大阪地方裁判所 平成12年(ワ)5352-B号 判決 2000年11月07日
原告
アンドウケミカル株式会社
右代表者代表取締役
安藤直三
右訴訟代理人弁護士
北方貞男
被告
嵐城商会こと
嵐城悟郎
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告は、別紙イ号物件目録記載の物件を譲渡し、譲渡のために展示してはならない。
二 被告は、その事務所(倉庫を含む。)に存在する前項記載の物件を廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金一二〇〇万円及びこれに対する平成一二年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明(特許請求の範囲請求項1に係るもの。)を「本件発明」という。)を有している。
(一) 特許番号 二八九一九八七号
(二) 発明の名称 育苗ポット用樹脂成形体及びその製造装置
(三) 出願日 平成一〇年三月一三日
(四) 登録日 平成一一年二月二六日
(五) 特許請求の範囲請求項1
上端がほぼ正方形に開口したコップ形状を有し、かつ、所定の樹脂材料を主成分とした複数個の育苗ポットを縦横方向に整列させて平面配置したもので、相互に隣接する前記育苗ポットの上端開口部のそれぞれの隣接対向辺に、隣接する育苗ポット同士を徴少な幅寸法でのみ連結する連接部を一体的に形成し、各育苗ポットに土壌を収容した状態で所望の育苗ポットを、隣接する他の育苗ポットから引き千切ることにより前記連接部を破断可能としたことを特徴とする育苗ポット用樹脂成形体。
2 被告は、平成一一年二月以降、株式会社東海化成が製造した別紙イ号物件目録記載の育苗ポット(以下「イ号物件」という。)を、譲渡し、譲渡のために展示している。
3 イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属するから、前項記載の被告の行為は、本件特許権を侵害する。
4 被告は、平成一一年二月から同一二年三月までの間に、イ号物件を少なくとも三〇〇〇万個売り渡し、一二〇〇万円の利益を上げ、同額の損害を原告に与えた。
5 よって、原告は、被告に対し、本件特許権侵害を理由として、イ号物件の譲渡、譲渡のための展示の差止め、及び損害金一二〇〇万円並びにこれに対する不法行為の日の後である平成一二年四月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1記載の事実は不知。
2 請求原因2、4記載の事実は否認する。被告は、平成一〇年九月ころまで、原告製造に係る育苗ポットを購入し、第三者に譲渡していたが、その後、同育苗ポットの購入をやめ、明和株式会社の「PT用連結ポット三寸」及び株式会社みかど育種農場が販売する「ミキポット連結九〇」を購入の上、第三者に販売するようになった。しかしながら、被告が、株式会社東海化成が製造したイ号物件を購入したことはない。
第三 当裁判所の判断
一 証拠(丙三ないし七の各一、二)によれば、被告は、平成一一年二月一五日以降、明和株式会社の「PT用連結ポット三寸」及び株式会社みかど育種農場が販売する「ミキポット連結九〇」を購入の上、佐粧園芸こと佐粧隆夫に対し、それら育苗ポットを譲渡していることが認められ、本件全証拠によるも、被告が、平成一一年二月以降、株式会社東海化成が製造したイ号物件を、第三者に譲渡、又は譲渡のために展示しているとは認められない。
したがって、請求原因2の事実は認められない。
二 よって、その余について検討するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 安永武央)