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大阪地方裁判所 平成10年(ワ)11341号 判決 2000年1月19日

原告

三谷輝一

ほか一名

被告

日産火災海上保険株式会社

ほか三名

主文

一1  被告阪本靖男は、原告三谷輝一に対し、金一〇一七万七二八一円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告阪本一代は、原告三谷輝一に対し、金五〇八万八六四〇円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告阪本光央は、原告三谷輝一に対し、金二五四万四三二〇円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告日産火災海上保険株式会社は、原告三谷輝一に対し、金一〇一七万七二八一円及びこれに対する平成一〇年一月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二1  被告阪本靖男は、原告三谷一美に対し、金一〇一七万七二八一円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告阪本一代は、原告三谷一美に対し、金五〇八万八六四〇円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告阪本光央は、原告三谷一美に対し、金二五四万四三二〇円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告日産火災海上保険株式会社は、原告三谷一美に対し、金一〇一七万七二八一円及びこれに対する平成一〇年一月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は被告らの負担とする。

五  この判決は、一、二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一1  被告阪本靖男は、原告三谷輝一に対し、金一〇五〇万円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告阪本一代は、原告三谷輝一に対し、金五二五万円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告阪本光央は、原告三谷輝一に対し、金二六二万五〇〇〇円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告日産火災海上保険株式会社は、原告三谷輝一に対し、金一〇五〇万円及びこれに対する平成一〇年一月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二1  被告阪本靖男は、原告三谷一美に対し、金一〇五〇万円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告阪本一代は、原告三谷一美に対し、金五二五万円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告阪本光央は、原告三谷一美に対し、金二六二万五〇〇〇円及びこれに対する平成九年一月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告日産火災海上保険株式会社は、原告三谷一美に対し、金一〇五〇万円及びこれに対する平成一〇年一月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、次の交通事故により死亡した三谷聡の父母である原告らが、三谷聰が同乗していた車両につき自賠責保険契約を締結していた被告日産火災海上保険株式会社に対し自動車損害賠償保障法一六条に基づき、相手方車両の運転者で阪本靖男に対し民法七〇九条に基づき、同車両の保有者である阪本岐の相続人である被告阪本一代、阪本光央(被告阪本靖男も相続人の一人)に対し自動車損害賠償保障法三条に基づき、それぞれ損害賠償(一部請求)を求めた事案である。

一  争いのない事実

1(本件事故)

(一)  日時 平成九年一月五日午前二時一五分ころ

(二)  場所 大阪府東大阪市西岩田三丁目五番七号先路上(大阪中央環状線)

(三)  事故車両 (1) 被告阪本靖男(以下「被告阪本」という。)運転の普通乗用自動車(和歌山五七ほ二五九一)(以下「阪本車両」という。)

(2) 宮崎康裕(以下「宮崎」という。)運転、亡三谷聡(以下「亡聡」という。)同乗の自動二輪車(以下「宮崎車両」という。)

(四)  態様 阪本車両が宮崎車両に追突したもの

(五)  結果 亡聡は、同日、脳挫傷により死亡

(六)  原告らは、亡聡の父母である(甲一、二)。

2(責任)

(一)  被告靖男は、民法七〇九条に基づく損害賠償責任がある。

(二)  被告阪本岐は、阪本車両の保有者であるから、自動車損害賠償保障法三条に基づく損害賠償責任があるところ、平成一〇年九月一四日死亡し、配偶者である被告阪本一代(法定相続分二分の一)、子である被告靖男及び被告阪本光央(法定相続分四分の一)が、それぞれ法定相続分に従い相続した。

(三)  被告日産火災海上保険株式会社(以下「被告日産火災」という。)は、宮崎車両について、自賠責保険契約を締結していた(証券番号四一三七二六四七七号)。

3(損害填補)

(一)  阪本車両の自賠責保険金 三〇〇〇万円

(二)  宮崎車両の自賠責保険金 五六五万二一〇〇円

二  争点

1(損害)

(一)  逸失利益 二九〇二万九六二五円

亡聡は、死亡時一七歳の高校生であったから、逸失利益は、平成八年賃金センサス高卒男子一八ないし一九才の年収二四四万四六〇〇円、新ホフマン係数二三・七五〇、生活費控除率五〇パーセントとして算定すると、次の計算式のとおり、二九〇二万九六二五円となる。

244万4600円×(1-0.5)×23.750=2902万9625円

(二)  死亡慰謝料 三〇〇〇万円

(三)  葬儀費用 二〇〇万円

(四)  弁護士費用 二〇〇万円

2(過失相殺)

(被告ら)

(一)  本件事故は、亡聡と宮崎らが共同で暴走行為(幹線道路における深夜の超低速運転〔時速約一五キロメートル〕による共同危険行為)を行っていた最中に発生した事故である。

(二)  宮崎車両は、ナンバープレート、テールランプ、泥よけカバーをはずした真っ黒な改造車であり、夜間の走行時には後続車両から見えない状態であり、このために本件事故が発生した。

(三)  亡聡は、宮崎車両に三人乗りをし、ヘルメットを着用していなかった。

(四)  以上の点から被告日産火災は四割以上の、その余の被告らは三割を超える過失相殺を主張する。

(原告ら)

(一)  被告靖男は、本件事故時飲酒の上、呼気一リットル中〇・三五ミリグラムのアルコールを保有していた。

(二)  被告靖男は、阪本車両を時速約一〇〇キロメートルで走行して本件事故を発生させた。

第三判断

一  争点1(損害)

1  逸失利益 二九〇二万九六二五円

亡聡は、死亡時一七歳の高校生(争いがない。)であったから、逸失利益は、原告ら主張のとおり二九〇二万九六二五円と認められる。

2  死亡慰謝料 三〇〇〇万円

本件に現れた諸般の事情を考慮すると、亡聡の死亡慰謝料は三〇〇〇万円と認めるのが相当である。

3  葬儀費用 一二〇万円

本件事故と相当因果関係のある葬儀費用は、一二〇万円と認めるのが相当である。

4  以上合計 六〇二二万九六二五円

二  争点2(過失相殺)

証拠(甲二ないし三九)によれば、次の事実が認められる。

1  本件事故現場は、大阪中央環状線であり、側道二車線、中央分離帯、本線三車線の片側五車線の幹線道路であった(制限速度は時速六〇キロメートル)。

2  本件事故現場付近は、薄暗かったが、前照灯(下向き)により前方四二・〇メートルの単車を発見可能であった。

3  亡聡と宮崎らは、四輪車約九台、二輪車約五台で、暴走行為をしており、本件事故時は右車両で道路をほぼ塞ぐ形で時速約二〇キロメートルで走行していた。

4  宮崎車両は、ナンバープレート、テールランプ、泥よけカバーをはずした真っ黒な改造車であり、夜間の走行時には後続車両から発見が困難であった。

5  亡聡は、宮崎車両に三人乗り(運転者と最後部の者と間)をし、ヘルメットを着用していなかった。

6  被告靖男は、本件事故時飲酒の上、呼気一リットル中〇・三五ミリグラムのアルコールを保有していた。

7  被告靖男は、宮崎車両を時速約九〇ないし一〇〇キロメートルで走行して本件事故を発生させた。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

右に認定の事実からすると、亡聡にも、共同で暴走行為に参加していたこと、宮崎車両に定員を超える三人乗りをしていたこと、ヘルメットを装着していなかったことにおいて、過失があるというべきであるが、被告靖男には制限速度を三〇キロメートル以上超える速度違反及び酒気帯び運転の過失があり、これに本件事故態様が追突であることを考慮すると、亡聡の前記過失を大きく認めることは相当でなく、前記損害額の一割を過失相殺するのが相当である。

すると、損害額は、五四二〇万六六六二円となる。

三  損害填補

原告らは、宮崎車両及び阪本車両の自賠責保険から保険金合計三五六五万二一〇〇円を受領しているから、これを控除すると、一八五五万四五六二円(原告らそれぞれについて九二七万七二八一円)となる。

四  弁護士費用 各九〇万円

本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、それぞれ九〇万円と認めるのが相当である。

五  したがって、原告ら各自が支払を受けるべき損害額は各一〇一七万七二八一円となり、被告靖男及び被告日産火災(自賠責保険金限度額三〇〇〇万円から既払の五六五万二一〇〇円を控除すると残額は二四三四万七九〇〇円である。)は、連帯して、右金額を、被告阪本一代は、相続分に応じた五〇八万八六四〇円の限度で連帯して、被告阪本光央は、同じく二五四万四三二〇円の限度で連帯して、それぞれ支払義務がある。

六  よって、主文のとおり判決する(被告日産火災に対する請求の遅延損害金の起算日は、被害者請求受付の日の翌日である平成一〇年一月二八日、その余の被告に対する請求の遅延損害金の起算日は本件事故日)。

(裁判官 吉波佳希)

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