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大分家庭裁判所 昭和49年(家)720号 審判 1974年12月12日

申立人 大沢健(仮名)

不在者 大沢カオリ(仮名)

主文

不在者の財産管理人である申立人が、不在者と申立外大沢元彦との間で次のとおり遺産分割協議をすることを許可する。

一、別紙目録第一記載の各物件はいずれも大沢元彦の単独所有とする。

二、同目録第二記載の各物件はいずれも不在者大沢カオリの単独所有とする。

三、大沢元彦は不在者大沢カオリに対し金一二万七三八六円を支払う。

理由

本件申立の要旨は、不在者と申立外大沢元彦(以下「元彦」という。)との共有にかかる別紙目録第一、第二記載の各土地(以下「本件土地」という。)につき、共有状態を解消したいのでその許可を求める、というのである。

そこで検討するに、当庁昭和四六年(家)第四五一号不在者の財産管理人選任事件記録中の登記簿謄本六通、家庭裁判所調査官古原貞義作成の調査報告書、同調査官作成の電話聴取書二通、ウイルソンカオリ作成の信書、財産管理人大沢健作成の管理財産状況報告書、当裁判所の大沢健、大沢元彦に対する審問の結果によれば、次のような実情を認めることができる。

不在者と元彦とは兄妹の関係(申立外亡大沢一郎の長女と三男)にあるものであるが、不在者は大分市内の○○高女を卒業後、農業会事務員、ダンサー等をしていたが、その後米国人と結婚して横浜に転居し、昭和二七年頃米国に渡つてからは音信不通である。元彦は一郎の三男であつたが、一郎の長男次男がいずれも戦死したので、終戦のときから現在に至るまで本件土地を使用して家業である農業に従事しているものである。本件土地は、いずれももと申立外亡大沢一郎の所有であつたが、同人が昭和三八年八月二日に死亡したので、その子である不在者、元彦、輝雄、広子、明子、修平の六名が相続し、そのうち輝雄、広子、明子、修平の四名が上記相続を放棄したので、現在では不在者と元彦が持分各二分の一の共有として登記されている。輝雄、広子、明子、修平が上記相続の放棄をしたのは、一郎の遺産である本件土地を全部元彦に相続させたかつたからであり、元彦は、上記相続開始後本件土地を全面的に支配管理している。

本件土地のうち畑については、昭和四〇年頃から大分市が行なつている農業構造改善事業の対象区域になつており、みかん畑に造成され道路が新設されたり、交換分合が行なわれているが、登記名義が元彦と不在者の共有になつているところから、上記事業の手続進行上支障を生じており、また元彦において農業資金を借り入れるため本件土地を担保に入れようとしても、不在者との共有であるために種々の制約を受けている。

本件土地は、大分市南部の交通不使な市街化調整区域内に位置し、取引実例の乏しいところであるが、本件土地の総価額は約九四万三五〇〇円(田六筆計五四万六五〇〇円、畑四筆計一二万三〇〇〇円、山林四筆計一〇万四〇〇〇円、原野一筆一万円、宅地一筆一万六〇〇〇円)である。

以上の事実によれば、本件土地は不在者と元彦の共有関係にあるため元彦において種々の不便を蒙つており、同人の利便を計るためには、その共有関係を解消させる必要があるものと考えられる。そして、上記実情にかんがみるならば、上記共有関係を解消させる方法としては、遺産分割の方法によるのが最も妥当な方法であると考えられる。

そこで遺産分割の内容について検討するに、上記事実によれば、輝雄、広子、明子、修平の四名が相続の放棄をしたのは、一郎の遺産である本件土地を全部元彦に取得させるためであつたものと認められるから、本件土地に対する共有割合は、実質的には元彦が六分の五、不在者が六分の一と考えるのが相当であり、不在者に対しては上記総価額九四万三五〇〇円の六分の一の一五万七二五〇円相当のものを取得させれば足りる。そして元彦に対する審間の結果によれば、別紙目録第二の各土地は、いずれも同人の農業経営上不要の土地であることが明らかであるから、この土地をまず不在者に取得させることとし(その価額は、原野が一万円、山林が一万九八六四円、計二万九八六四円である。なお、山林の価額は前記山林四筆計一〇万四〇〇〇円を面積比率によつて按分して計算)、なお不足する額一二万七三八六円(157,250円-29,864円)については金銭によつて清算させるのが適当であると考えられる。

以上により、本件土地については、別紙目録第一記載の各土地をいずれも元彦の単独所有とし、同目録第二記載の各土地をいずれも不在者の単独所有とし、元彦が不在者に対して金一二万七三八六円を支払うことを内容とする遺産分割によつて、その共有関係を解消させるのが相当である。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 高橋正)

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