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大阪地方裁判所 平成13年(ワ)39号 判決 2001年7月03日

原告

富士火災海上保険株式会社

被告

川戸圭三良

主文

一  被告は、原告に対し、金九一万二〇〇〇円及び内金三六万円に対する平成一二年三月三〇日から、内金五五万二〇〇〇円に対する平成一二年六月二三日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金一一四万円及び内金四五万円に対する平成一二年三月三〇日から、内金六九万円に対する平成一二年六月二三日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、訴外亀田ルリ子(以下「訴外亀田」という。)との間の自動車保険契約に基づいて、同訴外人と被告外一名との間で発生した後記交通事故により被告が民法七〇九条に基づき負担すべき物的損害に関する損害賠償債務を支払った原告が、被告に対し、保険代位に基づいて損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実等

(一)  訴外亀田と被告及び訴外藤原正見(以下「訴外藤原」という。)との間で下記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

日時 平成一二年三月七日午前八時二八分ころ

場所 京都府竹野郡網野町字高橋一五二番地先路上

関係車両 一 自家用普通乗用自動車 京都四一は五四四一(以下「被告車両」という。)

運転者 被告

二 自家用普通乗用自動車 京都五〇ち五六七六(以下「亀田車両」という。)

運転者 訴外亀田

所有者 訴外亀田

三 自家用普通乗用自動車 京都五〇め二六〇〇(以下「藤原車両」という。)

運転者 訴外藤原

所有者 訴外藤原

態様 路外施設に右折しようとした被告車両が対向直進してきた亀田車両と衝突した反動で押し戻され、被告車両の後続車両である藤原車両とも衝突したもの。

(二)  本件事故により、亀田車両は車両修理費用(四九万五四四三円)がその車両時価額(四五万円)を上回る経済的全損となり、訴外亀田は四五万円の損害を被った(甲第六号証の一)。また、訴外藤原は、車両修理費用六四万五〇〇〇円及び代車費用四万五〇〇〇円の合計六九万円の損害を被った(第五号証、第七号証の一、弁論の全趣旨)。

(三)  原告は、訴外亀田との間で、平成一一年一一月二日、亀田車両を被保険自動車とし、保険期間を一年間とする自家用自動車総合保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた(甲第三号証)。

(四)  原告は、本件保険契約に基づき、平成一二年三月二九日、訴外亀田に対し車両保険金として四五万円を、同年六月二二日、訴外藤原に対し対物保険金六九万円をそれぞれ支払った(甲第四号証、第五号証)。

二  争点

本件の争点は、被告の責任及び過失相殺である。

(被告の主張)

被告は、右折合図を出して一時停止したところ、それとほぼ同時に対向進行してくる亀田車両を発見し、咄嗟に衝突の危険を感じて身構えた。亀田車両は、被告車両に向かってくるように進行して衝突した。一時停止してから衝突までの時間は三秒くらいあった。

第三争点に対する判断

一  亀田車両と被告車両の衝突について

(一)  甲第二号証及び弁論の全趣旨によれば、被告は、別紙「交通事故現場見取図(原図)」(以下「別紙図面」という。)記載のとおり、被告車両を運転して本件事故現場を南方から北方に向かい、<1>、<2>の順で進行してきて、<2>地点で右折合図を出し、路外施設に出るためブレーキを掛けながら<3>地点まで進行して対向車線に車両前部をはみ出させたところ、対向車線を北方から南方に向かい進行してくる亀田車両を<ア>地点に発見したが、避ける間もなく<×>一地点において亀田車両と衝突したこと、被告車両は、亀田車両との衝突の反動で別紙図面記載<4>の位置に押し戻され、<×>二地点において後続してきた藤原車両と衝突したことが認められる(関係地点間の距離は、別紙図面上及び同図面「測定距離」欄記載のとおり。)。

(二)  上記事実によれば、被告は、路外施設に右折進入しようとする場合には、他の車両等の正常な交通を妨げないよう対向進行してくる車両の有無等に十分注意すべき義務があるにもかかわらず、対向進行してくる亀田車両に対する安全確認を怠り、同車両進路前方約一〇・七メートルの地点に被告車両を漫然と進出させた過失により亀田車両との衝突事故を惹起したものであることが認められるから、訴外亀田の損害を賠償すべき義務を負うというべきである。なお、被告は、被告車両が<3>地点で一時停止後、亀田車両に衝突されるまで三秒程度の時間があったと主張するが、その時間の正確性については不明というほかないし、被告は、亀田車両が前方一〇・七メートルにまで接近して初めて同車両に気付いていることからすれば、右折開始時に、対向車両の有無及び動静に対し注意を欠いていたことは明らかというべきである。

(三)  他方、訴外亀田は、亀田車両を運転するに当たり、前方を十分注視していれば、被告車両が右折合図を出していたことや減速していたことなどにより、同車両が路外へ右折進入しようとすることを認識し得たものと考えられるから、適切なブレーキ及びハンドル操作を講じることにより同車両との衝突を回避することが可能であったと認めることができる。したがって、被告車両との衝突事故に関しては、訴外亀田にも過失があるというべきである。

上記訴外亀田の過失内容と被告の過失内容を比較考量すれば、訴外亀田の過失割合を二割、被告の過失割合を八割と解するのが相当である。

二  藤原車両と被告車両の衝突について

前記認定のとおり、被告車両は、亀田車両との衝突の衝撃で後方に押し出され別紙図面記載<4>の位置に停車したことにより、後続してきた藤原車両と衝突したものであることが認められるところ、訴外藤原にすれば、右折態勢に入っていた被告車両が衝突の衝撃で押し戻され後退してくることまでは予想しがたいというべきであるから、訴外藤原に被告車両と衝突したことに関し過失があるとは認めることができない。

被告と訴外亀田は、被告車両と藤原車両の衝突の原因となった被告車両と亀田車両の衝突事故に関し、ともに過失責任を負うから、共同不法行為者として訴外藤原に生じた損害を賠償すべき義務を負うというべきである。

三  原告の被告に対する保険代位請求について

前記「争いのない事実等」記載のとおり、原告は、本件保険契約に基づき、訴外亀田及び訴外藤原の損害を賠償したことが認められるから、商法六六二条により、訴外亀田に代位して、被告に対し、上記のとおり認定した被告の過失割合に応じて被告が負担すべき下記損害及びこれに対する各保険金支払の日の翌日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を請求できることになる。

訴外亀田の損害 四五万円の八割に当たる三六万円

訴外藤原の損害 六九万円の八割に当たる五五万二〇〇〇円

上記合計 九一万二〇〇〇円

四  結論

以上の次第で、原告の請求は、上記金額の限度で理由があり、その余は理由がない(なお、被告は、被告車両が本件事故で受けた損害について原告に対し損害賠償を請求する旨の主張をしているが、何ら訴訟上の請求の手続を経ていないから、本件訴訟の対象とはなし得ず、判断の限りでない。)。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 福井健太)

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