公有水面埋立免許を与える権限を有する大分県知事と密接な協議を行った上、護岸敷、水路敷、道路敷及び宅地敷の埋め立てを行うものとして、昭和四六年八月二六日付けで免許を申請し(〔証拠略〕)、昭和四七年四月五日付けで免許を取得し(〔証拠略〕)、同年五月二日から工事に着手し(〔証拠略〕)、昭和四九年二月二日付けで竣工の認可を受けた(〔証拠略〕)。

本事業において、被告は、公社が埋め立てによって造成した幅員五・五mの未舗装の本件幹線道路と、これに隣接する幅三mの護岸敷のうちの幅二・五mの部分とを合わせて、幅員八mの舗装道路(河川法一七条)を築造したが、本件幹線道路が土地区画整理事業前の道路である以上、これに路線価を設定しないと、適正な従前地評価を行うことはできないので、路線価を設定したものであり、本事業によって築造された八mの道路に整理前路線価を設定したわけではない(〔証拠略〕)。

法一三一条は、土地区画整理事業の事業計画の認可又は公告の日において、近い将来、公有水面埋立免許を取得することが確実な者がいる場合にも準用されるところ、本事業における整理前路線価の設定基準日(昭和四六年一一月六日)時点においては、公社は未だ公有水面埋立免許を取得していなかったが、公社及び知事との協議を通じ、公社に同免許が付与されることは確実であり、したがって、公社の性格にかんがみ、本件埋立地や本件幹線道路が確実に造成されることも明らかであったため、被告は法一三一条を準用して、これらが既に存在するものとして、本件埋立地の従前地としての評価を行ったのであって、このような措置が、事業計画の円滑な進捗と埋立免許取得者の利益保護を図るという同条の趣旨に合致する。すなわち、同条は、埋立地に関する土地区画整理事業の法律関係の発生時期を埋立竣工時から事業の当初にまで早めたことに意義がある。

3  当裁判所の判断

(一)  当時者間に争いがない事実と〔証拠略〕によれば、公社から取得した中江川埋立地二万九四六七・五五m2(〔証拠略〕)についての買取価格は九三五四万八〇〇〇円、同地の従前地評価は被告主張の四億五九六九万七四〇九円を下らなかったものと認められ、さらに、〔証拠略〕によれば、被告が学校用地及び宅地造成地五万六八〇三・七八m2を取得する目的で、中江川等の埋立手続をとったものであり、その実際の手続を遂行するものとして、被告の全額出資になる公社(理事長池田利明、同人は、当時の被告の市長)が昭和四五年一一月一三日設立され、公社が具体的な手続に入ったこと、一般的にいっても、公社は、当該地方公共団体のための公共用地の先行取得をする目的のもとに設立されるもので、利益を上げるための法人ではなく、右買収価格も、周辺地域の時価価格を勘案して決めたのではなく、公社における土地の取得原価(工事費、免許料、補償費等)に、三%程度の金額を事務費として加算して決めたことが認められること等に照らすと、右両価格間に違いがありすぎるからといって、右従前地評価を水増し評価であると速断することはできない。要は、区画整理事業における従前地評価が適正であるかどうかの問題であり、この点について、原告らは、具体的な違法事由を主張しているわけではないので、これ以上触れない。

(二)  公有水面埋立法に基づく公有水面埋立事業によって造られる道路と、土地区画整理事業の施行によって造られる道路とは、根拠法規を異にするから、区別して取り扱われるべきものと解される(法二条二項、公有水面埋立法一条三項参照)

ところで、〔証拠略〕によれば、公社(当時の理事長池田利明は、当時の被告の市長でもあった。)は、中川及び中江川の公有水面(埋立予定地五万六八〇三・七八m2)について埋立事業を計画し、同埋立予定地のうち中江川埋立予定地を含む区域で本事業を予定していた被告は、本事業の事業計画において定める設計の概要についての認可権限(法五二条一項。〔証拠略〕)及び公有水面埋立免許を与える権限を有する(公有水面埋立法二条一項)大分県知事と密接な協議を行った上、同埋立予定地の護岸敷、水路敷、道路敷及び宅地敷の埋め立てを行うものとして、同知事に対し、昭和四六年八月二六日付けで免許を申請し(〔証拠略〕)、同知事から昭和四七年四月五日付けで免許を取得し(〔証拠略〕)、公社は、同年五月二日から工事に着手し(〔証拠略〕)、昭和四九年二月二日付けで竣工の認可を受けた(〔証拠略〕)ことが認められる。

そして、〔証拠略〕によれば、本事業において、被告は、公社が中江川の埋め立てによって造成予定の幅員五・五mの未舗装の幹線道路(〔証拠略〕)と、これに隣接する幅三mの護岸敷のうちの幅二・五mの部分とを合わせた幅員八mの舗装道路を区画整理道路(長島角石線、〔証拠略〕)として築造予定(現実に同埋立事業が終了したのは、昭和四十八、九年である。)のもとに、右幹線道路を、土地区画整理事業前の道路として既にあるものとして路線価を設定したことが認められる。

原告らは、路線価が算定された昭和四六年一二月一六日(本事業計画公告の日)の時点では、右認定のとおり、埋立地の中江川沿いの右幹線道路は敷設されていない(埋立ての認可は、昭和四七年四月五日であり、埋立事業の終了は、昭和四十八、九年である。)から、存在しない幹線道路に路線価を設定し、埋立地の従前地評価を行うことは許されないと主張する。

しかしながら、右認定の事実と木原建樹・第二回の証言によれば、土地区画整理事業の事業計画の認可又は公告の日において、近い将来、公有水面埋立免許を取得することが確実な者がいる場合に、本事業における整理前路線価の設定基準日(昭和四六年一一月六日)時点においては、公社は未だ公有水面埋立免許を取得していなかったが、公社に大分県知事との協議を通じて右免許が付与され、右埋立地や右幹線道路が造成されることは確実であった(そして、現実に、右埋立地や右幹線道路は造成された。)ことから、被告において、これらが既に存在するものとして、本件埋立地の従前地としての評価を行ったのは、整理前の評価と整理後の評価の格差(増進率)につき複雑な事務をもたらしかねないことをおもんばかり、本事業計画の円滑な進捗と埋立免許取得者の利益保護を図り、かつ、適正な従前地評価を行う趣旨から、現実には存在しない右幹線道路に路線価を設定したと認められるところ、条例二二条(〔証拠略〕)が、清算金算出の方法として、比例清算方式(清算金は、従前の宅地の価額の総額に対する換地の価額の総額の比を従前の宅地の価額に乗じて得た額と当該宅地に対する換地の価格との差額とする方法)をとっていたことを考慮すると、被告が、右のとおり、存在しない右幹線道路に路線価を設定し、埋立地の従前地評価を行ったことも、本件事実関係のもとでは許されるものと解される。

八 標準宅地の設定の違法(争点8)

1  原告らの主張

被告は、原告ら住民に標準宅地を一五〇~四〇〇m2と想定して計算する旨説明しておきながら、実際には、三〇〇~三五〇m2と想定して計算した結果、原告らには不利益に算出された。

2  被告の主張

被告は、本事業施行地区内における建物敷地の平均面積が約三四一m2であったこと等、本地区の実情、土地利用区分、本事業の目的等を適切に考慮し、これにある程度の幅をもたせ、三〇〇~三五〇m2と決定した。

3  当裁判所の判断

原告らの主張は、被告が、原告ら住民に標準宅地を一五〇~四〇〇m2と想定して計算する旨説明したことを前提とするものであるが、これを認めるに足りる証拠はないから、前提を欠き、失当である(なお、標準宅地とは、土地区画整理事業施行地区内の道路のそれぞれの位置において、普通間口、普通奥行きを有し、道路と等高に接するものとして概念的に想定された宅地のことであって、同事業における路線価法の基本をなすものである。そして、その地積は、基本的には、一戸建て建物の敷地としての規模が想定され、施行者の合理的な裁量によって決定されるものであるところ、被告は細則一五条で「標準宅地を間口一〇~一五m、奥行き二〇m程度で路面高と等高のもの」と規定している。

九 換算単価決定の違法(争点9)

1  原告らの主張

被告は、換算単価を、いったん三円と決定しておきながら、本件において五・八円に値上げしたのは違法である。

2  被告の主張

原告らは、被告が換算単価をいったん三円と決定していたと主張するが、同金額は、事業開始当時(昭和四六年)にとられた鑑定評価額で、概算的な数字であり、事業の見通しをたてるための便宜的な換算資料として用いられたもので、この数字を元に、清算金を決定すべきものではない。

被告は、路線価指数で表された路線価を金額に換算するための一個当たりの単価(換算単価)を決定するための土地評価の時点を、本事業の成果がほぼ明らかになるとともに本事業以外の要因による宅地価格の変動が未だ少ない工事既成時である昭和五五年を宅地の評価時点とし、本事業における保留地の売却価格、固定資産税評価額及び地価公示価格の三者につき必要な調整を加え、それぞれが示す評価額を平均することにより換算単価の原案を作成し、次いで昭和五六年一月一二日開催の評価委員会で評価員の意見を聞いた上(法六五条一、三項)、細則一三条二項の規定に従い、換算単価を五・八円と決定した。

3  当裁判所の判断

原告らの主張は、被告が、換算単価をいったん一個三円と決定していたことを前提にしており、原告後藤芳幸の供述中には、同主張に沿うかのような部分もあるが、同部分は、裏付けを欠き、他の〔証拠略〕に照らし採用できない、したがって、右前提を理由に本件清算金決定処分の違法をいう原告らの主張も採用できない。

十 原告らの損害賠償請求権の有無(争点10)

1  原告らの主張

原告らは、被告が一部地権者と癒着した本事業により、生活環境を破壊する騒音、振動、排気ガス等の道路公害と交通戦争をもたらされ、その結果受けた損害は、それぞれ三〇万円を下らないから、民法七〇九条、国家賠償法一条一項により、被告に対し、各三〇万円及びこれに対する昭和五七年六月二二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  被告の主張

争う。

3  当裁判所の判断

原告ら主張の責任原因は具体性を欠くところ、前示認定判断したところによれば、被告に、民法七〇九条、国家賠償法一条一項上の違法事由があるとはいえず、他にこれを認めるに足りる証拠もないから、原告らの主張は採用できない。

十一 結論

以上の次第で、原告らの本訴請求は、いずれも理由がない。

(裁判長裁判官 簑田孝行 裁判官 大泉一夫 坪井宣幸)

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