大分地方裁判所臼杵支部 昭和55年(ワ)6号 判決 1983年5月17日
原告
今井清貴
被告
藤原幹夫
ほか二名
主文
一 被告らは、原告に対し、各自金五九四万四、七二四円とこれに対する昭和五二年三月二二日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余は被告らの連帯負担とする。
四 この判決は、第一項にかぎり、仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは、原告に対し、各自金一、二四六万四、二四〇円とこれに対する昭和五二年三月二二日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
3 仮執行の宣言
二 請求の趣旨に対する被告らの答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は、原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 事故の概要
被告藤原は、昭和五二年三月二二日午後七時一五分ころ、大分県臼杵市大字諏訪四七八の二五梅木方前方路上において普通乗用自動車(車両番号大分五の七二二七、以下加害車両という。)を運転走行中対面して歩行していた原告(当時二二歳)に右車両左前部を接触・衝突して転倒せしめ、頭蓋骨陥没複雑骨折、顔面・胸部挫創、両下肢打撲擦過傷、右大腿骨果部骨折との傷害を負わせた。
2 被告らの責任
(一) 被告藤原
(1) 過失責任
被告藤原は、事故現場付近において風雨が激しく前照灯の光が路面に吸収され、前方の見通しが困難な状態であつたから加害車両が減速徐行し、前方の注視を厳にすべき注意義務を有していたにもかかわらず、時速約五〇キロメートルで進行し、このような悪天候で歩行者もあるまいと軽信し漫然前方注視を怠つた。
(2) 保有者責任
加害車両は、被告藤原の所有に属し、同被告の通勤のため使用されていた。
(二) 被告有限会社東工業、同東勤
(1) 保有者責任
被告有限会社東工業(以下被告会社という。)は有限会社としての実体はないので、その法人格が否認される場合はその代表者被告東が、そうでない場合は被告会社が加害車両の所有者であつて従業員であつた被告藤原をして右車両を運転させたうえ、他の従業員の送迎することを主たる目的とし、かつその便宜上被告藤原の通勤に用いさせていた。
(2) 連帯保証責任
被告会社及び同東は、昭和五七年三月二七日、訴外今井清七を原告の代理人として被告藤原が約定した本件事故より発生するあらゆる損害につき、これを賠償するとの債務につき、これを連帯して保証することを約した。
原告は、右以前に訴外今井清七に右約定をなす代理権を授与し、もしくは、右以後に被告ら三名に対し右訴外人の行為につき追認の意思表示をした。
3 原告の損害
(一) 原告は本件事故による右受傷のため、次の入院治療を受け、次の後遺症を受けるに至つた。
(1) 入院治療
昭和五二年三月二二日から同年四月一二日まで
西田外科医院
昭和五二年四月一二日から同年五月四日まで
佐藤病院
昭和五二年五月四日から同五三年三月三日まで
大分県立病院
(2) 後遺症
右膝の屈伸の機能障害による後遺障害別等級第一〇級とともに併存する神経系統の機能又は精神の障害による右等級第七級が認められるので、併合繰り上げにより右等級第六級の後遺障害が存する。
(二) 損害額
(1) 治療費 金一一九万〇、二四〇円
(2) 入院雑費 金二〇万四、〇〇〇円(入院期間一日当り金六〇〇円宛)
(3) 休業損害 金一八〇万円(一年間)
(4) 入院慰謝料 金二〇〇万円
(5) 逸失利益 金二、九二九万七、七〇二円(次の各数字を乗じたもの)
年間所得 金一九〇万七、六〇〇円(賃金センサス)
労働能力喪失率 六七パーセント(六級)
ホフマン係数 二二・九二三(就労可能年数四四年)
(6) 後遺症慰謝料 金六二七万円(七級)
(7) 弁護士費用 金一〇〇万円
合計 金四、一七六万一、九四二円
よつて、原告は、被告らに対し、各自右損害賠償金の内金一、二四六万四、二四〇円とこれに対する本件事故日である昭和五二年三月二二日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1(事故の概要)事実につき、被告藤原はこれを認め、被告会社及び同東はこれを知らない。
2 請求原因2(被告らの責任)事実につき、被告藤原は同(一)の(2)(保有者責任)事実を認め、被告会社及び同東は、同(二)の(1)(保有者責任)、(2)(連帯保証責任)の各事実を否認する。
3 請求原因3(原告の損害)事実につき、被告らはいずれもこれを知らない。
三 抗弁
1 被告会社及び同東―請求原因2の(2)(連帯保証責任)について
(一) 通謀虚偽表示もしくは心裡留保
被告両名は、訴外今井清七が代理人としても、右訴外人から「東さんには一切迷惑をかけない。印を押すだけであり心配するような事はない。」との説明を受けて右約定が成立した如く仮装するため「示談書」に署名したもので、右代理人と被告両名間に虚偽の意思表示をなすことに通謀があり、そうでない場合でも被告両名に真意のないことを右代理人においてこれを知り、又は知り得べきであつた。
(二) 契約内容の解釈
本件の如き、全損害を正確に把握し難く、最も重要なる金額が白紙の状況のもとにおいて早急に示談がなされた場合には、その契約の内容は、示談当時予想していた損害のみと解すべきである。よつて、その損害はせいぜい事故から示談当時までの損害に限定さるべきである。
2 被告ら―請求原因3(原告の損害)について
(一) 過失相殺
本件事故現場付近は、加害車両からみて道路の左側端に電話線埋没のため掘り起こした部分が約一〇〇メートルの距離にわたつてあり、その幅員は、本件道路のセンターラインより左道路部分三・七メートル中、約一・五メートルを占めていたので、掘起部分の内側を歩行することは対向車との接触・衝突する等の危険性は大きく、加えて、事故当時は夜間であるうえ暴風雨で視界がきかず、平常の場合に比べて交通事故の発生の可能性は極めて高かつたので、本件道路の右側に車道と区分された路側帯を通るべきであつたにもかかわらず、原告は、傘を前方にさし前方注視を怠つたうえ、右掘起部分の内側である道路中央部を歩行していた過失があつた。そこで、五〇パーセントの過失相殺をすべきである。
(二) 損害の填補
(1) 被告藤原の弁済
(一) 病院関係 合計金八七万七、九一八円
昭和五二年三月二四日から同年一一月一七日までの分
(二) 原告関係 合計金四九万円
昭和五二年四月一二日から同五三年九月二〇日までの分
(2) 自動車損害賠償責任保険金の支払 金四一万六、五四〇円
総合計 金一七八万四、四五八円
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1(通謀虚偽表示もしくは心裡留保、契約内容の解釈)事実を否認する。
2 抗弁2の(一)(過失相殺)事実を否認し、同(二)(損害の填補)事実を認める。
第三証拠〔略〕
理由
一 請求原因1(事故の概要)事実につき原告と被告藤原間においては争いがない。被告会社及び同東間においても右事実は成立に争いのない甲第八ないし第一一号証、第一三号証、被告藤原本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一二号証及び右被告本人尋問の結果によりこれを認めることができ、これに反する証拠はない。
二 請求原因2(被告らの責任)について検討する。
1同(一) 被告藤原の(1)過失責任についてみるに、前示甲第八ないし第一一号証、第一三号証及び被告藤原本人尋問の結果によりその主張事実を認めることができ、これに反する証拠はない。
これによれば、被告藤原において本件事故に際し、加害車両を減速徐行し前方を注視すべき注意義務を怠るとの過失があつたというべきである。
2 同(二)被告会社及び同東の(1)保有者責任についてみるに、結局これを認めるに足りる証拠はない。
即ち、前示甲第一〇号証、被告藤原及び同東本人の各尋問の結果によると、被告藤原は、昭和五一年九月ころ加害車両を自ら金一五万円を出損してこれを購入して以来、もつぱら自己の通勤用として運転使用し、本件事故当時も私用のため運転していたこと、被告藤原は、訴外南日本造船に配管工として働き、被告会社は被告東を代表取締役として訴外南日本造船の艤装部門を担当し、その間には使用者・従業員との関係はなかつたが、ただ被告藤原において労災保険等の加入手続の便法として、名義上被告会社の臨時社員となり、訴外南日本造船から給料が被告会社を通じて支払われ同会社から右保険料等を控除されたものの支給を受けていたことが認められるにすぎないので、これらをもつて、被告会社もしくは被告東において加害車両を所有し被告藤原をして自己のため運行の用に供していたとは認められず、自動車損害賠償保障法三条所定の要件を欠くことになる。
なお、成立に争いのない乙第一号証によると加害車両の自動車登録が本件事故後の昭和五二年一二月一日被告東の所有名義でなされていること、また成立に争いのない甲第四号証によると、昭和五二年三月二七日作成された「示談書」中に被告会社もしくは被告東が加害車両の「使用者兼保有者」とする記載があることはいずれも明らかであるが、前者については、被告藤原及び同東の各本人尋問の結果によると、被告藤原が加害車両の購入の際、アパート住まいで駐車敷地がなく車庫証明書の作成が困難であつたためその余地のあつた被告東から了解を得て名義を借用し、右登録手続をなしたところ遅れて処理されたの事情が認められることに照らし、後者についても右記載のみではいずれも前示結論が左右されることはない。
3 同(二)の(2)連帯保証責任についてみると、前示甲第四号証、証人今井清七の証言によると本件事故の数日後西田外科医院において原告の父訴外今井清七が被告藤原及び同東と面会した際、被告両名は本件事故について詫びるとともに迷惑をかけないと申し入れたので、右訴外人はこれを書面化することに被告両名の承諾を得て司法書士に大略加害者及び連帯保証人が本件事故により生ずる損害賠償金の支払債務のあることを確認する旨の「示談書」と題する書面(甲第四号証)を作成させ、昭和五二年三月二七日被告東に電話をかけ書面ができたので被告藤原とともに印鑑を持参のうえ来るように連絡し、同人らは原告のおば訴外日高ミサコ方に参集し約二時間ほどの間に被告両名は右書面を読んだうえ被告藤原は右書面の「加害者」欄に自己の氏名を署名して押印し、被告東が右「連帯保証人」欄に「(有)東工業」と署名し、加えて自己の氏名を署名して押印し、右「被害者」欄に原告の実兄が代署し押印したことが認められこれに反する被告藤原及び同東の各本人尋問の結果は採用の限りでない。
更に証人今井清七の証言、被告東本人尋問の結果によると、訴外清七は右「示談書」の作成後に原告にその事情を説明し、これを了解した同人が右西田外科医院を退院する三、四日前に被告藤原及び同東と面会して始めて話しを交わしたことを認めることができこれに反する証拠はない。
以上の認定事実によると、訴外今井清七は原告の代理人として被告藤原間において本件事故に関する損害賠償債務を確認させ、被告会社代表取締役東及び同東間においては右被告藤原の債務について連帯保証することを約定させ、後日、原告において被告三名に対し訴外今井清七の右行為につき黙示の方法によつて追認の意思表示をなし、少なくとも原告が右訴外人に追認の意思表示をなしたことは被告三名において知つていたというべきである。
4 次にこれに対する抗弁(一)通謀虚偽表示もしくは心裡留保についてみるに、これに沿う被告東及び同藤原の各本人尋問の結果があるところ、他方これを否定する証人今井清七の証言があり、これを相容れない前示認定の「示談書」作成の経過事実があることに照らしてまだこれを認めるに足りる証拠はない。
5 更に抗弁(二)契約内容の解釈についてみるに、前示認定の如く、原、被告間でなされた約定は「示談」という名称を付されているが、その内容は被告藤原が本件事故に関する損害賠償債務を負担し、被告会社及び同東がそれぞれ右債務につき連帯保証債務を負担するというものであること、そしてその限度額につき合意を欠いていることは明らかであるが、これは、本件事故と相当因果関係を有する事故当時から将来に及ぶ損害について後日確定された金額の範囲内のものをもつてこれにあてるとするのが原、被告間の合理的意思であると解すべきであることに照らし、これと相違する被告主張の解釈は採用の限りでない。
従つて、被告会社及び同東は連帯保証責任を負うべきことになる。
三 請求原因3(原告の損害)について検討する。
1 同(一)の(1)入院治療についてみるに、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二号証の二、成立に争いのない甲第三号証の二、被告藤原本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第一四号証の二によると、原告は昭和五二年三月二二日から同五三年三月三日まで合計三四七日間に亘り西田外科医院、佐藤病院、大分県立病院に順次入院して右傷害の治療を受けたことを認めることができる。
2 同(一)の(2)後遺症についてみるに、前示甲第三号証の二、成立に争いのない甲第一七号証、証人古屋明の証言によると、昭和五三年三月一七日の時点における右大分県立病院の診断では右膝が伸屈マイナス一〇度、屈曲が五〇度とする機能障害をもつて症状が固定し、これが自動車賠償保障法施行令第二条別表後遺障害等級別表所定の第一〇級一一号の「一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当すると認めることができこれに反する証拠はない。
しかし、神経系統の機能又は精神の障害については、これをうかがわせる弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第七号証及び証人今井清七の証言があるところ、前示甲二号証の二、一七号証による右大分県立病院の診断において神経学的検査上異常を認めないとされ、精神障害につき何ら触れていないことに照らすと未だこれを認めるに十分な証拠を欠くといわざるを得ない。
そこで、原告の後遺障害は前示等級第一〇級一一号として扱うべきことになり、これは労働基準局長通達(昭和三二・七・二基発第五五一号)により、二七パーセントの労働能力の喪失に当たることになる。
3 同(二)の損害額についてみるに
(1) 治療費は、前示甲第二号証の二、第三号証の二によると右西田外科医院に対し金五六万七、八四〇円を、右大分県立病院に対し患者負担分として金六八万二、六九二円を合わせただけでも合計金一二五万〇、五三二円を要したことが認められるので、原告の請求額である金一一九万〇、二四〇円は相当な損害としてこれを認める。
(2) 入院雑費は、右合計三四七日の入院期間について一日当り金五〇〇円宛とし、合計金一七万三、五〇〇円を要したと認めるのが相当である。
(3) 入院慰謝料は、右入院期間について一日当り金二、三〇〇円宛とし、合計金七九万八、一〇〇円の他に右傷害の部位、程度等の事情を考慮して合計金一〇〇万円をもつて相当額とする。
(4) 休業損害は、成立に争いのない甲第一一号証、証人今井清七の証言によると、原告は本件事故前に大阪で離職し、事故当時は職さがしの状況にあつたことが認められるが、特に就職が内定していた等の事情も見当らないので、右損害を認めるのは相当でない。
(5) 逸失利益は、前示認定事実によれば原告は、二三歳となつた昭和五三年三月一七日に右後遺症が固定したものとされるから、同年の賃金センサス第一巻第一表、産業計、企業規模計、男子労働者、学歴計の二〇ないし二四歳の平均賃金、月間きまつて支給する現金給与額の一二ケ月分に年間賞与その他特別給与額を合計した金一八六万一、〇〇〇円の収入額を得ることができたものと推認される右額を基礎として、原告の右労働能力喪失率割合二七パーセントを乗じ、同額から昭和五三年三月から稼働可能と考えられる六七歳までの四四年のライプニツツ係数一七・六六二を乗じて中間利息を控除し、右逸失利益の後遺症固定時における現価を求めるとその金額は金八八七万四、六二五円となりこれをもつて相当額とする。
(6) 後遺症慰謝料は右後遺症の程度その他の事情、特に右等級第一〇級一一号に該当する昭和五三年当時の自動車損害賠償責任保険後遺症保険金が金三〇二万円であることを考慮し、右金額をもつて相当とする。
従つて、右損害の合計額は金一、四二五万八、三六五円となる。
4 次にこれに対する抗弁(一)過失相殺についてみるに、前示甲第九ないし第一一号証、被告藤原本人尋問の結果によると、本件事故現場の道路状況は原告の進行方向からみて右端に一・六メートル幅の水路があり、その左に順次に幅一・五メートル、深さ二〇ないし三〇センチメートルの堀起部分、センターラインまで幅二・二メートルのアスフアルト舗装の道路部分、センターラインから三・五メートル幅の同舗装の道路部分、そして、これと区画された一メートル幅の路側帯があり、これは本件現場の前後も同じであること、事故当時は夜間で風雨の激しい中を原告はこうもり傘を進路前方にさしかけて歩行して加害車両と接触・衝突したが、その地点は原告において堀起部分の左端からセンターラインに寄つて六〇センチメートルにあり、加害車両はセンターラインから原告進行の道路右部分内にあつて車幅一・四メートルの右端は同ラインから一・六メートル右方にあつたことが認められ、これに反する証拠はない。
以上の認定事実によると、本件道路は路側帯と車道の区別のある道路(道路交通法一〇条二項)にあたるというべきなので、加害車両は通行区分に従つて走行していた(同法一七条)ところ、原告はこれに反し車道上を歩行していたことになろうが、原告自身においても右道路状況から進行方向の道路幅がセンターラインよりみると二メートル余りの狭さで対向車との接触・衝突の危険を感得していたはずであり、かつセンターラインの左側道路部分の方が広くそこに区画された路側帯があつたことは認識していたと思われるのにかかわらず路側帯に移動せず、あえて危険な歩行を続けていたこと、更にこの場合原告は夜間で悪天候であつたので、特に対向車の接近に留意して前方を注視し、車接近の際にあらかじめ避譲の措置をとれば本件事故を回避できた余地があつたと推測されるのにかかわらず傘を前方にさしかけて前方の注視を全く怠つていたものといわざるを得ない。
かような原告の過失が本件事故の発生に寄与した割合は相当高いものと評価せざるを得ず、本件損害賠償額の算定にあたり右過失を考慮して、原告の右損害額に五割の過失相殺をするのが相当である。
すると損害額は金七一二万九、一八二円となる。
5 更に抗弁(二)損害の填補についてみるに、原告が自動車損害賠償責任保険から金四一万六、五四〇円の支払を受けたほか、被告藤原からもその支払を受けその合計額は金一七八万四、四五八円であることに当事者間に争いがないので、右金額を前記損害額から控除すると金五三四万四、七二四円となる。
6 弁護士費用は、原告の不在者財産管理人が原告代理人に本件訴訟の提起・追行を委任していることは弁論全趣旨によつて明らかであるが、本件事案の性質、事件の経過、認容額を考慮して、被告らに対して賠償を求め得る弁護士費用は金六〇万円が相当である。
四 以上のとおりであるから、原告の本訴各請求のうち金五九四万四、七二四円とこれに対する本件事故日である昭和五二年三月二二日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める現度で理由があるのでこれらを認容し、その余の請求を失当としてこれらを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条一項但書を適用し、仮執行の宣言について同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 大淵武男)