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大阪地方裁判所 平成10年(モ)5759号 決定 1998年12月03日

大阪府<以下省略>

申立人(原告)

右訴訟代理人弁護士

三木俊博

東京都千代田区<以下省略>

相手方(被告)

大和証券株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

堀弘二

浦野正幸

右当事者間の平成九年(ワ)第一二六八五号損害賠償請求事件(以下「基本事件」という。)につき、申立人(原告)から相手方(被告)に対して文書提出命令の申立てがあったので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

相手方は、本決定送達の日から三週間以内に別紙文書目録記載の文書を当裁判所に提出せよ。

理由

一  申立ての趣旨及び理由並びに相手方の意見

申立ての趣旨及び理由は、別紙平成一〇年八月二一日付文書提出命令申立書、同年九月二二日付意見書及び同年一一月二日付文書提出命令補充書各記載のとおりであり、これに対する相手方の意見は、別紙同年九月一八日付、同月二四日付及び同年一一月一〇日付意見書各記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  基本事件は、申立人(原告)が証券会社である相手方(被告)の従業員の違法な投資勧誘行為等によりドル建てワラントを購入した結果損害を被ったと主張して、相手方に対し不法行為に基づく損害賠償を請求している事件であるところ、別紙文書目録記載の文書(以下「本件文書」という。)は、相手方の担当者が顧客である申立人から大和工商リースのドル建てワラント(以下「本件ワラント」という。)の買付けの注文を受けた際に右の注文内容等を具体的に記載して作成した文書であり、申立人と相手方との間のワラント取引の発生及び内容に直接関連する事項を記載した文書であって、民事訴訟法二二〇条三号後段にいう挙証者(申立人)と文書の所持者(相手方)との間の法律関係について作成された文書であるということができる。

次に、基本事件の記録によると、申立人が、平成五年六月一一日に、相手方従業員のB(以下「B」という。)との間で、本件ワラントを単価一七・二五ポイント、代金一八三〇万二二五〇円で購入するとの約定を電話で締結したことは当事者間に争いがないものの、本件ワラントの勧誘状況に関して、相手方が「同月一〇日ころ、Bは、再度、○○医院を訪問し、申立人に対し、本件ワラントの権利内容や単価、買付代金や行使株数の計算の仕方などを説明して、その買付を再度勧誘したところ、ようやく申立人がワラント取引に興味を示したので、ワラントの説明書を交付して、その内容を説明し、ワラント取引に関する確認書と外国証券取引口座設定約諾書を徴収した」と主張するのに対し、申立人は、「本件ワラントの権利内容や単価、買付代金や行使株数の計算の仕方などの説明を受けたことはないし、ワラント取引説明書の交付を受けたこともない」と反論しており、また、相手方が「Bは、同月一一日、申立人に電話を架けてその意向を確認したところ、申立人から本件ワラントを購入したいとの返答があったので、買付数量、単価、買付為替レート、買付金額などを再度確認して、注文を受けるとともに、当日、○○医院を訪問し、約定結果を申立人に報告した」と主張するのに対し、申立人は「相手方が電話で確認したと主張する内容(とりわけ買付為替レート)につき申立人が確認したという点は争い、また、Bが○○医院を訪問したかについては記憶が定かでない」と主張している。

ところで、基本事件の争点である同年六月四日や同月一〇日の相手方従業員であるCないしBの勧誘内容が、本件文書自体から明らかにならないことは相手方の主張するとおりであるけれども、一般に注文伝票には、買付為替レートや注文時刻の記載があることからすれば、本件文書は、基本事件の争点である相手方従業員による勧誘行為の違法性の存否と関連性を有し、その記載内容が、Bが同月一一日に申立人に対し、買付為替レートについて再確認したか否か、ひいては、前日ころに本件ワラントの単価等の計算の仕方を説明したか否かということや、同月一一日に申立人とBとの間でなされた電話の後で、Bが○○医院を訪問したか否かについての供述や証言の信用性に影響することも考えられるのであるから、本件文書を取り調べる必要性が全くないとはいえない。

2  よって、申立人の申立ては理由があるから、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 石井寛明 裁判官 石丸将利)

<以下省略>

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