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大阪地方裁判所 平成14年(ワ)12022号 判決 2005年1月26日

原告

X1

ほか一名

被告

Y1

ほか一名

主文

一  被告らは原告X1に対し、連帯して金二九八万三四一〇円及び内金二七三万三四一〇円に対する平成一四年六月八日から支払い済みまで、年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは原告X2に対し、連帯して金二二五万八八一四円及び内金二〇五万八八一四円に対する平成一四年六月八日から支払い済みまで、年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを三分しその二を原告らの、その余を被告らの負担とする。

五  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは原告X1に対し、金八九二万一八五〇円及び弁護士費用を除いた内金八一二万一八五〇円に対する平成一四年六月八日(不法行為の日)から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは原告X2に対し、金七六七万七一八〇円及び弁護士費用を除いた内金六九七万七一八〇円に対する平成一四年六月八日(不法行為の日)から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告Y1運転・被告Y2所有の普通乗用自動車が原告X1運転、原告X2同乗の普通乗用自動車に追突した交通事故について、原告らが、被告Y1に対し民法七〇九条に基づいて、被告Y2に対し自動車損害賠償保障法三条に基づいて、損害賠償を求めている事案である。

一  争いのない事実等

(1)  第一事故

ア 発生日時 平成一三年一〇月二〇日午後一一時五四分ころ

イ 発生場所 大阪府豊中市<以下省略>先交差点

ウ 事故態様 原告X1運転・原告X2同乗の普通乗用自動車が信号待ちで停車中に追突された。

(2)  第二事故(本件事故)

ア 発生日時 平成一四年六月八日午前一一時五五分ころ

イ 発生場所 兵庫県伊丹市<以下省略>先交差点

ウ 原告車両 原告X1運転・原告X2同乗の普通乗用自動車

エ 被告車両 被告Y1運転・被告Y2所有の普通乗用自動車

オ 事故態様 原告車両が前記交差点にさしかかり信号待ちのため停車したところ、後続の被告車両に追突された。

(3)ア  被告Y1には、自動車を運転するにあたり、前方を注視し、前方を走行する車両が信号待ちのため停止した場合には、適切なブレーキ操作を行って停止すべき注意義務を怠った過失が認められる。

イ  被告Y2は、被告車両の運行供用者である。

二  争点

(1)  傷害の発生の有無ないしは本件事故との因果関係の有無

(原告らの主張)

原告車両には衝撃吸収装置であるホースメントが装備されておらず、真後ろからの追突に対しては衝撃が大きいのであって、車両の損傷の程度が小さいからといって人身損害が生じないとはいえない。原告X1は、MRIによる検査で第三頸椎から第六頸椎にかけてくも膜下腔前方に狭小が認められ、原告X2については、レントゲン撮影で第五・第六頸椎間の変形性関節症が認められている。

(被告らの主張)

ア 本件事故の軽微性

原告車両及び被告車両とも本件事故による損傷は一見して判別がつかない程度であることなどからすれば、本件事故の衝撃の程度はきわめて小さいものであり、人身損害が生じるほどのものではない。原告らは疼痛を訴えているが、レントゲン撮影では加齢変性所見を除き異常は発見されておらず、客観的・他覚的所見は何ら存在しない。

イ 第一事故による傷害

原告X1は、本件事故の二、三日前まで第一回事故による傷害の治療を受けており、本件事故の五日後には症状も軽減し、当初より投薬とリハビリに終始し、本件事故の四か月後にはハワイに旅行に行き、症状は一進一退となっている。

原告X2は、第一事故の一三年前に腰椎圧迫骨折の傷害を負い、第一事故の二、三年前にも腰椎骨折により一か月入院し、本件事故でも三か月の入院を要し、バレー徴候や第二頸椎から第七頸椎にかけて異常がみられるほどの重傷を負い、本件事故の二、三日前まで第一事故による傷害に治療を受けていた。主治医も本件事故による傷害はそれほど重大ではないと述べ、事故の三か月後に突然腰痛が出現している。

これらの事情に照らせば、原告らの症状は、第一事故によるものか前回事故によって生じた既往症が原因というべきであって、本件事故との因果関係は認められない。

(2)  損害

(原告らの主張)

ア 治療費

(ア) 原告X1について 一〇一万七七四〇円(平成一五年九月五日まで)

a接骨院 通院一四四回 八六万五五二〇円

bクリニック 通院三二回 一五万二二二〇円

(イ) 原告X2について 一一一万四九一〇円(平成一五年九月五日まで)

a接骨院 通院一五七回 九三万一〇三〇円

bクリニック 通院三四回 一六万〇五四〇円

大阪脳神経外科 通院八回 二万三三四〇円

イ 交通費

(ア) 原告X1について 三三万六四二〇円

平成一四年六月一〇日から同年九月二〇日 二六万〇〇二〇円

平成一四年九月二一日から平成一五年三月三一日 五万〇〇八〇円

平成一五年四月一日から同年九月五日 二万六三二〇円

(イ) 原告X2について 四〇万三一六〇円

平成一四年六月一〇日から同年九月二〇日 三一万三一五〇円

平成一四年九月二五日から平成一五年三月三一日 五万三五九〇円

平成一五年四月一日から同年九月五日 三万六四二〇円

ウ 逸失利益 四九六万七六九〇円

(ア) 原告X1について

原告X1は主婦であるが、離婚した夫の経営していた不動産業を業とする会社の事務員として稼働した経験があり、基礎収入は賃金センサスの女子年齢別平均賃金である三九八万五四〇〇円を用いるべきである。

休業期間は平成一四年六月八日から平成一五年九月五日までの四五五日である。

したがって、休業損害は下記のようになる。

3,985,400円÷365日=10,918円×455日=4,967,690円

(イ) 原告X2について 逸失利益 三六五万九一一〇円

原告X2は主婦であるが、パートで中華料理店の店員として稼働したことがあり、基礎収入は賃金センサスの女子年齢別平均賃金である二九三万五五〇〇円を用いるべきである。

休業期間は平成一四年六月八日から平成一五年九月五日までの四五五日である。

したがって、休業損害は下記のようになる。

2,935,500円÷365日=8,042円×455日=3,659,110円

エ 慰謝料 各一八〇万円

通院約一五か月

オ 弁護士費用

原告X1につき八〇万円、原告X2につき七〇万円

(被告らの主張)

ア 損害については否認ないし争う。

イ 被告らは原告X2に対して五万八九八五円支払った。

第三当裁判所の判断

一(1)  証拠(甲二の一及び二、六の二ないし六、七の二ないし六、一一の一ないし三、一三、一四の二、一五の一ないし一一、一六の一ないし一一、一七の二ないし六、一八の二ないし六、一九の一ないし四、二二、二三、乙一ないし一〇(枝番を含む)、原告X1、同X2)によれば以下の事実が認められる。

ア 原告X1について

(ア) 原告X1は、第一事故の後、北大阪病院に搬送され、頸椎捻挫、背部捻挫と診断されたが、異常は発見されなかった。その後、豊中ひかり病院で診察治療を受けたが、レントゲン等での他覚的所見は認められなかった。東保脳神経外科でMRIを撮影したところ、第三頸椎から第六頸椎にかけてくも膜下腔の狭小化が認められた。

平成一三年一二月一四日からはa接骨院で治療を受け始め、本件事故に至るまでの約六か月間に七二回通院治療を受けた。当初、頸部椎間関節に圧痛等と腰部回旋時に激痛を伴う自覚症状があったが、次第に回復してゆき、平成一四年五月にはハワイへ旅行へ行ける程度まで回復していた。事故当日もa接骨院に通う途中であったが、頸部椎間関節及び腰部の痛みは軽減していた。

(イ) 原告X1は、本件事故の直前、後方から迫ってくる被告車両に気づき、ハンドルを持っている両手とブレーキを踏んでいる右足で踏ん張った。原告X1は追突された際、首が四〇度程度前屈した。

衝突直後、原告X1は、吐き気、手及び腰から右足にかけてのしびれに襲われたため、タクシーを呼んでa接骨院に向ったが、病院で検査を受けた方が良いとの指示を受け、bクリニックで診察を受けたところ、頸部捻挫、右肩打撲、腰部打撲の診断を受けた。

(ウ) その後、bクリニックでは、平成一四年六月に一五回、同年七月に五回、同年八月に五回、同年九月に五回、同年一〇月に二回(合計三二回)通院治療を受け、a接骨院では、同年六月に一七回、同年七月に二一回、同年八月に一七回、同年九月に一六回、同年一〇月に七回、同年一一月に九回、同年一二月に一二回、平成一五年一月に七回、同年二月に六回、同年三月に四回、同年四月に四回、同年五月に三回、同年六月に六回、同年七月に六回、同年八月に八回、同年九月に一回(合計一四四回)治療を受け、症状は徐々に回復していった。平成一四年一〇月には、本件事故前から計画を立てていたため、無理をしてハワイへ旅行へ行ったが、症状に変化は見られなかった。現在に至っても、吐き気や手のしびれ、頸部の緊張などの症状が残存している。

イ 原告X2について

(ア) 原告X2は、第一事故にあい、北大阪病院に搬送され、頭部打撲、頸部捻挫と診断され、検査のため豊中市立病院を紹介され、平成一三年一〇月二三日に診察を受け、CT撮影を行ったが特に異常はみつからず、頸椎捻挫、起立性低血圧症の診断を受けた。原告X2が入院を希望したため、豊中ひかり病院を紹介され、年一〇月二四日、豊中ひかり病院で診察を受け、頸部捻挫と診断され、同月二九日まで入院した。その後、同月二九日から平成一四年二月二日までは東保脳神経外科へ入院し、中心性脊髄損傷と診断され、第二頸椎から第七頸椎にかけて狭窄が認められ(ただし、これが疾病に該当する程度に至っていたと認めるに足りる証拠はない。)、バレー徴候も現れていた。

平成一四年二月四日からはa接骨院で治療を受け始め、本件事故に至るまでの約六か月間に六〇回通院治療を受けた。当初、頸部椎間関節に圧痛等と胸部の筋肉に筋緊張等、左上腕に腫脹と挙上時の痛みを伴う自覚症状等があったが、次第に回復してゆき、平成一四年五月にはハワイへ旅行へ行ける程度まで回復していた。事故当日もa接骨院に通う途中であったが、症状はほぼ消失している状態であった。

(イ) 原告X2は、本件事故で衝撃を受けた際、首が四五度程度前屈した。

衝突直後、原告X1は、吐き気、手のふるえ及び頭痛等に襲われたため原告X1と共にa接骨院に向い、bクリニックで診察を受けたところ、頸部捻挫、腰部捻挫、左股関節捻挫の診断を受けた。さらに、明和病院でMRIなどの検査を受けたところ、第六頸椎にすべリ症が認められたほか、第五・第六、第六・第七頸椎で椎間板が神経根を圧排しており、頸椎症性変化が認められ、外傷性頸部症候群と診断され(ただし、これらが本件事故によって生じたと認めるに足りる証拠はない。)、また、MRIを撮影したところ第五頸椎と第六頸椎の間でヘルニアが認められた。原告X2は、入院を強く希望したが、診察した医師は入院するほど重傷ではなく、入院するとむしろ治療が長期化すると考え、原告X2に通院治療を指導した。

(ウ) その後、bクリニックでは、平成一四年六月に一五回、同年七月に七回、同年八月に五回、同年九月に五回、同年一〇月に二回(合計三四回)通院治療を受け、a接骨院では、同年六月に一八回、同年七月に二五回、同年八月に一七回、同年九月に一七回、同年一〇月に九回、同年一一月に八回、同年一二月に九回、平成一五年一月に四回、同年二月に九回、同年三月に五回、同年四月に五回、同年五月に三回、同年六月に七回、同年七月に一二回、同年八月に八回、同年九月に一回(合計一五七回)治療を受け、大阪脳神経外科では平成一四年一〇月から平成一五年一二月まで合計八回の治療を受け、症状は徐々に回復してきたが、右手がふるえ、首が十分に動かせないなどの症状が残存している。

ウ 車両の状態

本件事故により原告車両のリアバンパーは上方に向かって歪み、下部のウレタン性ステーがちぎれたため、バンパー交換の修理を行ったが、破損にまでは至っておらず、車体にも影響がなかった。

原告車両は前バンパーが衝突したはずであるが、衝突による痕は認められず、何の修理も必要とされなかった。

(2)ア  原告X1及び原告X2はいずれも、本件事故の際の衝突の衝撃で首が前後に振られており、その直後から吐き気やしびれなどの自覚症状が現れ、他覚的な所見は認められないものの、当日搬送された病院で傷害を負った旨の診断を受けていることに照らせば、原告X1は、本件事故によって頸部捻挫、右肩打撲、腰部打撲等の傷害を、原告X2は頸部捻挫、腰部捻挫、左股関節捻挫等の傷害を負ったと認められる。

イ  被告らは、原告らの傷害は第一事故によるものか、第一事故によって生じた既往症によるもので本件事故との因果関係はないと主張するが、前記認定のとおり、本件事故当時、第一事故による傷害は相当程度回復していたものが、本件事故後明らかに症状が悪化したことに加え、第一事故では現れていなかった新たな症状が出現していること、原告X2に認められた脊椎の狭窄が疾病に該当する程度に達していたかは不明であることからすると、本件事故後の症状が第二事故と無関係とは言い難く、因果関係は認められる。

もっとも、第一事故による症状が完治していたと認めるに足りる証拠はないことに加え、被告車両は何ら修理を要する損傷を受けておらず、原告車両で修理が必要とされたバンパーも破損にまでは至っておらず、本件事故の衝撃は比較的小さかったものと推認されるのに対し、原告らは事故後一年以上にわたって治療を受け続けるなど、衝突による衝撃の程度からみて治療期間が不相応に長いことに鑑みれば、本件事故後の症状が本件事故のみによるものであるとも認めがたい。特に、原告X2については、第一事故後、脊椎の狭窄やバレー徴候が現れており(ただし、これらが疾病に該当すると認めるに足りる証拠はない)、第一事故の傷害が軽微であったとは言い難く、さらに、本件事故においても入院を希望したものの、入院するとかえって治療が長引くとして入院を断られていることからすると、医師の判断した病状よりも本人の愁訴が強く、心因的な要素が影響していたと推認される。したがって、本件事故により生じた損害(全て人的損害である)のうち、原告X1については三割、原告X2については四割を第一事故による影響として斟酌し、損害額から減額するのが相当である。

二  損害

(1)  治療費

ア 原告X1について

原告X1は、証拠(甲七の二ないし六、甲一五の一ないし一一、一七の二ないし六、乙四の二)及び前記一(1)ア(ウ)によれば、bクリニックで平成一四年六月から同年一〇月まで合計三二回、a接骨院で平成一四年六月から平成一五年九月まで合計一四四回通院治療を受け、bクリニックの治療費が合計一五万二二二〇円、a接骨院の治療費が八六万五五二〇円であったことが認められる。

本件事故後、bクリニックでの治療を終えた後もa接骨院に通い、少なくとも平成一五年二月までは症状が徐々に回復し向かい、その後も同年九月まで治療継続とされていたこと(甲一五の二ないし一一、乙四の二)に照らせば、a接骨院での治療は一応の効果がみられたものの、同年九月の時点で症状固定には至っていなかったものと推認されるが、a接骨院での治療については医師の指示があったと認めるに足りる証拠はなく、a接骨院の治療費のうち三分の一である二八万八五〇六円についてのみ必要性を認めるのが相当である。

イ 原告X2について

原告X2についても、証拠(甲六の二ないし六、一一の一ないし三、一四の二、一六の一ないし一一、一七の二ないし六、一九の一ないし四、乙四の一)及び前記一(1)イ(ウ)によれば、bクリニックで平成一四年六月から同年一〇月まで合計三四回、a接骨院で平成一四年六月から平成一五年九月まで合計一五七回通院治療を受け、大阪脳神経外科では平成一四年一〇月から平成一五年一二月まで合計八回の治療を受け、bクリニックの治療費が合計一六万〇五四〇円、a接骨院の治療費が九三万一〇三〇円、大阪脳神経外科の治療費が合計二万三三四〇円であったことが認められる。

本件事故後、bクリニックでの治療を終えた後もa接骨院に通い、少なくとも平成一五年二月までは症状が徐々に回復に向かい、その後も同年九月まで治療継続とされていたこと(甲一五の二ないし一一、乙四の二)に照らせば、a接骨院での治療は一応の効果がみられたものの、同年九月の時点で症状固定には至っていなかったものと推認されるが、a接骨院での治療については医師の指示があったと認めるに足りる証拠はなく、三分の一である三一万〇三四三円についてのみ必要性を認めるのが相当である。

(2)  交通費

ア 原告X1について

証拠(原告X1、甲九の一及び二、二〇の一ないし四、二九の一ないし五六)によれば、原告X1は平成一四年七月一九日まで、通院のためにタクシーを使用する必要があり、その金額が二二万〇六六〇円であること、それ以降平成一四年九月二〇日までの分が三万九三六〇円、平成一四年九月二一日から平成一五年三月三一日までの分が五万〇〇八〇円、平成一五年四月から同年九月五日までが二万六三二〇円であることが認められる。

イ 原告X2について

証拠(甲八の二ないし四、二一の一ないし三、三〇の一ないし六六)及び弁論の全趣旨によれば、原告X2は平成一四年七月二〇日まで、通院のためにタクシーを使用する必要があり、その金額が二六〇五五〇円であること、それ以降平成一四年九月二〇日までの分が五万二六〇〇円、平成一四年九月二四日(原告の主張では二五日からとなっているが請求金額には二四日通院の分が含まれている)から平成一四年一二月一八日までの分が三万二九四〇円、平成一四年一二月一九日から平成一五年三月三一日までの分が二万〇六五〇円、同年四月一日から同年九月五日までの分が二万八二〇〇円であることが認められる。

(3)  逸失利益

ア 証拠(乙一〇の一及び二)によれば、原告らは平成一三年一〇月二三日当時主婦であったことが認められ、その後、身分等に変化があったことを伺わせるに足りる証拠はなく、本件事故当時も同様に主婦であったと推認される。

イ 原告X1について

本件事故後平成一五年九月五日まで通院していたこと、同日時点においても吐き気や手のしびれ、頸部の緊張などの症状が残存していることが認められるが、症状が神経症状にとどまっていること、平成一四年七月には通院にタクシーを必要としなくなり、その後も徐々に回復に向かっていったこと、横山クリニックへの通院は平成一四年一〇月で終了していることなどを考慮すれば、本件事故後一か月は一〇〇%、二か月目からは七か月目までは五〇%、八か月目以降は三〇%の労働能力を喪失していたものと認めるのが相当である。

そして、主婦で事故当時三七歳であることから平成一四年度賃金センサスの学歴計女子年齢別平均賃金を採用すると二一二万七七二六円となる。

401万3700円÷365=10996円

10996円×1×30=32万9880円

10996円×0.5×30×6=98万9640円

10996円×0.3×245=80万8206円

ウ 原告X2について

本件事故後平成一五年九月五日まで通院していたこと、同日時点においても右手がふるえ、首が十分に動かせないなどの症状が残存していることが認められるが、症状が神経症状にとどまっていること、平成一四年七月には通院にタクシーを必要としなくなり、その後も徐々に回復に向かっていったこと、横山クリニックへの通院は平成一四年一〇月時点で終了していることなどを考慮すれば、本件事故後一か月は一〇〇%、二か月目からは七か月目までは五〇%、八か月目以降は三〇%の労働能力を喪失していたものと認めるのが相当である。

そして、主婦で事故当時六二歳であることから平成一四年度賃金センサスの学歴計女子年齢別平均賃金を採用すると一五四万二一九五円となる。

290万9200円÷365=7970円

7970円×1×30=23万9100円

7970円×0.5×30×6=71万7300円

7970円×0.3×245=58万5795円

(4)  慰謝料

原告らは、本件事故によって前記のとおり傷害を負い、一五か月にわたり通院していることが認められるが、症状が神経症状であることを考慮すれば、それぞれ一〇〇万円と認めるのが相当である。

三  第一事故の影響による減額

以上より、原告X1の損害は合計で三九〇万四八七二円、原告X2の損害は三四三万一三五八円となるが、前記のとおり、原告X1について三割、原告X2について四割減額すると、原告X1について二七三万三四一〇円、原告X2について二〇五万八八一四円となる。

四  損害の填補

被告らは原告X2に対し、五万八九八五円支払ったと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

五  弁護士費用

本件事故の態様及びその他本件に現れた諸般の事情に鑑み、弁護士費用は、原告X1について二五万円、原告X2について二〇万円と認めるのが相当である。

六  結論

以上より、原告X1の請求は二九八万三四一〇円及び内金二七三万三四一〇円に対する平成一四年六月八日から各支払い済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度において理由があり、原告X2の請求は二二五万八八一四円及び内金二〇五万八八一四円に対する平成一四年六月八日から支払い済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度において理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 平井健一郎)

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