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大阪地方裁判所 平成元年(わ)1391号 判決 1989年11月07日

本籍

大阪府高槻市下田部町一丁目三六〇番地

住居

同市下田部町一丁目三〇番一六号

会社役員

川畑俊一

大正一二年五月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官加藤敏員出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金五〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、自己所有の不動産を管理する川畑興産株式会社の取締役であるとともに、自ら不動産賃貸業を営む傍ら、株式取引を行つていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一  昭和五九年分の実際総所得金額が四三三一万一五九六円あつた(別紙(一)修正損益計算書参照)のにかかわらず、架空人名義を用いて株式の継続的取引を行い、同取引による収入のすべてを除外するとともに、不動産賃貸料収入の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六〇年三月一一日、大阪府茨木市上中条一丁目九番二一号所在の所轄茨木税務署において、同税務署長に対し、昭和五九年分の総所得金額が一〇七一万一六五八円で、これに対する所得税額が七万九四〇〇円(ただし、申告書では、計算の誤りにより、還付される税額四万一四一六円と記載している。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額一七八一万一〇〇円と右申告税額との差額一七七三万一六〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた

第二  昭和六〇年分の実際総所得金額が九〇八八万七八三三円あつた(別紙(二)修正損益計算書参照)のにかかわらず、架空人名義を用いて株式の取引を行い、有価証券の短期譲渡所得を除外するとともに、不動産賃貸料収入の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六一年二月二二日、前記茨木税務署において、同税務署長に対し、昭和六〇年分の総所得金額が一一五七万一一四三円で、これに対する所得税額が四二万一六〇〇円(ただし、申告書では、計算の誤りにより、所得税額一五万七六〇〇円と記載している。)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額四八八八万三九〇〇円と右申告税額との差額四八四六万二三〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた

第三  昭和六一年分の総合課税の実際所得金額が二億一二二七万五五七円あり、分離課税の実際長期譲渡所得金額が六〇四万六六三一円あつた(別紙(三)修正損益計算書参照)のにかかわらず、架空人名義を用いて株式の取引を行い、有価証券の短期譲渡所得を除外するとともに、不動産賃貸料収入の一部を除外するなどの方法により所得の一部を秘匿した上、昭和六二年三月一七日、前記茨木税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総合課税の所得金額が八七一万四一五〇円、分離課税の長期譲渡所得金額が八五六万二三九五円で、これらに対する所得税額が合計一〇八万四九〇〇円である(ただし、申告書では、計算の誤りにより、分離課税の長期譲渡所得につき、所得金額にして二五一万五七六四円、税額にして五〇万三二〇〇円を過大に記載している。)旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もつて不正の行為により、同年分の正規の所得税額一億三五〇四万八二〇〇円と右申告税額との差額一億三三九六万三三〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れた

ものである。

(証拠の標目)

(注)括弧内の算用数字は証拠等関係カード検察官請求分の請求番号を示す。

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人に対する収税官吏の質問てん末書一四通

一  川出勝朗及び山田恵司に対する収税官吏の各質問てん末書(各二通)

一  収税官吏作成の査察官調査書一六通

判示第一の事実につき

一  茨木税務署長作成の証明書(4)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(1)

判示第二の事実につき

一  茨木税務署長作成の証明書(5)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(2)

判示第三の事実につき

一  茨木税務署長作成の証明書(6)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(3)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、いずれも所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により同条二項を適用し、以上の各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、微役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金五〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 三好幹夫)

別紙(一)

修正損益計算書

自 昭和59年1月1日

至 昭和59年12月31日

<省略>

雑所得

<省略>

不動産所得

<省略>

別紙(二)

修正損益計算書

自 昭和60年1月1日

至 昭和60年12月31日

<省略>

短期譲渡所得

<省略>

不動産所得

<省略>

別紙(三)

修正損益計算書

自 昭和61年1月1日

至 昭和61年12月31日

<省略>

短期譲渡所得

<省略>

不動産所得

<省略>

別紙(四)

税額計算書

<省略>

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