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大阪地方裁判所 平成元年(ワ)10574号 判決

一 争点1(イ号物件の<2>部分の構成は、構成要件Cの「添糸編で厚地に形成する」に該当するか)

1 主位的主張について

(一) 日本工業規格の用語定義上、「パイル編」は「編地の面にリング状にわなを出した組織。付図2―11」(別紙日本工業規格・繊維用語(メリヤス部門)・付図参照)と定義され、「添糸編」は「二種類の糸を用いて、一方の糸で他方を覆うようにして編まれた組織。付図2―12」(同付図参照)と定義されており、一般に両者は編組織上は別個のものと認識されていること(甲四、五、二二、弁論の全趣旨)、

(二)一般に添糸編用の機械とパイル編用の機械は別物と認識されていること(右同証拠)、

(三)本件実用新案登録請求の範囲、考案の詳細な説明及び願書添付図面中に、実用新案登録請求の範囲記載の「添糸編」に「パイル編」を含むことを示唆する文言が全くないうえ、当業者は典型的な添糸編で地糸と添糸とを一本の糸と同じように編むことを「引揃え」と呼称しているが(甲五)、考案の詳細な説明中には、「当該関節密着部位の外側Cを太繊度のスパンレーヨン糸2と、同レーヨン糸より細繊度の巻縮ナイロン糸3の引揃え糸で編成するかもしくは太番手の綿糸に上記巻縮ナイロン糸を引揃えて編成し」と記載し(公報2欄8~12行目)、願書添付図面にも前記日本工業規格の定義にいう添糸編しか図示していないこと、

(四)イ号物件は、前記被告主張(第三、二、2)のとおり、「林考案」の実施品であり、昭五七―六二五五号実用新案公報(乙二の二)記載の作用効果(関節外側では存在し、内側では存在しない、軸方向弾性力を生み出すメカニズム)を奏する目的で、<2>部分においてパイル編を採用しているものであり、本件考案の技術的範囲から免れるためにパイル編を採用しているものでないと認められること、

以上の(一)ないし(三)の事実に照らして考えると、構成要件Cの「添糸編」は日本工業規格の用語定義にいう添糸編であると考えざるを得ず、右事実に(四)の事実を併せ考えると、イ号物件における<2>部分の構成は構成要件Cを充足するということはできない。したがつて、この点において既にイ号物件は本件考案の技術的範囲に属さないというべきである。なお、原告指摘のコツトン・フアブリツク(甲三の一~三)の記述は、パイル編をするとき、途中まで添糸編と同一の編み方をする旨の説明であると認められるが、右(三)の考案の詳細な説明及び図面の記載並びに(一)及び(二)の当業者の一般的な認識に照らすと、右の如き説明がなされている事例があるからといつて、構成要件Cの「複数本の編糸による添糸編で厚地に形成し」を、編組織を(一)にいう「添糸編」の組織にするという意味ではなく、編み方を記載したものであつて、製造過程において「複数本の編糸を同一給糸口に給糸する編み方で編んで厚地に形成する」編み方をしていれば足り、出来上がつた編組織が「パイル編」の場合をも含む趣旨の記載であると解することはできない。

2 均等の主張について

イ号物件においても、ループ編の編み糸を<4>部分と<2>部分の境界ウエールで切断しているが、それは、前記被告主張(第三、二、2)のとおり、イ号物件が「林考案」の実施品であり、昭五七―六二五五号実用新案公報(乙二の二)記載の作用効果(関節外側では存在し、内側では存在しない、軸方向弾性力を生み出すメカニズム)を奏する目的で、<2>部分においてパイル編を採用し、<4>部分において実質的にコースを半減させるため、<4>部分では邪魔になるループ編の編糸中の非弾性糸B´を切断しているものであり、本件考案とは異なる目的で編糸の一部を切断しているものと認められるから、原告の均等の主張も採用できない。

二 争点2(イ号物件の<4>部分の構成は、構成要件Dの「Cの編糸の一部を以て薄地に形成して、他の編糸を厚地部と薄地部の境界ウエールで切断する」に該当するか)

前項判示のとおり、イ号物件における<2>部分の構成が添糸編と認められない以上、イ号物件の<4>部分の構成が構成要件Dを充足しないことは明らかである。

〔編注1〕本件実用新案の登録請求の範囲は左のとおりである。

編組織中にポリウレタン弾性糸その他の伸縮弾性糸を挿入するかもしくは編込んで円周方向に強伸縮弾性を付与せしめた関節保護用サポーターに於いて、関節内側とその周辺への密着部位を除く大部分を、複数本の編糸による添糸編で厚地に形成し、一方、関節内側とその周辺への密着部位は、上記編糸の一部を以て薄地に形成して、他の編糸を厚地部と薄地部の境界ウエールで切断した関節保護用サポーター。

〔編注2〕本件考案の構成要件は左のとおりである。

A 関節保護用サポーターである。

B 編組織中にポリウレタン弾性糸その他の伸縮弾性糸を挿入するかもしくは編込んで円周方向に強伸縮弾性を付与せしめる。

C 関節内側とその周辺への密着部位を除く大部分を、複数本の編糸による添糸編で厚地に形成する。

D 一方、関節内側とその周辺への密着部位は、Cの編糸の一部を以て薄地に形成して、他の編糸を厚地部と薄地部の境界ウエールで切断する。

〔編注3〕本件における物件目録は左のとおりである。

別添第1ないし第4図に示し、左記に説明する構造を有する関節保護用サポーター

(構造の説明)

1 筒状に編成したメリヤス地のループを通して、素通し用伸縮弾性糸Cを螺旋状に連続して組み込んで、円周方向に強伸縮弾性を付与せしめると共に、右の弾性糸の螺旋径を徐々に変化させて筒の径を変化させてひざの形状に合せており、

2 第1図<1>、<3>部分は同一の編成であり、第2図の編成になつており、

3 関節内側とその周辺への密着部位を除く第1図<2>部分では、第3図のように、非弾性糸(地糸用)A、B、B´と弾性糸(地糸用)A´の複数本の編糸をA、Bを同一給糸口に給糸し、A´、B´を別の同一給糸口に給糸することにより第1図<4>部分より厚地に形成して、軸方向弾性力を発揮させ、

4 関節内側とその周辺への密着部位を示す第1図<4>部分では、第4図のように、右弾性糸A´を編み目に残すが、編成させず、前記編糸の一部たる非弾性糸(地糸)A、Bのみで形成させて、軸方向弾性力を減退させ、非弾性糸B´を第1図<2>部分と<4>部分との境界ウエールで切断している

5 関節保護用サポーター

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