大津地方裁判所 昭和47年(ワ)227号 判決 1974年5月08日
原告・反訴被告 西村順子こと鄭雲順 外四名
被告・反訴原告 広芸運輸有限会社
被告 国
訴訟代理人 兵頭厚子 外七名
主文
1 被告らは各自、被告国は原告鄭雲順に対し六八万九、八四一円、原告金甲生に対し一〇六万九、五二三円、原告金純生に対し七七万九、六八二円、原告金庚順、同金秀蓮に対しそれぞれ四八万九、八四一円と、被告会社は原告鄭雲順に対し三三万二、六七六円、原告金順生に対し六万五、三五一円、原告金庚順、同金秀蓮に対しそれぞれ一三万二、六七六円と、これに対する昭和四五年一月二七日から支払ずみまで年五分の割合による各金員を支払え。
2 原告金甲生の被告会社に対する請求並びに原告らのその余の請求を棄却する。
3 原告金甲生は被告会社に対し、一、九七四円と、これに対する昭和四五年一月二七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
4 被告会社の原告金甲生に対するその余の反訴請求並びに、その余の原告に対する反訴請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は、原告らと被告国との間においては、原告らに生じた費用の七分の一を被告国の負担とし、被告国に生じた費用の七分の五を原告らの連帯負担とし、その余は各自の負担とし、原告らと被告会社との間においては、本訴、反訴を通じ原告らに生じた費用の一〇分の一を被告会社の負担とし、同被告に生じた費用の五分の四を原告らの連帯負担とし、その余は各自の負担とする。
6 この判決は第1項および第3項に限り、仮に執行することができる。
事 実 <省略>
理由
一 職権で探知するに、親子間の法律関係は法例二〇条により父なきときは母の本国法によるところ、原告甲生、同純生、同庚順、同秀蓮(以下、本項においては原告甲生ら四名という)の母たる原告雲順の本国法は後示五1(二)のとおり大韓民国法であり、大韓民国法四条によれば原告甲生ら四名はいずれも未成年者で、同法九〇九条二項によれば原告雲順は原告甲生ら四名の親権者であることが認められ、同法九一一条によれば、親権を行使する母は法定代理人となるから原告雲順は同時に法定代理人であることが認められる。ところで、民事訴訟における訴訟能力の問題は法廷地法によると解すべきところ、民事訴訟法四五条、四九条によれば、未成年者の訴訟行為は法定代理入によつてのみなし得るから、原告雪順が原告甲生ら四名を代理してした本訴提起は適法である。
二 事故の発生
事故発生時間の点はさて措き、本訴請求原因第一項の事実は当事者間に争いがない。
三 責任原因
<証拠省略>の結果並びに弁論の全趣旨を総合すると本件事故に至る経緯等として次の事実が認められる。
(1) 本件事故の発生した国道二七号線は敦賀市を起点とし、小浜市を経て福井県北西部を東西に連絡し、京都府舞鶴市に通ずる重要幹線道路で、山間部と日本海とに狭まれた地理的状況にあるため、その全線が「積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法」第三条第一項に基づき、建設大臣により「積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域において道路交通の確保が特に必要であると認められる道路」に指定されている。
(2) 本件事故現場は京都府との県境に近く、東にゆくと若狭湾があり、北側の青葉山(標高六九九メートル)と南側の三国岳(標高六一七メートル)の間を通る本件国道の入ロ附近に位置しているため、敦賀市に比べ摂氏(以下温度は全て摂氏である)三度前後気温が低く、冬期においてはしばしば早朝時に路面の凍結現象を起こす個所である。
(3) 本件国道は本件事故現場附近では幅員約八ないし九メートルで、東行車線、西行車線各一車線でアスフアルト舗装され道路中央部には白色ペイントで中央線が標示され、本件事故現場は南方約一〇〇メートルの国鉄小浜線青郷駅に通ずる幅員約七メートルの町道とほぼ直角に交差する通称青郷駅前交差点中央附近で、同交差点には系統式信号機が設置され、交差点東側と西側にそれぞれ白ペイントで横断歩道および停止線が標示されており、その西方約一七〇メートルにある関屋橋東詰から本件交差点東方約五〇メートルにかけて緩やかな下り勾配(縦〇・八七パーセント、横四パーセント)をなし、且つ北方に緩やかに力ーブ(半径二九〇メートル)しているうえ、交差点の周囲には人家が建ち並んでいるため、本件道路の見通しは西行車線を除き、全体的に悪く、殊に道路左右は全く悪い状態にある。
(4) 本件事故当時本件事故現場附近の国道両側には、昭和四五年一月一五日から一八日にかけての降雪をブルドーザーで除雪した後の雪が残雪となつて放置され約〇・三メートルの高さをなして道路両側から車道にはみ出していた為、道路の有効巾員は中央線を基準とすると、交差点東側では西行車線が約二・三五メートル、東行車線が約三・六五メートル、西側では西行車線が約二・七五メートル、東行車線が約二・四五メートルしかなく、しかも右有効幅員には残雪こそ見られないものの、交差点から東方へ約五〇メートル、西方へ約六〇メートルにかけて右残雪からの雪解け水が凍結してスリップし易い状況になつており、本件事故の起る前にも自転車やバイクに乗つた人が転んだりしていた。
(5) 事故当日、三俊は甲車を運転して舞鶴市に向い本件国道西行車線を時速六七キロメートルで走行中、午前七時二〇分頃、本件事故現場附近にさしかかつたが、甲車の車幅が二・四九メートルで、他方西行車線の有効幅員が前記の如く二・三五メートルしかなかつたこともあつて約九〇センチメートル前後中央線をオーバーしたうえ、右スピードと相侯つて左右にジグザグ状況になりながら本件交差点手前附近まで進行してきた時、中央線ぎりぎりに東行車線を対向進行してくる乙車を発見し、衝突の危険を感じて急ブレーキをかけたが、折から同所附近は前記の如く路面が凍結しており、しかも甲車タイヤは普通のタイヤで何等滑り止めの措置が講じてなかつたため制動効果がなく、そのまま直線的に進行してその右前部を乙車の右前部に正面衝突させた。
衝突時甲車は中央線を一・四メートルオーバーしていた。
なお、三俊は本件事故前において主に舞鶴港に入る木材の運送の仕事をしていた関係から本件事故現場附近は頻繁に通つており、事故直前の一月二一日、二三日、二四日にも通つている。
(6) 一方河野は事故前日の二五日午後一時三〇分頃、被告会社(当時は有限会社浜田急送)の自動車運転手中部義美と共に島根県浜田市を出発し、中部と交替で運転しながら広島県の可部、岡山、神戸と径由し神戸を出発した事故当日の午前一時三〇分頃からは河野が運転して大阪、京都、舞鶴を径て小浜市へ向つて本件国道の東行車線を時速六〇キロメートルで走行しながら午前七時二〇分頃本件事故現場附近にさしかかつたが、その手前附近で中央線をオーバーしながら西行車線を対向進行してくる甲車を発見し、急ブレーキを踏んだが路面凍結のため制動効果が薄くそのまま直線的に進行して前記(5) の如く甲車と正面衝突した。
乙車は保冷車であつてその車幅は二・四九メートルで、前輪に二本、後輪に四本のスパイクタイヤが中輪二本には普通タイヤが使用されており、衝突時には中央線をその前部で約四〇センチメートル、後部で約九〇センチメートルオーバーしていた。
なお、河野も本件事故前において、本件事故現場を何度か通つたことはある。
(7) なお、福井県道路交通法施行細則によれば、積雪または凍結している道路において自動車を運転する時は、タイヤチエーンを取りつける等すべり止めの措置を講ずることが義務づけられている(同細則第一六条第二号)。
なお、被告会社は本件事故の発生時間は午前六時二〇分である旨主張し、<証拠省略>によれば、乙車の運行記録用紙が午前六時二〇分で停止していることが認められるが、同時に<証拠省略>によれば右記録用紙は一時間位早くなつているということであるから前記認定を左右しない。
また、<証拠省略>には、本件事故直前の交差点近くの西行車線において通勤中のバイクに乗つた人が凍結のため転び、その直後頃、同車線を大型自動車が走行して来てその人が右車の影になつたと思つたら間なしに本件事故が起きたとの供述部分があり、右供述によれば甲車を運転していた三俊が右バイクとの衝突を避ける為止むなくセンターラインをオーバーして本件事故に遭遇したかの疑が生ずるが、<証拠省略>によれば同証人らの目撃位置は二メートル足らずしか離れていないのに、両証人の指示するバイクの転倒位置は約二一メートルも喰い違ううえ、<証拠省略>によれば証人高瀬照美および横谷桝治郎は事故直後、警察官から事情を聞かれ本件事故前の午前七時前頃には本件国道上で滑つて転倒している人はいたが、事故直前に転倒している人はいなかつた旨述べていること、また右証人らの証言自体明確なものでもなく暖昧な点を含むことからみて、右供述部分は容易に措信し難い。
他に前記認定を覆えすに足る証拠はない。
2 被告国の責任
(一) 本件道路は国道として被告国が管理していることは、原告らと被告国との間に争いがない。
(二)(1) ところで、前記1認定事実によれば本件事故は、本件国道に両側からはみ出していた残雪で道路の幅員が狭められていたため、止むなく道路中央線をオーバーして西行車線を走行していた三俊と、中央線沿いに東行車線を走行してきた河野とが本件事故現場附近にさしかかつてお互いに衝突の危険を感じ、急ブレーキを踏んだが、路面が凍結していたためスリップして衝突したことにあると認められる。
すると、後に判断する様に三俊および河野にもそれぞれ運転上の過失があつたことが認められるにせよ、なお本件事故の発生には右本件国道上に両側から車道に残雪がはみ出ていて有効幅員が狭ばまつていたことと、路面の凍結していたことが、その原因の一翼を担つていることは明らかである。
(2) そこで、右本件道路上に残雪の存したことおよび路面の凍結していたことが国家賠償法二条一項に所謂、営造物の管理の瑕疵に当るかどうかにつき検討する。
同条項に所謂管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、管理者の過失の有無は斟酌する必要はないものと解するを相当とする。しかして、道路にあつては当該道路がその位置、その地域の地形、地質、気象状況、交通状況等諸般の事情から考慮し円滑且つ安全な交通が確保されていることがその瑕疵のない状態であり(道路法二九条)、道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない(同法四二条)のである。
しかるに、前記1認定事実によれば、本件道路は一級国道として敦賀市と舞鶴市とを結ぶ交通上極めて重要な幹線道路で大型自動車同士の離合等もはげしく、殊に本件事故現場附近は北陸地方の山間部入口附近に位置し、見とおしの悪い交差点で且つ東方から緩かな下り勾配をなしつつ、北側に力ーブしている地形的にも危険な所であるに拘らず、残雪が本件道路両側に約〇・三メートルの高さをなしてはみ出し、従来の道路幅員が交差点東側で約六メートル、西側で約五・二メートルに狭められ、更に、本件事故現場附近がその交差点東方に約五〇メートル、西方に約六〇メートル位にわたり右残雪から路面に浸潤した水分が凍結しスリツプを起し易い状況になつていたのであり、かかる状態では、通行車両がその離合に際して衝突の危険を感じ、とくに大型車同士の場合はお互に中央線をオーバーし勝ちであるため運転者において事故回避のため急ブレーキをかけ、ために凍結部でスリツプして事故を発生させる危険性が極めて大きく、道路が通常有すべき安全性を欠く状態にあつたものといわざるを得ない。
(3) 被告国は本件道路全体としては対向車両のすれ違い可能な程度は確保しており、しかも事故当日までの気温から凍結が予想される状況になく、更に積雪寒冷地における早朝時の一時的局所的凍結現象についてまで防止すべき義務はないから、被告国には管理の瑕疵はない旨主張するところ、<証拠省略>によると、被告国の本件国道の管理状況等は左のとおりであつたことが認められ、これに反する証拠はない。
(イ) 福井県内の国道を維持管理している建設省福井工事事務所では、過去五カ年の積雪等の経験から昭和四四年一二月一五日から翌昭和四五年三月一五日までを雪寒対策期間と定め、雪寒対策計画書を作成し、それに基づいて、本件国道を含む各国道の交通を常時確保すべく、除雪及び凍結防止作業を実旋し、交通に支障のないよう努める方針であつた。
(ロ) 右計画書によれば、福井工事事務所の各国道維持出張所は、凍結防止又は除雪作業の必要が予想される時は、通常第一次態勢をとり、降雪が激しく且つ長期に亘り、第一次態勢要員のみでは困難と認められる時には、更に第二次態勢をひくこととし、第一次態勢の発令下においては二車線(六メートル以上)確保を原則とし、異常降雪以外は常時交通を確保することとされている。
また、除雪に際し、市街地等人家連坦地、交差点等沿道の状況から拡巾除雪ができない場合は、雪提高一〇〇センチメートル以上となり、交通に支障をきたすおそれのある時を基準に必要に応じ、排雪を行なう他特に予め凍結防止箇所を設ける他、それ以外の場所も路面の圧雪が五センチメートル以上で気温が零度以下を基準に凍結防止措置を講ずることとしている(尤も本件事故現場附近は凍結防止箇所には指定されていない)。
なお、直接の除雪作業は、各出張所の指揮監督下において民間の業者に請負形式で委託しており、本件事故現場附近は株式会社時岡組が請負つていた。
(ハ) 福井県内の本件国道の直接の維持、管理は、敦賀出張所がしており、同出張所は右計画書に従う他、毎日一回自動車でパトロールし右国道の道路状況をみて回る他、毎日敦賀測候所から午後一時三〇分現在および午後四時三〇分から五時までの気象状況を確認し、更に、独自に右国道沿いの末野では民間に、小浜市では土木出張所に、高浜町では町役場にそれぞれ委託して気象状況を把握し、これを総合判断してその日および翌日の除雪および凍結防止の対策を建て、除雪の必要のある場合は除雪の区間、方法、原則としての二車線確保等を指示して、その監督下において時岡組に作業をやらせていた。
(ニ) 事故前、本件事故現場附近には、昭和四五年一月一五日から一八日にかけて降雪があり、そのため敦賀出張所では一五日から第一次態勢をしき、時岡組に指示して連日除雪に当らせ、更に降雪の止んだ一九日にもブルドーザーで除雪作業を行ない、路面の積雪を道路脇に寄せ、以上をもつて除雪作業を含む第一次態勢を解除した。その後、一九日以降降雪はなく、しかも前記観測点における気温もおおむね零度以上で、特に事故前日の一月二五日の最低気温は敦賀零度、末野二度、小浜〇・二度、高浜四度であつたこともあり、通常の道路の巡回以外に特段の対策は講じていなかつた。
右認定事実によれば、国は本件道路の排雪等に関し、一応その内規に定める最少限の措置を講じていたということはできる。
そして、道路の残存幅員に関していえば、甲車、乙車の車幅はいずれも二・四九メートルであるから、有効幅員の尤も狭い本件交差点西側(約五・二メートル)においても道路状況に応じた適宜の運転方法さえ講ずれば、すれ違うことも一応可能なものが残されていたということもできる。しかし、前記1認定の如き緩やかな下り勾配と力ーブを呈する本件事故現場附近の地形からすれば通常の車速を保持して運行して来ることが予想される対向車双方に、咄嗟の場合に、右の様な計数上、ぎりぎり可能な避止行動を期待することは極めて困難であり、国道全体に亘つて前認定の様に内規に従い最少限の排雪措置を講じていたというだけで、本件個所における具体的な危険性が除去されていなかつた以上、なお管理の瑕疵は肯認されざるを得ない。
次に凍結防止の点においても、本件事故現場附近は前記認定の地形と北陸地方特有の気象状況のため、冬期早朝時において凍結現象を起こすことは決して珍らしいことではなく、<証拠省略>によれば事故当時の一月二六日には最低気温が敦賀、末野各零下三度、小浜零下四度、高浜二度と急激に下り以後一月末頃にかけても最低気温が零度以下に下る日が多かつたのであつて、この時期この様に場合によつては気温の急激な低下もありうることは十分予測され得るのであるから、道路脇に残雪を放置しておけば、これから溶解した水分が路面に浸潤し、それが気温の低下と相俟つて道路の局所的情況によつては凍結現象を起こすこともまた十分予測できるのである。従つて、道路管理者としてはかかる場所にあつては除雪に際し単に前記内規に定める最少限の幅員を確保するだけに止らず、右のような凍結現象が生じないよう十分に排雪するか、あるいは対向車両の離合に際し急ブレーキをかける必要を生ぜしめないよう予かじめ十分な幅員を確保することが要求されるのである。かかる見地からみると、前認定のとおり本件道路に対しては、一月一五日から一八日までの降雪に対し、一九日までに右降雪を本件道路両脇に寄せて前認定の幅員を確保したのみで、右残雪を本件事故当日まで放置して毎日の巡回以外他に何らの措置がとられていなかつたため凍結の結果を生ぜしめたもので、その間前記の様な措置を講ずるいとまもあり、且つ本件事故当日朝の気温の低下も前記この時期に起り得る気温の低下の予測範囲を超える程の異常なものであつたとは認められないのであるから、凍結防止の点においても管理の瑕疵が認められ、これを不可抗力とみることもできない。
よつて被告国の主張は失当であり、本件国道管理には国家賠償法二条一項に所謂瑕疵があつたものというべく、被告国は同条項により本件事故により原告らに生じた損害を賠償する義務がある。
(三) ところで三俊は後示五1(二)のとおり朝鮮国籍であるが、原告らは本件につき国家賠償法六条の適用をみるものとして本訴請求をしているので、朝鮮において日本人に対する相互保障規定の存否が問題となるところ、同条の規定の仕方のみからみると、同条は原則として外国人の国家賠償請求権を否定し、相互の保障のある場合にのみ例外的に右請求権を認めるものの如くみえ、従つて、被害者側において、右相互保障の存在を立証しなければならないかのようにみえる。
然し乍ら、元来国家賠償法は憲法一七条を受けて規定されているものであるが、右憲法一七条が公務員の不法行為につき「何人も」賠償請求権を認め、右に「何入も」とは直接には日本国民を指称するものとしても同条の存する憲法第三章「国民の権利義務」の章においては憲法が「国民」と「何人も」とを使い分けているうえ、憲法前文の国際主義をも併せ考えれば、国家賠償法六条は、むしろ、原則的には外国人にも国家賠償請求権を認め、例外的に、国又は公共団体において相互の保障のないことを立証した場合に限り同法の適用を排除するものと解するのが相当である。殊に、本件請求の同法二条一項は私法的色彩の濃厚な規定であること、被害者側に相互保障の立証を課すことの被害者側の負担をも考えれば右のように解するのが合理的でもある。しかして、その場合相互保障規定の存否は、国家賠償請求権の存否の前提問題であつて、適用すべき外国法の確知の問題ではないから、職権探知事項ではないと解すべきである。
すると、本件において、被告国は原告らの同法の適用を争うと答弁するのみで、何ら朝鮮において相互保障の規定の不存在についての立証がないから被告国は本件損害賠償義務を免れない。
3 被告会社の責任
(一)本訴請求原因第2項(二)の事実は原告らと被告会社との間に争いがないから、免責の認められない限り被告会社は自賠法三条により本件事故(三俊の死亡)によつて生じた損害を賠償する責任がある。
(二) そこで、被告会社の免責の抗弁につき判断するに、前記1認定事実によれば、本件事故現場附近はその東方の関屋橋から緩やかな下り勾配をなし且つ北側に力ーブしている見通しの悪い地点で、しかも道路脇の残雪のため有効幅員が狭ばめられており、このことは河野も認識していた筈であり、また季節的にも厳寒へ向う折でもあり北陸地方の気象状況からして路面の凍結も全く予想しえない状況でもなかつたに拘わらず何等減速徐行等の安全運転の措置をとることなく漫然時速約六〇キロメートルの高速度で進行したことにより、前記2認定の本件道路の管理の瑕疵と相侯つて本件事故を起したと認められ、従つて、河野には右措置を怠つた過失があるといわざるをえない。
そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、被告会社の右抗弁は理由がない。
四 本訴請求に対する過失相殺
前記三1認定事実によれば、三俊は本件道路は頻繁に通つており、ことに前記一月一五日から一八日までの降雪に対する除雪後の一月二一日、二三日、二四日にも本件事故現場附近を通つていたのであるから、一般的な北陸地方における冬季の道路状況、気象状況の他、本件事故現場附近の前認定の道路状況についても知悉しており、しかも当日の気象状況も併せ考えれば凍結現象の生じていることも全く予想しえないではなかつたに拘らず、甲車のタイヤにチエーンを巻きあるいはスノータイヤを使用する等、何等の滑り止めの措置を講せず、しかもそれにも拘らず何ら減速徐行等安全運転の措置をとることなく法定制限速度を超える時速約六七キロメートロの高速で、しかも必要以上にセンターラインをオーバーし漫然走行した結果本件事故に遭遇したもので、本件事故原因の大半は三俊の右措置を怠つた過失に基づくものとみなければならない。よつて、本件事故による損害に対する三俊の過失相殺の割合は五〇パーセントと認めるのが相当である。被告らの過失相殺の主張は、財産上の損害につき五〇パーセントの限度において理由がある。
五 損害
1 逸失利益
(一) 三俊の逸失利益
<証拠省略>を総合すると次の事実が認められ、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
三俊は一〇年間位ダンプカーの運転手をした後、昭和四二年一一月甲車を二九〇万円で購入し、同年一二月から個入で、月に一、二度専属的な下請運送をする他は個別に取引先からの注文をとつて、京都府の舞鶴港に入る木材を近畿地方を中心に遠くは福井、石川、三重、鳥取にまで下請運送をすることを業としていたが、未だ道路運送法四条一項所定の運輸大臣の事業免許を取得していなかつた。
ところで、三俊は昭和四四年二月から同四五年一月までの一年間に、その取引先に対し五一四万三、三五七円の請求をしており、この間営業関係の必要経費として一九七万五、二三七円(この中には甲車の購入代金四九万円の支払が含まれている。)を支払つている。また、昭和四三年度の収入は運送業を始めたばかりであつたこともあつて、昭和四四年度に比べ一二〇万円位少なかつた。
なお、三俊は死亡時満四四年の健康な男子であつた。
右認定事実によれば、三俊は事故直前の一年間の単純な荒利益は三一六万八、一二〇円となる。しかし、右必要経費中には、三俊が右収益を得るために自動車を保有使用することから当然支出の予想される自動車の減価償却費、自動車保険料、自動車税、車検費等が含まれていないこと、ことに甲車の購入代金は二九〇万円であるから自動車の減価償却費は、所得税法四九条、同法施行令一二〇条、一二九条、減価償却資産の耐用年数等に関する省令一条、四条に定める評価(定額法)によれば七二万五、〇〇〇円であつて、前記必要経費中に含まれる甲車の購入代金の内払分四九万円を二一二万五、〇〇〇円も上廻ること、その他、その前年の昭和四三年度の利益はこれより一二〇万円位少ないこと、また三俊は専属的下請運送というより個々の契約によつて下請運送をしており、交際費その他の流動経費にはなお若干不安定な要素のあることが認められるので、これを総合すると、到底前記事故直前の一年間の荒利益そのままが同人の将来の逸失利益となるものとみなすことはできず、同入の一年間の得べかりし利益は二七〇万円と認めるのが相当である。
次に、前認定事実によると経験則上三俊は死亡時から一九年間程度は稼働し、右運送業を続ける限り、毎年同程度の所得を挙げ得、生活費として月七万円を費消するものと考えられる。
<証拠省略>には、自動車運送に携わる自動車運転手は被告会社では満五〇歳を越すと仕事ができない旨の供述部分があるが、被告会社は浜田市を起点に中国、近畿、北陸等への極めて長距離の自動車運送を営なんでおり、<証拠省略>はこのような長距離運送を前提とするもので、三俊の稼働年数の算出を左右するに足りない。
ところで、被告らは三俊の自動車運送事業の経営は運輸大臣の免許を受けていない違法なものであるから、そのような違法な事業による逸失利益は保護するに値しない旨主張する。
成程、道路運送法一二八条によれば、同法四条一項の規定に違反し免許なくして自動車運送事業を経営した者に対しては一年以下の懲役若しくは三〇万円以下の罰金、又はその併料という必ずしも軽からざる罰則が規定されており、かかる無免許営業が違法であることは明らかである。しかし、無免許営業といえど、その事業の過程における第三者との個々の運送契約が私法上当然無効となるものでもないから無免許営業者といえどもその損害があることは明白であり、しかも、自動車運送事業を免許制とした同法の根本趣旨が自動車運送事業の公共的な性格とその危険性に鑑み、不当競争の防止を図ることによつて道路における輸送秩序を確保せんとするにあり(同法一条)、右処罰もまたその目的を達成するための一手段にすぎず、運送事業の営利自体を直接規整することを目的とするものではないから、右程度の違法性をもつてして不法行為における損害賠償としての逸失利益算定の基礎とすることを否定しなければならない程の反道徳的且つ醜悪な行為ということはできない。殊に、元来、不法行為の損害計算に際し得べかりし利益の喪失を一つの算定基準とするのは経済的側面から不法行為による損害の公平を図るための法技術的所産にすぎないのであるから、被害者に損害があれば逸失利益として計上することがその根本趣旨に適うのであり、不法行為の被害者が偶々かかる無免許営業者であつたことによつて全面的に加害者に損害の賠償を免れしむることは不当に加害者を利得せしめることともなり、公平を逸つせしめることになる。
従つて、三俊にはその得べかりし利益の喪失による損害の賠償を請求することができるものと解するを相当とする。
しかし、かかる無免許営業者は、道路運送法との関係において免許営業者に比し、その将来の営業の継続、従つてまたそれによる収益についてはその確実性、永続性の点において不安定であることは明白であり、逸失利益の算定にあたつては、この点を考慮する必要があるが、これを実数的に把握し難いので、逸失利益の全体に対する右不確実要素を四〇パーセントとみて、これを右利益から控除するのが相当である。
すると、年別ホフマン複式計算方法によつて年五分の中間利息を控除すると、三俊の逸失利益は次のとおり一、四六三万七、四五六円となる。
(計算式)
(2,700,000-70,000×12)13.116×0.6=14,637,456(円)
(13.116 は年数一九のホフマン係数)
右利益に三俊の前記過失相殺の割合(五〇パーセント)を斟酌すると、被告ら各自の賠償すべき金額はそのうち七三一万八、七二八円となる。
(二) 相続
原告雲順、同甲生、同純生、同庚順、同秀蓮がそれぞれ三俊の妻、長男、次男、長女、次女であること、三俊および原告らがいずれも原告ら主張の様に朝鮮国籍で外国人登録上、その本籍地とされている場所が大韓民国の支配下にある地であることは原告らと被告会社との間には争いがなく、原告雲順本人尋問の結果(第一、二回)および弁論の全趣旨によれば、原告らと被告国との間においても右同様の事実が認められる。
そこで法例二五条に基づき原告らの相続の準拠法は、右三俊の本籍地とされている地の属する大韓民国に現に施行されている同国民法によるべく、これによると、原告らはいづれも三俊の相続人でその相続分は原告雲順、同甲生、同純生、同庚順、同秀蓮の順で八分の一対八分の三対八分の二対八分の一対八分の一である(なお、右は原告甲生が戸主相続人となることを前提とするものであるが、同原告が戸主相続人たるべき要件を具備することにつき、被告会社はその事実を自白し、弁論の全趣旨により被告国もこれを明らかに争わないものと認める。)から、原告らは相続によりそれぞれ右割合で同人の前記損害賠償請求権を承継取得したと言うべきである。
(三) 損害の填補
原告らが本件事故により乙車の自動車損害賠償責任保障金から五〇〇万円を受領し前記(一)の損害に充当したことは原告らと被告会社との間には争いがなく、弁論の全趣旨によれば原告らと被告国との間にも右同様の事実を認めることができるから右金員を前記(一)の損害額から控除する。
2 原告らの慰籍料
前記の如く原告らは三俊の妻子であるところ、前記認定の本件事故態様、三俊の過失その他諸般の事情を斟酌すると、三俊の死亡による原告らの精神的苦痛を慰籍すべき額は原告雲順において四〇万円、その余の原告らにおいて各二〇万円と認めるのが相当である。
3 よつて、原告らは被告ら各自に対し、前記七三一万八、七二八円から五〇〇万円を控除した二三万八、七二八円を右相続分によつて按分した金額と各自の慰籍料の合計である左記の損害賠償請求権を有する。
(イ) 原告鄭雲順 六八万九、八四一円
(2,318,728×1/8+400,000=689,841)
(ロ) 原告金甲生 一〇六万九、五二三円
(2,318,728×3/8+200,000=1,069,523)
(ハ) 原告円純生 七七万九、六八二円
(2,318,728×2/8+200,000=779,682)
(ニ) 原告金庚順、同金秀運 四八万九、八四一円
(2,318,728×1/8+200,000=489,841)
六 相殺の抗弁
1 民法五〇九条は不法行為によつて生じた損害賠償債権を受働債権として相殺することを禁止しているが、その趣旨は不法行為の被害者に対する履行の確保と、同時に報復的不法行為の誘発防止にあると解されるところ、同一交通事故において双方の運転手に過失があり且つ双方に損害の生じた本件のような場合においては、履行の確保、被害者保護の要請は全く同時に双方にあり、右不法行為による損害賠償請求が一旦訴として提起された以上、不法行為における公平の観点からみてもこれを受働債権として、相手方から同一事故における不法行為債権を自働債権とする相殺を許容する方が当事者双方にとつても公平であり、訴訟経済にも合致するものであり、しかも本件の如く過失に基づく交通事故はその性質上報復的に再度発生せしめうるようなものでもないから報復的不法行為の誘発の危険も全くない。そうすると、民法五〇九条はかような相殺まで禁止する趣旨ではないと解するのが相当である。また、右のような観点からすれば、かかる同一不法行為から生じた債権である以上、それが受働債権と同質的であるか異質的であるか(つまり人損対物損)によつて適用を異にする理由はないと言うべきである。
2(一) 事故の発生
前記二および三の1(5) (6) 認定事実に<証拠省略>を総合すると、乙車は前認定の本件事故によりその右前部を中心に大破したこと、尤も乙車は保冷車で保冷装置部分は損傷が少なくその部分のみ取りはずして他への転売もできないことはないが、乙車を修理するとすれば(新車を買うよりも修理代が高くつくこと、以上の事実が認められ、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
右認定事実によれば、乙車は修理は可能ではあるが本件事故によりほぼ全損の状況にあつたと評価して妨げないと言うべきである。
(二) 責任原因および過失相殺
本件事故が三俊の過失に起因することは前記四認定のとおりであるが、他方河野にも過失があつたことは前記三3(二)認定のとおりであり、河野の本件事故に対する過失相殺の場合は一五パーセントとみるのが相当であり、これは被害者側の過失として被告会社にも適用するのが相当である。
(三) 損害
<証拠省略>を総合すると、被告会社は昭和四四年八月、島根日産自動車販売株式会社浜田営業所から、新車であつた乙車を四三五万円で買い入れ、本件事故まで五ヵ月間使用したため事故当時の時価は三五六万一、五六二円であつたが、前記のとおり乙車は全損状況にあつたため浜田営業所に二〇万円で下取りされたことが認められる。
他に右認定を覆えすに足る証拠はない。
以上認定事実によれば被告会社の損害は三三六万一、五六二円となるが前記過失相殺の割合一五パーセントを斟酌すると三俊の賠償すべき金額はそのうち二八五万七、三二七円(端数切り棄て、以下同じ)となる。
(四) 相続
前記五1(二)認定事実によれば、原告雲順、同甲生、同純生、同庚順、同秀蓮はいずれも三俊の相続人でその相続分はそれぞれ八分の一対八分の三対八分の二対八分の一対八分の一であるから、原告らは右損害賠償債務を原告雲順、同庚順、同秀蓮においてそれぞれ三五万七、一六五円、原告甲生において一〇七万一、四九七円、原告純生において七一万四、三三一円ずつ承継取得したと言うべきである。
(五) よつて被告会社が昭和四六年二月一日の本件口頭弁論期日においてした相殺の意思表示は右金額の限度において有効であるから、前記五3に示した原告らの損害賠償債権は被告会社に対する関係では右対当額の範囲で消滅し、原告鄭雲順において三三万二、六七六円、原告金純生において六万五、三五一円、原告金庚順、金透蓮に対し一三万二、六七六円の限度においてのみ残存し、原告金甲生においては、全部消滅したものというべきである。
七 反訴について
1 反訴の適法性―二重起訴の成否―について
被告会社は反訴として、なお原告らに対し本件事故による乙車の破損による損害賠償の支払を求めている。まず斯様に同一債権に基づき本訴において相殺の抗弁を主張しながら、反訴としてその履行を求めている場合は、本訴判決理由中で相殺の抗弁が判断される場合、その判断に既判力の生ずることから二重起訴になるのではないかとの疑問が生ずる。然しながら、少くとも、本訴において原告らの主張を争いながら予備的に相殺の抗弁を提出し、しかる後反訴を提起した本件のような場合においては、相殺の抗弁はあくまで一つの防禦方法にすぎず、右既判力も終局判決で相殺の抗弁にまで判断が及びこれが確定した時に生ずるものであつて、右抗弁が持出されただけでは判決理由が相殺の抗弁の判断に及ぶか否か全く不確定であることからすると、斯様に不確定なものに訴訟係属の効果を認めて二重起訴の制限を課することは被告にとつての防禦の自由を阻害するのみならず、反対債権(自働債権)の行使が妨げられる結果となり、不当な損害を蒙らしめる虞がある。殊に、受働債権、自働債権が共に不法行為に基づく債権であるため相殺の抗弁が不適法として排斥される場合のありうることを慮つて反訴を提起したともみうる本件のよう場合には、別訴の必要性も肯定できる。そうだとすると、本件のような反対債権の行使は二重起訴禁止の規定に抵触しないと解するのが相当である。
2 反訴請求の当否について
被告会社が三俊の不法行為により反訴請求額どおりの損害を蒙つているが、うち、一五パーセント分については過失相殺によつて損害賠償請求権が不存在となることは前記六2の(一)ないし(三)認定のとおりであるから被告会社の反訴請求はまずこの部分につき排斥を免れない。次に、被告会社は右一五パーセントを減額した余の部分につき損害賠償請求権を有し、これを三俊の相続人である原告らに対しその相続分に応じて請求しうべきこと前記六2のとおりであるが、原告金甲生に対し一、九七四円(前記六2(五)の相殺残額)を除くその余の部分およびその余の原告らに対する分は、いずれも前記本訴において認容された相殺の抗弁の自働債権そのものである。斯様に、相殺の抗弁の提出されている本訴係属中に、右相殺の抗弁に供した自働債権に基づきその給付を求める反訴が提起され、右本訴および反訴が同一裁判所において併合審理されて、その判断を一個の判決でなす本件のような場合において、本訴における相殺の抗弁を理由ありと判断する結果、右認容の限度において右相殺の用に供した自働債権が不存在となることが裁判所に明らかである場合においては、右限度で反訴請求は排斥を免れないと解するのが相当である。
そうすると、被告会社の反訴請求は原告金甲生に対して一、九七四円とこれに対する昭和四五年六月二七日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は以上の理由により排斥を免れない。
八 結論
よつて、被告らは各自、被告国において原告鄭雲順に対し六八万九、八四一円、原告金甲生に対し一〇六万九、五二五円、原告金純生に対し七七万九、六八二円、原告金庚順、同金秀蓮に対しそれぞれ四八万九、八四一円と、被告会社において、原告鄭雲順に対し三三万二、六七六円、原告金純生に対し六万五、三五一円、原告金庚順、同金秀蓮に対しそれぞれ一三万二、六七六円と、これらに対する本件不法行為の後である昭和四五年六月二七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。すなわち、右被告らの債務は、同一事故につき被告国は道路管理の瑕疵に基づき、被告会社は自賠法三条の運行供用者責任に基づき、同一の損害につきそれぞれ損害賠償義務を負担するものであるから、不真正連帯の関係に立ち、原告らに対し各自右金員を支払うべきものである。よつて、原告らの本訴請求は右限度で理由があるものとしてこれを認容し、原告金甲生の被告会社に対する請求および原告らのその余の請求はこれを棄却することとし、反訴請求につき、原告金甲生は被告会社に対し一、九七四円とこれに対する本件不法行為の後である昭和四五年六月二七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があり、被告会社の反訴請求は右限度で理由があるものとしてこれを認容し、原告金甲生に対するその余の請求および原告鄭雲順、同金純生、同金庚順、同金秀蓮に対する請求は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用し、なお被告国から担保を条件とする仮執行免脱の宣言の申立がなされているが、相当でないからこれを付せざることとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 潮久郎 杉本昭一 田中亮一)