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大阪地方裁判所 平成11年(ワ)6495号 判決 2000年2月29日

原告

福山義浩

ほか一名

被告

藤野和之

ほか四名

主文

一  被告藤野和之及び同藤野泰男は、原告福山義浩に対し、連帯して金一二九万八五三〇円及びこれに対する平成一〇年八月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告大西忍に対する本件訴えをいずれも却下する。

三  原告福山義浩の被告大西教文及び同安田火災海上保険株式会社に対する請求、同藤野和之及び同藤野泰男に対するその余の請求、原告大屋吉久の被告安田火災海上保険株式会社に対する請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを六分し、その五を原告福山義浩の負担とし、その余を被告藤野和之及び同藤野泰男の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告藤野和之、同藤野泰男、同大西忍、同大西教文は、各自原告福山義浩に対し、金七五五万〇四六三円及びこれに対する平成一〇年八月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告安田火災海上保険株式会社は、原告福山義浩に対し、第一項の被告大西忍または同大西教文と原告福山義浩との間の判決が確定することを条件として、金七五五万〇四六三円及びこれに対する平成一〇年八月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告大西忍は、原告大屋吉久に対し、金二六万一三九七円及びこれに対する平成一〇年八月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告安田火災海上保険株式会社は、原告大屋吉久に対し、第三項の被告大西忍と原告大屋吉久との間の判決が確定することを条件として、金二六万一三九七円及びこれに対する平成一〇年八月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告藤野和之運転・同藤野泰男所有の普通乗用自動車が原告福山義浩(以下「原告福山」という。)運転の普通乗用自動車に追突し、さらに後日、被告大西忍運転の普通乗用自動車(以下「大西車両」という。)が小池しのぶ運転の普通乗用自動車に追突し、その衝撃で同車両が原告福山運転・原告大屋吉久(以下「原告大屋」という。)所有の普通乗用自動車に追突する事故が起きたと主張して、原告福山が、被告藤野和之及び同大西忍に対し、自賠法三条、民法七〇九条、同法七一九条に基づき、損害賠償を請求し、同藤野泰男及び同大西教文に対し、自賠法三条に基づき、損害賠償を請求し、同安田火災海上保険株式会社(以下「被告保険会社」)に対し、大西車両を被保険車両とする自動車保険契約に基づき、損害額の直接請求をし、原告大屋が、被告保険会社に対し、被告大西忍に代位して、同人の保険金請求権(原告大屋の物損に関するもの)を代位行使した事案である。

一  争いのない事実等

1  事故の発生

次の(一)及び(二)の各交通事故が発生した。以下、(一)の交通事故を「第一事故」といい、(二)の交通事故を「第二事故」という。)

(一) 日時 平成一〇年八月一四日午後一一時一三分頃

場所 大阪府貝塚市堤二七九番地

事故車両一 普通乗用自動車(和泉五三り三〇五)(以下「藤野車両」という。)

右運転者 被告藤野和之

右所有者 被告藤野泰男

事故車両二 普通乗用自動車(和泉五二み一九〇〇)(以下「福山車両」という。)

右運転者 原告福山

態様 藤野車両が福山車両に追突した。

(二) 日時 平成一〇年八月二〇日午後六時五分頃

場所 大阪府富田林市中野町西一丁目一九七番地の一

事故車両一 普通乗用自動車(和泉七七の二六八九)(前記「大西車両」)

右運転者 後記のとおり、争いがある。

右所有名義人 被告大西教文

事故車両二 普通乗用自動車(和泉五四せ五八〇二)(以下「小池車両」という。)

右運転者 小池しのぶ

事故車両三 普通乗用自動車(和泉五二と一三三六)(以下「大屋車両」という。)

右運転者 原告福山

右所有者 原告大屋

態様 大西車両が小池車両に追突し、その衝撃で同車両が大屋車両に追突した。

2  被告藤野和之及び同藤野泰男の責任原因

(一) 被告藤野和之は、自己のために藤野車両を運行の用に供して、原告車両に追突させたのであるから、自賠法三条、民法七〇九条に基づく責任がある。

(二) 被告藤野泰男は、藤野車両の所有者であり、本件事故時にこれを自己のための運行の用に供していたといえるので、自賠法三条に基づく責任がある。

3  原告福山の損害の填補

原告福山は、藤野車両を被保険車両とする自動車保険の保険会社から合計二七五万六四四七円の支払を受けた。

4  大西車両に関する自動車保険契約

第二事故当時、被告大西教文名義で同保険会社との間で、大西車両を被保険者車両とする自転車保険契約(PAP)(以下「本件保険契約」という。)が締結されていた。右保険契約においては、人損に関し、被保険者と損害賠償請求権との間で、被告保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の損害賠償責任の額について判決が確定したときは、保険者である被告保険会社が損害賠償請求権者に対し、直接損害賠償義務を負担することを内容とする約定がある。本件における被保険者は被告大西教文及び同大西忍である。

二  争点(一部争いのない事実を含む)

1  大西車両の運転者

(原告らの主張)

第二事故時における大西車両の運転者は、被告大西忍である。

(被告大西忍の主張)

第二事故時における大西車両の運転者は、原田二郎である。

(被告保険会社の主張)

第二事故時における大西車両の運転者が被告大西忍であることは認める。

2  被告大西忍の責任原因

(原告福山の主張)

被告大西忍は、大西車両を運転中、大屋車両に追突したのであるから、自賠法三条、民法七〇九条に基づく責任がある。

(原告大屋の主張)

被告大西忍は、大西車両を運転中、大屋車両に追突したのであるから、民法七〇九条に基づく責任がある。

(被告大西忍の主張)

争う。

(被告保険会社の主張)

争う。

3  被告大西教文の責任原因

(原告福山の主張)

被告大西教文は、大西車両の所有者であり、本件事故時にこれを自己のための運行の用に供していたといえるので、自賠法三条に基づく責任がある。

(被告保険会社の主張)

不知ないし争う。

4  共同不法行為責任

(原告福山の主張)

第一事故と第二事故の発生時期は六日しか離れておらず、かつ態様は追突で同じであり、両事故ともにそれ独自で原告福山の損害発生の原因となりうるものである。したがって、両事故は、民法七一九条一項後段の共同不法行為の関係にある。

(被告藤野和之及び同藤野泰男の主張)

認める。

(被告大西忍の主張)

争う。

(被告保険会社の主張)

争う。

5  原告福山の損害

(原告福山の主張)

原告福山は、第一事故・第二事故によって、次の各損害を被った。

(一) 治療費 七三万五三九七円

(二) 通院交通費 二五万五〇〇〇円

(三) 休業損害 二六三万三三三三円

基礎収入額 月額五〇万円

休業日数 一五八日間

(計算式)500,000×158/30=2,633,333(一円未満切捨て)

(四) 通院慰謝料 一〇〇万円

(五) ゴルフトーナメント出場が不可能となったことによる損害

(1) 登録料(既に支払っていたもの) 三万二一三〇円

(2) 診断書料 一〇五〇円

(3) 出場不能による慰謝料 五〇〇万円

(六) 弁護士費用 六五万円

よって、原告福山の損害額(元本)は、右損害の合計額一〇三〇万六九一〇円から既払額二七五万六四四七円を控除した七五五万〇四六三円である。

(被告藤野和之及び同藤野泰男の主張)

治療費は認めるが、その余は不知ないし争う。原告は、月額五〇万円の所得があったと主張しているが、勤務先とされるゴルフショップの規模等に照らし、信用性がない。

(被告大西忍の主張)

争う。

(被告保険会社の主張)

不知。

6  原告大屋の損害

(原告大屋の主張)

原告大屋は、第二事故によって、次の各損害を被った。

(一) 修理費 一八万六一九七円

(二) 代車費用 二万五二〇〇円

(三) 弁護士費用 五万円

よって、原告大屋の損害額(元本)は、右損害の合計額二六万六三九七円である。

(被告大西忍の主張)

争う。

(被告保険会社の主張)

不知。

7  被告大西忍の無資力

(原告大屋の主張)

被告大西忍は、平成一〇年八月二一日大坂地方裁判所堺支部において破産宣告を受け、平成一一年一月頃に免責決定があった。同被告は、身体障害者であり、収入の存在はうかがわれない。

(被告保険会社の主張)

不知。

8  通知義務違反による免責

(被告保険会社の主張)

本件保険契約の約款には、保険契約者または被保険者が、正当な理由がなくて、事故発生の通知義務、事故内容の通知義務、必要な書類の提出義務を怠った場合は、保険会社は保険金の支払義務を負わない旨の規定がある(第六章一五条一項)。

本件において、被告大西教文及び同大西忍は、これらの義務を怠ったのであるから、保険者たる被告保険会社は免責されており、右被保険者らが負担する法律上の損害賠償責任につき、これをてん補すべき義務は存しない。したがって、原告福山の被告保険会社に対する対人事故による損害賠償の直接請求権も存在しないし、原告大屋が被告大西忍に代位して行使する同被告の被告保険会社に対する保険金請求権も存在しない。

(原告らの主張)

自動車保険契約における保険者の免責事由は、限定的に解釈すべきである。契約者ないし被保険者が保険金を詐取する目的であるとか、そのような目的がない場合には保険者に運転者等からの通知が保険者になかったことによって保険者に損害が生じたことを主張・立証して初めて免責事由に該当するものである。本件においては、被告大西忍と原告福山とは何らの関係もないのであるから、同被告が被告保険会社から保険金を詐取しようという目的がないのは明らかである。また、第二事故後、被告保険会社の担当者が原告福山に平成一〇年八月終わりには接触しているから、早期に事故を覚知し、運転者等からの情報がなくとも調査可能であり、現実にこれをある程度まで行っていた。したがって、被告大西忍が被告保険会社に事故の状況を正確に申告してもしなくても被告保険会社が支払うべき金額に変わりがあるとは思えず、結局、被告保険会社には損害が生じていない。

9  不実の通知による免責

(被告保険会社の主張)

本件保険契約の約款には、保険契約者または被保険者が、事故内容の通知等の書類に故意に不実の記載をした場合には、保険会社は保険金の支払義務を負わない旨の規定がある(第六章一五条四項)。

本件におていは、被告大西忍及び同大西教文は、被告保険会社に対し、真実は本件事故を発生させた運転者は被告大西忍であるにもかかわらず、保険金請求書の裏面に添付すべき運転者の運転免許証の写しとして奥村輝夫の運転免許証の写しを送付してきたのであり、故意に書類に不実の記載をしたものにあたるのであって、保険契約上の信義誠実の原則に反することは明らかである。しかも、被告大西忍及び同大西教文は、運転者が問題となってからも被告保険会社訴訟代理人事務所に奥村輝夫を差し向けるなどしているのであり、その背信性は極めて大きい。また、被告大西忍は、本件訴訟においても、運転者は、今度は原田二郎であるなどと不実の主張を継続している。以上のとおり、被告大西忍及び同大西教文は、故意に虚偽・不実の記載をした事故内容の通知や書類を提出したのであるから、保険者たる被告保険会社は免責されており、右被保険者らが負担する法律上の損害賠償責任につき、これをてん補すべき義務は存しない。したがって、原告福山の被告保険会社に対する対人事故による損害賠償の直接請求権も存在しないし、原告大屋が被告大西忍に代位して行使する同被告の被告保険会社に対する保険金請求権も存在しない。

(原告らの主張)

不実の通知による免責に関しても、保険者の免責事由は、限定的に解釈すべきである。

第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)

一  被告大西忍に対する訴えについて

原告らは、被告大西忍が平成一〇年八月二一日大阪地方裁判所堺支部において破産宣告を受け、平成一一年一月頃に免責決定があった旨主張しているところ、原告らの同被告に対する損害賠償請求権が非免責債権に該当する旨の主張・立証はないから、原告らの同被告に対する本件訴えはいずれも訴えの利益を欠くものと認められる。

二  争点1について(大西車両の運転者)

証拠(甲三九、四〇、四三、原告福山本人)及び弁論の全趣旨によれば、第二事故の際における大西車両の運転者は被告大西忍であると認められる。

三  争点2について(被告大西忍の責任原因)

前記争いのない事実及び右認定事実によれば、被告大西忍は、民法七〇九条に基づき、第二事故によって原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負ったものと認められる(但し、前記のとおり、同被告は免責である。)。

四  争点3について(被告大西教文の責任原因)

証拠(甲三六)によれば、大西車両の所有名義人は被告大西教文であると認められる。しかしながら、被告大西忍は同大西教文名義で大西車両を購入したと主張するところ、同大西忍作成の答弁書・準備書面、同大西教文名義の自動車保険金請求書(丁二1)の筆跡を対照すると極めて類似していること、同大西忍は借金の返済に追われる状況であったこと(弁論の全趣旨)に照らすと、被告大西忍の右主張には合理性があり、被告大西教文をもって大西車両の運行供用者であると認めるには足りないというべきである。

したがって、原告福山の被告大西教文に対する請求及び原告福山と被告大西教文間の判決確定を条件とする同保険会社に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。

五  争点4について(共同不法行為責任)

第一事故・第二事故が民法七一九条一項後段の共同不法行為の関係にあることにつき、原告福山と被告藤野和之及び同藤野泰男との間では争いがなく、同大西忍及び同保険会社からは因果関係が存在しないことについての主張・立証がない。

したがって、被告藤野和之、同藤野泰男及び同大西忍は、民法七一九条一項後段に基づき、第二事故以降原告福山に生じた損害について連帯して賠償すべき責任を負う(但し、被告大西忍は免責である。)。

六  争点5について(原告福山の損害)

1  証拠(甲三ないし一五、原告福山本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

原告福山(昭和三七年二月二三日生、第一事故・第二事故当時三六歳)は、第一事故によって、福山車両がほぼ一回転をするような衝撃を受け、同事故後間もない平成一〇年八月一五日午前〇時三五分頃、頭痛、頸部痛、背部痛を訴え、青山病院で診察を受け、頸椎捻挫、背腰部挫傷の傷病名で通院による治療が開始された。頸椎X線写真及び胸部平面X線写真上、異常は認められず、局所への湿布用外用剤、内服薬の投与、頸背部痛に対する理学療法(低周波、超音波療法)を施行されていた。

治療継続中の平成一〇年八月二〇日、いわゆる玉突きによる第二事故に遭い、当日、頸部痛を訴え、城山病院で診察を受け、外傷性頸部症候群の傷病名で、カラーキーパー装着の上、湿布、内服薬による治療を受け、同日とその翌日、同病院に通院した。

平成一〇年八月二一日からは、第二事故による傷害についても青山病院で診療を受けることにし、頸部・右肩関節部痛、左手関節部痛を訴え、第二事故による傷病名として頸椎捻挫、右肩左手関節挫傷が掲げられ、局所(頸部・右肩関節)への理学療法(低周波、超音波療法)が施行され、内服薬及び湿布用外用剤の投与を受けながら、平成一一年一月一九日まで通院した(青山病院への実通院日数合計一二五日)。受傷部位のX線写真上、異常は認められなかった。

以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2  損害額(損害の填補分控除前)(以下、もっぱら第一事故の責に帰すべき部分は、「第一事故によるもの」として明記する。)

(一) 治療費 合計七三万五三九七円

原告福山は、治療費として、次の金額を要したと認められる(甲七ないし一三、弁論の全趣旨)。

第一事故によるもの 五万三八五四円

第二事故以後生じたもの 六八万一五四三円

(二) 通院交通費 合計二五万五〇〇〇円

原告福山は、通院交通費として、次の金額を要したと認められる(前認定事実、甲二六、弁論の全趣旨)。

第一事故によるもの 一万〇二〇〇円

第二事故以後生じたもの 二四万四八〇〇円

(三) 休業損害 合計二〇九万三五三〇円

まず、原告福山の休業損害算定上の基礎収入について判断する。原告福山は、第一事故・第二事故当時、ゴルフのインストラクタープロの資格を有し、プロショップK&Kに勤務して一か月五〇万円の収入を得ていたと主張する。しかしながら、基礎収入の額については原告側に立証責任があるところ、原告福山は、プロショップK&Kに勤務を開始する前年である平成九年の確定申告では、収入が二三五万円で経費が三三〇万円であると申告しているし(乙一)、その提出にかかる休業損害証明書、給料支払明細書、賃金台帳にはプロショップK&Kがこれに相応する金額を支払ったことを裏付ける資料がないことからすると、原告福山主張の金額を基礎収入として肯定することはできず、結局のところ、平成一〇年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計男子労働者(三五歳ないし三九歳)の平均賃金である年額六〇四万五四〇〇円の八割に相当する四八三万六三二〇円の限度で肯定するのが相当である。

前認定事実による原告福山の傷病の程度・治療経過及び同原告の職業にかんがみると、第一事故の翌日である平成一〇年八月一五日から平成一一年一月一九日までの一五八日間は完全に休業を要する状態であったと認められる。このうち、当初の六日間分は第一事故によるものであり、その後は第一事故・第二事故によるものと認められる。

(計算式) (いずれも一円未満切捨て)

第一事故によるもの 4,836,320×6/365=79,501

第二事故以後生じたもの 4,836,320×152/365=2,014,029

(四) 通院慰謝料 六〇万円

第一事故・第二事故によって原告の被った傷害の程度、治療状況等の事情を考慮すると、右慰謝料は六〇万円が相当である。

(五) ゴルフトーナメント出場が不可能となったことによる損害

(1) 登録料(既に支払っていたもの) 認められない。

原告福山主張の登録料は、第一事故、第二事故前に既に支払っていたものであって、これらの事故によって積極的に生じた損害でも消極的に被った損害でもなく、相当因果関係を有するものとは認められない。

(2) 診断書料 一〇五〇円

原告福山は、第一事故・第二事故によって診断書料として標記金額を要したと認められる(甲二七)。

(3) 出場不能による慰謝料 二五万円

原告福山は、ゴルフのトーナメントプロ志望であるところ、第一事故・第二事故に遭わなければ、ツアー予選会を勝ち進んでトーナメントプロになれたかどうかは定かではないものの、少なくとも本件事故のためにツアー予選会へ出場する機会を逸したことにかんがみると(甲二八、三七、四三、原告福山本人)、この点に関する慰謝料は、二五万円とするのが相当である。

(六) 合計

以上を合計すると、第一事故によるものは一四万三五五五円、第二事故以後生じたものは三七九万一四二二円である。

3  損害額(損害の填補分控除後)

原告福山は、被告藤野和之及び同藤野泰男側から二七五万六四四七円の支払を受けているから、これを第一事故による損害、第二事故以後生じた損害の順で充当していくと、損害の填補分控除後の残額は、全て第二事故以後生じた損害にかかるものであり、その額は一一七万八五三〇円となる。

4  弁護士費用 一二万円

第一事故・第二事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告福山の弁護士費用は一二万円をもって相当と認める。

5  損害額(弁護士費用加算後)

右3の損害額に4の弁護士費用を加算すると一二九万八五三〇円となる。

七  争点6について(原告大屋の損害)

1  損害額(弁護士費用加算前)

(一) 修理費 一八万六一九七円

原告大屋は、第二事故によって修理費として標記金額を要したものと認められる(甲三〇ないし三五)。

(二) 代車費用 二万五二〇〇円

原告大屋は、第二事故によって代車費用として標記金額を要したものと認められる(甲三一)。

(三) 合計

以上を合計すると、二一万一三九七円である。

2  弁護士費用 三万円

第一事故・第二事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告大屋の弁護士費用は三万円をもって相当と認める。

3  損害額(弁護士費用加算後)

右1の損害額に2の弁護士費用を加算すると二四万一三九七円となる。

八  争点9について(不実の通知による免責)

1  前認定事実、証拠(丁二1、2)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

被告大西忍は、同大西教文名義で、大西車両を購入した上、同保険会社との間で本件保険契約を締結し、その保険期間中に第二事故を起こした。

被告大西忍は、同大西教文名義を使用し、同保険会社に対し、自動車保険金請求書を送付したが、同請求書の裏面に運転者の運転免許証の写しを添付すべき欄があるところ(添付できない場合には、免許証から転記することとされている。)、運転免許証を添付せず、またこれに代わる転記もしていなかったため、同保険会社からこれを指摘されたのに応じ、奥村輝美名義の運転免許証の写しを再度送付した。

被告保険会社は、奥村輝夫が運転したということには疑問点もあったため、被告大西忍及び同大西教文に対し、奥村輝夫とともに事情を聴きたいと申し入れたところ、奥村輝夫が同保険会社訴訟代理人事務所を訪れたものの、実際の事故状況について明確に答えることができなかった。

また、被告大西忍は、本件訴訟においては大西車両の運転者は原田二郎であったと主張している。

以上のとおり認められる。

2  本件保険契約の約款には、保険契約者または被保険者が、事故内容の通知等の書類に故意に不実の記載をした場合には、保険会社は保険金の支払義務を負わない旨の規定があるが(第六章一五条四項)、右規定が単に債務(通知義務)不履行の効果を定めたものではなく、当事者間の信頼関係に違背した場合の効果を定めた趣旨のものであることにかんがみると、保険契約者または被保険者が、事故内容の通知等の書類に故意に不実の記載をした場合には、保険会社は、原則として、かかる行為をする者に対し、保険金を支払う義務を負わないと解するべきである(事故の当事者が過失割合を有利な方向に導くべく、速度や一時停止の有無等の事実につき、虚偽の報告をすることはよくみられるところであり、このような比較的類型的に虚偽の報告が混じることが予想される特段の事情がある場合は、この例外である。)。

右認定事実によれば、保険契約者兼被保険者である被告大西忍は、実際は大西車両を運転していたのは自分自身であることを知りながら、大西車両を運転していたのが誰かという事故内容の根本的な事実で、かつ誤解のしようのない事実につき、単に通知をしないにとどまらず、積極的に他人を運転者に仕立てあげて運転者の記載に代わる運転免許証の写しを提出したものであるから、保険者たる被告保険会社は、本件事故に関して右被保険者である被告大西忍が原告らに対して負担する法律上の損害賠償責任につき、これをてん補すべき義務を負わないと解するのが相当である。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告福山の被告保険会社に対する損害賠償の直接請求権も存在しないし、原告大屋が被告大西忍に代位して行使する同被告の被告保険会社に対する保険金請求権も存在しないといわざるをえない。

九  結論

以上の次第で、主文のとおり判決する。

(裁判官 山口浩司)

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