大阪地方裁判所 平成11年(ワ)6471号 判決 2000年9月06日
原告
須崎博史
被告
髙橋哲也
ほか一名
主文
一 被告らは、原告に対し、連帯して、金三五万円を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その一を被告らの、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、連帯して、金五四九万円を支払え。
第二事案の概要
一 本件は、原告が被告らに対し、次の交通事故が発生したとして、被害車両に生じた損害の賠償を求めた事案であり、争点は、1本件事故の発生の有無及び責任、2損害額(修理費三九九万円、評価損一五〇万円)である。
(本件事故)
(一) 日時 平成一〇年二月一二日午前一〇時一五分ころ
(二) 場所 大阪府吹田市古江台一丁目一番中央環状線
(三) 加害車両 被告飯野株式会社所有、被告髙橋哲也(以下「被告髙橋」という。)運転の普通乗用自動車(大阪一一ま二五一六)
(四) 被害車両 原告運転の普通乗用自動車(大阪三四た四〇)(フェラーリ)
(五) 態様 加害車両が本件事故現場道路に落下していた棒を、引き込んで空中に飛来させ、被害車両のボンネットに衝突させたもの
二 争点
1 本件事故の発生の有無及び責任
(一) 原告
(1) 鉄製鋼棒が道路に落ちている状況は、一見して認識でき、加害車両及び被害車両以外の前方車両すべてがこれを避けて走行していた。
(2) 本件事故直後、原告が加害車両に接近し、停止を求めたところ、被告髙橋は、走行中に電気シェーバーを使ってひげ剃りをしていた。
したがって、被告髙橋は、右行為により前方不注視であったもので、過失のあることは明らかである。
(3) 被告髙橋は、原告の停止要請に対し、これを無視して走行を図ろうとしたが、原告はこれを制止し、大阪府箕面市所在の車両販売店「アートスポーツ」にてようやく加害車両を停止させた。
被告髙橋の右行為は、同被告に責任を自覚したものであり、事故後の被告髙橋の態様も極めて不誠実である。
(4) 加害車両を停止させた後、原告は所轄警察署に連絡し、警察官及びアートスポーツの社員立会のうえ、事故の状況を被告髙橋に確認させたところ、同被告は、損害について責任あることを認め、損害については保険をもってすべて賠償する旨確約した。
(5) よって、被告髙橋は民法七〇九条に基づき、被告飯野株式会社は被告髙橋の使用者として(争いがない。)民法七一五条に基づき、それぞれ損害賠償責任がある。
2 損害額
(一) 修理費 三九九万円
被害車両は、本件事故によりフロントフード等が損傷したため、フロントボンネットの取替等を行い、三九九万円の修理費が発生した。
(二) 評価損 一五〇万円
被害車両は、日本で二台しか存在しない希少な車両であり、本件事故当時の時価は二五〇〇万円であるところ、本件事故により少なくとも一五〇万円の評価損が生じた。
第三判断
一 争点1(本件事故の発生の有無及び責任)
証拠(甲一、三、四、六、原告本人)によれば、本件事故が発生したこと、被害車両の損傷はフロントボンネットの前側の中央寄り左側付近の数センチメートルの塗装剥げ等に限定されていることが認められる。
なお、本件事故の発生については、被害車両の損傷の存在に加え、本件事故後原告は被告髙橋を追跡し、原告が被害車両の保管を依頼していたアートコーポレーションに連れてきて、被告髙橋との間で本件事故の話をし、被害車両の損傷については保険で処理することを合意していることからして、原告尋問の結果は信用することができ、これを認めることができる。
被告髙橋としては、前方を注視していれば、道路上の落下物を認めることができたというべきであり、そのうえを走行すれば、落下物が飛んで走行車両を損傷させることがあることは予見しうるというべきであるから、本件事故について、被告髙橋は民法七〇九条に基づく損害賠償責任がある。
二 争点2(損害額)
1 修理費 五万円
被害車両の損傷の部位、程度は前記認定のとおりフロントボンネットの限局された塗装の剥げ等であるから、フロントボンネットを取り替える必要性は認められず、証拠(乙一)によれば、その修理費は九六万〇七五〇円であると認められ、証拠(乙四、原告本人)によれば、原告が締結していた車両保険契約(東京海上火災保険株式会社)により右修理費のうち免責額五万円を除く九一万〇七五〇円が支払われ、原告は被害車両を処分している(新しい車両を購入する際下取りに出した。)ことが認められることからしても、被害車両の修理費は右限度で認められるにすぎず、また、右保険金の支払により、原告の修理費についての損害は、免責額五万円に止まる。
なお、甲四は被害車両のフロントボンネットを取り替える(ボンネット代金二六九万円)ことを前提として、修理費三九九万円とする見積書であるが、被害車両が希少価値のある車両であるからといって、損傷の部位、程度に比較して過大な修理費を加害者に負担させることはできないのであって、右書証は修理費の認定の資料としては採用しない。
2 評価損 三〇万円
被害車両の修理費は九六万〇七五〇円であり、被害車両の希少性等を考慮しても、評価損はその三割程度に当たる三〇万円を超えるものではない。
三 よって、原告の請求は三五万円の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 吉波佳希)