大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大津家庭裁判所 平成11年(家イ)254号 審判 2000年1月17日

申立人 X

相手方 AことY

相手方法定代理人親権者母 B

主文

相手方が申立人の嫡出子であることを否認する。

理由

1  本件調停委員会の調停において当事者間に主文同旨の合意が成立し、かつ、その原因たる事実についても争いがない。

2  一件記録並びに申立人及び相手方法定代理人親権者母(以下「母」という。)の各審問の結果を総合すれば次の事実が認められる。

(1)  申立人と母は平成3年12月19日ブラジル連邦共和国サンパウロ州で同地の方式により結婚した。申立人と母は不和となり、平成9年2月別居し、その後両人間で肉体関係は一切ない。

(2)  母は、平成11年○月○日相手方を出産した。申立人の血液型はAB型、母及び相手方の血液型はいずれもO型であり、相手方が申立人の子でないことは明白である。

3  当裁判所の判断

(1)  国際裁判管轄権について

我が国には嫡出子否認申立事件の国際裁判管轄権について明文の規定はないが、当事者が日本に住所を有し、我が国の裁判所で審理、判断することについて、なんら異義を留めず、本調停に出席し、前記合意をしているのであるから、本件の国際裁判管轄権は我が国にあると認められる。

(2)  準拠法について

本件は相手方が申立人の嫡出子であることの否認を求めるものであるから、法例17条により、相手方の出生当時における申立人及び母の本国法であるブラジル民法が準拠法である。

同法の嫡出子の規定の適用によると、本件の事実関係においては嫡出子否認の申立ては認められないと解される。

しかし、相手方が申立人の子でないことは明らかであり、申立人、相手方、母とも日本で生活し、その生活の本拠は日本にあり、相手方、母は今後も日本で生活する予定である本件において、本件嫡出子否認の申立てを認めないのは相手方である「子の福祉」を著しく害することとなり、我が国の社会通念に反する結果を来し、ひいては我が国の公序良俗に反するというべきである。

したがって、本件においては、法例33条によりブラジル民法の適用を排除し、日本民法を適用するのが相当である。

4  よって、調停委員会を組織する各家事調停委員の意見を聴いた上、本件申立を相当と認め、家事審判法23条により主文のとおり合意に相当する審判をする。

(家事審判官 村地勉)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例