大阪地方裁判所 平成11年(ワ)179号 判決 2000年11月30日
原告
甲
被告
国
右代表者法務大臣
保岡興治
右指定代理人
近藤幸康
同
上谷美佐夫
同
時光敏夫
同
水野俊生
同
宮田恭裕
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告は、原告に対し、八一四九万七〇〇〇円及びこれに対する平成五年八月九日から支払済みまで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、平成四年分の所得税について更正処分を受けた原告が、右更正処分によれば、その通知書に記載された源泉徴収税額が過納金又は還付金として原告に支払われるべきであると主張して、その支払を求めるものである。
一 前提となる事実(争いのない事実及び容易に認定できる事実)
1 原告は、平成五年二月二八日、葛城税務署長に対し、平成四年分の所得税の確定申告書を提出した。
右申告書の内容は、原告が源泉徴収税額八一四五万八七〇〇円の還付を受けるというものであった。
2 葛城税務署長は、平成五年八月九日付けで、原告に対し、右所得税について更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び加算税の賦課決定処分をした。
3 原告の所得税を所轄する税務署長の権限は、葛城税務署長から奈良税務署長に承継され、更に芦屋税務署長に承継された。
二 争点及び当事者の主張
1 原告
本件更正処分により原告の所得が減少させられ、その結果として、源泉徴収税額八一四九万七〇〇〇円が過納金となり、被告に返還義務が生じた。
本件更正処分は、当初申告による八一四九万七〇〇〇円の還付請求権を遡及的に消滅させるものではないから、原告は還付請求権を有する。
2 被告
本件更正処分は、原告の不動産所得以外の国内源泉所得は総合課税の対象とならないことから、申告の対象となる総所得金額を二四三万六四四二円から六二六万九七九八円の損失とするとともに、還付金額を八一四五万八七〇〇円から零円としたものであり、本件更正処分によって被告国が源泉徴収税の返還義務を負うことを内容とするものではない。
本件更正処分によって八一四九万七〇〇〇円の源泉徴収税額が過納金となるものではないし、仮に源泉徴収税額が過納であった場合にその返還請求は支払者に対してすべきであり、国に対して返還を求めることはできない。
第三当裁判所の判断
甲一、二及び弁論の全趣旨によれば、原告の平成四年分所得税に係る確定申告は、八一四九万七〇〇〇円の源泉徴収をされたことを前提に、所得税法一六四条一項を適用して総合課税によるものとして計算した所得税額三万八三〇〇円との差額である八一四五万八七〇〇円の還付を求める内容であったが、本件更正処分は、同条二項により分離課税によることとし、還付金額を右金額から零円に減少させることを内容とするものであると認められる。したがって、本件更正処分は、本件源泉徴収額が原告に還付されるという内容のものではない。
また、本件更正処分により、本件源泉徴収額が過納金になるものでないことも明白である。
第四結論
以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山下郁夫 裁判官 青木亮 裁判官 山田真依子)