大阪地方裁判所 平成13年(行ウ)92号 判決 2003年3月28日
原告
X1
同
X2
同
X3
上記3名訴訟代理人弁護士
木下肇
被告
大阪市
同代表者市長
磯村隆文
同指定代理人
山下研一郎
同
東伸吉
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第3 当裁判所の判断
1 照応の原則
(1) 法89条1項は「換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。」として、いわゆる照応の原則を規定しており、この原則は仮換地指定においても妥当するものである(法98条2項)。
ところで、土地区画整理事業は、健全な市街地を造成して公共の福祉の増進に資することを目的とし、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設等を行うものであるが(法1条、2条1項)、土地区画整理は、施行者が一定の限られた施行地区内の宅地につき、多数の権利者の利益状況を勘案しつつそれぞれの土地を配置していくものであり、また、仮換地の方法は多数あり得るから、具体的な仮換地指定処分を行うに当たっては、法89条1項所定の基準の枠内において、施行者の合目的的な見地からする裁量的判断に委ねられているところである。そして、仮換地指定処分は、指定された仮換地が、土地区画整理事業開始時における従前の宅地の状況と比較して、法89条1項所定の照応の各要素を総合的に考慮してもなお、社会通念上不照応であるといわざるを得ない場合に限り、同裁量的判断を誤った違法なものと判断すべきものである(最高裁平成元年10月3日第三小法廷判決・裁判集民事158号31頁)。
(2) 減歩率
上記の区画整理事業の目的からすると仮換地の指定により減歩が生じることは法の予定するところであり、法89条は地積を照応の要素の一つとしてあげるが、地積の減少程度、すなわち、減歩率は、仮換地が従前地と比較して宅地の利用価値が同程度であるといえるかを総合的に判断する中で考慮される一要素であり、個々の宅地の減歩率は、従前地や換地などの個別的要素によって算出決定されるものであるから、これらが個々に異なっているからといって仮換地の指定が直ちに違法になるものではない。
(3) 区域外の土地との比較について
原告X1及び原告X3は、長吉東部1号線の北側に接道する土地の所有者が、何らの出捐なくして北側道路の拡幅の恩恵を受けるものであって不公平であると主張する。
しかし、土地区画整理事業は、事業計画において定められた施行地区について行われるものであり、当該事業の実施により、施行地区に隣接する土地の利便性が向上されることがあっても、それは反射的な効果であって、こうした反射的な効果を受ける者と施行地区内の宅地の権利者との均衡を図るための措置は法上何ら予定されておらず、恣意的に施行地区を定めるなどの特段の事情がない限り仮換地の指定が違法となるものではない。
しかるところ、長吉東部1号線の北側は八尾市に属する土地である上、被告が恣意的に施行地区を定めたことを窺わせる事情は本件全証拠によっても認められず、原告X1及び原告X3の主張は採用できない。
(4) 飛び換地
仮換地指定処分における照応の原則とは、まず、仮換地と従前地とが、その位置、地積、利用状況、環境等を総合的に勘案しておおむね同等になるように仮換地を指定すべき要請をいうものであり、一般に、従前地の所在位置にそのまま換地を定めるいわゆる現地換地がその要請によく適合することが多いとはいえても、土地区画整理事業の目的を達成するためには現地換地を困難とする事情がある場合に、他の位置に仮換地を指定するいわゆる飛び換地も、前記の諸条件を考慮してなされる限り許されると解すべきである。
2 本件南側区画道路の必要性について
原告X1及び原告X3は、本件南側区画道路の設置により、本件仮換地指定処分が照応の原則に反するものとなったと主張するので、この点について判断する。
(1) 〔証拠略〕によれば、北東ブロックにおける道路の設置については以下の事情が認められる。
ア 北東ブロックについては、小規模の住宅地、工場及び農地が混在しており、道路が未整備であるという現況を考慮して、小規模な宅地について接道条件の改善及び整形化が充分なされるよう図るとともに、農地を集約することを目的としてそれほど大規模な街区とはならないような大きさの街区の設計が行われた。
イ 北東ブロック内における街区の設計にあたっては、まず、北東ブロック南北区画道路によって東西に分割された部分のうち南東部分において、本件事業の施行地区全体のシンボルゾーンとして都市公園(長吉東部1号公園)及び大阪市立クラフトパークからなる南北幅約100メートルの31街区を設置し、31街区の北側に区画道路として幅員約6メートルの区画道路を設置した。
そして、この31街区の北側においては、一つの街区とするには規模が大きすぎ、各宅地の接道条件の改善と整形化を図るためには分割する必要があるとの判断から、農地と農地以外の2つの用途にわけた土地の集約化を図るとともに、南北幅約60メートルないし約70メートルの2つの街区を形成するべく間に幅員約8メートルの29街区南側区画道路を配置して、北側から29街区及び30街区を設置した。
次に、北東ブロック南北区画道路の西例については、29街区ないし31街区の街区割りと同様に、住居、工場等の宅地と農地を分離し、農地の集約化を行い、街区内の各宅地の接道条件の改善と整形化を図るため、29街区南側区画道路及び31街区北側区画道路と連続した東西道路となるよう2本の区画道路を配置し、南北方向に概ね60メートルないし100メートルの3つの街区に分割した。
ウ そして、26街区南側区画道路と29街区南側区画道路とを連続した直線の経路となるように配置することで、長吉東部1号線の南北部分から北東ブロック南北区画道路を経て長吉東部3号線に至る地区内における東西方向の円滑な交通を確保することができるよう図った。
(2) 検討
上記のとおり、本件南側区画道路の設置は、北東ブロックの利用状況に鑑み、住居、工場等の宅地と農地を分離し、農地の集約化を行い、街区内の各宅地の接道条件の改善と整形化を図るという本件事業の目的に沿ってなされたものであり、十分な合理性を有し、妥当なものである。
仮に、本件南側区画道路が配置されなければ、工業地、住宅地及び農地の混在の解消や、接道条件の改善が困難となり、実際に26、27、29及び30街区の仮換地に照らして、袋地を解消することが困難な宅地が存在し、宅地としての機能が著しく低下し、利用が制限されることが認められる(〔証拠略〕)。
3 原告X1について
(1) 減歩率
本件従前地甲の基準地積の合計は5082.63平方メートルであり、本件仮換地甲の地積は3901平方メートルであるから、減歩率は約23.2パーセントである。
(2) 接道状況
本件従前地甲は、北側で幅員10メートルの市道路に接しているものの、その間口は7メートルであり、その他には狭あいな里道を除き接道する部分はなかった(〔証拠略〕)。
本件仮換地甲の北側部分は、間口19.4メートルで幅員16メートルの長吉東部1号線と接することになり、南側において、幅員8メートルの本件南側区画道路に80.2メートルにわたり接することとなる(〔証拠略〕)。また、本件仮換地甲の南側から大型貨物自動車が出入りすることも可能である(〔証拠略〕)。
(3) 形状
本件従前地甲は、東側で平野川の支流に接し、その境界は屈曲し、南側、西側及び北側の境界は直線で構成されているものの屈曲がみられる(〔証拠略〕)。
本件仮換地甲の北側部分は、北側が19.4メートル、中央部分で約30メートルの台形状になり、東側の境界は直線で構成されるものの屈曲が残り、北東部分の境界は従前地と大きな変化はないが、南側及び西側の境界は一直線で構成されることとなる(〔証拠略〕)。
(4) 利用状況
本件従前地甲は、本件従前地乙と一体となり、同土地上の建物と併せて、原告X1が代表取締役である株式会社aを通じ、b社の整備工場として利用されている(〔証拠略〕)。
しかし、上記土地は、狭あいとなり、b社は、本件従前地甲の北側に隣接する土地を賃借し、駐車場としている(〔証拠略〕)。
(5) 検討
上記のとおり、本件仮換地甲の減歩率は平均減歩率よりも大きくなっているが、長吉東部1号線との接道状況が大きく改善され、新たに本件南側区画道路との接道が確保され、接道状況が大きく改善されている。また、土地の形状も特に南側及び西側において大きく改善されている。確かに、北東側では依然として屈曲がみられるが、本件従前地甲の地形と比較して特段に悪化したものではない。
以上の諸点に鑑みると、本件仮換地指定処分は、社会通念上不照応なものであるとはいえない。
ところで、原告X1は、本件仮換地甲の北側部分が台形状の土地となり、通路あるいは建物敷地としての利用が困難であると主張するが、上記部分は長吉東部1号線への通路として用いられるとしても残部で十分に建物敷地あるいは駐車場敷地として利用することが可能である。
また、29街区の符号4及び6の土地は、本件仮換地甲と同様に、北側道路の幅員が16メートルに拡幅される利便性を十分に享受しているものの、減歩率がそれぞれ9.19パーセント、2.02パーセントと小さいということができる(〔証拠略〕)。しかしながら、これらの土地は接道条件については特段の利便性の向上が認められないのであり、長吉東1号線の拡幅による利便性が共通であるからと言って、本件仮換地甲と比較して不公平なものであるということはできない。なお、29街区符号8、30街区符号4、6ないし8の各土地の減歩率は本件仮換地甲の減歩率よりも若干高いものの、接道状況の改善においては本件仮換地甲に比較しても顕著なものがあるが、いずれも農地であり、接道状況の改善による利便性の向上は本件仮換地甲とは異なるものであり、本件仮換地甲と比較して減歩率が低すぎるということはできない(〔証拠略〕)。
さらに、原告X1は、本件仮換地指定処分によりb社が自動車整備工場を営むことが不可能となり、本件仮換地甲の利用価値がなくなると主張するが、上記のとおり、本件仮換地甲は、接道及び形状の点で大きく改善されているのであり、換地内の建物の配置の適正化での対応が不可能なものとまでは認められない。さらに言及するならば、b社はすでに本件従前地甲が手狭となり、隣接地を賃借しているのであり、本件仮換地指定処分によって営業が不可能となるとの因果関係を認めることはできない。
4 原告X2について
(1) 減歩率
本件従前地乙の基準地積は403.04平方メートルであり、本件仮換地乙の地積は338平方メートルであるから、減歩率は約16.1パーセントである。
(2) 位置、形状、利用状況など
本件従前地乙は、本件従前地甲の西側に隣接し、駐車場として、本件従前地甲と一体となり利用されているが、いわゆる袋地であり、狭あいな里道によってのみ道路と接しているため、当該駐車場内の車両が道路へ通行する際には、原告X1の従前地(本件従前地甲)の一部を通行する必要がある(〔証拠略〕)。
本件仮換地乙は、本件仮換地甲の東側に隣接するものであり、いわゆる飛び換地であるが、本件仮換地甲との一体性が保たれ、本件南側区画道路との接道が新たに確保されている(〔証拠略〕)。
なお、形状はいずれも長方形である。
(3) 地盤について
本件仮換地乙の一部が水路であった部分に指定されたものである。そして、当該水路はコンクリート製の構造物を埋設してその中に水を流していたものであり、水路であった部分を埋め立てるに当たっては、コンクリート製の水路構造物を撤去し、良質土砂により盛土のうえローラーをかけ、十分に締め固める等の整地工事を行っている(〔証拠略〕)。
(4) 検討
上記のとおり、本件仮換地乙の減歩率は平均減歩率よりも若干大きくなっているが、新たに本件南側区画道路との接道が確保され、飛び換地によっても利用状況の変化は認められない。また、地盤については、新たに埋め立てたことによって従前地と比べて一定程度劣るものと認められるが、十分な地盤強度が確保されるよう施工されており、また、仮換地の使用収益開始の際には、被告において原告X2の仮換地の水路部分の地盤強度が確保されているかを確認し、万が一地盤強度が十分でない等の問題が生じた場合は、地盤強度を確保するための追加工事を行った上で、原告X2に引き渡すことを予定されている(〔証拠略〕)のであるから、著しい不利益ということはできない。
以上の諸点に鑑みると、本件仮換地指定処分は、社会通念上不照応なものであるとはいえない。
ところで、原告X2は、本件従前地乙は袋地であるから、原告X1の従前地の西側に接しているだけで十分であり、原告X1の従前地の東側に移動し、新たに道路に接道したことによって、減歩される必要はなかったと主張する。
しかしながら、宅地の利用価値の増進という土地区画整理事業の目的からすれば、道路に接道していないいわゆる袋地に対して道路に接する仮換地を指定することにより、宅地としての利用価値の増進を図ることは十分な合理性を有するものであり、東側への飛び換地により、本件仮換地甲の西側及び南側の整形性を保ちつつ、同仮換地との一体性を保持することが容易になったということができるのであるから、原告X2の主張は採用できない。
5 原告X3について
(1) 減歩率
本件従前地丙の基準地積の合計は1756.71平方メートルであるところ、当該従前地の仮換地は2か所に分断して指定されているが、そのうち本件仮換地丙1の地積は、1169平方メートルであり、本件仮換地丙2の地積は346平方メートルであり、本件従前地丙と本件仮換地丙1及び2を併せたものを比較すると、減歩率は約13.8パーセントである。
(2) 位置、形状等
本件従前地丙は東西方向に約16メートル、南北方向に約107メートルであり、北側においてのみ道路に接するおおむね長方形の土地であり、その西隣には、東西方向16メートル、南北方向105メートルの本件従前地丙とほぼ同じ面積、形状の土地(以下「西側隣接地」という。)がある(〔証拠略〕)。
かかる従前地の状況において、前記第2、1(2)ウのとおり本件南側区画道路が設置されたため、本件従前地丙及び西側隣接地のそれぞれの南側部分が本件南側区画道路によって分断されることとなった(〔証拠略〕)。
本件仮換地丙1は、北側で長吉東部1号線と接道し、南部で本件南側区画道路と接道する東西方向に約16メートル、南北方向に約70メートルの長方形の土地であり、本件仮換地丙2は、本件仮換地丙1とは水路部分を含む幅員約24メートルの長吉東部3号線を挟んだ9街区に位置し、約17.5メートルの間口で幅員約6メートルの区画道路に接道する土地である(〔証拠略〕)。
(3) 利用状況
本件従前地丙は、おおむね北半分は原告X3が役員である株式会社cの事務所及び作業所として利用されており、南半分は住宅として利用されており、事務所及び作業所と住宅との間には奥行き20メートル程度の空地がある(〔証拠略〕)。
(4) 検討
ア 上記のとおり、本件仮換地丙1及び2は、分断されている点を除けば、減歩率が平均減歩率に比較して低く、接道状況も改善されており、社会通念上不照応であるとの事情は認められない。
そこで、本件仮換地丙1及び2が分断され、その一部が9街区に飛び換地された点を中心に検討する。
なお、事務所及び作業所と北側市道との間は駐車場として用いられているところ、本件仮換地指定処分により、約6メートルに渡り減少することから、駐車場として用いることは困難となるが、後記のとおり、本件仮換地丙1の南側の空地を利用することも可能であり、上記の利用状況のみで社会通念上不照応であるということはできない。
また、長吉東部1号線に接する点で本件従前地丙と共通する長吉出戸d丁目e番3の土地並びにe番5及び9の土地に対する仮換地は増換地されているが、これらの土地の間には、本件事業により接道のために不要となるe番1の土地が存し、同土地を加える形で仮換地の指定がなされた特殊事情が窺え(〔証拠略〕)、当該増換地により、原告X3に対する本件仮換地指定処分が社会通念上不照応となるものではない。
イ 前記第2、1(2)ウのとおり本件南側区画道路が設置されたこと、26街区及び27街区に相当する位置にある従前地の状況に照らすならば、被告としては、26街区において原告X3の従前地及び西側隣接地を含む近隣の従前地を現地換地することとした結果、当該分断された本件従前地丙及び西側隣接地の南側部分(以下「本件分断部分」という。)を26街区に仮換地指定することは極めて困難である事情が窺われる(〔証拠略〕)。
ところで、原告X3は、本件従前地丙の事務所及び作業所部分と住宅部分の一体性を主張するが、原告X3の本件従前地丙は前述したとおり、北側は事務所及び作業場として利用されており、南側は住宅として利用され、利用状況は明確に区分されている様子が窺える(〔証拠略〕)。
また、原告X3は、その作成にかかる陳述書(〔証拠略〕)で工場裏の空地は、機材置き場として利用しており、駐車場や荷下場として利用することは不可能であると述べるが、〔証拠略〕によれば、上記土地部分は空地となっており、土地に強固に固定された構築物等は存在しない状態にあることが認められ、利用方法の工夫により、駐車場兼荷下場としても利用し得るものであると認められる。
これらの事情に鑑みるならば、本件従前地丙のうち住宅敷地部分を飛び換地することも当然に不合理なものであるとはいえない。
ウ 〔証拠略〕によれば、次の事情が認められる。
本件事業においては、施行地区の南側の境界付近に幅員が30メートルないし32メートルの敷津長吉線が整備され、施行地区の中央やや東側に長吉東部1号公園と大阪市立クラフトパークが一体的に整備されることとなり、また、市営住宅用地として使用されている大規模な一団の宅地を一つの街区に仮換地指定する必要があるため、それらの予定地上にある多数の宅地について飛び換地する必要が生じた。
しかしながら、長吉東部3号線以東の六反地区においては敷津長吉線の南側は地区境界に近く、従前からの宅地に加えてさらに敷津長吉線予定地にあたる宅地の仮換地を受け入れる余地はなく、また、48街区は現地換地された市営住宅と保育所施設で構成された街区であり、44ないし46街区の大半が現地換地された宅地であることから、敷津長吉線の予定地の宅地は、本件事業の施行地区内の北西側に仮換地を指定せざるを得ず、それに伴って、敷津長吉線より北に位置する宅地は、順押し換地によってそれぞれ北西側に仮換地指定をすることとなり、さらに、長吉東部1号公園、大阪市立クラフトパーク及び市営住宅用地の予定地にあたる宅地については、南側から敷津長吉線の予定地の仮換地指定に起因した順押し換地が進行していることから、更に北西側へ仮換地を指定する必要があり、これに伴う順押し換地も同様に行われた。
エ 本件従前地丙の住居部分が西側に飛び換地指定されたのは上記ウのような事情を反映したものであり、相当数の飛び換地が生じる場合に上記のような順押し換地をすることは、特定の宅地について他の宅地と比較して飛び換地の距離が大きいと宅地間に不公平が生じることに鑑み、一定の合理性を有するものということができる。
なお、本件分断部分の南側の27街区に本件分断部分に対する仮換地を指定することも考えられるが、本件分断部分全てを同街区において仮換地指定することは相当困難であることが窺え、一部のみを27街区に仮換地指定することは公平性の観点から好ましくないということができる(〔証拠略〕)。
さらに、本件事業の施行地区内において、原告X3所有の土地のような1つの連続した土地に対して2つに分割して仮換地が指定され、かつ、当該仮換地の間に本件事業の施行地区内のほぼ中央を南北に流れる水路が存在するものとしては、原告X3に対する仮換地のほか、4箇所の土地に対する仮換地がある(〔証拠略〕)。
オ ところで、本件仮換地丙1と同丙2の間には、長吉東部3号線が設置され、同路線は、水路を挟んで一方通行路が並行するものであり、車両を用いて両者の間を行き来するためには、一定程度迂回する必要が生じるものの、徒歩での行き来も可能な距離である。
力 上記のとおり、原告X3については、減歩率が平均減歩率に比較して低いこと及び本件仮換地丙1及び2の接道条件等が改善ないし良好に保たれていることに加え、飛び換地をすることが避けられず、他の飛び換地となる仮換地との関係での公平性を保つため順押し換地をするのが相当であること、分断されることによる障害が限定的なものであることに照らすならば、本件仮換地指定処分は、未だ社会通念上照応を欠くものであるとはいえない。
第4 結論
以上のとおり、原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 三浦潤 裁判官 林俊之 小野裕信)