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大阪地方裁判所 平成12年(行ク)37号 決定 2000年10月13日

申立人(原告)

有限会社A

右代表取締役

右訴訟代理人弁護士

関戸一考

田中宏幸

相手方(被告)

東成税務署長 佐藤文行

右指定代理人

近藤幸康

高谷昌樹

松尾安起

新免久弘

主文

基本事件(平成一二年(行ウ)第七二号・第七三号法人税更正処分取消等請求事件)の被告東成税務署長佐藤文行を被告東成税務署長事務承継者下京税務署長に変更することを許可する。

理由

一  申立ての趣旨

主文同旨

二  申立ての理由

申立人の理由の要旨は、申立人は、相手方東成税務署長(以下「東成税務署長」という。)に被告適格が存在すると考えているが、もし東成税務署長に被告適格が認められず、被告とすべき者を誤っているとしても、申立人が被告を東成税務署長としたのは、最高裁判所事務総局編の租税関係行政事件執務資料や、国税不服審判書の教示に従ったためであるから、被告とすべき者を誤ったことに故意又は重大な過失はないというところにある。

三  当裁判所の判断

1  被告適格を有する者について

(一)  国税通則法上、特定の納税者について課税処分等を行う権限は、例外的な場合を除き、当該納税者の納税地を所轄する税務署長がこれを有し、課税処分等の過程において納税地の異動があったときは、新しい納税地を所轄する税務署長が、旧納税地を所轄する税務署長からその権限を承継すると解される(国税通則法二一条、二三条、三〇条、三三条、八五条、八六条等)。

そして、内国法人の納税地は、その本店又は主たる事務所の所在地である(法人税法一六条)。

(二)  行政事件訴訟法一一条一項ただし書は、処分又は裁決があった後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、その行政庁を被告として提起しなければならない旨規定するところ、右にいう処分権限の承継について、これを一般的包括的な場合に限定する理由はなく、個別的具体的な権限の変動があった場合も含まれるものと解すべきであり、したがって、処分後の納税地の異動のように個別的な権限の移行があった場合も、右規定に基づき、異動後の納税地を管轄する税務署長を被告として提起すべきである。

(三)  本件記録によれば、申立人は、基本事件において取消の訴えの対象とする東成税務署長による各処分がなされた後、基本事件を提起する前の平成一〇年一〇月二〇日に、本店所在地を京都市下京区小橋西入る真町に移したことが明らかであるから(平成一〇年一〇月二六日登記)、前記説示に照らせば、本件訴えは被告を誤ったものである。

2  故意又は重過失(行政事件訴訟法一五条一項)の有無について

証拠(甲一の2、二)によれば、大阪国税不服審判所長首席国税審判官の平成一二年五月一六日付「裁決書謄本の送達について」と題する書面において、「(ご注意)原処分の取消訴訟を提起される場合、被告は処分をした税務署長となります。」との記載があること、行政事件訴訟法一一条一項ただし書が適用される権限の承継とは、一般的包括的な場合に限定されるという解釈の下、納税地の異動があっても、原処分取消しの訴えの被告は異動前の納税地を管轄する税務署長であるとする見解も確かに存在することが認められ、かつ、原告は平成一二年八月四日、国税不服審判所に被告を誰とすべきか確認を入れたところ、東成税務署長であるとの回答を得たと主張し、被告もこれを特に争わないことを考え併せると、申立人が訴訟代理人を選任していることを考慮しても、申立人が本件訴えの提起に当たり被告を誤ったことにつき、故意又は重大な過失があったとすることはできない。

四  結論

以上のとおり、申立人の本件申立ては理由があり、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 三浦潤 裁判官 林俊之 裁判官 徳地淳)

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