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大阪地方裁判所 平成10年(ワ)7820号 判決 2001年3月01日

平成10年(ワ)第7820号 製造販売差止請求権不存在確認等請求事件(甲事件)

同年(ワ)第11259号 特許権侵害行為差止等請求事件(乙事件)

甲事件原告・乙事件被告

株式会社ミヤナガ

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁護士

三山峻司

室谷和彦

補佐人弁理士

角田嘉宏

高石郷

乙事件原告・甲事件被告

日東工器株式会社

代表者代表取締役

【B】

訴訟代理人弁護士

鈴木修

矢部耕三

補佐人弁理士

伊藤茂

※以下、甲事件原告・乙事件被告を「原告」と、甲事件被告・乙事件原告を「被告」という。

主文

1  被告は、原告の製造、販売する別紙イ号製品目録記載の環状カッタについて、特許登録第2558054号の特許権を侵害する旨の事実を文書又は口頭で第三者に告知・流布してはならない。

2  被告は、原告に対し、金100万円及びこれに対する平成10年8月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3  原告は、別紙ロ号製品目録記載の環状カッタを製造し、販売し、販売のために展示してはならない。

4  原告は、その本店、営業所及び工場に存する前項の物件及びその半製品(前項の物件の構造を具備しているが、製品として完成していないもの)を廃棄せよ。

5  原告は、被告に対し、金601万8976円及びこれに対する平成10年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

6  原告及び被告のその余の請求をいずれも棄却する。

7  訴訟費用は、甲乙事件を通じてこれを10分し、その1を原告の、その余を被告の負担とする。

8  この判決は、第2項及び第5項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

※ 以下、書証の掲記は甲1などと略称し、枝番のすべてを含む場合にはその記載を省略する。

第1請求

1  甲事件

(1)  被告は、原告の製造、販売する別紙イ号製品目録記載の環状カッタについて、特許登録第2558054号の特許権を侵害する旨の事実を文書又は口頭で第三者に告知・流布してはならない。

(2)  被告は、原告が、別紙イ号製品目録記載の環状カッタを製造販売することについて妨害してはならない。

(3)  被告は、原告に対し金200万円及びこれに対する平成10年8月6日(甲事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  乙事件

(1)  原告は、別紙イ号製品目録記載及び同ロ号製品目録記載の環状カッタを製造し、販売し、販売のために展示してはならない。

(2)  原告は、その本店、営業所及び工場に存する前項の物件及びその半製品(前項の物件の構造を具備しているが、製品として完成していないもの)を廃棄し、並びにこれらの物件の製造に供した工作機械その他の製造設備を除却せよ。

(3)  原告は、被告に対し、金2億3041万1884円及び内金1億3232万3619円に対する平成10年8月21日(乙事件の訴状送達の日の翌日)から、内金9808万8265円に対する平成12年5月20日(同年同月18日付被告第12準備書面送達の日の翌日)から支払済みまで、年5分の割合による金員を支払え

第2事案の概要

1  基礎となる事実(いずれも争いがないか弁論の全趣旨により認められる。

(1)  当事者

ア 原告は、コンクリートドリル・超硬工具・ダイヤモンド工具及びこの付属機器等の製造・販売を事業目的とする株式会社である。

イ 被告は、工作機器等各種機器・工具類等の製造販売を業とする株式会社である。

(2)  被告の特許権

被告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、この特許を「本件特許」という。)を有している。

ア 発明の名称

環状カッタ

イ 出願日

平成5年6月30日(特願平5-183523号)

ウ 公開日

平成7年1月13日(特開平7-9226号)

エ 登録日

平成8年9月5日

オ 特許番号

第2558054号

カ 訂正審決日

平成10年3月31日

キ 特許請求の範囲

本件特許権の訂正後における明細書(以下「本件明細書」という。その内容は、本判決添付の全文訂正明細書記載のとおりである。)の特許請求の範囲の記載は、同全文訂正明細書の該当欄記載のとおりである(以下、同特許請求の範囲記載の特許発明を「本件発明」という。)。

(3)  本件発明の構成要件の分説

本件発明の構成要件は、次のとおり分説するのが相当である。

A 穿孔装置に装着されるアーバーの自由端面に開口し当該アーバーの軸線方向に延びる挿入孔に挿入され保持される挿入部を有する環状カッタであって、

B 前記アーバーは前記挿入孔の周壁をその半径方向で貫通する収納孔と、該収納孔内に半径方向で変位可能に収納された施錠部材と、前記周壁上に第1の位置と第2の位置との間で移動可能に取り付けられた操作スリーブであって、第1の位置にあるときに前記収納孔に整合する第1制御面と、第2の位置にあるときに前記収納孔に整合する前記第1制御面よりも半径方向内側にある第2制御面とが設けられている内周面を有する操作スリーブと、操作スリーブを第2の位置に向けて付勢するスプリングと、当該カッタの前記挿入部が前記挿入孔内に非挿入状態のときには、前記操作スリーブの第1制御面によって挿入孔内に押圧される前記施錠部材と係合して、同施錠部材を同挿入孔内に半突入状態に保持する支承部材とを有し、

C これに対し、前記挿入部はその先端部に、当該挿入部が前記挿入孔内に挿入されるときに、前記半突入状態とされている施錠部材を通過できる施錠部材通過凹部と、

D 前記支承部材と当接して該支承部材による前記施錠部材の保持を解除する支承部材当接部と、

E 前記施錠部材通過凹部に連接されており、当該挿入部が所定深さだけ前記挿入孔内に挿入されたときに、前記施錠部材と整合して、該施錠部材が半径方向内側に変位されるのを許容して、前記スプリングによって付勢されている操作スリーブが前記第2の位置に動かされるのを許容し、それにより第2制御面によって半径方向内側に変位された施錠部材と係止する係合凹部とを有している

F ことを特徴とする環状カッタ。

(4)  原告の行為

ア 原告は、別紙イ号製品目録、同ロ号製品目録及び同ハ号製品目録記載の環状カッタ(以下「イ号製品」等といい、併せて「原告製品」という。)を製造、販売していたか又は現にしている。

イ 原告製品は、いずれも、検乙3のアーバーに取り付けて使用でき、同アーバーは、別紙アーバー目録記載の構成を有する。

ウ イ号製品は、本件発明の構成要件A、E及びFを充足する。

ロ号及びハ号製品は、本件発明の構成要件A、C、E及びFを充足する。

(5)  被告による警告

被告は、原告に対し、平成7年10月18日到達の内容証明郵便にて、原告製造に係る環状カッタが本件特許出願に係る発明の技術的範囲に属する旨の警告を行うとともに、その公開特許公報を送付した。

2  本件の請求

(1)  甲事件

被告は、イ号製品の製造、販売等が本件特許権を侵害すると取引先等の第三者に告知・流布しているが、この行為は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布として、不正競争防止法2条1項13号所定の不正競争行為に該当する。

よって、原告は、被告に対し、①不正競争防止法3条に基づく同告知・流布行為及びイ号製品の製造、販売に対する妨害行為の差止め、②同法4条に基づく損害賠償を請求する。

(2)  乙事件

原告が製造、販売したか又は現にしている原告製品は、いずれも本件発明の技術的範囲に属し、その製造、販売は本件特許権を侵害する。

よって、被告は、原告に対し、①特許法100条1項に基づくイ号及びロ号製品の製造、販売等の差止め、②同条2項に基づく同製品及びそれらの製作機械等の廃棄・除却、③原告製品の製造、販売に係る損害賠償の支払、④特許法65条に基づく補償金の支払を請求する。

3  争点

(1)  甲乙事件共通

ア 原告製品は、本件発明の構成要件Bを充足するか。

イ イ号製品は、本件発明の構成要件Cの「施錠部材通過凹部」を充足するか。

ウ 原告製品は、本件発明の構成要件Dの「支承部材当接部」を充足するか。

エ 権利濫用の抗弁

(2)  甲事件

ア 被告は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したか。

イ 原告が請求し得る損害額。

(3)  乙事件

ア 被告が請求し得る損害額

イ 被告が請求し得る補償金額

第3争点に関する当事者の主張

1  争点(1)ア(原告製品は、本件発明の構成要件Bを充足するか)について

【原告の主張】

ア 本件発明に係る環状カッタは、構成要件Bに記載される特定のアーバーに関する構成を具備するのに対して、原告製品はアーバーを具備していないから、原告製品は構成要件Bを充足しない。本件発明がこのように理解されることは、次の点から明らかである。

(ア) 本件発明の構成要件では、アーバー部の構成と環状カッタの構成を合わせたもの全体が有機的一体となって記載されており、アーバーの構成がカッタ部の単なる前提や導入といった表現は採られていない。

(イ) 本件発明のカッタの構成は、甲18、19、26、78の2及び3、甲79、検甲1により出願前に公知である。したがって、本件発明のうちカッタ部の構造のみでは何ら特許性はなく、アーバーの構造が合わさって初めて特許性が認められるのであるから、アーバーの構成も必須の構成要素である。

(ウ) 本件発明の特許請求の範囲の記載は、別紙「出願経過一覧」のように変遷しているが、被告は、登録後の特許異議手続中に発せられた平成9年7月30日付取消理由通知書(甲17)に対する訂正請求(甲2)において、アーバー部の構成を具体的に特定し、併せて訂正請求書中で、「上記訂正された特許請求の範囲で規定される環状カッタは、それが取り付けられるアーバーとの機能的相互関係で、特徴付けられるものである・・・」、「上記訂正ではアーバーと環状カッタとの構成を具体的に規定することにより、両者の関係を明瞭にし、それにより当該環状カッタの技術的意味(作用・効果)が明確になるようにしているもの」と述べた。

本件発明は、この訂正によって初めて特許性を維持できたのであるから、訂正前の特許請求の範囲に記載された発明の構成要件に別にアーバー部の構成要件を附加することによって特許請求の範囲を減縮したものであると認定されて特許庁では訂正が認められたものである。

(エ) 本件発明の環状カッタは、構成要件B記載のアーバーと組み合わされて初めて、環状カッタの誤装着による不具合を防止することができるとともに環状カッタの着脱作業が格段に楽になるという作用効果が生じる。したがって、構成要件Bのアーバーの構成は、単なる従来技術や前提事項ではなく、発明の要旨を構成するものである。

(オ) 被告は、本件発明の特許出願と同日付の出願に係る「環状カッタの着脱装置」についての特許権(特願平5-183522号、特許第22558053号。以下、「別件特許権」といい、この特許権に係る発明を「別件発明」と、その特許出願を「別件出願」という。)を有していたが、特許庁の審判合議体を構成する審判官は、平成10年2月5日、「合議の結果、特許2558054、2558053号の訂正後の発明は同一発明であり、何れか一方を先に確定させ、他方は39条2項違反を理由に訂正を認めず、当初の取消理由に基づいて決定を行うこととなる旨、及び、先に決定するもの(可能であれば、一方の権利放棄を含む。)を申し出る旨を連絡。…」との電話による連絡を出願人に行い(甲24)、被告は、別件特許権を放棄した。

別件発明は、本件発明と実施例を共通にするアーバーについての発明であるから、本件発明は、カッタ部の構成と共にアーバー部の構成も必須の構成要件として特許が維持されるに至ったものである。

イ 仮に本件発明の対象が環状カッタのみであるとしても、本件発明にかかる環状カッタは、環状カッタが装着されるアーバーの構成が特定の構成のものに限定されるのに対して、原告製品は、そのような構成を具備したアーバーに特定されず、他の構成のアーバー、例えば、支承部材を具備しないようなアーバーにも装着でき、所期の作用を奏することができる。

【被告の主張】

ア 本件発明は環状カッタのみを対象とした発明である。

(ア) 本件発明の特許請求の範囲の記載は、「穿孔装置に装着されるアーバーの自由端面に開口し当該アーバーの軸線方向に延びる挿入孔に挿入され保持される挿入部を有する環状カッタであって、」と、まずその冒頭において「環状カッタ」についての特許発明であることを端的に示した上、「環状カッタ」についての特徴を述べるために必要な程度に、装着される先のアーバーについて、挿入される「環状カッタ」との関係で、「前記アーバーは前記挿入孔の周壁を…、同施錠部材を同挿入孔内に半突入状態に保持する支承部材を同挿入孔内に半突入状態に保持する支承部材とを有し」ている関係であればいかなるアーバーでもよいことを示している。そして、「これに対し、前記挿入部(注:「環状カッタ」の挿入部である。)は…」として、以下「環状カッタ」についての機構・構成を明らかにするように特許請求の範囲が明確に特定された上で、「…していることを特徴とする環状カッタ」の発明であることを明らかに示しているのである。

(イ) また、本件明細書を見ても、本件発明が「該穿孔装置に簡単に着脱できるとともに穿孔装置に不適格な環状カッタを誤って装着してしまうという不都合を解消できる環状カッタ」(【0001】)に関するものであることや、「本発明は、種々ある環状カッタの中から、穿孔装置に適合した環状カッタだけを選別して穿孔装置に取り付けることができ、また環状カッタの着脱作業も楽な新規な環状カッタを提案」(【0010】)するものであることを前提とした上で、「本発明では、各穿孔装置のアーバー1に適合した環状カッタのみを多くの環状カッタの中から選択してワンタッチで装着することができるため、環状カッタの誤装着を防止することができる」(【0021】)のであるから、「常に穿孔装置の駆動能力や被穿孔材料に適合した環状カッタを、多くの環状カッタの中から選択することができ、不適当な環状カッタを穿孔装置に誤装着することによる不具合を防止することができ」、「この結果、穿孔装置側の駆動機構が損傷したり、環状カッタの刃先が破損すること等の不具合を確実に防止することができる。等々のすぐれた効果を奏する」(【0024】)という本件発明の効果の記載は、当然に穿孔装置に適合した環状カッタ自体の着脱の作業が格段に楽になることを、明細書中において示しているといえる。

(ウ) このように、本件発明の特許請求の範囲において特定しているのは、あくまでも「環状カッタ」である。一つの技術的思想を発明として完成させた場合、それをどのようなものとして保護を求めるか又は特許請求するかは、特許出願をする者が決定することであり、本件発明においては、「環状カッタ」として、その発明の保護を求めている。本件発明の特許請求の範囲の記載にはアーバーに関する構成が含まれているが、それは、例えていえば、木ねじについての発明が先行技術として既に存在しているところで、ボルトに関する発明について特許を受けようとする場合と同様である。すなわち、単にボルトについての記載(シャンク部におけるねじ切り、頭部の形状等)をなすだけでは、何がそのボルトについての発明の特色か分かり得ないであろう。そこで、ボルトという係止具についての新たな発明における特徴を明確に記載するためには、ナットとの関係を説明することにより、ボルトの発明の構成要件を明確化して特許請求の範囲に記載するほかはない。

(エ) このように本件発明は、環状カッタの挿入部がその先端部に一定の施錠部材通過凹部、支承部材当接部、そして施錠部材通過凹部に連接され、アーバーへの挿入時には一定の役割を果たす係合凹部を有するものであることを特徴とする発明である。被告がアーバーとの関係を示すことにより、発明の対象である環状カッタの特徴を示すべく訂正を行ったからといって、アーバー自体が本件発明の対象となるわけもないことは明らかである。

(オ) 原告は、本件発明の環状カッタの構成は公知であると主張する。

しかし、原告主張の文献等に示されたカッタの構成はいずれも、本件発明において認められるような、穿孔装置にワンタッチで簡単に着脱できるというだけでなく、種々ある環状カッタの中から、穿孔装置に適合した環状カッタのみを選別するという機能を果たすことはできないから、原告の主張は失当である。

(カ) 原告は、被告が別件特許権を放棄した経過に基づく主張をする。

しかし、被告は、原告主張の特許庁審判官からの指摘(甲24)に対し、平成10年2月13日に詳細に反論する(甲25)一方、企業としての特許戦略の観点から、審判官の指摘に対する反論を維持することは、特許権確定までに長い期間を費やすことになり、好ましいものではないと判断し、別件発明についての訂正取下げ及び特許権抹消届を提出したものである。

このように、特許庁審判官は、「訂正後」においては、アーバー(別件発明)又は環状カッタ(本件発明)の「いずれか」の特許については、特許登録が維持されてもよいとの判断をしたのであり、被告は、その趣旨を汲み、特許戦略的見地から、アーバーに関する特許権を放棄しつつも、環状カッタに関する特許権を取得するに至ったというだけのことである。

(キ) 原告製品は、いずれも本件発明の構成要件Bを充足する別紙アーバー目録記載のアーバーに取り付けて使用することができるから、本件発明の構成要件Bを充足する。

イ 原告は、原告製品は構成要件B所定のアーバー以外のアーバーにも使用することができると主張する。

しかし、本件発明の特許請求の範囲において、一定の構造をもったアーバーとの対応が前提的な構成要件として記載されているとしても、その部分において「カッタ部」と「アーバー部」との「結合からなるシステム」としての特許発明が規定されているわけではない。したがって、原告製品が、前提的な構造を有するアーバーと組み合わせて販売されていようがいなかろうが、そのような構造を有するアーバーに装着可能な環状カッタであって、本件発明の技術的範囲に入るものであれば、そこにおいて本件特許権の侵害は成立するといわねばならない。

2  争点(1)イ(イ号製品は、本件発明の構成要件Cの「施錠部材通過凹部」を充足するか)について

【原告の主張】

「施錠部材通過凹部」における「凹部」との用語は、「凹み」を意味し、イ号製品の通過部9aのような面取り形状のものが含まれないことは明らかである。

この点は、本件発明の出願当初の明細書では、「施錠部材通過部」とされ、実施例として面取りした形状、一部小径にした形状、施錠部材にあった凹部が記載されていたが、平成8年4月25日起案の拒絶理由通知書(甲13)の拒絶理由に対応するために行われた同年6月18日提出の手続補正書(乙20)によって、実施例のうちの一つである「施錠部材にあった凹部」つまり「施錠部材通過凹部」に限定されたものである。

仮に、被告が主張するように、「施錠部材通過凹部」と実施例の欄の「施錠部材にあった凹部を形成したもの」の両者の「凹部」が相違する意味を有する用語であるとするならば、補正において「施錠部材通過凹部」という用語を使用する際に、両者の「凹部」が意味する内容が相違するものであることの説明表示が、明細書においてなされるべきである。また、「凹部」を修飾する修飾語句も、両者とも実質上同じであって、特に「凹部」という用語の意味を変えて解釈しなければならない事情もない。

さらに、別件発明の明細書における実施例は、本件発明の実施例と全く同一のものが記載されているが、被告は、別件出願の特許異議申立事件における平成9年10月20日付の「訂正請求書」(甲16)において、「係合部」との記載を「係合凹部」とする訂正を行い、「係合部」と「係合凹部」との違いについて、「…『係合部』は単に係合を生じさせる部位を示すものでありますが、『係合凹部』は、その係合を生じる部位が凹んでいることを明瞭にしたものであり、…部位9bが凹んでいる部分であることは、図面からも明らかであり…」と説明し、「取消理由」を回避するために、積極的にその違いを主張している。ここにいう「凹部」は、特定形状の凹部、即ちボール状の施錠部材に合った「凹み」を意味することは明らかである。別件出願における「係合部」と「係合凹部」との関係と、本件発明における「施錠部材通過部」と「施錠部材通過凹部」との関係は全く同一で、実施例も全く同一の内容の出願人同一の特許に関する事件での主張である。そして「係合凹部」と「施錠部材通過凹部」とは連接された隣接した位置にあり、しかも同一の施錠部材を「通過させ」かつ「係合する」ものであり、同一構造の中の同一部分の形状の説明を行うために使用されている用語であることを考えると、被告は、本件発明の補正時に、「施錠部材通過部」が単に部位を示すものであることから、その部位が「凹んでいる」ことを明確にするために、あるいは先行技術との差異を明確にするために、「施錠部材通過凹部」と補正したことが明らかである。

また、仮に「施錠部材通過凹部」が補正前の明細書の実施例すべてを包含するとするならば、「小径(縮径)」にしたものも含まれることになるが、それは甲19、34及び検甲1により本件特許出願前に公知である。

したがって、「施錠部材通過凹部」は、「施錠部材にあった凹部」を意味し、イ号製品の通過部9aのような「面取りした形状」は含まれないと解すべきである。

【被告の主張】

ア 本件明細書においては、「施錠部材通過凹部」の実施例として、「面取りした形状のもの」が示されているから、イ号製品における「面取り」した「通過部」の構成もまた、本件発明の「施錠部材通過凹部」に該当する。

イ これに対し原告は、「凹部」の語の意味として面取り形状のものは含まれないと主張する。

しかし、そもそも「凹部」とは、通常の日本語の語義として「窪み」を意味するのであって、周りの一定の基準面から低くなっているが、底が貫通しているものではないというのが、正に「窪み」あるいは「窪む」という意味であり、「凹部」という言葉の持つ普通の意味もまた、それと同旨であると理解するのが、一般的な日本語の解釈である。「施錠部材」が「通過」しなければならない環状カッタのシャンク部において、どのような形状が実際にあったかといえば、「面取り」であろうが、「先端の一部を小径にした形状」であろうが、はたまた「施錠部材にあった凹部を形成したもの」であろうが、「窪み」として広く理解できる形状、すなわち「凹部」であったわけである。さらにいえば、「施錠部材にあった凹部」という記載においては、「施錠部材にあった」ような、当業者の想定し得る施錠部材と相補形状であるような「凹部」=「窪み」ということであって、「凹部」の持つ日本語としての通常の意味を変えるものではない。

ウ また、原告は、補正の経緯に基づく限定解釈を主張する。

原告指摘の補正によって、「施錠部材通過部」が「施錠部材通過凹部」と補正された理由は、特許庁審査官により発せられた拒絶理由通知(甲13)において引用された先行技術(平2-111504号公開実用新案公報。甲14)との構成上の差別化を図り、その差別化により明確となる作用効果に基づき本件発明の特許性を主張するためであった。

すなわち、特許庁審査官は、甲14における「切欠」部が、本件発明の特許請求の範囲に規定されていた「施錠部材通過部」及び「係合部」に該当するものであるとの認識の下、本件発明の特許性を否定していたものであるが、確かに、この「施錠部材通過部」との用語では施錠部材を通過させ係止するために設けられている甲14の「切欠」部の概念をも含むものとなることは否めないとの判断から、「施錠部材通過部」を「施錠部材通過凹部」と訂正することにより、当該部分が、引例1(甲14)に示されたような底のない「切欠」は含まない、カッタ・挿入部の外表面から見て半径方向内側に一段下がった底のある部分であることを明瞭にするとともに、施錠部材が半突入状態であること、スリーブの操作により没入するものである旨の記載を追加することにより、当該「施錠部材通過凹部」の技術的意味を明確にしたものである。そして、その技術的意義とは、前記拒絶理由通知に対して提出した意見書(乙21)から明らかなとおり、甲14における「切欠は円筒本体8に貫通して形成され」るものにあっては、「種々ある環状カッタの中から、穿孔装置に適合した環状カッタのみを選別するという機能」をもち得ないところ、「環状カッタ挿入部の外表面に形成した(底のある)施錠部材の通過凹部」では、その機能を可能としたという点にある。

原告は、この補正によって、「施錠部材通過凹部」の範囲を限定したものだと主張するが、面取りや一部を小径としたものと「施錠部材にあった凹部」との間に上記機能との関係で言葉の持つ意味に違いがあるわけではなく、上記機能との関係で「施錠部材にあった凹部」によって特許性が生じると考えるならば、同じ機能を奏する面取りや一部を小径としたものに対して特許性を否定することはできないはずである。万が一、図面に基づく実施例に示されず、単に補足的に述べた「施錠部材にあった凹部」に本件発明の特許性を審査官が認めたものとするならば、そのような特記的事項は面接記録の中に記載されてしかるべきものであるが、面接記録(甲23)にはそのような記録がないのであり、審査官がそのような特別に限定されたところに本件発明の特許性を認めたものでないということは、審査官を含む特許実務家にとって極めて明瞭な事項である。そうであるからこそ、本件明細書【0019】欄における実施例の記載が、特許請求の範囲の記載の「施錠部材通過部」から「施錠部材通過凹部」への補正がなされる前後においても何ら変化がなく維持されているのである。

もし原告のいうように、本件発明の特許請求の範囲における「施錠部材通過部」から「施錠部材通過凹部」への補正が、「施錠部材7にあった凹部を形成したもの」のみを特許請求の範囲とし、その他の「施錠部材通過部」の形状(「一部を面取り」、「先端の一部を小径」等)を除外するものとする趣旨でなされたとすれば、「一部を面取り」、「先端の一部を小径」等の「施錠部材通過部」についての形状を示した実施例についても本件発明の技術的範囲に属さないものとして、手続補正書(乙20)において削除されてしかるべきであったし、特許庁審査官も面接においてそのような指摘をすべきであった。しかし、現実には、いずれの事態も発生しなかったのである。そればかりでなく、原告の理解に従えば、本件発明の明細書中には、実施例を記載した図が全く存在しないことになり、実質的に実施例のない明細書ということになる。このような結果を招来する補正を審査官が許すとは到底考えられない。

以上のとおり、いずれの点から考えても、原告の主張するような施錠部材通過部を「凹」状の断面を有する溝に限定して解釈すべき理由は全くないといわざるを得ない。

エ さらに、原告は、「凹部」の用語は統一的に理解すべきであると主張する。

(ア) しかし、実際には本件のような不統一は散見されるところであり、そのような場合、不統一の用語は、明細書全体の記載等から判断されるのを通例としている。本件発明に関してみれば、上記にるる述べたとおり、「施錠部材通過凹部」を「施錠部材にあった凹部」と限定解釈しなければならない余地は全くない。

(イ) また、明細書における【課題を解決するための手段】及び【実施例】は、特許法36条4項で規定されていた明細書に必要な記載事項、すなわち「発明の構成」を記述するための項目であり、【課題を解決するための手段】では、発明の課題を解決するためにどのような手段が講じられたかをその作用とともに記載することが要求されており(施行規則様式29)、また、【実施例】は【課題を解決するための手段】だけでは抽象的で「当業者が発明を容易に実施できる」ものとはならないために、そのような手段が実際にどのように具体化されるかを示すために記載されるものであり、課題を解決するための手段に記載されたものの下位概念としての位置付けを有するものである。したがって、【課題を解決するための手段】の項に「施錠部材通過凹部」と記載されたものに対し、【実施例】では「施錠通過部」とされており、用語の不統一はあるものの、その「施錠部材通過部」として説明され図示されている「面取り」部分や「小径部分」が「施錠部材通過凹部」の下位概念として表されていることは、当業者にとって疑いのないことである。

(ウ) さらに、「施錠部材にあった凹部を形成したもの」という記載がある【0019】段落では、具体的な態様の例を示す実施例の説明の一部として、「施錠部材にあった」形状を有する「凹部」であることを具体的に表現しなければならない部分である。これに対して、特許請求の範囲や課題解決のための手段(【0011】段落)を示す記述においては、「施錠部材」の「通過」する部分がどこであるのかを示すことが肝要であり、そこには「施錠部材にあった」などという一定の制約された条件をもった形状を表現するような文脈にはないのである。したがって、特許請求の範囲の記載における「施錠部材」が「通過」する「凹部」との表現を、「施錠部材にあった」「形状」を有する「凹部」と全く同一であるかのように理解するのは、本件発明に関する明細書の記載の理解として、記載・表現の文脈を無視した、誤った理解というほかはない。

(エ) このような明細書の記載の法的位置付け、及び、前述の面談記録等の審査経過等を考慮すれば、「施錠部材通過凹部」と「施錠部材通過部」との用語の不統一があることをもって、「施錠部材通過凹部」の技術的意味内容を限定して解釈する根拠とはなり得ないことは明らかである。

3  争点(1)ウ(原告製品は、本件発明の構成要件Dの「支承部材当接部」を具備するか)について

【被告の主張】

原告製品の端面11は、構成要件Dの「支承部材当接部」に当たる。

【原告の主張】

本件発明は構成要件Dとして「支承部材当接部」を具備しているのに対して、原告製品は、特定の構成のアーバー用の環状カッタでないことから、ことさら上記構成要件Dに対応する構成を意図的に設けていない点において、両者は相違する。

4  争点(1)エ(権利濫用の抗弁)について

【原告の主張】

(1) 検甲1の1は、宮川工業株式会社製の替え軸、検甲1の2は同社製のスピンドルであるところ、これらは本件特許出願より前から製造販売されている。したがって、本件発明は、検甲1の1及び検甲1の2によって公然実施されていたものであるから、明白な無効理由を有する。

よって、本件特許権による権利侵害を理由とする差止請求等の権利行使は、権利濫用として許されない。

(2) 被告は、検甲1の1の検甲1の2への着脱操作の場合、検甲1の1の先端の縮径は、本件発明の施錠部材通過凹部の作用効果を果たしていないと主張する。

しかし、検甲1の1の縮径のある替軸と縮径のない同径のものを実演した結果は、明らかに縮径のあるものが無理なくスムーズに着脱動作を行うことができ、同径のものは、着脱を行うには、挿入に通常の工具の交換に要求される力以上の無理に大きな力を要し、引き抜きを行うには、木槌での打撃で脱抜しなければならない状況で、実用には程遠い動作で工具の通常の交換作業で行える程度をはるかに超えることになることが明らかである。すなわち、「縮径」がスピンドルへの替え軸のスムーズな着脱のために設けられていることは明らかである。

また、検甲1の1と検甲1の2との間に、両者の対応による誤った替え軸を排除する適合性選別機能があるかというと、確かに径自体の大きさによる選別機能のあることは明らかであるが、縮径自体に対応選別機能はない。例えば、検甲1の2の挿入孔の孔径よりも検甲1の1の挿入部の軸径が小径である場合には、縮径の有無にかかわらず、挿入が比較的容易にでき、係合も可能となり、選別機能は果たされない。もっとも、この点は、本件発明においても同様であり、予定している所定の径より細径のカッタ挿入部がアーバーの挿入口に挿入されると、もはや選択機能を奏し得ないから、施錠部材通過凹部の効果とはいえない。そうすると、検甲1の1と検甲1の2も、替え軸の径の大きさにより多数の替え軸から選択的に挿入を許容する作用効果を有することは明らかである。

したがって、被告の主張は失当である。

【被告の主張】

検甲1の1及び1の2は、本件発明の施錠部材及び施錠部材通過凹部を備えるものではないから、何ら本件発明を開示するものではない。

ア 本件発明の施錠部材及び施錠部材通過凹部は、①操作スリーブを操作することなく環状カッタ挿入部(以下「挿入部」という。)をアーバーに装着し得る機構を提供するという作用効果を有するとともに、②不適切な環状カッタは装着できずに、適合する環状カッタのみが装着できるという作用効果をも奏するものである。この後者の作用効果は、施錠部材に対応する位置に、施錠部材通過凹部がない挿入部を持つ環状カッタの装着を不可能とすることにより達成される。この意味で、一見施錠部材や施錠部材通過凹部を備えているように見えても、施錠部材と対応していない施錠部材通過凹部を持つ挿入部や、全く施錠部材通過凹部を持たない挿入部がアーバー内に装着されることを許すような構成のものは、本件発明の施錠部材や施錠部材通過凹部ではなく、また、そのような施錠部材は、本件発明でいうところの「挿入孔内に半突入状態」に保持されているということもできない。

イ この観点から検甲1の1及び1の2を検証してみると、検甲1の2(スピンドル)は、施錠部材通過凹部に該当すべき縮径の先端部を持たない、抜け止め溝をはさんで一様な径を持つ挿入軸部(以下、「同径の替え軸」いう。)をスピンドルの取付孔に挿入してみたところ、挿入が可能である。この点は、同径の替え軸を作って挿入してみれば一目瞭然である。実際、被告において同径の替え軸を作成し、これを検甲1の2の取付孔に挿入してみたところ、明らかに検甲1の2において施錠部材に該当すると主張されたボール部材(明細書では「球」)は、同径の替え軸を押し込むことにより、半径方向外方へ向かって変位し、スピンドルの孔から退避した位置へ移動してしまい、その結果、同径の替軸は問題なくスピンドルに装着できてしまうのである。

ウ このように、ボール部材が、同径の替え軸を押し込むことにより、容易に軸の外方へ向かって変位し、スピンドルの孔から退避した位置へ移動してしまうということは、検甲1の2では、ボール部材が退避し得るような余地が設けられているということになる。なお、可動スリーブを手前に引いた状態では、同径の替え軸を容易に挿入固定できることは、いうまでもない。

エ 以上のように、検甲1は、本件発明の重要な作用効果を有しないものであることは明らかであり、このような発明の重要な効果を奏することのないボール部材(原告が施錠部材に該当すると主張するもの)は、本件発明の「挿入孔内に半突入状態に保持」された施錠部材ではあり得ず、また、替え軸の挿入軸部に設けられた縮径部も本件発明の施錠部材通過凹部の作用効果(それなしでは施錠部材に装着を拒まれ、したがって、それが存在することにより初めて装着が可能となるという作用効果)を実際には果たしておらず、したがって、本件発明の施錠部材通過凹部とみることもできない。

オ 以上のとおり、検甲1は、その製造販売の時期いかんにかかわらず、本件発明の技術思想を開示するものではない。

5  争点(2)ア(被告は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したか)について

【原告の主張】

被告は、平成10年6月ころ、業界新聞数紙(日刊工業新聞・全国工業新聞・機械工具新聞等)に「特許侵害2社に『警告書』」や「日東工器が警告書…特許侵害で2社に送付」などを見出しとする記事内容を発表し(甲6ないし8)、原告の関連取引先など多数の関係者に対して、原告製品が特許権の侵害品であるとの一方的な印象を醸成した。また、その旨口頭でも告知している。

これは、原告の営業上の信用を著しく害する虚偽事実の陳述の流布行為であり、原告は、それらの文書や発言で原告の商機を奪われるおそれが大きく、原告の営業上の利益を害するおそれのある行為であるから、不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為に該当する。

【被告の主張】

被告が原告主張のような業界紙の取材に応じたこと、そしてそれが報道されたこと自体については認めるが、それは、客観的事実がそのまま報道されただけであって、原告が主張するように、被告によって「原告製品が特許権の侵害品であるとの一方的な印象を醸成」されたことにはならない。被告が取材に応じた業界紙の記事内容においては、「類似品メーカー2社」というのみであって、原告を特に名指しもしておらず、何ら原告の営業行為に対する「虚偽」の事実が被告によって摘示されたものとはいえない。

6  争点(2)イ(原告が請求し得る損害額)について

【原告の主張】

被告の前記不正競争行為により、原告は、現実にも事情の知らない取引先から問い合わせが相つぎ、中には取引の中止(商談保留)を検討していると申し向けられている。そのため、原告は著しく信用を失いつつあり、原告の被る損害は拡大しつつあるが、関係先の取引継続による不安を除去するための損害は、少なく見積っても200万円を下ることはない

【被告の主張】

争う。

7  争点(3)ア(被告が請求し得る損害額)について

【被告の主張】

(1) 被告が請求し得る損害額は、次のとおりである。

ア 逸失利益の推定(特許法102条3項)

本件発明の登録日である平成8年9月5日から平成12年1月20日までの間に、原告は、原告製品を1年当たり7億円売り上げたところ、本件発明の実施に対し受けるべき実施料は5%を下らないから、被告が請求し得る実施料相当額は、1億1813万1746円を下らない(700,000,000×0.05×〔3+117/365+20/366〕)。

イ 実際に失われた利益(民法709条)

原告が行った不当な廉売行為により、被告が理由なき値引き対応を迫られたことによって失われた利益は、平成7年10月期より平成12年度期末にかけて、8149万9317円を下らない(別紙「JB特別価格申請状況」・乙14。)。

(2) 原告の主張に対する反論(逸失利益の推定について)

ア 原告製品の売上数及び売上量に関する開示内容は、その信頼性を裏付ける資料について、被告が求めたものすべてについて検証の機会を与えられたものではなく、また、限られた時間での被告による検証結果とも食い違っており、信頼性に乏しい。

イ 原告は、原告製品が非ワンタッチ式のアーバーにも装着可能であるから、その場合には本件特許権を侵害しないという。

しかし、この主張は、本件発明の解釈として、構成要件Bの構成を有するアーバーにのみ装着可能なカッタを権利範囲とするという、誤った解釈論に立つものであることは明らかである。原告製品が、本件発明の構成要件Bの構成を有するアーバーに装着可能な構成を有する以上、本件発明の技術的範囲に含まれるものであって、これが他のアーバーに装着するために販売されたか否かは侵害の成否に影響がないものであることはもとより、損害賠償額の多寡についても無関係である。

(3) 原告の主張に対する反論(実際に失われた利益について)

ア 原告は、値引きによる被告の損害が、原告の侵害行為と因果関係が存在しない旨主張し、特に原告製品と類似のカッタを複数の業者が販売している点を指摘する。

しかし、本件で被告が損害賠償の根拠としている値引きは、すべて特定の業者による低価格での売り込みに対する対抗手段としての、特別な値引きについて、文書により許可を求めた事案についてのみ拾い出したものであり、しかも、原告が競合売り込み先であると明確に判明している事案と、極めて低価格な競合売り込みが存在した事案に限定されており、原告の指摘する類似カッタの販売業者の売り込み分を除外したものである。また、もともと、類似カッタの販売業者の販売数量は原告のそれに比較して少量であり、競合の割合も原告のそれに比較して極めて小さいものと考えられる。

したがって、原告の主張は失当である。

イ また、原告は、被告の値引きにより原告製品と競争可能となったとすれば、逸失利益がそれだけ減少したものとなると主張する。

しかし、逸失利益は、被告の売上機会の喪失によるものであり、値引きによる販売には成功したものの、本来得られるべき利益を得ることができなかったことによるものであるから、後者の存在が前者に影響を及ぼすことは考えられない。両者は全く異なる損害であるから、両者は当然に並存して認められるべきものであり、決して賠償額の二重取りとなるものではない。

【原告の主張】

(1) 実施料相当額の請求について

ア 被告による損害賠償請求の対象期間中のロ号製品及びハ号製品の売上数及び売上額は、別紙「ロ号製品の売上」及び同「ハ号製品の売上」記載のとおりであり、ハ号物件の販売開始は平成7年9月、ロ号物件の販売開始は同年12月である。なお、イ号物件の販売開始は平成8年12月である。

なお、同別紙中のハ号製品については、同一型番中にハ号製品と非ハ号製品(ネジ止め式の製品)とが混在しており、厳密に両者を区分けするのは不可能であるため、両者を合計したものが記載されている。したがって、ハ号製品の販売量は、同別紙記載の一部である。

イ 本件発明の実施料率は、3.75%とするのが相当である。

ウ 原告製品は、別紙アーバー目録記載のいわゆるワンタッチ式アーバー以外にも、ツータッチ式アーバーにも、止めネジ式アーバーにも装着できる機能を併有している。したがって、単に原告製品が購入されたからといって、当該購入者が必ずしも原告製品をワンタッチ式アーバーに装着して使用するとは限らない。

そして、これら非ワンタッチ式アーバーへの装着のためのカッターは、本件発明の構成要件Bの「アーバー」部分の構成が、本件発明の不可欠の構成要素ではあるが単なる前提事項にすぎないとのこれまでの被告の立論に立脚するとしても、もはやその不可欠の前提事項さえ満たさないものである。そうであれば、非ワンタッチ式アーバーに使用される原告製品の販売は、非侵害の用途に供されたものであるから、損害に算定されるべきではない。

したがって、止めネジ式アーバーやツータッチ式アーバー用に原告製品を購入した購入者への売上げは、本件特許権の侵害行為によって販売された分ではない。これらは、侵害があろうとなかろうと原告が販売できた分であり、当該部分は、ワンタッチの機能を利用したことによる損害として算定されるべきではない。

仮にそうでないとしても、原告製品はワンタッチ式・非ワンタッチ式の両機能を併有するカッターとしてワンタッチ式の機能部分の売上げに占める寄与部分のみを損害として把握すべきである。

そこで、ワンタッチ式機能を利用した売上げに占める割合数又は原告製品におけるワンタッチ式機能の占める寄与割合は、37.6%と見るべきである(甲63)。

また、原告は、平成10年9月から平成11年1月までの間、ツータッチ式アーバーを販売したが、この期間中のツータッチ式アーバー向けのイ号製品の販売は7393個であるから、この分は損害から控除すべきである。

(2) 値引損の賠償請求について

ア 被告は、値引損を賠償されるべき損害として主張する。しかし、①被告の原告の営業活動に対抗するための値引きは、本件の原告製品の製造、販売が開始される以前から常態的に行われていたこと、②ワンタッチ式カッターは、原告の製造、販売するものだけでなく、大見工業株式会社のクリンキーカッター、エムテック有限会社のメタルブローチが市場において出回っており、原告製品だけによって被告が値引きせざるを得なかったというような関係にはないことから、原告製品の販売との間に因果関係がない。被告の値引きは、一般的な販売管理における売価政策にすぎない。

イ 仮に被告主張のように、値引きによって価格面で原告製品と競争可能な状態になったものと仮定するならば、その分だけ、被告製品の売上減少は免れることができたのであるから、逸失利益がそれだけ減少したことになるわけである。そうであるならば、損害額は、被告が主張する数値を前提にしても、逸失利益の額から、「値引きにより売り上げ減少を免れた分の売上高」に相当する金額を差し引いた金額になるというべきものである。理論的にも、実施料相当額の損害は、逸失利益の損害に代わるべきものであるから、双方の項目について損害賠償請求を認容すると、賠償額の二重取りを認めることになって不合理である。

8  争点(3)イ(被告が請求し得る補償金額)について

【被告の主張】

被告が請求し得る補償金額は、次のとおりである。

被告は、平成7年10月18日到達の内容証明郵便にて、原告に対して警告を行ったところ、原告は、平成7年10月19日から平成8年9月4日までの間(321日間)に、年間ベースで7億円の売上げを得、本件発明の実施に対し受けるべき実施料は5%を下らないから、被告が請求し得る補償金額は、3078万0821円を下らない(700,000,000×0.05×321/365)。

【原告の主張】

(1) 争点(3)アについての原告の主張(1)に同じ。

(2) 特許法65条は、補償金請求権の発生要件として、「特許出願に係る発明の内容を記載した書面」の提示を定めているが、本件では、警告書送付当時の書面に記載されていた内容のカッター自体については、公知技術あるいは公知技術から自明の構成しか判明せず、このような記載の書面を前提として補償金請求権が及ぶとの主張は、同条の要件を欠くといわざるを得ない。

(3) 本件の補償金請求をする前提となる警告書は、出願公開時の明細書の内容を告知するものであり、警告の時期は訂正前である。

ところで、本件においては、仮に原告製品が、訂正前の特許請求の範囲によれば、発明の技術的範囲に属していたとしても、訂正後の特許請求の範囲には含まれないこと前記のとおりであるから、補償金支払請求も被告はなし得ないことが明らかである。

第4争点に対する当裁判所の判断

1  争点(1)ア(原告製品は、本件発明の構成要件Bを充足するか)について

(1)  前記当事者の主張に照らすと、本争点では、詰まるところ、本件発明の対象物が、それ自体において、構成要件Bの構成を有するアーバーを具備する必要があるか否かが問題となっているものと解される。

(2)  そこでまず、本件明細書の特許請求の範囲の記載を見ると、構成要件Fに「ことを特徴とする環状カッタ」とあることから、本件発明の対象物が「環状カッタ」であることは明らかである。

そして、構成要件Aでは、「穿孔装置に装着されるアーバーの自由端面に開口し当該アーバーの軸線方向に延びる挿入孔に挿入され保持される挿入部を有する環状カッタであって」とあるから、本件発明の対象物たる「環状カッタ」は、「アーバーの自由端面に開口する…挿入口に挿入され保持される」ものであって、「アーバー」とは別の物として記載されていると考えるのが通常の文意にも沿い、自然である。

もっとも、構成要件Bでは、「前記アーバーは……を有し、」とあり、構成要件Aで掲記された「アーバー」の構成を具体的に特定しているが、続く構成要件CないしEが「これに対し、前記挿入部は……を有している」とした直後に前記構成要件Fの「ことを特徴とする環状カッタ」と記載されていることから、構成要件B記載のアーバーの構成を有することが、構成要件F記載の環状カッタの特徴であるとの読み方もできないわけではない。そして、このように読む場合には、本件発明の対象物たる「環状カッタ」は、構成要件Bのアーバーの構成をそれ自体として具備するものであると理解する余地もないとはいえない。

(3)  そこで次に、本件明細書の発明の詳細な説明の部分の記載を参酌して検討するに、【従来の技術】の欄(【0003】ないし【0007】)では、アーバー51と環状カッタ56とは別の物として記載されており、【課題を解決するための手段】【作用】及び【実施例】の欄においても、アーバー1と環状カッタ6とは別の物として記載されていると認められる(【0011】ないし【0023】)。また、【0001】、【0008】ないし【0011】の段落を見ても同様である。

そうすると、このような記載からしても、本件発明の対象物である「環状カッタ」は、構成要件B所定の「アーバー」とは別の物であって、構成要件Bは、構成要件Aで環状カッタの挿入部を挿入する対象として記載されたアーバーの構成を具体的に特定したものであり、本件発明の対象は、構成要件B所定の構成を有するアーバーに装着される、構成要件CないしEの構成を具備する環状カッタであると解するのが相当である。

(4)  これに対し、原告は、本件発明の作用効果は、特許請求の範囲記載の構成を有するカッタ部とアーバー部とが組み合わされて初めて奏されるから、本件発明の対象物は、それらのカッタ部とアーバー部の構成を共に具備する必要があると主張するので、検討する。

ア 甲2によれば、本件明細書には次の記載があると認められる。

(ア) 従来の技術について

従来の環状カッタの着脱「装置において環状カッタ56を回転伝達体52に取り付けるには、押出操作用スリーブ54をスプリング55の付勢力に抗して図(本件明細書の図9)中右方に移動させておき、環状カッタ56の挿入部56aを回転伝達体52の下端開口部内に挿入し、回転伝達用係合子52bと前記突起部56bとを係合させる。この時、押出操作用スリーブ54の押出部は取付用ボール57と対向する位置からずれるため、同ボール57は外側に向かって移動できるようになり、環状カッタの挿入部56aの挿入動作には何ら影響を与えない。環状カッタが回転伝達体に完全に取り付けられた状態で、押出操作用スリーブ54を離すと、押出操作用スリーブ54はスプリング55の付勢力で図中左方に移動し、取付用ボール57を挿入部56aの環状溝56c内に押し込む。こうして環状カッタ56は回転伝達体52に一体的に且つ着脱自在に取着される。」(【0007】)

(イ) 発明が解決しようとする課題について

「上記環状カッタ着脱装置では、穿孔作業の際に硬質材料に穿孔する孔の直径に合わせて環状カッタを交換したり、被穿孔材料の質に合った適当な刃先をもった環状カッタに交換して作業を行う必要がある。しかし、上記装置では、回転伝達体52の下端開口部と環状カッタの挿入部の外径および挿入用環状溝の位置が合えばどのような環状カッタでも取り付けることができる構造となっているため、時として、穿孔装置の駆動能力や被穿孔材料に適合しない環状カッタを取り付けてしまう場合がある。そして、これに気づかずに穿孔作業を続行していると、作業中に予想外の切削抵抗が生じ、これが原因で穿孔装置側の駆動機構が損傷したり、環状カッタの刃先が破損すること等の不具合が発生する。」(【0008】)

(ウ) 本件発明の目的について

「そこで本発明は、種々ある環状カッタの中から、穿孔装置に適合した環状カッタだけを選別して穿孔装置に取り付けることができ、また環状カッタの着脱作業も楽な新規な環状カッタを提案し上記諸問題を解決せんとするものである。」(【0010】)

(エ) 実施例について

a アーバー1について、「スリーブ4はアーバー1の段部1bに嵌合された状態で復帰スプリング5によって常時は図3中A矢印方向に(施錠部材7をアーバーの孔1a内に押し出す状態)に付勢維持されている。このため、図3に示す状態の時(即ち、環状カッタをアーバーに取り付けていない状態の時)には、前記図3中A矢印方向に付勢されているスリーブ4の第1制御面部4bから施錠部材7は孔1a内に押し出されようとしているが、施錠部材7は孔1a内に配置された前記支承部材2によって施錠部材7の一部7bが孔1a内に半突出した状態となっている。この結果、この施錠部材7の通過を許容する施錠部材通過部を有している環状カッタ以外は、この環状カッタ着脱装置に装着することが出来ず、これにより、環状カッタの誤装着を防止することができる。

以上のように上記スリーブ4および施錠部材7等により、環状カッタをアーバーに結合する施錠機構が構成されている。」(【0018】)

b 環状カッタ6について、「環状カッタ6の挿入部9には、前記アーバー1の孔1a内に突出状態となっている前記施錠部材7の一部7b(図3参照)の通過を許容する施錠部材通過部9aが形成されている。」(【0019】)

c 「環状カッタ6を取り付けるにあたって、施錠部材7の一部7bが孔1a内側に突出した状態となっている。

そこで、施錠部材7の通過を許容する施錠部材通過部9aを有している環状カッタを、孔1a内に挿入する。

環状カッタ6の挿入部9が支承部材2を押し込みながら、孔1a内に嵌合されると、施錠部材7が連接して形成した係合部9b内に落ち込む。すると、スリーブ4は復帰スプリング5の付勢力によって図5に示す位置にまで戻り、施錠部材7を第2制御面4eによって係合部9bにしっかり係止する。こうして環状カッタ6は、アーバー1内のガタツキが無い状態で図7に示す如くアーバー1に取り付けられる。」(【0020】)

d 「以上のように本発明では、各穿孔装置のアーバー1に適合した環状カッタのみを多くの環状カッタの中から選択してワンタッチで装着することができるため、環状カッタの誤装着を防止することができる。」(【0021】)

(オ) 発明の効果について

「本発明によれば、常に穿孔装置の駆動能力や被穿孔材料に適合した環状カッタを、多くの環状カッタの中から選択することができ、不適当な環状カッタを穿孔装置に誤装着することによる不具合を防止することができる。この結果、穿孔装置側の駆動機構が損傷したり、環状カッタの刃先が破損すること等の不具合を確実に防止することができる。等々のすぐれた効果を奏するものである。」(【0024】)

イ これらの記載によれば、従来技術における環状カッタの着脱装置では、押出操作スリーブ54が取付用ボール57を回転伝達体52の中心部に向かって押し出している状態下で、押出操作スリーブ54を手動で移動させて取付用ボール57の逃げ場を作ったところで、環状カッタ56を挿入するため、環状カッタ56の挿入部が取付用ボール57と接触しても、取付用ボール57が外側の逃げ場に移動することができ、取付用ボール57が環状カッタ56の挿入の障害とならない構造となっていたものと認められ、押出操作スリーブ54を移動させてから環状カッタ56を挿入するといういわばツータッチ式の装着が行われていたものであるといえる。そして、このような構造を採ったがゆえに、回転伝達体52の下端開口部と環状カッタの挿入部の外径及び挿入用環状溝の位置が合えばどのような環状カッタでも取り付けることができ、そのために穿孔装置の駆動能力や被穿孔材料に適合しない環状カッタを取り付けてしまうとの問題点があったものと認められる。

これに対し、本件発明では、アーバーのスリーブが施錠部材を挿入孔内に押し出す一方、挿入孔内の支承部材が施錠部材を支えることにより、施錠部材が挿入孔内に半突入した状態にある下で、スリーブを移動させることなく環状カッタを挿入する構造となっている。したがって、挿入部の先端に施錠部材通過凹部を具備する環状カッタのみが施錠部材に邪魔されずに挿入されることとなり、施錠部材通過凹部を有しない環状カッタの誤装着を防止し得ることとなる。そして、環状カッタの挿入部の先端が支承部材を押し込むと、施錠部材が環状カッタの挿入部に形成された係合凹部(施錠部材通過凹部よりも深い)内に落ち込み、スリーブがスプリングによって移動して係合凹部内の施錠部材を係止することによって、環状カッタがアーバーに取り付けられることになり、スリーブの手動操作を伴わないいわばワンタッチ式の装着が可能となっているものと認められる。

ウ 以上によれば、本件発明の作用効果は、確かに原告が主張するとおり、特許請求の範囲記載の構成を有する特定のアーバーと特定の環状カッタを組み合せた場合に、初めて奏されるものであるといえる。

しかしながら、被告も主張するように、種々の要素から成る技術的思想を発明として完成させた場合、それをどのようなものとして構成して特許出願するかは、特許出願をする者が決定し得ることであり、特許要件を充足する限り、特許請求の範囲の記載に客観的に表れたそのような出願人の意図は尊重されるべきものである。

これを本件発明についてみると、前述の本件発明の実体からすると、もちろん原告が主張するように、本件発明を特定のアーバーと環状カッタの組合せ品として構成して特許出願することももちろん可能であったと考えられる。しかし、先に(1)及び(2)で検討したような本件明細書の記載からすれば、本件発明は、特定の構成のアーバーを前提とし、これに装着された場合に所定の作用効果を奏する環状カッタの発明として構成されているものと認められるから、これを特定のアーバーと環状カッタの組合せ品に係る発明であると解することはできない。

確かに本件発明の作用効果は、特許請求の範囲記載の構成を有する特定のアーバーと特定の環状カッタが組み合わされる場合に、初めて奏されるものであり、特許請求の範囲には、所期の作用効果を奏する物の構成が記載されなければならない。しかし、本件発明では、構成要件Bの構成を有するアーバーとの関係で、同アーバーと組み合わせたときに前記作用効果を奏する環状カッタの挿入部の構成を、構成要件CないしEにおいて特定していると認められる(構成要件Bの記載なしに構成要件CないしEを記載しても環状カッタの挿入部の構成の意味が理解し難いため、その前提として、構成要件Aに記載されたアーバーの具体的構成を構成要件Bとして別に書き分けたものと解することができる。)。したがって、前記のとおり本件発明の対象物をアーバーを含まない環状カッタのみであると解したとしても、その環状カッタは、構成要件B所定のアーバーと組み合わされたときに前記作用効果を奏するものとして構成されているから、前記作用効果を奏する発明の構成として欠けるところはないというべきである。

(5)  これに対し原告は、被告が別件特許権を放棄するに至った経緯から、本件発明の対象物はカッタ部の構成とともにアーバー部の構成も具備している必要があると主張するので検討する。

ア 後掲各書証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(ア) 被告は、本件発明の特許出願と同日付で、「環状カッタの着脱装置」に関する特許出願を行い(特願平5-183522号)、平成8年9月5日に特許第2558053号として登録された。

別件特許権に対しては、平成9年5月1日に特許異議が申し立てられ(平成9年異議第72111号)、平成9年7月30日に特許庁の審判合議体から取消理由通知が発せられたため、被告は、平成9年10月21日に訂正請求をした(甲16)。

この訂正請求後の特許請求の範囲の記載は、別紙「出願経過一覧」添付の別紙(C)記載のとおりであり、これによれば、別件発明は、本件発明の環状カッタと組み合わせて前記作用効果を奏するアーバー(環状カッタの着脱装置)に係る発明であったと認められる(なお別件発明の公開特許公報〔特開平7-9211号、甲10〕によれば、本件明細書の記載と別件明細書の記載は、従来の技術、発明が解決しようとする課題、作用、実施例及び効果の記載がほぼ同一であったと認められる。

(イ) 本件発明の特許出願も、別件発明と同じく、平成8年9月5日に第2558054号として登録され、平成9年5月1日に特許異議が申し立てられ(平成9年異議第72112号)、平成9年7月30日に特許庁の審判合議体から取消理由通知が発せられたため、被告は、平成9年10月21日に訂正請求をし、これが平成10年3月31日付の特許異議の申立てについての決定(甲3)により認められて、現在の内容となっている。

(ウ) ところで、これらの特許異議事件が係属中の平成10年2月5日、特許庁の審判合議体の審判官から同事件の被告代理人に対して電話で、「合議の結果、特許第2558054、2558053号の訂正後の発明は同一発明であり、何れか一方を先に確定させ、他方は39条2項違反を理由に訂正を認めず、当初の取消理由に基づいて決定を行うこととなる旨、及び、先に決定するもの(可能であれば、一方の権利放棄を含む。)を申し出る旨」が連絡された(甲24)。

これに対し被告は、同月13日、特許庁審判官に対し、本件発明と別件発明とは同一発明とはいえないという趣旨の意見書を提出したが、結局、本件発明の訂正を先に確定させ、その後に別件特許権を放棄することとした(甲25)。

そして、平成10年3月31日に本件発明についての特許異議決定(甲3)がなされた後、同年10月7日に別件発明についての訂正申立てを取り下げ、同年11月27日に別件特許権につき特許権の放棄による登録抹消申請がなされ、平成11年1月11日に同抹消登録がなされた。

イ 上記事実によれば、確かに原告が指摘するとおり、前記特許異議事件を担当した審判合議体は、本件発明と別件発明を同一発明であると考えていたものと認められる。

しかし、本件訴訟において、当裁判所が本件発明の技術的範囲を認定するに当たり、審判合議体が被告に示した判断に直接拘束されることはないところ、本件発明が環状カッタに関する発明であると解すべきことは前記のとおりである。

また、本件発明と別件発明を比較すると、発明の対象は環状カッタと環状カッタの着脱装置(アーバー)とで異なるものの、実質的な技術思想としては同一であるから、特許庁の審判合議体が両者を同一の発明であるとしたのは、そのような技術思想としての実質的な同一性に配慮したにすぎない可能性もあり、このことは、特許庁の審判官が前記のような指導をするに当たって、単に本件特許権と別件特許権のいずれかを放棄することを指導したにとどまり、文言上は明らかに環状カッタの発明として記載されている本件発明の特許請求の範囲の記載については特に修正するよう指導することがなかったことからもうかがわれるところである。

したがって、上記の経緯から、本件発明の対象物がカッタ部の構成とともにアーバー部の構成も具備している必要があると解することはできない。

ウ また、原告は、被告は上記のような特許庁審判官の意見に従って別件特許権を放棄したのであるから、それに反する主張をするのは禁反言に当たると主張する。

しかし、前記のとおり、被告は、特許庁審判官からの連絡を受けた後、それに反論する意見書を提出しており、その後は単に別件特許権を放棄しただけであるから、被告自身が、本件発明の対象物はカッタ部の構成とともにアーバー部の構成も具備している必要があるとの意見を表明したとはいえない。したがって、被告の本件における主張が、禁反言に当たるとはいえない。

(6)  さらに、原告は、本件発明のカッタ部の構成は出願前に公知である(甲18、19、26、78の2及び3、甲79、検甲1)から、アーバー部の構成なしには特許が受けられないものであると主張するので、この点について検討する。

ア 甲18(実開平4-5911号公開実用新案公報)について

(ア) 甲18には、「ドリルビット取付け用アダプター」に関する考案が記載されており、「ドリルビットAのシャンクBが主体1内に出入りするのには、主体1内に突出する結合用ボール3が邪魔にならないように、ドリルビットAのシャンクB上端部には、第2図(a)に示すように凹部Cに至る溝部Eを設けるとか、第2図(b)に示すように凹部Cの一部が掛かるようにしてシャンクB上端部周りを縮径加工E’等している。」(10頁2~9行)との記載がある。

これによれば、甲18のドリルビットAのシャンクBの先端には、主体1内に突出する結合用ボール3が邪魔にならないようにするための、凹部Cに至る溝部Eや縮径加工E’が設けられていることが示されているといえる。

そして、甲18の考案でも、溝部E又は縮径加工E’を設けていないドリルビットが誤装着されるのを防止する効果が奏されると認められる。

(イ) しかし、甲18には、「常態においてはカバー体5はスプリング7の付勢下に止めリンク9に圧接させられ、カバー体5の環状フランジ部6が結合用ボール3上に位置していてボール3の一部を主体1の内腔部に突出状態に保持する。主体1に対するドリルビットAの脱着には、カバー体5をスプリング7に抗してシャンク2側に移動させた状態で行われる。この状態ではカバー体5の環状フランジ部6が結合用ボール3から離れて結合用ボール3の主体1内への突出量が変えられる。ここで、結合用ボール3の主体1内への突出量の変化としては、第2図(a)、(b)に示すように、主体1内から完全退出とはならず、ドリルビットAのシャンクBの凹部Cからだけ退出するものとし、一部を僅かに主体1内に突出状態とし、主体1内が空になった時に打撃力減衰部材11が抜け落ちるのを防止している。」(9頁4行~10頁1行)との記載もある。

この記載によれば、甲18では、①カバー体5を手動で操作してからドリルビットAを挿入するといういわゆるツータッチ式の構成であること、②そのため、カバー体5を移動させた場合に、結合用ボール3とカバー体5との間にボール3の逃げ場が生じること、③それにもかかわらず、ドリルビットAを挿入するときに、本件明細書に記載されている従来技術のように結合用ボール3が主体1内から完全に非突入状態になるのではなく、わずかに主体1内に突出する状態となるにとどまるのは、打撃力減衰部材11が抜け落ちるのを防止するためであることが認められる。

そうすると、甲18のドリルビットのシャンク先端部に設けられた溝部E又は縮径加工E’は、ツータッチ式の装着を前提とし、カバー体の移動によって打撃力減衰部材の抜け落ちを防止させる程度のわずかな突出状態となった結合用ボール3が邪魔にならないようにするためのものにすぎないから、本件発明のように、スリーブを手動で移動させることがないことを前提に、環状カッタの非挿入状態と変わらない半突入状態にある施錠部材の通過を許容する施錠部材通過凹部を設けることによって、ワンタッチ装着を可能にするという作用効果を奏する環状カッタ(ないしドリルビット)の構成が開示されているとはいえない。

また、甲18でカバー体を手動で移動させた状態で結合用ボール3が僅かに突出状態にあるのは、打撃力減衰部材の抜け落ちを防止するためであるから、ドリルビットのシャンク先端部に設けられた溝部E又は縮径加工E’も、打撃力減衰部材の存在を前提として初めて必要とされるものであって、打撃力減衰部材の存しないアーバーに対応する環状カッタの施錠部材通過凹部の構成が開示されているともいえない。

(ウ) したがって、本件発明の環状カッタの構成は、甲18により公知であるとはいえない。

イ 甲19(実開昭61-42754号実用新案公報)について

(ア) 甲19には、「ドリル等の工具の交換チャック」に関する考案が開示されており、次の記載がある。

「可動スリーブ11の前後部内周には、前記筒状部2上の複数個の球10と対応する位置に挿入溝14が形成されている。この挿入溝14は複数個の球10が筒状部2の取付孔3内から外方へ退避するのを許容するための退避部15と、その前方に続き球10を取付孔3内へ押出すための斜状部16とからなっている。この斜状部16は、前部ほど直径が小さくなるように傾斜している。

従って、第1図の状態では挿入溝14の斜状部16によって球10は取付孔3内へ若干押出されている。第4図に示すように、可動スリーブ11がコイルスプリング13の弾性に抗して前方ヘスライドされると、挿入溝14の退避部15が球10と対応するため、これらの球10は取付孔3内から後退する。この場合、球10は寸法的には取付孔3から完全に後退可能であるが、実際には取付孔3の内側方から押圧しないかぎり、球10の内側縁は取付孔3内へ若干突出したままの状態となる。」(3欄29行~4欄3行)

「別の替え軸をスピンドル1に取付ける場合には、第4図に示すように可動スリーブ11を前方ヘスライドさせた状態で、替え軸の挿入軸部をスピンドル1の筒状部2へ前方から挿入する。

すると、筒状部2奥の押出し部材17は替え軸によって押され、コイルスプリング19の弾性に抗して奥に押し戻される。そして、替え軸上の回り止め凹部へ筒状部2前端の回り止め凸部8が係入されるとともに、替え軸後端の抜け止め溝が筒状部2上の球10と対応する。従って、この状態で可動スリーブ11の前方への付勢を解除すれば、同スリーブ11が後方へ戻るので、その挿入溝14の斜状部16によって球10が筒状部2の取付孔3内へ押出される。そのため、球10が抜け止め溝の斜面に係止されて、替え軸がスピンドル1に固定される。」(5欄15行~30行)

(イ) これらの記載並びに第1図及び第4図によれば、甲19の考案は、①可動スリーブ11を前方へスライドさせて替え軸を挿入するいわゆるツータッチ式の構成を前提とするものであること、②球10は、替え軸を挿入しない状態では取付孔3内へ若干押し出されているが、可動スリーブ11を前方へスライドさせると、同スリーブと球10との間に球10の逃げ場が形成され、替え軸が挿入されて取付孔3の内側から押された場合には、球10は完全に非突入状態になることができ、そのためいかなる軸径のものも装着することができるものであることが認められる。

したがって、甲19には、本件発明のように、スリーブを手動で移動させることがないことを前提に、環状カッタの非挿入状態と変わらない半突入状態にある施錠部材の通過を許容する施錠部材通過凹部を設けることによって、誤装着を防止するとともにワンタッチ装着を可能にするという作用効果を奏する環状カッタ(ないし替え軸)の構成が開示されているとはいえない。

なお、甲19の第1図及び第4図によれば、挿入軸部24の先端部は軸本体の大きさより多少小さな径とされているように見えないわけではないが、上記挿入軸部24の先端部の径と押出し部材17の前端部分の径の大きさ又は球10の取付孔3への突出量との関係や、その目的については、甲19に何ら記載されていないから、上記第1図及び第4図のみから、甲19における「縮径」が不適合な替え軸(環状カッタ)が装着されることを防止するためのものであるとか、適合する替え軸(環状カッタ)として挿入軸部24の先端部を押出し部材17の前端部分の径の大きさと同じにしたものであると認めることはできない。

(ウ) したがって、本件発明の環状カッタの構成は、甲19により公知であるとはいえない。

ウ 甲26(特開昭60-123239号公開特許公報)について

(ア) 甲26は、「工具脱着装置」に関する発明であるが、そこには、次の記載がある。

「本装置A’は、工具本体B’の一部である筒状部21と、該筒状部21の外周面に摺動自在に装着された可動スリーブ22と、該可動スリーブ22と筒状部21との間に介在せしめられ該スリーブ22を図示上方に付勢している第1スプリング23と、前記筒状部21の内周面に摺動自在に装着され、前記筒状部21に一端が係止した第2スプリング24により図示上方に付勢されている摺動体25と、前記筒状部21に穿設された複数個の孔に半径方向移動可能に嵌入せしめられ、前記可動スリーブ22の内周面に形成された凹部22a又は第5図にも示すように回転軸2’の外周面に形成された凹部2’aに係合可能な複数個の球体26と、前記摺動体25の内周面に相対摺動自在な如くに組付けられた軸体27とから成っている。」(3頁左下欄11行~右下欄6行)

「このような構成において、第4図の状態から第3図の如くに組付けるには、先ずロボットのアームに取付けられた把持装置aによって第3図のように可動スリーブ22を把持してロボットの動きにより上昇せしめると、回転軸2’の下端が筒状部21の内周側に挿入されることとなり、摺動体25が下方に押され、回転軸2’の凹部2’aが球体26の位置まで進入する。一方、可動スリーブ22はスプリング23によって上方に付勢されているため球体26は内方側に押され、第3図の状態となる。これにより工具本体B’が回転軸2’に一体化されることとなる。」(4頁左上欄3行ないし14行)

(イ) これらの記載と第3図及び第4図の記載を併せ考えると、甲26においては、ロボットのアームで可動スリーブ22を把持して上方に持ち上げて、回転軸2’を筒状部21に挿入することから、いわゆるワンタッチ式の構成が前提とされているといえる。しかし、摺動体25は筒状部21の内周面に摺動自在に装着されていることからすると、球体26は回転軸2’の非挿入状態においても、筒状部21の内周孔に突出していないと認められるから、いかなる軸径のものも装着することができるものであることが認められる。

したがって、甲26には、本件発明のように、環状カッタの非挿入状態において施錠部材がアーバーの挿入孔内に半突出状態にあることを前提に、施錠部材の通過を許容する施錠部材通過凹部を設けることによって、誤装着を防止するとともにワンタッチ装着を可能にするという作用効果を奏する環状カッタ(ないし回転軸)の構成が開示されているとはいえない。

なお、第4図では、回転軸2’の下方端部にテーパー面が形成されているが、同テーパー面と凹部2’aとの間には、テーパー面より大きな径の部分が介在しているから、同テーパー面をもって、本件発明の施錠部材通過凹部が記載されているとはいえない。

(ウ) したがって、本件発明の環状カッタの構成は、甲19により公知であるとはいえない。

エ 甲78の2(実公昭39-3491号実用新案公報)について

(ア) 甲78の2には、「ドリルチャック」に関する考案が開示されており、このドリルチャックは、「チャック本体1の側壁に内端がボールの直径よりもやや小さいボール通孔2を設け、この通孔2に相対する位置において、内側面にボールの一部が嵌り込むことができる周溝3を具えたカラー4を、前記本体1の外面に上下方向に所定長さだけ摺動できるようにして遊嵌し、上下動カラーによって、チャック本体とドリルとの連繋を司るボールを出入させることができるようにしたドリルチャックにおいてドリルアダプター5の側壁上端から下方回転方向へ傾けてボール案内溝6を設け、案内溝下端を水平方向へ少しばかり延長し、アダプター下部にリング状ホルダー7をアダプターに対して自由に回転できるようにして支持させた構造。」(実用新案登録請求の範囲)であり、「ホルダー7を握ってアダプターをチャック本体内へ挿込む。そしてチャック本体1内へ飛び出しているボールの約半分がアダプターの案内溝6の上端に入れば、アダプターは直ちに回動し、アダプターが上昇し切ってボールが案内溝6の下端にくると、本体1、アダプター5は回転しているので、ボールは自動的に水平部10の端へ押し込まれる。それで、アダプターとチャック本体とは全く確実に一体となる。」(2欄27行~35行)との記載がある。

(イ) これらの記載と第1図及び第2図を併せ考えると、甲78の2の考案では、ドリルアダプターの挿入時において、ボール8がチャック本体1の内部に半突入状態になっているため、ドリルアダプター5に側壁上端から下方回転方向へ傾けて形成したボール案内溝6が設けられていることによって、その構成を具備しないドリルアダプターの誤装着が防止されるとともに、ワンタッチでの装着も可能となっていると認められる。

しかし、甲78の2では、ドリルアダプター5の挿入の前後を通じて、ボール8の突出状態に変位はなく、そのため、ドリルアダプター5に形成された案内溝6とその下端の水平部10の溝の深さにも変化はないものと認められ、本件発明の環状カッタのように、カッタの非挿入時には半突入状態とされている施錠部材を通過できる施錠部材通過凹部と、カッタを挿入すると半径方向内側に変位した施錠部材と係止する係合凹部という、突入状態が変化する施錠部材に対応した施錠部材通過凹部及び係合凹部を具備するものとは、その予定する装着原理を異にするものである。

また、そのために、甲78の2における案内溝6は下端の水平部10に向けて、回転方向に傾けて形成されている必要があるのに対し、本件の環状カッタでは、施錠部材通過凹部と係合凹部は単に連接されていれば足りるという相違もある。

(ウ) したがって、本件発明の環状カッタの構成は、甲78の2により公知であるとはいえない。

オ 甲78の3(特開平6-315806号公開特許公報)について

(ア) 甲78の3に係る特許出願は、平成6年11月15日に公開されているので、いわゆる公知文献ではないが、本件発明の特許出願の日(平成5年6月30日)よりも前の同年4月30日に特許出願されているので、特許法29条の2との関係で、甲78の3に本件発明の環状カッタの構成と同一の構成が記載されているかを検討しておく。

(イ) 甲78の3には、「ホルダ装置」に関する発明が開示されており、次の記載がある。

a 「ホルダ本体の先端寄りはその外周径が小さく段差状に形成され、この段差部30には、周方向に長径な楕円状の長穴32が形成され、この長穴内には転動体に相当する金属球34が収納されている。」(【0013】)

b 「この金属球34は段差部30の厚みよりも大きな直径を有し、よって段差部30の外内周面からそれぞれ突出して保持されている。」(【0014】)

c 「アダプタの大径部76の外周には、アダプタがホルダ本体に挿入された際に前記転動体34を収納するアダプタ側の転動体溝82が形成されている。この転動体溝82は、図4に示すように、アダプタの軸方向に延びる受領溝84と、アダプタの周方向に延びるとともに前記受領溝84と連接しており、前記ホルダ本体側の長穴32と角度θを持ってアダプタの先端方向に傾斜するロック溝86とからなる(図7参照)。受領溝84は、ホルダカラーがホルダ本体に係止されるときにホルダカラーによって位置決めされている転動体34と整合するように位置され、アダプタの挿入時に円滑に受領溝84が、内方に突出する転動体34を受領できるようになっている。」(【0020】)。

d 「ホルダ本体10が図1に示すように、アダプタを受領していないときには、ホルダカラー48は、図5に示すように、その開口60がホルダ本体の開口40と整合して小球58が開口40に陥入し、ホルダ本体に節度的に係止されている。また、このとき、ホルダカラー48はコイルスプリング46により先端から見て時計方向に付勢されており、かつ、図6に示すようにホルダカラーに保持されている転動体34は長穴32の反時計方向寄りに位置決めされている。」(【0023】)

「この状態で、ホルダ本体の先端より軸方向にホルダ本体10内にアダプタ70を挿入する。この際、キー溝96とキー94が係合するように挿入すると、転動体34がアダプタに形成された前記軸方向の受領溝84内に円滑に収容される(図6参照)。受領溝84の奥端が転動体34に到着するとき、アダプタ70のテーパ75に続いて大径部76が、開口40から若干内側に突出する小球38に接触し、この小球38を半径方向外方に向けて移動させる。小球38に押されて、ホルダカラーの小球58もスプリング62に抗して外方に移動し、最早、小球58はホルダカラーをホルダ本体に係止できなくなる。これによりホルダカラー40のホルダ本体10に対する係止状態が解除される。この係止状態が解除されると、ホルダカラー48にはホルダ本体10の先端方向から見て時計回りに付勢力が加わっているため、ホルダカラー48は図9に示すようにホルダ本体10に対して時計回りに回転し、小球58は段差部30の外周面に乗り上がる。」(【0024】)

「このホルダカラー48が時計回りに回転すると、ホルダカラー48は押さえ溝56によって転動体34を保持しているため、ホルダカラー48の回転に伴い転動体34も長穴32に沿って周方向に移動する。ここで図8に示すようにホルダ本体側の転動体溝32は受領溝84の奥端から略周方向のロック溝86となって延在するので、転動体34はロック溝86内に侵入する。これにより、図10に示すように、転動体34は、その上部をホルダカラーの押さえ溝56により、軸方向両部を長穴32の側壁とロック溝86の側壁により拘束され、結局アダプタ70はホルダ本体10内にロックされる。」(【0025】)

(ウ) これらの記載及び図1ないし9を併せ考えると、甲78の3の発明においては、アダプタ70の挿入時において、転動体34がホルダ本体10の段差部30内部に半突入状態になっているため、アダプタ70に軸方向に延びる受領溝84と周方向に延びるロック溝86とが連接して設けられていることによって、その構成を具備しないアダプタ70の誤装着が防止されるとともに、ワンタッチでの装着も可能となっていると認められる。

しかし、甲78の3の発明では、アダプタ70の挿入の前後を通じて、転動体34の突出状態に変位はなく、そのため、アダプタ70に形成された受領溝84とそれに連接されたロック溝86の溝の深さにも変化はないものと認められ、本件発明の環状カッタのように、カッタの非挿入時には半突入状態とされている施錠部材を通過できる施錠部材通過凹部と、カッタを挿入すると半径方向内側に変位した施錠部材と係止する係合凹部という、突入状態が変化する施錠部材に対応した施錠部材通過凹部及び係合凹部を具備するものとは、その予定する装着原理を異にするものである。

また、そのために、甲78の3の発明における受領溝84とロック溝86は、前者がアダプタ70の軸方向に形成されるのに対して後者は周方向に設けられ、ホルダカラー48の回転に伴って転動体34がロック溝86に沿って転動し、受領溝84とロック溝86の形成方向の相違によってアダプタ70がホルダ本体10に係止されるのに対し、本件発明の環状カッタでは、施錠部材通過凹部と係合凹部は溝の深さが異なり、カッタとアーバーの係止は、このような溝の深さの相違によって行われるという相違もある。

(エ) したがって、甲78の3に、本件発明の環状カッタの構成と同一の構成が記載されているとはいえない。

カ 甲79(米国特許公報3747946号)について

(ア) 甲79には、「工具ホルダー」に関する発明が開示されており、それによれば、切削工具20のテーパー状の雄シャンク21上に、フラット面22が形成され、その基部にカム23が図3の方向から見て時計方向に延設されているところ、この切削工具20を工具ホルダー10の雌テーパー11内に挿入して、時計方向に手動で回転させると、雌テーパー11の挿入口付近に設けられた固定ロッキングピン16と切削工具20のカム23が係合し、このとき、工具20のフラット面22の上部220は、ロッキングピン25(スプリング26によって径方向外側へ付勢されている)に相対する位置となり、ここでカムロックリング50を時計方向に約90度回転させると、図4に示されるようなロッキングカム60の内周に形成された形状に従ってロッキングピン25が径方向内側に押圧されて、工具20のフラット面22と緊密に係合するようになり、切削工具20が工具ホルダー10に完全に係合されることが示されている。

(イ) 甲79の発明では、工具ホルダー10の挿入孔の内周がテーパー状に形成されており、その挿入口付近には固定ロッキングピン16が設けられているから、そのテーパー形状に適合し、かつ固定ロッキングピン16に係合し得る形状のカム23を有する切削工具20のみが、工具ホルダー10に装着し得ることとなる。

しかし、甲79における切削工具20の工具ホルダー10への装着は、切削工具20を挿入した後に切削工具20を手で回転させて軽く係合させ、その後にカムロックリング50をやはり手で回転させて緊密に係合させるというものであって、本件の環状カッタが予定するアーバーへの装着とは原理が異なる。

(ウ) したがって、本件発明の環状カッタの構成は、甲79により公知であるとはいえない。

キ 検甲1について

(ア) 検甲1は、訴外宮川工業株式会社が遅くとも平成元年1月には販売し、原告が平成2年11月に購入したスピンドル(検甲1の2)と替え軸(検甲1の1)として提出されているものである。

(イ) 検甲1の1を検甲1の2に挿入すると、いわゆるワンタッチで装着することが可能であると認められ、さらに、検甲1の1は、挿入部の軸径が8.992mm、先端部の径が8.601mmである(なお別の替え軸として提出されている検乙7では、それぞれ8.989mmと8.610mmである。)。そして、原告は、このように検甲1の1では、替え軸の先端の径が縮径とされている点が、本件発明の「施錠部材通過凹部」に当たると主張している。

(ウ) しかし、後述するように、本件発明の「施錠部材通過凹部」に、環状カッタの挿入部の先端を一部小径としたものは含まれないというべきであるから、検甲1の1の縮径をもって、「施錠部材通過凹部」とみることはできない。

(エ) また、被告の試作した先端が縮径となっていない替え軸(検乙4。軸径8.984mmで先端部は8.983mmだが1/1000mm程度の差に技術的な意味はない。)を検甲1に挿入すると、強い力を要するものの挿入することができ、この点は、被告が提出するピンゲージ(検乙6。軸径8.975mm)でも同様である。さらに、原告の提出するピンゲージ(検甲4。軸径8.996mm)でも、強い力は必要であるが、挿入することはできると認められる。

このように、検甲1の1の替え軸と、検甲4並びに検乙4及び6とで、挿入に要する力が異なるのは、検甲1の2のスピンドルにおける球状の施錠部材が、替え軸の非挿入状態において若干挿入孔内に突入しており、替え軸の径が太くなると施錠部材との間で抵抗が生じることになることによるものであると推認される。

しかし、検甲4並びに検乙4及び6においても、強い力を要するとはいうものの、なお人力で挿入することが可能であるから、検甲1の2のスピンドルは、検甲1の1の先端の縮径のない替え軸の挿入が可能な構成を具備しているにすぎず、検甲1の1の先端の縮径は、それが設けられていない替え軸の誤装着を防止する作用効果を奏するものであるとはいえず、検甲1の1は、本件発明の「施錠部材通過凹部」を具備しているとはいえない。

この点について原告は、検甲1の1の替え軸と、検甲4並びに検乙4及び6とでは、挿入に要する力が異なる以上、検甲1の1の先端の縮径の存在によって誤装着が防止されていると主張するが、人力で挿入し得る程度の力で挿入できる以上、なお誤装着のおそれはあるというべきである。

また、原告は、挿入軸の径が小さい場合には施錠部材通過凹部の有無にかかわらず挿入軸を挿入できるから、そもそも本件発明の誤装着防止の効果は、施錠部材通過凹部の存在によって奏されるものではないとも主張するが、本件明細書においては、従来技術の課題として、「上記装置では、回転伝達体52の下端開口部と環状カッタの挿入部の外径および挿入用環状溝の位置が合えばどのような環状カッタでも取り付けることができる構造となっているため、時として、穿孔装置の駆動能力や被穿孔材料に適合しない環状カッタを取り付けてしまう場合がある。」(本件明細書【0008】)とされており、挿入孔と挿入軸の外径が合っている場合に生じる問題点を解決課題としており、まだ通常の軸のはめあいを考えても軸から半突入状態にある施錠部材を回避し得るほどに細径の軸を挿入することは考え難いから、原告のこの主張は採用できない。

(オ) したがって、本件発明の環状カッタの構成は、検甲1により公知であるとはいえない。

(5)  しかるところ、原告製品は、いずれも、検乙3のアーバー(被告製)に取り付けて使用でき、同アーバーは、別紙アーバー目録記載の構成を有する。そして、別紙アーバー目録記載のアーバーは、本件発明の構成要件Bを充足すると認められるから、原告製品は、いずれも本件発明の構成要件Bを充足するというべきである。

これに対し原告は、原告製品は、構成要件Bの構成を具備しないアーバー(たとえばネジ止め式やツータッチ式〔検甲7〕のアーバー)にも取付使用し得るものであるから、本件発明の構成要件Bを充足しないと主張する。しかし、本件発明の目的物が、アーバーとは別の環状カッタであることは先に述べたとおりである。また、本件発明の環状カッタの構成が出願当時に公知であったとは認められないことも前記のとおりであるから、本件発明が、公知の環状カッタを構成要件Bのアーバーに使用する新たな用途を見出したことによって特許されたものともいえない。したがって、構成要件Bの構成を具備するアーバーと組み合わせたときに所定の作用効果を奏する環状カッタであれば、その組み合わせるアーバーいかんにかかわらず、その製造、販売等は特許法2条3項1号所定の発明の「実施」に当たるというべきであり、原告製品が構成要件Bの構成を具備しないアーバーにも使用し得るとしても、直接侵害の成否には影響を及ぼさないというべきである。そして、実際にも、乙9及び10(イ号及びロ号製品の取扱説明書)では、ワンタッチタイプの電動機への取付方法が明記され、特にロ号製品の英文説明では、検乙3のアーバーに使用するために設計されたものであることが明記されている。

したがって、原告の主張は採用できない。

2  争点(1)イ(イ号製品は、本件発明の構成要件Cの「施錠部材通過凹部」を充足するか)について

(1)  本件発明の特許請求の範囲の記載では、「施錠部材通過凹部」が、「半突入状態とされている施錠部材を通過できる」ものであることは理解されるが、具体的にどのような形状のものが含まれるのかについては明らかでない。

そこで、明細書の発明の詳細な説明の記載を見ると、①課題を解決するための手段の欄に、「前記半突入状態とされている施錠部材を通過できる施錠部材通過凹部(「施錠部材通過部9a」として示す)」との記載(【0011】)、②実施例において、「施錠部材通過部9a」として、「施錠部材通過部9aは図6の(a)示すように挿入部の一部を面取りした形状のものや、図6の(b)に示すように先端の一部を小径にした形状、あるいは図示せぬが、施錠部材7にあった凹部を形成したものなど、種々のものを採用することができる。」との記載があるにとどまる(【0019】)

被告は、これらの明細書の記載から、本件発明の「施錠部材通過凹部」は、イ号製品のような面取り形状のものも含まれると主張している。

(2)  ところで、本件発明の出願経過をみると、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

ア 本件発明の特許出願当初の明細書には、次の記載があった(甲11)。

(ア) 特許請求の範囲

「穿孔装置に装着されるアーバーに着脱自在に取り付けられる環状カッタであって、前記環状カッタはアーバーへの挿入部を有し、該挿入部には、アーバー側の内周に突出して設けられた施錠部材の通過を許容する施錠部材通過部と、該施錠部材と係止する係合部とを連接して形成してなることを特徴とする環状カッタ。」

(イ) 課題を解決するための手段

「本発明は、穿孔装置に装着されるアーバーに着脱自在に取り付けられる環状カッタであって、前記環状カッタはアーバーへの挿入部を有し、該挿入部には、アーバー側の内周に突出して設けられた施錠部材の通過を許容する施錠部材通過部と、該施錠部材と係止する係合部とを連接して形成してなることを特徴とするものであり、これを課題解決のための手段とするものである。」(【0011】)

(ウ) 実施例

「施錠部材通過部9a」について、現在の本件明細書の前記【0019】と同一の記載がある。

イ 本件発明の特許出願に対しては、特許庁審査官から、平成8年4月25日付で拒絶理由通知が発せられた(甲13)。その内容は、次のとおりであった。

「引用例1(注:実開平2-111504号公開実用新案公報・甲14、乙8)には施錠部材通過部と連接する係止部を形成した環状カッタが記載されており、これは、アーバの外周に突出して設けられた施錠部材の通過を許容するものであるが、アーバの内周に施錠部材を突出して設け、環状カッタの挿入部をアーバに嵌入することは引用例2(注:特開昭62-74515号公開特許公報・甲15)に記載されているから、引用例1記載のものをそのように構成することは格別困難ではない。」

ウ これに対し、被告は、平成8年6月18日、手続補正書(乙20)を提出するとともに意見書(乙21)を提出した(以下、この補正を「本件補正」という。)。

(ア) 手続補正の内容は、次の2点について、明細書の記載を補正するものであった。

a 特許請求の範囲

「穿孔装置に装着されるアーバーにカッタ挿入時にはアーバー側の内側に半突出状態となっておりスリーブを操作することによって没入可能に設けられている施錠部材によって前記アーバーに着脱自在に取付けられる環状カッタであって、前記環状カッタはアーバーへの挿入部を有し、該挿入部の外表面には、アーバー側の内側に半突出して設けられた前記施錠部材の通過を許容する施錠部材通過凹部と、該施錠部材と係止する係合凹部とが連接して形成されてなることを特徴とする環状カッタ。」

b 課題を解決するための手段

「本発明は、穿孔装置に装着されるアーバーにカッタ挿入時にはアーバー側の内側に半突出状態となっておりスリーブを操作することによって没入可能に設けられている施錠部材によって前記アーバーに着脱自在に取付けられる環状カッタであって、前記環状カッタはアーバーへの挿入部を有し、該挿入部の外表面には、アーバー側の内側に半突出して設けられた前記施錠部材の通過を許容する施錠部材通過凹部と、該施錠部材と係止する係合凹部とが連接して形成されてなることを特徴とする環状カッタであり、これを課題解決の手段とするものである。」(【0011】)

(イ) 意見書では、拒絶理由通知書の引用例1及び2について、次のとおり述べられていた。

a 「引用例1…は、モルタル、コンクリート等に穿孔するコアドリルの着脱構造に関するもので、穿孔するという作用の点で本発明の穿孔装置と類似ではありますが、その構成は円筒本体8に、筒状体6の外表面に設けた係止部の通過を許容する切欠部を形成しただけのものであり、本発明のような環状カッタの着脱装置とは基本的構成が異なっております。また、この引例の切欠は円筒本体8に貫通して形成されている切欠であり、環状カッタ挿入部の外表面に形成した施錠部材の通過凹部とは異なっているため、種々ある環状カッタの中から、穿孔装置に適合した環状カッタのみを選別するという機能を果たすことができず、その上被加工物の穿孔作業中に刃物が噛み付いた場合、刃物を外そうとしてモータを逆転させるとシャンク1と円筒体が外れてしまうという欠点があります。」

b 「また、第2引例のものは、本願明細書において先行技術として示したものであり、第1引例のものをその儘採用して、環状カッタの着脱構造とすることは無理であります。」

(ウ) 被告は、上記手続補正書及び意見書の提出に先立つ同月7日に特許庁審査官と面談を行い、「引用例との差異を明確にした補正案の説明」を行った。その面談結果として、特許庁審査官は、示された補正案により拒絶理由を有さないとの心証を得、その理由として、「アーバ側の施錠部材に対応して設けられたカッタの挿入部の構成が明確になった。」とされた(甲23〔面接記録〕)。

(エ) そして、本件発明は、本件補正の内容により特許登録がなされた(甲1)。

(オ) これに対し、平成9年5月1日に特許異議が申し立てられ、同年7月30日に特許庁審判合議体から取消理由通知(甲17)が発せられた。

これに対して被告は、同年10月20日付訂正請求書(甲2)を提出して、本件明細書の下線部について訂正請求をし、この訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとされて、平成10年3月31日にされた特許異議の申立てについての決定で訂正が認められた(甲3)。

エ 以上に基づいて検討する。

(ア) 本件発明の構成要件Cの「施錠部材通過凹部」は、当初明細書では「アーバー側の内周に突出して設けられた施錠部材の通過を許容する施錠部材通過部」とされていたのを、本件補正によって、「アーバー側の内側に半突出して設けられた前記施錠部材の通過を許容する施錠部材通過凹部」と補正されたものであり、文言上は、「施錠部材通過部」という部材の機能に基づく記載に、「凹部」という、部材の形状に関する記載が付加されたものといえる。

他方、明細書の実施例では、補正前の「施錠部材通過部9a」の形状として、①挿入部の一部を面取りした形状のもの、②先端の一部を小径にした形状のもの、③施錠部材7にあった凹部を形成したもの、の3種類が記載されていたが、本件補正によって「施錠部材通過部」が「施錠部材通過凹部」と補正された後も、明細書の実施例は補正されず、「施錠部材通過部9a」の例として、それら3種類のものが記載されていた。

これらの事実からすると、本件補正において、「施錠部材通過部」を「施錠部材通過凹部」と補正することによって、「施錠部材通過部9a」の例として記載された3種類のもののうち、形状が凹状である前記③の「施錠部材7にあった凹部を形成したもの」に限定されるに至ったものと解するのが相当であり、このことは、特許庁審査官が補正案について拒絶理由がないと判断した理由として、「アーバ側の施錠部材に対応して設けられたカッタの挿入部の構成が明確になった。」とされていることとも符合するものである。

(イ) これに対し、被告は、本件発明の「施錠部材通過凹部」の技術的機能から考えて、「施錠部材7にあった凹部を形成したもの」を、面取り形状のものや小径にしたものと区別する理由がないと主張する。

しかし、特許請求の範囲の記載を補正した以上、単なる誤記の訂正等の場合でない限り、何らかの技術的な意味の補正がなされたと理解するのが通常であるところ、本件では、補正前に実施例として記載されていた3種類のもののうちの一つに使用されていた「凹部」という文言を使用して特許請求の範囲の文言を補正したのであり、しかも補正後の実施例の記載は補正後の「施錠部材通過凹部」の実施例として3種類のものが記載されているわけではなく、手続補正書と共に提出された意見書の記載を見ても、この点に関する特段の記載はないのであるから、これらの明細書の記載からして、「施錠部材通過凹部」への補正によって、「施錠部材7にあった凹部を形成したもの」に限定されるに至ったものといわざるを得ない。また、技術的にみても、「施錠部材7にあった凹部を形成したもの」の場合には、他の面取り形状の場合や小径の場合と比較して、環状カッタの挿入時に施錠部材が通過する幅も規制して誤装着を防止することになり、より厳格に誤装着を防止できるとも考えられるから、そのような構成に限定することが、技術的に意味がないともいえない。

(ウ) また被告は、本件補正において、「施錠部材通過部」を「施錠部材通過凹部」と補正したのは、前記拒絶理由通知に示された引用例(甲14)における「切欠部」との差異を示す趣旨に出るものにすぎず、底のない「切欠」は含まないという趣旨で「凹部」と表現したものであるから、「施錠部材にあった凹部を形成したもの」に限定して解釈すべきではないと主張する。

確かに前記意見書の記載からすると、本件補正は、前記拒絶理由通知に対応するもので、甲14の公知技術との差異を明確にする趣旨に出るものであったことは認められ、前記意見書の記載からすると、被告が「施錠部材通過部」を「施錠部材通過凹部」と補正した趣旨が、被告主張の趣旨に出るものであったとうかがわれないでもない。

しかし、「凹部」の意味をそのようなものとして使用する趣旨は、前記意見書によっても、本件補正後の明細書によっても明確ではない。むしろ、「凹」という語の一般的な語義は、「物の表面が部分的にくぼんでいること。くぼみ」(広辞苑第5版)ということであって、面取り形状や縮径形状はこのような語義にはなじみにくいものである(乙11〔実公平3-34494号実用新案公報〕には、面取形状の部位を「凹部」と呼ぶ例が示されているが、一般的なものとは思われない。)。しかも、前記補正は、従前の「施錠部材通過部」の実施例として示されていた3種類のもののうち、残る一つの実施例の記載で使用されている「凹部」の語を使用して、「施錠部材通過部」を「施錠部材通過凹部」とすることにより、特許請求の範囲を補正したものである。そうすると、本件補正後の特許請求の範囲で使用された「凹部」の語が、実施例の記載で使用される「凹部」とは異なる意味で使用することを示す記載がない限り、被告の補正の意図いかんにかかわらず、補正後の明細書等に接した第三者としては、「施錠部材通過凹部」への補正は、上記公知技術の切欠部との差を明らかにするため、出願当初の明細書の「施錠部材通過部」を、実施例の一つにすぎなかった「施錠部材にあった凹部を形成したもの」に限定する趣旨に出たものであると理解するのが自然であるといわなければならない。そして、特許請求の範囲の記載の解釈は、権利者の主観的な意図ではなく、明細書の記載等を当業者の観点から客観的に解釈すべきものであるから、本件においても、上記のような理解に立って解釈するのが相当である。

被告は、本件のような用語の不統一は、実際の明細書では散見されるところであると主張するが、本件補正では、従前の実施例の記載にも存した「凹部」との語を特許請求の範囲の記載に採用する補正を行ったものであって、単なる用語の不統一がある場合と同様に解することはできない。また、被告は、「施錠部材通過凹部」の意味を、「施錠部材にあった凹部を形成したもの」と限定的に理解すると、明細書中にそれに対応する図面が存しないことになると主張するが、本件明細書の記載からすると、図面が存しなければ上記の意味での「施錠部材通過凹部」の技術的な意味が理解できないわけでもないから、明細書中に図面が存しないことは、前記解釈を採用する障害となるものではない。

(エ) また、被告は、本件補正が「施錠部材通過凹部」を「施錠部材にあった凹部を形成したもの」に限定する趣旨に出たものであったならば、特許庁審査官は、面取り形状や小径形状を「実施例」とする記載を削除するよう指摘したはずであると主張する。しかし、特許庁における審査実務としては、特許請求の範囲の記載に限定がなされた場合でも、実施例の記載の補正を求めないこともあることが当裁判所に顕著であるから、被告主張のような特許庁審査官の指摘がなかったことから、本件補正の趣旨を云々することはできない。

(オ) なお、前記のとおり、現在の本件明細書では、課題を解決するための手段の欄に、「前記半突入状態とされている施錠部材を通過できる施錠部材通過凹部(「施錠部材通過部9a」として示す)」との記載があり、これからすれば、本件明細書の実施例の記載において「施錠部材通過部9a」として示された3種類のものはいずれも「施錠部材通過凹部」に該当するようにも見える。

しかし、本件明細書におけるこの記載は、前記ウ(オ)の訂正によって記載されるに至ったものであって、訂正前の明細書の記載には、前記ウ(ア)のとおり、特許請求の範囲における「施錠部材通過凹部」と実施例の記載における「施錠部材通過部9a」の関係を明確にする記載は存しなかったものである。したがって、訂正前の本件発明の「施錠部材通過凹部」の意義が、前記のとおり「施錠部材にあった凹部を形成したもの」と解される以上、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして許された訂正後の本件発明の解釈において、「施錠部材通過凹部」の意義を訂正前より拡張して解釈することはできない。

(カ) また、被告は、弁論終結後において、原告は、平成9年5月2日付の特許異議申立書(乙22)においては、前記甲18記載のドリルビットとシャンク先端部に設けられた縮径をもって、本件発明の「施錠部材通過凹部」に該当すると主張していたと主張するが、特許異議手続は、当該発明が特許法113条所定の特許要件を具備するか否かを審理判断する手続であるのに対して、本件訴訟は、原告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かを審理判断する手続であって、両者は局面を異にするものであるから、被告が特許異議手続において前記のような主張をしていたからといって、それによって本件訴訟における主張内容に制約を受けるいわれはないというべきである。

オ 以上のとおり、「施錠部材通過凹部」の意味は、「施錠部材にあった凹部を形成したもの」と解すべきところ、イ号物件の通過部は、別紙イ号製品目録の記載から明らかなように、面取りした形状であるから、「施錠部材通過凹部」を充足しない。

3  争点(1)ウ(原告製品は、本件発明の構成要件Dの「支承部材当接部」を充足するか)について

争点(1)アについて述べたとおり、本件は、構成要件Bの構成を具備するアーバーと組み合わせた場合に所定の作用効果を奏し、構成要件CないしEの構成を具備する環状カッタに関する発明と解すべきであるから、構成要件Dの支承部材当接部も、構成要件Bの構成を具備するアーバーと組み合わせた場合に、当該アーバーの支承部材と当接して該支承部材による施錠部材の保持を解除する部位であれば足り、構成要件Bの構成を具備しないアーバーと組み合わせた場合にもそのような機能を営むことは必要ではないと解するのが相当である。

しかるところ、原告製品の端面11は、別紙アーバー目録記載のアーバーの支承部材2と当接して該支承部材2による施錠部材7の保持を解除するものであるから、原告製品は、構成要件Dの「支承部材当接部」を充足する。

4  争点(1)エ(権利濫用の抗弁)

原告の権利濫用の主張は、先に1(6)キで述べたところから、理由がない。

5  原告製品の侵害性のまとめ

以上によれば、イ号製品は本件発明の技術的範囲に属さず、ロ号製品及びハ号製品は、本件発明の技術的範囲に属する。

したがって、被告の乙事件の請求(1)は、イ号製品については理由がないが、ロ号製品については理由がある。もっとも、乙事件の請求(2)については、ロ号製品の製品及び半製品の廃棄を求める点は理由があるが、イ号製品が本件発明の技術的範囲に属しないことを考えると、ロ号製品の製造に供した工作機械等をすべて除却させる必要性は認められないから、この点についての請求は理由がない。

6  争点(2)ア(被告は原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を流布したか)について

(1)  後掲書証及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

ア 平成10年6月11日の日刊工業新聞に、「日東工器が警告書」、「特許権侵害で2社に送付」、「環状刃物で」との見出しの下に、次の記事が掲載された(甲6)。

「日東工器は鋼材穴あけ用ワンタッチ着脱式環状刃物の特許が3月末に成立したのに伴い、その類似品メーカー2社に対して『特許権侵害』の警告書を送付した。

『市場に同特許を使用した2社の類似品が出回っており、専用品としての商権が侵されている。』(広報室)と判断したため。

同刃物は、携帯式磁気応用穴あけ機『アトラエース』の全自動タイプ『QAシリーズ』…の標準付属品で、『ジェットブローチ』…消耗補用品としても販売している。同社は今後、特許権侵害には『法的措置を含め厳正に対応していく方針』という。」

イ 平成10年6月20日の機械工具新聞に、「特許権侵害2社に『警告書』」、「鋼材穴あけ用ワンタッチ着脱式環状刃物」、「日東工器」、「商権の保護・市場確保のため」との見出しの下に、次の記事が掲載された(甲7)。

「日東工器(株)…は、鋼材穴あけ用ワンタッチ着脱式環状刃物の特許が確定したのに伴い、その類似品メーカー2社に対し、『特許権侵害』の警告書を発送した。

このワンタッチ着脱式環状刃物は、日東工器独自の携帯式磁気応用穴あけ器『アトラエース』(商品名)のQA・Aシリーズ機種の専用穴あけ工具であるが、市場には今回の確定した特許を使った類似品が出回っており、専用品としての商権が侵されていることから、その製造販売にかかわる刃物メーカーに『特許権侵害に対しては法的措置を含め厳正に対応する』と警告を発したもの。(以下略)」

ウ また、平成10年6月25日の全国工業新聞に、「特許侵害2社に警告」、「商権を保護し市場を確保」、「日東工器」との見出しの下に、ア及びイと同様の記事が掲載された(甲8)。

エ 当時、被告の携帯式磁気応用穴あけ機「アトラエース」の全自動タイプ「QAシリーズ」(検乙3)用の環状カッタとしては、被告自身の製品(「ジェットブローチ)」、原告のイ号製品(「メタルボーラーA」シリーズ)のほか、大見工業株式会社の「クリンキーカッター」、エムテック有限会社の「メタルブローチ」が販売されていた(甲61、62)が、後2社の製品の販売量は、イ号製品の販売量に比べて少量であった(なお、当時原告のロ号及びハ号製品が販売されていたとは認められない。)。

オ 被告自身の製品と原告のイ号製品とは、従前から市場において競合しており、実際に同一の取引先において競合していたこともしばしばあった(乙14)。

(2)  これらの認定事実に先に述べたところを併せて検討する。

ア まず、前記(1)のアないしウはいずれも新聞記事であり、新聞記事は各新聞社がそれぞれの取材に基づいて各社の判断で掲載するものではある。しかし、これらの新聞記事の掲載時期、内容や表現がいずれも大同小異であることからすれば、これらの記事は、いずれも被告からの積極的な情報提供によって掲載されるに至ったもので、被告は、記事が掲載されることを意図して、各新聞社に対し、情報提供を行ったものと推認することができる。そうすると、被告は、各新聞社に情報提供をすることを通じて、世間に各記事記載の事実を流布したものというべきである。

イ 次に、前記各記事では、被告が類似品を販売する2社に対して特許権侵害の警告書を送付し、今後は法的措置も含めて厳正に対処する方針であることが記載されており、これからすれば、それら2社が被告の本件特許権を侵害する旨が記載されていると認められる。

もっとも、各記事では、特許権侵害者として、類似品メーカー2社とされているだけであり、原告がそれに当たることは明記されていない。しかし、各記事には被告自身の製品名が明記され、それとの類似品が問題とされていることは容易に読み取ることができるところ、原告のイ号製品は市場において被告自身の製品と同一の取引先においてもしばしば競合しており、しかも他社の同種製品は原告のイ号製品に比べて販売量が少量であったのであるから、それら製品の需要者に対しては、本件記事の内容は、原告のイ号製品が被告の本件特許権を侵害するとの事実を流布するものであったというべきであり、このことは、本件記事の掲載に先立つ平成10年5月29日に原告に対して警告書(甲4)を送付した被告の認識にも合致するものであったというべきである。

したがって、各記事は、原告の営業上の信用を害する事実を流布するものであったと認められる。

なお、原告は、被告が同様の事実を口頭でも(原告の取引先等に)告知していると主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。

ウ そして、イ号製品が本件発明の技術的範囲に属しないことは前記のとおりであるから、各記事の内容は、虚偽であったと認められる。

エ 以上によれば、被告は、原告のイ号製品が被告の本件特許権を侵害するとの事実を流布することにより、不正競争防止法2条1項13号所定の不正競争行為を行ったというべきであり、今後も同行為及び同事実の告知を行うおそれがあると認められる。

オ したがって、原告の甲事件の請求(1)は理由がある。

なお、原告の甲事件の請求(2)については、差止めの対象とする行為の内容が抽象的である上、前記不正競争行為以外に被告が原告のイ号製品の製造、販売を違法に妨害したこと及びするおそれがあることを認めるに足りないから、理由がない。

7  争点(2)イ(原告が請求し得る損害額)について

証拠(甲63、71)によれば、原告は、原告製品の内、本件発明の技術的範囲に属するロ号ないしハ号製品を少なくとも平成9年9月以降販売していないことが認められ、平成9年10月以降は、本件発明の技術的範囲に属さないイ号製品のみを販売していたことが認められる。そうすると、被告の前記不正競争行為が行われたころには、原告が本件発明の技術的範囲に属さない環状カッタを販売し始めて、既に1年近く経過していたのであって、そのことと本件発明の内容及びイ号製品の構造に照らすならば、被告が前記不正競争行為を行うについては、過失があったものと認められる。

そして、前記不正競争行為を構成する虚偽の事実は、その内容・掲載された媒体からして、原告の営業上の信用を相当程度毀損したものと認められ、その他本件口頭弁論に現われた一切の事情を斟酌すれば、被告が前記不正競争行為を行い原告の信用を毀損したことにより賠償すべき損害の額は、金100万円と認めるのが相当である。

8  争点(3)ア(被告が請求し得る損害額)及びイ(被告が請求し得る補償金額)について

(1)  前記のとおり、本件発明の公開日は平成7年1月13日であり、被告が原告に警告書及び本件発明の公開特許公報を送付したのが同年10月18日であり(前記第2、1(5))、本件特許権が登録されたのが平成8年9月5日である。そして、弁論の全趣旨によれば、原告は、平成12年1月21日以降、原告製品の製造、販売を一時的に中止していることが認められる。

したがって、本件において補償金支払請求の対象となる期間は、平成7年10月19日から平成8年9月4日であり、損害賠償請求の対象となる期間は、平成8年9月5日から平成12年1月20日である。

(2)  ロ号製品の販売額について

ア 甲71によれば、ロ号物件の前記期間中の販売額は、別紙「ロ号製品の売上」記載のとおりであって、①補償金支払請求の対象となる期間(平成7年10月19日から平成8年9月4日まで)は合計7499万8257円、②損害賠償請求の対象となる期間(平成8年9月5日から平成12年1月20日まで)は合計4372万1937円であると認められる。

イ これに対し被告は、原告は甲71記載の販売額の裏付け資料を十分に開示しないから、甲71の内容は信用できないと主張する。

(ア) 本件訴訟手続において、原告開示の販売額の検証が次の経緯で行われたことは、当裁判所に顕著である。

a 平成12年7月3日に原告による販売額の開示がなされた後、同月18日、21日及び27日の弁論準備期日における原告と被告との協議により、被告代理人において原告事務所を訪問して裏付け資料の調査を行うこととされた。

b 原告は、被告代理人による調査の際に裏付資料として利用できるのは、甲71のすべての部分を開示した資料と、各代理店ごと・年度ごとに綴られた請求書(控え)綴りとがあるとして、被告代理人による調査の際にはそれらを求めに応じて開示する用意があることを申し出た。

c 被告は、それらの資料だけでは不十分であり、また準備期間が長いと帳票類の信用性が低下するとして、調査予定日の数日前に追加的に原告に開示を求める文書を連絡するので、調査当日に開示するよう求め、原告は、数日前に連絡を受けたのでは調査当日に開示できる旨を保証できないとしつつも、可能な限りで被告の求めに応じるようにした。

d 調査予定期日(同年8月7日)の数日前に、被告は、原告に対し、①得意先元帳(代理店別、月別に綴られた最終の請求書)、②出荷明細書、③取引明細に代理店などの記載が入ったもの、④納税申告書、⑤代理店一覧、⑥売上明細書(代理店毎及び製品毎)、⑦対象製品を含んだ製品ごとの生産実績表、⑧対象製品を含んだ製品ごとの棚卸表の開示を求めた。

e 調査期日においては、午前9時30分ころから午後6時ころまで、原告の事務所で、被告代理人による調査が行われたが、被告が開示を求めた文書のうち⑥だけは存在しないとして開示がなく、その余のものは開示がなされた。もっとも、被告代理人は、開示書類のコピーの提供がなされなかったため、開示された文書等の内容を手作業で転記することとなった。

(イ) 以上の経過からすると、原告は、原告製品の販売量の裏付け資料を、存在する限り被告代理人に開示していると認められ、また、被告による抜打ち的な要素のある求めに対してもほとんど応じているのであるから、甲74の記載を併せ考えると、原告の開示した原告製品の売上量は、信用し得るというべきである。被告は、調査当日にコピーが交付されなかったために十分な調査ができなかったことを指摘するが、原告が被告に開示した文書は、請求書控えなど大量のものであるから、コピーが交付されなかったことによって、不当に調査検証を制限したものということはできない。

(ウ) また、被告は、調査当日に被告代理人が調査した結果と、原告による開示内容に齟齬があることから、原告の開示内容は信用できないと主張する。

確かに被告の調査結果(平成12年9月29日付被告第14準備書面添付表)は、甲71とは異なっていると認められ、さらに、被告による調査自体においても、生産量が在庫量と販売量の合計と一致しない結果となっていることが認められる。

しかし、イ号及びロ号製品の販売個数について、原告の開示した内容は11万5914個であるのに対し、被告代理人による調査結果では11万7942個となっており、両者は大きな開きはないこと、これらの被告による指摘に対しては甲75により説明がなされていること、前記のとおり被告代理人による調査は、原告から提示された資料を手書きで転記したものであり、調査漏れや転記ミス等も生じ得ると考えられること、その他市場での販売状況等から原告開示に係る販売量が不当に少ないとの事情もうかがわれないこと、からすると、被告主張の点があるからといって、甲71による開示内容の信用性は否定されないというべきである。

(3)  ハ号製品の販売額について

ア 甲63及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(ア) ハ号製品は平成7年9月から販売が開始されたが、その品番は、従前から販売されていたネジ止め式カッタと同番(メタルボーラー350A・500A)を使用した。

その品番に係る製品のその年度別の売上個数及び売上金額は、別紙「ハ号製品の売上」の①記載のとおりであり、その品番内におけるネジ止め式カッタとハ号製品との区分を明確にし得る的確な資料は存しない。

(イ) ハ号製品が販売された前後の「メタルボーラー350A・500A」の月別販売個数の推移を見ると、ハ号製品の販売前の直前5か月(平成7年4月ないし8月)は月間平均約2300個程度の販売であり、減少傾向にあったのが、ハ号製品の販売後は、2062個(9月)、3133個(10月)、3285個(11月)と増加し、ロ号製品が同年12月に販売を開始されると急激に減少して、2720個(12月)、2361個(1月)、734個(2月)、389個(3月)となっている。

(ウ) 平成12年1月20日に原告製品の販売を中止した後に新たに販売を開始したネジ止め式カッタ(メタルボーラー350S・500S)は、同年3月の時点で月間600個程度の売上げを上げている。

イ これらの事実に基づいて検討する。

ハ号製品が発売される以前にネジ止め式カッタ(従来品)を購入していた顧客は、ハ号製品の発売後も従前の商品で事足りるはずであるから、従来品からハ号製品等の原告製品への乗り換えは徐々に進行したとも考えられる。しかし、ハ号製品は、従前のネジ止め式のアーバーに使用する機能を維持しつつ、ワンタッチ式のアーバーにも使用できる機能を付加した新商品であるから、生産コストを減少させるためにも、原告としては、ハ号製品を推奨して販売したはずであり、そうした場合には、ハ号製品は急速に従来品に置き換わっていったとも考えられ、ハ号製品発売後に販売個数が急激に増加していることや、ロ号製品が平成7年12月に登場すると、「メタルボーラー350・500」の売上げが急激に減少したことからすると、むしろ後者のように考える方が自然である。もっとも、平成12年4月の時点でも、ネジ止め式カッタは月間600個程度は売れていたが、原告が原告製品の販売を中止したことにより、従来ネジ止め式として使用するために原告製品を購入していた顧客が、再びネジ止め式のカッタを購入するようになったとも考えられるから、ハ号製品の販売量を検討するに当たって、一応の参考とし得るにとどまる。

これらの点に、従来品とハ号製品の数量区分を正確になし得ないのは、主として原告の商品管理上の都合によるものであることや、特許法105の3の趣旨を併せ考慮すると、「メタルボーラー350・500」の売上げの少なくとも7割は、ハ号製品の売上げであったと認めるのが相当である。

そうすると、ハ号製品の前記期間中の売上額は、別紙「ハ号製品の売上」の②記載のとおり、合計3175万4212万円となる。そして、同別紙によれば、これらの売上げはすべて補償金支払請求の対象期間に係るものであり、損害賠償請求の対象期間に係るものはないと認められる。

(4)  原告が被告に対して請求し得る本件発明の「実施に対し受けるべき金銭の額」(特許法65条、102条3項)について

乙15によれば、昭和63年から平成3年の間の「金属加工機械」に関する技術を外国から導入する際に合意された実施料率を調査した結果は、イニシャルペイメントがない場合において、最頻値が2%、中央値が3%、平均値が3.75%であったことが認められる。

ところで、本件発明の作用効果は、ロ号及びハ号製品が、被告製のワンタッチ式のアーバーと組み合わせられて初めて奏されるものであるが、原告製品はそれ以外のネジ止め式アーバーやツータッチ式アーバーとも組み合わせて使用することができ、これらのアーバーを使用する顧客に原告製品を販売する場合には、本件発明の実施品であることの商売上のメリット(逆に言えば被告にとってのデメリット)はあまり大きくないことになる。そして、そのような顧客は、正確な数は判然としないものの、甲63、69、72、73によれば、相当数に上るものと推認される。

しかし他方、ロ号及びハ号製品はワンタッチ式のアーバーに使用できることを予定して製造、販売されたものであり(乙9)、それが同製品の一つの商品価値を構成しており、そのために現実にも同製品が被告製のワンタッチ式アーバーに使用されることが、やはり主たる利用形態であると考えられるところ(乙9の英文説明にはその旨が明記されている。)、被告は、本件発明が公開されると原告に対して警告書を送付し(乙4)、その後特許異議事件が終局すると再び原告に対して警告書を送付し(甲4)、本件訴訟においても原告製品の製造、販売を中止することを非常に重視する意向を表明したところであるから、このような被告の姿勢からすると、仮に原告に対して本件発明の実施許諾をしたとしても、低率での許諾をしていたとは考え難いところである。

これらの事情を総合考慮すると、本件において、被告が原告に対して請求し得る、本件発明の「実施に対し受けるべき金銭の額」は、売上額に対して4%を乗じた額とするのが相当である。

したがって、本件で被告が原告に対して請求し得る額は、①補償金が427万0099円(〔74,998,257+31,754,212〕×0.04)、②損害金が174万8877円(43,721,937×0.04)で、合計601万8976円ある。なお、ロ号製品及びハ号製品の販売は、いずれも平成10年8月20日(乙事件の訴状送達の日)より前に終了しているから、遅延損害金の起算日は同月21日となる。

(5)  原告の主張について

ア 原告は、原告製品はワンタッチアーバー以外のアーバーにも使用されるから、それらのアーバー向けの販売は損害額から控除すべきであると主張する。

しかし、先に争点(1)アについて述べたとおり、本件発明の目的物は、構成要件Bの構成を具備するアーバーと組み合わせたときに所定の作用効果を奏する環状カッタであるから、その製造、販売等は本件特許権を直接侵害する行為であり、実際にも、ワンタッチアーバーにも使用できるという属性が原告製品の一つの商品価値を構成していることは、実際の使用態様いかんにかかわらず妥当することであるから、実際にどのようなアーバーを保有する者が購入したかにかかわらず、賠償されるべき損害の範囲に含めるのが相当である。原告が主張する趣旨は、先に検討したように、本件発明の「実施に対し受けるべき金銭の額」を決定するに当たって斟酌すべき一事情にすぎないというべきである。

イ また、原告は、補償金請求について、被告が警告書と共に提示した本件発明の公開特許公報は、「特許出願に係る発明の内容を記載した書面」に当たらないと主張するが、先に認定したような本件発明の出願経過からすれば、公開特許公報に記載された特許請求の範囲は、補正及び訂正によって減縮されて現在の特許請求の範囲となっており、かつ、ロ号及びハ号製品はそれらの補正及び訂正の前後を通じて本件発明の技術的範囲に属しているから、公開特許公報は、「特許出願に係る発明の内容を記載した書面」に当たるというべきである。

(6)  値引損に係る損害賠償について

被告が値引きを行うに至った取引に係る証拠として、被告は乙14(特別価格申請書)を提出するところ、乙14を当該書類の作成日付順に沿って整理すると別紙「値引損取引の整理」のとおりとなる。

これによれば、まず、被告は、本件特許権の登録前の原告の行為に係るもの(別紙「値引損取引の整理」の1ないし7番)も損害賠償の対象としているが、これが損害賠償請求の対象とならないことは明らかである(また、そのうち1ないし5番は、ハ号製品の販売開始の1年以上前の時期であるから、原告製品の販売に係る値引きとは認められない。)。

次に、前記のとおりイ号製品の製造、販売は本件特許権の侵害行為ではないから、イ号製品の販売開始(甲71によれば、最も早い受注日は平成8年11月14日である。)より後の値引きについては、侵害行為(ロ号及びハ号製品の販売)との間に因果関係を認めることができない。もっとも、それらについても、客先からの値引きの経緯が、ロ号又はハ号製品に基づいているのであれば別であるが、乙14からはその事実は認定できないし、甲71によっても、イ号製品が販売を開始されるやロ号製品はイ号製品に急速に取って代わられたことが窺われる(甲71により作成した別紙「イ号製品発売前後のイ号及びロ号製品の売上げ」参照)から、やはり、イ号製品販売開始後の値引きに、侵害行為(ロ号及びハ号製品の販売)に基づいているものがあるとは認められない。そうすると、別紙「値引損取引の整理」の8番以降の値引き分も損害賠償の対象とならない。

したがって、被告主張に係る値引損の損害賠償請求は、すべて理由がない。

第5結語

以上によれば、原告の甲事件請求及び被告の乙事件請求は、それぞれ主文掲記の限度で理由がある。そして、仮執行宣言については、主文2項及び5項についてのみ認めるのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 安永武央)

別紙イ号製品目録

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別紙ロ号製品目録

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別紙ハ号製品目録

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別紙アーバー目録

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別紙全文訂正明細書

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別紙出願経過一覧

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別紙(A)

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別紙(B)

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別紙(C)

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別紙ロ号製品の売上

ロ号物件の販売額(H7.12~H8.9.4)

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別紙ハ号製品の売上

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別紙値引損取引の整理

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別紙イ号製品発売前後のイ号及びロ号製品の売上個数

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別紙JB特別価格申請状況

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