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大阪地方裁判所 平成14年(行ウ)96号 判決 2004年6月03日

甲事件原告(以下「原告甲」という。) 甲

乙事件原告(以下「原告A」といい、原告甲と合わせて「原告ら」という。) 有限会社A

同代表者取締役 乙

原告ら訴訟代理人弁護士 山内良治

同 松本康之

両事件被告(以下「被告」という。) 住吉税務署長  小池有信

同指定代理人 兒島光夫

同 牧英二

同 天野貞祐

同 井上恒克

同 原口真澄

同 上園泰昭

同 和田弘道

同 安永淳晴

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第1  請求

1  甲事件

(1)  被告が、原告甲に対し、平成12年6月14日付けでした相続税及びその利子税の督促処分を取り消す。

(2)  被告が、原告甲に対し、平成12年6月19日付けでした別紙物件目録記載の土地に対する差押処分を取り消す。

2  乙事件

被告が、原告Aに対し、平成12年9月22日付けでした、平成8年12月26日から平成9年10月31日までの事業年度、平成9年11月1日から平成10年10月31日までの事業年度、及び平成10年11月1日から平成11年10月31日までの事業年度に係る各更正請求について、更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

第2  事案の概要

1  本件は、三大都市圏の特定市の市街化区域内に所在する農地(以下「特定市街化区域農地」という。)を相続した原告甲が、当該農地について相続税の納税猶予の特例の適用を受け、さらに、当該農地に所定の要件を満たす共同住宅を新築し、B公社(以下「公社」という。)に賃貸することにより、特定転用制度を利用して前記特例の適用を受け続けてきたところ、その後設立した原告Aに上記共同住宅を譲渡したことを前提とする確定申告等をしたことにより、被告から、上記共同住宅の貸付けを行わないこととなったため納税猶予が打切りとなり納税猶予期限が確定したとして、相続税等の督促処分及び土地の差押処分を受けたことから、これらの取消しを求め、一方、原告Aも、上記共同住宅からの賃料収入を原告Aの益金として法人税の申告をしたのは誤りであったとして更正の請求をしたが、被告から更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたため、その取消しを求めている事案である。

2  制度概要

(1)  相続税の納税猶予の特例(租税特別措置法(平成3年法律第16号による改正前のもの。以下同じ。)70条の6)

農業を営んでいた個人(被相続人)の相続人(農業相続人)が、当該被相続人からの相続によりその農業の用に供されていた農地を取得した場合、当該相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税額のうち、当該農地で当該申告書に相続税の納税猶予の特例の適用を受けようとする旨の記載があるものに係る納税猶予分の相続税については、納税猶予期限(農業相続人の死亡の日又は上記相続税の申告書の提出期限の翌日から20年を経過する日のいずれか早い日)までその納税が猶予され(同条1項)、農業相続人が当該農地につき、納税猶予期限まで農業経営を継続していた場合には、納税猶予期限の日において、納税猶予分の相続税は免除される(同条18項)。

なお、農業相続人が、相続税の納税猶予を受ける農地の一部につき、納税猶予期限よりも前に、譲渡や贈与、転用等をした場合には、納税猶予分の相続税額のうち、譲渡等をした農地に係る部分の相続税について、譲渡等があった日の翌日から2か月を経過する日をもって、納税猶予が打ち切られて納税猶予の期限とされる(同条7項)。

(2)  特定転用制度(租税特別措置法の一部を改正する法律(平成3年法律第16号)附則(平成9年法律第22号による改正前のもの。以下同じ。)19条6項)

平成4年1月1日前に相続により取得した農地については、なお相続税の納税猶予の特例が適用されるが、そのうち平成3年1月1日において、特定市街化区域農地に該当するものについては、農業相続人が、平成4年1月1日から平成6年3月31日までの間に、当該市街化区域農地の全部又は一部につき、賃貸の用に供する中高層耐火建築物である共同住宅を新築し、かつ特定法人に対し当該新築をした共同住宅の貸付けを行う見込みであることにつき、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該農業相続人に係る租税特別措置法70条の6第7項の適用については、当該承認に係る当該転用は同項に規定する譲渡等(転用)に該当しないものとみなされる。なお、納税猶予期限までの間に、上記新築をした共同住宅の貸付けを行わないこととなった場合には、当該行わないこととなった日において転用をされたものとみなされ(附則19条8項4号)、租税特別措置法70条の6第7項により、納税猶予分の相続税額のうち、転用をした農地に係る部分の相続税について、その翌日から2か月を経過する日をもって納税猶予が打ち切られて納税猶予の期限とされる。

3  争いのない事実等

(1)  原告甲に対する相続税の納税猶予の特例の適用

原告甲の祖父で養親(C56年1月28日養子縁組)でもあった丙(以下「丙」という。)は、農業を営んでいたが、同年10月12日に死亡し、原告甲は、丙が農業の用に供していた大阪市住吉区(地積968.59平方メートル。別紙甲・(有)A所有不動産の明細(以下「明細書」という。)番号7)(以下、大阪市住吉区所在の土地については、その所在を省略して「106番の土地」等という。)を相続により取得した。原告甲は、当該相続に係る相続税の申告書において、106番の土地について相続税の納税猶予の特例の適用を受ける旨の記載をして、その適用を受けていた。

(2)  原告甲の特定転用制度の利用

ア 原告甲は、平成4年11月10日、106番の土地に、鉄筋コンクリート造5階建の共同住宅を新築し、公社に貸付けを行う見込みであるとして、被告の承認を求めて申請を行い、被告は、同年12月3日、これを承認した。

イ 原告甲は、平成6年2月14日、106番の土地を敷地として、鉄筋コンクリート造スレート葺5階建の共同住宅(別紙明細書番号8。以下「本件建物」という。)を新築した。

ウ 原告甲は、同年4月1日付けで、公社に対し、本件建物を以下の約定にて賃貸した(甲7、8)。

(ア) 契約期間 契約締結日から20年間

(イ) 借上料 満室時の家賃総額(月額271万2000円)

(ウ) 契約当事者の変更

原告甲は、契約期間中にあっては、公社の承諾なくしてこの契約の当事者としての地位を他に譲渡又は承継してはならない。

(3)  原告Aが設立されるまでの原告甲の資産状況

原告甲は、平成8年までに、丙及び実父丁(以下「丁」という。)からの相続等により、別紙明細書記載の各不動産を順次所有するようになった。そのうち、原告甲は、2筆の土地(別紙明細書番号1、4)及び3棟の建物(別紙明細書番号2、3、8。

以下、上記2筆の土地と合わせて「本件各賃貸不動産」という。)を賃貸していた。

なお、上記3棟の建物のうち、別紙明細書番号2及び8の各建物は既登記建物、別紙明細書番号3の建物は未登記建物である。

(4)  原告Aの設立

原告Aは、平成8年12月26日、不動産の賃貸、管理及びこれに付帯関連する一切の事業を目的として設立された。原告Aの資本の総額は500万円、出資一口の金額は10万円で、社員は、原告甲(出資口数30口)及び原告甲の妻乙(同20口)の2名である。なお、設立当初は、原告甲が代表取締役に、乙が取締役になり、戊(以下「戊」という。)が監査役になっていたが、原告甲は、平成12年2月17日に代表取締役を退任して取締役を辞し、戊も同日、監査役を退任した。

原告甲は、平成9年1月1日、原告Aに対し、本件各賃貸不動産のうち、既登記建物である別紙明細書番号2の建物及び別紙明細書番号1の土地の登記名義を移転した。

(5)  原告甲の所得税の確定申告の状況

ア 平成8年分以前の状況

原告甲は、平成8年分以前の所得税の確定申告においては、本件建物を含む本件各賃貸不動産から生じる賃料収入及び必要経費を、原告甲の収入及び経費として会計処理し、各年分の所得税の確定申告をしていた。

イ 平成9年分以後の状況

(ア) 平成9年分所得税の予定納税額の減額申請

原告甲は、平成9年10月31日、同年分の所得税の予定納税額につき、原告Aを設立して法人成りをしたため、原告甲は不動産賃貸業を廃業したとの減額申請理由を記載した減額申請書(以下「本件減額申請書」という。)を被告に提出し、被告は、同年11月19日、これを承認した。

(イ) 平成9年分以後の所得税の確定申告の状況

原告甲は、平成9年分の所得税の確定申告書に、同年1月1日、本件各賃貸不動産のうち、本件建物、別紙明細書番号1の土地及び別紙明細書番号2、3の各建物(以下「本件各譲渡申告不動産」という。)を原告Aに譲渡した旨記載した譲渡所得計算明細書を添付して、法定申告期限までに提出した。上記確定申告書には、本件建物を含む本件各譲渡申告不動産の譲渡所得が計上され(なお、実際には、収入金額と必要経費の差引計算により譲渡所得は発生していない。)、それまで計上されていた本件建物を含む本件各賃貸不動産の賃料は、不動産所得として計上されていなかった。

原告甲の平成10年分の所得税の確定申告書にも、本件建物を含む本件各賃貸不動産の賃料が不動産所得として計上されていなかった。

(6)  原告Aの法人税の確定申告の状況

原告Aは、平成8年12月26日から平成9年10月31日まで(平成9年10月期)、同年11月1日から平成10年10月31日まで(平成10年10月期)及び同年11月1日から平成11年10月31日まで(平成11年10月期)の各期において、本件建物を含む本件各賃貸不動産から生じる賃料収入、経費を同社の益金、損金として会計処理して、上記各事業年度の法人税の確定申告を各法定申告期限までに行った。

(7)  原告ら及び被告職員との接触状況

被告職員は、原告甲が原告Aに対し本件建物を譲渡したことにより特定転用に係る相続税の納税猶予の期限が確定したことを確認、説明するため、平成11年11月2日、原告甲の兄C(以下「C」という。)の自宅に電話を架け、原告甲及びCに住吉税務署への来署を依頼した。

その後、同月4日に戊が、平成12年2月3日に原告甲が、それぞれ住吉税務署に赴き事情を説明した。被告職員は、原告甲が訪れた際、同人に対し、本件建物の譲渡により特定転用に係る相続税の納税猶予の期限が確定したことになる旨説明した。

同月下旬ころには、原告甲の委任を受けた弁護士や税理士らが住吉税務署に赴き、相続税の納税猶予を引き続き認めてもらえるように申し出、同年3月3日には、その旨の嘆願書を提出した。

(8)  原告甲に対する督促処分及び差押処分

被告は、平成12年4月25日、原告甲に対し、本件建物の譲渡により特定転用に係る相続税(3449万5400円)の納税猶予の期限が平成9年3月1日に確定したとの通知をした。

原告甲は上記相続税3449万5400円及びその利子税3395万5400円を納付しなかったため、被告は、平成12年6月14日、原告甲に対し、督促状によりその納付を督促し(以下「本件督促処分」という。)、さらに、同月19日、納税猶予に係る相続税の担保として提供されていた別紙物件目録記載の土地を差し押さえた(以下「本件差押処分」という。)。

(9)  原告Aの更正請求

原告Aは、平成12年6月23日、被告に対し、平成9年10月期、平成10年10月期及び平成11年10月期の各事業年度に係る法人税について、原告甲が原告Aに対し本件建物を譲渡した事実はないから、本件建物から生ずる賃料収入、経費を原告Aの益金、損金として会計処理して法人税の確定申告をしたことは誤りであったなどとして、更正の請求をした(以下「本件各更正請求」という。)。

被告は、本件各更正請求は理由がないと判断し、平成12年9月22日付けで、更正すべき理由がない旨の各通知をした(以下「本件各通知処分」という。)。

(10)  不服申立て

ア 本件督促処分について

原告甲は、本件督促処分を不服として、平成12年6月23日、被告に対し異議申立てをしたところ、被告は、同年9月29日付けで、原告甲の異議申立てを棄却するとの決定をした。

原告甲は、同年10月24日、国税不服審判所長に対し、本件督促処分について審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成14年4月16日、原告甲の審査請求を棄却するとの裁決をした。

イ 本件差押処分について

原告甲は、本件差押処分を不服として、平成12年6月30日付けで、被告に対し異議申立てを行ったが、被告は、同年9月29日付けで、原告甲の異議申立てを棄却するとの決定をした。

原告甲は、同年10月24日付けで、国税不服審判所長に対し、本件差押処分について審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成14年4月16日、原告甲の審査請求を棄却するとの裁決をした。

ウ 本件各通知処分について

原告Aは、本件各通知処分を不服として、平成12年10月16日、国税不服審判所長に対し、本件各通知処分について審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成14年4月16日、原告Aの審査請求を棄却するとの裁決をした。

(11)  平成11年分以降の原告甲の所得税の確定申告の状況等

原告甲は、平成11年分の所得税の確定申告書において、本件建物については、その賃料を再度、原告甲の不動産所得として計上して、法定申告期限前の平成12年3月14日に所得税の確定申告をした。

なお、原告甲は、平成9年分及び平成10年分の所得税に関しては、修正申告を行っていない。

(12)  原告甲は、原告Aを被告として、本件建物が原告甲の所有に属することの確認を求める訴訟(大阪地方裁判所平成12年(ワ)第2928号所有権確認請求事件。以下「本件確認訴訟」という。)を提起し、同年6月22日、原告甲の請求を認容する判決(以下「本件確認判決」という。)が言い渡され、同判決は確定した。

4  争点及び当事者の主張

本件督促処分及び本件差押処分の適否は、特定転用に係る相続税の納税猶予期限が確定したといえるか否か、すなわち、原告甲が原告Aに本件建物を有効に譲渡したか否かに係っており、本件各通知処分の適否は、上記の点に加えて、原告Aが法人税法129条2項所定の修正経理等を行ったか否か及び本件確認判決に基づき国税通則法23条2項1号による更正請求をすることが許されるか否かに係っている。

したがって、本件の争点は、(1)原告甲が本件建物を原告Aに譲渡したか否か、(2)その譲渡が通謀虚偽表示に当たるか否か、(3)通謀虚偽表示による無効の主張が信義則に反するか否か、(4)譲渡が錯誤により無効といえるか否か、(5)原告Aが法人税法129条2項所定の修正経理等を行ったか否か、(6)本件確認判決に基づき国税通則法23条2項1号による更正請求をすることが許されるか否かである。

(1)  原告甲が本件建物を原告Aに譲渡したか否か

(被告の主張)

ア 申告納税制度は、事情に最も精通した納税者自らの申告により、その所得を確定させようとする制度であるところ、このような申告納税制度の趣旨及び税法上の信義則に照らせば、納税者が申告した事実は、納税者が錯誤等故意又は過失なく申告を誤った場合であるなどの特段の事情がない限り、それが存在するものと推認するのが相当であり、その推認を破るには、納税者等が上記特段の事情の存在を合理的な疑いのない程度の高度の蓋然性をもって立証する必要があるというべきである。

このことは、真実性の原則が会計の最高法規とされ、納税者は当然に真実に基づき会計処理をし、それに基づき確定申告していることからも裏付けられる。

したがって、本件においても、本件建物を譲渡したとの申告がされている以上、特段の事情がない限り、本件建物の譲渡の事実が存在すると推認され、その推認を破るためには、原告らにおいて、特段の事情の存在を合理的な疑いのない程度の高度の蓋然性をもって立証する必要がある。

イ 原告甲は、平成9年分の所得税の確定申告において、原告Aに対し本件建物を譲渡した旨を記載した譲渡所得計算明細書を提出し、それを前提とした譲渡所得を計上しており、他方、それまで不動産所得として計上してきた本件建物の賃料を不動産所得として計上せず、翌年分の所得税の確定申告においても、それと同様の取扱いをした。しかも、原告甲は、本件減額申請書に、原告Aを設立して法人成りをしたため、不動産賃貸業を廃業した旨明確に記載して、平成9年分の所得税の予定納税額の減額を申請している。このように、原告甲自身が本件建物を譲り渡したことを前提とする行動をとっていた。

また、原告甲は本件建物を譲渡したことはないと主張しているが、平成9年分及び平成10年分の所得税の確定申告につき、修正申告をしておらず、原告甲は、本件建物を譲り渡していないのであれば当然行われてしかるべき行動をとっていない。

一方、原告Aは、平成9年10月期及び平成10年10月期において、本件建物を資産として計上したほか、平成9年10月期から平成11年10月期まで継続して、本件建物の賃料、経費を原告Aの益金、損金として会計処理をした上で、法人税の確定申告をしており、本件建物を譲り受けたことを前提とする行動をとっていた。

このように、譲渡の両当事者である原告甲と原告Aとが本件建物が譲渡されたことを前提とする行動をとっていたことからすれば、原告甲が原告Aに対し本件建物を譲渡したことは明らかである。

ウ 原告甲は、戊から原告甲が所有する不動産について、新たに会社を設立してその会社に不動産を譲渡して運用する方が節税できると勧められたことから、その勧めに応じて、原告Aを設立し、本件建物を含む本件各譲渡申告不動産を原告Aに譲渡したとの申告をして、現に本件建物を含む本件各譲渡申告不動産につき節税の利益を享受していた。また、本件建物を除く本件各譲渡申告不動産が節税目的で原告甲から原告Aに対して真実譲渡されていることについては争いがないところ、本件建物を含む本件各譲渡申告不動産は、譲渡所得計算明細書上、同一人(原告甲)から同一人(原告A)に対し同1日(平成9年1月1日)に譲渡された旨が記載されているのであるから、これらについては一括して取り扱うのが自然かつ合理的である。

エ 原告甲は、平成9年1月1日当時、本件各譲渡申告不動産の外に、105番の土地、53番の土地等を所有していたところ、これらの土地については、譲渡所得計算明細書上、原告甲から原告Aに譲渡された旨の記載がない。原告甲は、平成9年分の所得税の確定申告に際して、所有する不動産のうち、原告Aに譲渡したとの申告をする不動産とそれ以外の不動産とを明確に峻別して申告をしていたのであるから、譲渡したとの申告のある不動産は真実譲渡があったものと、それ以外の不動産は譲渡がないものと推認するのが相当である。

オ 原告らの主張は、次のとおり失当である。

(ア) 特定転用制度、公社との賃貸借契約との関係

原告らは、本件建物を第三者に譲渡した場合には、特定転用制度を利用することができなくなること、また、公社との賃貸借契約違反になり、多大な不利益を被ることから、原告甲が本件建物を譲渡することはあり得ないと主張する。

しかし、公社との賃貸借契約においては、契約当事者としての地位の譲渡、承継が禁じられているだけで、建物所有権の譲渡については必ずしも禁じられていたわけではない。

また、原告甲が提出した嘆願書案(骨子)及び嘆願書の記載、原告らと被告職員の接触状況等に照らしても、原告らは、納税猶予が打ち切られる不利益については一切検討していなかったというほかないから、原告らの主張は失当である。

(イ) 確定申告の経緯について

原告らは、本件建物について、譲渡をしていなくても、譲渡したかのような確定申告をする必要があるという認識だったとか、戊から商法上の競業避止義務の規定に関する独自の説明を受け、理解できないまま、戊の勧めるとおりにしたにすぎないと主張する。しかし、譲渡をしていなくても譲渡したかのような確定申告をする必要があるということ自体極めて不自然であり、原告甲が係る認識をしていたとは信用し難い。

また、戊は、税理士事務所で10年以上働き、その間、税理士と変わらない仕事をしていたのであり、その後独立し、D事務所の名称で、原告甲が確定申告をするまでに既に15年以上にわたり、税務申告書の作成を含めた経営経理指導等の業務に従事していた。このような経歴を有する戊が、競業避止義務につき誤った理解をしているとは到底考えられないし、内容虚偽の確定申告をするよう指導したというのは極めて不自然である。

原告らが主張するような状況であったのであれば、原告甲が、本件各譲渡申告不動産以外に所有していた土地についても同様の処理がされるはずであるが、そのような処理がされておらず、原告らの主張は信用し難い。

また、原告甲の確定申告が、戊の勧めるとおりにしたものであったとしても、原告甲は自ら意思決定をして、本件建物の譲渡及びそれを前提とする確定申告を行ったのであるから、本件建物の譲渡があったとの結論を左右するものではない。

仮に、戊が、原告甲の意思に反して本件建物の譲渡やそれを前提とする確定申告を行っていたとしても、その後、原告甲は戊から説明を受けたのであるから、事後的に本件建物の譲渡及びそれを前提とする確定申告を追認していたといえる。

しかも、確定申告書を見れば、原告甲が原告Aに本件建物を譲渡したことを前提としていることは明らかであるにもかかわらず、原告甲は、直ちに修正申告や更正請求等をすることもなく、被告から特定転用に係る相続税の納税猶予期限が確定することを指摘されるまでの3年間、何らの手段を講じていなかったことからすれば、原告甲は、自らの意思で本件建物を譲渡したか、事後的に追認したものであるとうかがわせる。

(ウ) 所有権移転登記について

原告らは、本件建物を譲渡していない根拠として、本件建物について、原告甲から原告Aへの所有権移転登記がされていないことを挙げる。しかし、そもそも、所有権移転登記は不動産の譲渡の成立要件ではなく、対抗要件にすぎないから、その有無により不動産の譲渡の有無が当然に決せられるものではない。また、本件建物について所有権移転登記を行えば公社に本件建物の譲渡が露見し、公社との賃貸借契約において問題となる可能性があることから、そのような危険性を避けるためにあえて所有権移転登記を行っていなかったとみることも十分可能である。

(エ) 社員総会の認許について

原告らは、本件建物の譲渡がなかったことの根拠として、本件建物の譲渡に必要な原告Aの社員総会の認許(有限会社法30条)がないことを挙げるが、原告Aは実質的には原告甲と一体であるから、社員総会の認許を得ていなくても不自然ではない。そもそも、原告甲と原告Aは利害対立関係にないから、本件建物の譲渡につき、原告Aの社員総会の認許が不要であったと解する余地もある。また、所有権移転登記を行った不動産について、登記申請の際の便宜として社員総会の認許の外形を作出し、それ以外の不動産については、外形を作出する必要がなかったものと思われる。

(オ) 原告らと被告職員の接触状況

原告甲が、本件建物は譲渡されていないと最初に主張したのは、平成12年3月3日に嘆願書(乙3)が提出された時であり、税務調査が相当程度進行し、終わりに差し掛かったころである。真に本件建物を譲渡していなかったのであれば、税務調査の当初より譲渡がない旨を主張してしかるべきである。

被告職員から納税猶予期限が確定する旨の指摘を受けた後になって、急に本件建物の譲渡がなかったと主張したこと、「調査官から建物を譲渡しているので納税猶予を打切る旨の説明をお聞きして予想もしなかった事態に大変驚きました。」などと記載した嘆願書を提出したことに照らせば、本件建物の譲渡により、予期に反して特定転用に係る相続税の納税猶予期限が確定することを知った原告らが、何とか相続税の納税猶予の継続を取り付けようとして、後付けで弁解を取り繕っているにすぎない。

(原告らの主張)

ア 課税処分の取消訴訟における課税要件の存否については、課税庁である被告に立証責任がある。被告の主張は、租税法律主義を無視又は軽視した特異な見解であり、バランスを著しく欠いた不当な見解である。

イ 戊は、平成8年、原告甲に対し、原告甲が所有する不動産について、新たに会社を設立し、その会社に不動産を譲渡して運用する方が節税できると勧めた。原告甲は、本件建物については譲渡しないでほしいと説明した上で、会社の設立と不動産の譲渡に同意した。

原告Aは平成8年12月26日に設立され、平成9年1月1日売買を原因として、原告甲所有の不動産のうち、別紙明細書番号1ないし3の各不動産を原告Aに譲渡した。既に登記済みの別紙明細書番号1、2の各不動産については、平成9年12月16日に原告甲から原告Aに所有権移転登記がされた。別紙明細書番号3の不動産については未登記のままである。これに対し、本件建物は譲渡していないから、原告甲名義の登記がされているにもかかわらず、所有権移転登記が行われていない。

また、他の賃貸不動産で譲渡していない不動産(別紙明細書番号4)についても所有権移転登記がされていない。

ウ 本件建物を譲渡した場合に原告甲が被る不利益は大きく、このような不利益を認識していた原告甲が、本件建物を原告Aに譲渡することはあり得ない。

(ア) 納税猶予の打切り

本件建物を譲渡した場合、納税猶予が打ち切られることになり、相続税だけでも3449万5400円を支払わなければならないことになる。しかも、相続税の申告書の提出期限の翌日から20年を経過した場合には、納税猶予分の相続税については免除されるところ、本件において被告が主張する譲渡の日時は、相続から15年以上経過した平成9年1月1日である。

(イ) 公社との賃貸借契約との関係

公社との賃貸借契約では、公社は原告甲から本件建物を20年間借り上げ、その間、原告甲に対して、借上料として入居者の有無にかかわらず満室時の家賃総額を支払うこととなっていた。また、公社は、原告甲に対し、共同施設整備費に対する助成金として3993万8000円を交付していた。一方、同契約では、公社の承諾なく、原告甲が契約当事者としての地位を他に譲渡してはならないとされており、これに反して、原告甲が本件建物を譲渡した場合に、20年間にわたり、満室時の家賃総額を受け取る権利を失い、助成金の返還を求められる不利益を認識していた。

エ 相続後3年以内であれば、相続税額のうちの一定の金額を土地譲渡の原価として算入してもよい、すなわち、その範囲において評価額で譲渡すれば、譲渡所得税はかからないということから、丁からの相続土地については、丁からの相続(平成7年1月5日)後3年以内に一定の範囲で譲渡する緊急性があった。

しかし、建物については、簿価で購入すれば譲渡所得税はかからないのであるから、いつ譲渡してもよく、譲渡の緊急性はなかった。したがって、納税猶予の打切りや公社との賃貸借契約違反という危険を冒してまで、本件建物を譲渡する緊急性も必要性もなかった。

オ 原告甲は、戊から平成9年分以降の所得税の確定申告において、商法上の競業避止義務の規定に関する説明を受け、理解できないまま戊の勧めるとおり、本件建物を原告Aに譲渡したかのような記載をして申告をした。

原告Aも、本件建物だけでなく、原告甲から原告Aに譲渡されていない別紙明細書番号4の土地を含めて、本件各賃貸不動産の賃料収入、経費をすべて原告Aに帰属するものとして会計処理し、平成9年10月期以降の法人税の確定申告をした。被告は、戊の経歴から競業避止義務について誤った理解をしているとは到底考えられないと主張するが、戊は税理士資格を有しておらず、商法等の基本的知識を十分に有していなかったのである。前述のとおり、戊は、原告甲が所有する賃貸不動産についてすべての収入、費用を原告Aの益金、損金として計上しており、戊が商法の競業避止義務に関し独自の見解を有していたことは明らかである。

被告は、原告甲が譲渡を前提とした行動をとっていることから、原告甲が譲渡の意思表示又は譲渡の追認をしていたと主張するが、戊及び原告甲の当時の認識としては、本件建物について、譲渡をしていなくても、譲渡したかのような確定申告をする必要があるという認識だったのであって、原告甲が譲渡の意思決定をした又は譲渡を追認したというような事情は存在しない。

カ 原告甲から原告Aに本件建物を譲渡する場合には、原告Aの社員総会の認許が必要であるが、本件建物についてそのような認許はされていない。

キ 被告は、原告らが本件建物の譲渡を否定したのは税務調査の終わりに差し掛かったころと主張するが、平成11年11月2日以降、原告らは一貫して本件建物の譲渡を否定してきた。

被告は、原告甲が相続税の納税猶予期限が確定する旨指摘された後、急に本件建物の譲渡がなかったと主張をしたことや嘆願書等の記載内容に照らし、原告らは何とか相続税の納税猶予の継続を取り付けようとして弁解していると主張するが、原告甲及び戊は、本件建物を譲渡した場合の不利益を理解した上で、譲渡しないこととしたのであり、被告職員から指摘を受けた原告甲が、予想もしなかった納税猶予の打切りに驚き、本件建物の譲渡はなかったと述べたのは自然である。

ク 以上によれば、原告甲から原告Aに本件建物を譲渡したとはいえない。

(2)  本件建物の譲渡が通謀虚偽表示に当たるか否か

(原告らの主張)

仮に、本件建物について、原告甲と原告Aとの間に譲渡契約の外形が認められるとしても、当事者双方に譲渡の効果意思がないのであるから、かかる譲渡契約は通謀虚偽表示であって無効である。

(被告の主張)

原告甲は節税目的で本件建物を原告Aに譲渡し、それは真意に基づくものであるから、原告甲から原告Aへの本件建物の譲渡は虚偽表示には該当しない。

(3)  通謀虚偽表示による無効の主張が信義則(民法1条2項)に反するか否か

(被告の主張)

仮に、本件建物の譲渡が原告甲と原告Aとの間の通謀虚偽表示であったとしても、原告らが被告に対して、本件建物の譲渡が無効であると主張することは信義則に反するというべきである。

そもそも、一定の経済目的の達成や経済的効果の発生を実現する複数の手段が存在する場合、そのうちいかなる法形式を採用するかは私的自治の原則の下、当事者の自由な選択にゆだねられており、節税も同原則の下で、これを選択する当事者の責任と負担において行われるものである。

したがって、その意図に反して課税されたとしても、それは単に節税対策が誤っていたにすぎないのであり、そもそも節税対策であることの認識がある以上、それが功を奏して他の法形式を選択した場合よりも税金の点で利益を享受することがある反面、場合によっては期待するような節税効果が上げられないこともあり得るのであって、このような節税対策につき通謀虚偽表示による無効を主張することは、現実に課税された時点で当初の期待に反することを理由に、しかもそれが誤っていた場合にのみ、上記法形式を前提に形成された租税法律関係を覆すことになる。これは、一方で法形式選択の自由を享受しながら、他方で自らの判断の誤りをもって撤回することを許すことになり、これを安易に許せば、当該納税者との関係で租税法律関係が不安定になるばかりか、納税者間の税負担の公平を害し、ひいては税制全体に対する不信、破壊につながりかねず、許されるべきではない。

本件において、仮に本件建物の譲渡が通謀虚偽表示であったとすると、原告甲は、節税目的で、本件建物の譲渡があったかのような虚偽の外形を意図的に作出した上、その結果として、現に本件建物につき節税の利益を享受していたことになる。このような原告甲において、予期に反して特定転用に係る相続税の納税猶予の期限が確定するからといって、通謀虚偽表示に基づく無効主張を許せば、一方では通謀虚偽表示であることを秘して虚偽の外形に基づいて節税の利益を享受しておきながら、予想外の税金上の不利益が及ぶ場合に限って、当該外形が通謀虚偽表示であったと主張して、当該不利益を避けることができることになり著しく不当である。

したがって、自ら通謀虚偽表示を行った原告らが、自ら作出した虚偽の外形に基づいて本件督促処分及び本件差押処分を行った被告に対し、本件建物の譲渡が通謀虚偽表示により無効である旨を主張することは信義則上許されない。

(原告らの主張)

被告は、虚偽表示による無効を主張するのは信義則に反すると主張するが、原告甲は、節税目的で本件建物の譲渡があったかのような虚偽の外形を意図的に作出したものではない。また、本件のような場合について信義則を理由に課税処分を適法とすることは、法律によって定められた課税要件が存在しない場合にも課税処分を行うことを認めることになり、租税法律主義に反する。

(4)  譲渡が錯誤により無効といえるか否か

(原告らの主張)

仮に譲渡契約の成立が認められるとしても、原告甲が、平成10年12月に特定転用の継続届出書を提出したことからも明らかなように、原告甲も原告Aも、本件建物を譲渡したとしても納税猶予が取り消されることはあり得ないということを当然の前提とし、かつその旨を明示的若しくは黙示的に表示して譲渡したところ、被告から予期に反して納税猶予が打ち切られることを指摘されたものであって、かかる譲渡契約には要素の錯誤があるから無効である。

(被告の主張)

ア 節税も私的自治の原則の下で当事者の責任と負担において行われるべきものであるところ、節税対策であることの認識がある以上、それが功を奏して他の法形式を選択した場合よりも税金の点で利益を享受することがある反面、場合によっては期待するような節税効果が上げられないことのあり得ることも当然想定すべきである。錯誤無効の主張を許すことは、現実に課税された時点で当初の期待に反することを理由に、しかもそれが誤っていた場合にのみ、上記法形式を前提に形成された租税法律関係を覆すことを意味し、一方で法形式選択の自由を享受しながら、他方で自らの判断の誤りをもって撤回することを許すことになり相当でない。

本件においては、原告甲が原告Aを設立し、原告Aに所有する不動産を譲渡して節税効果を上げるために、本件建物を譲渡したのであるから、結果として期待した節税効果が上げられなかったとしても、錯誤無効を主張して選択した法形式を否定することはできない。

イ 本件において、錯誤無効が問題となる法律行為は、本件建物の譲渡であり、その意思表示の主要な部分は目的物である本件建物の性状とその対価等である。法律行為に伴う課税関係、租税負担が意思表示の主要な部分になるには、少なくとも、当該法律行為に直接的かつ当然に伴う課税関係等であることを要し、当該法律行為の結果たまたま生じるにすぎない課税関係等は、その多寡を問わず、意思表示の主要な部分にはならないというべきである。

本件で問題となっている課税関係等は、本件建物を譲渡した結果、「共同住宅の貸付けを行わないこととなった」として「転用をされたものとみな」され、その結果、納税猶予が打ち切られて納税猶予の期限が確定したというものであり、このような課税関係等は、譲渡所得税のように、本件建物の譲渡によって直接的かつ当然に生じるものではなく、本件建物の譲渡によってたまたま生じた結果にすぎない。

したがって、本件の相続税の納税猶予期限の確定に関する原告甲の錯誤は、意思表示の主要な部分とはいえず、要素の錯誤に該当しない。

(5)  原告Aは、本件各更正請求に関し、法人税法129条2項所定の修正経理等を行った否か

(被告の主張)

仮に、本件建物が譲渡されていなかった場合、原告Aは、本件建物の譲渡がないのに、これがあるかのように装って、平成9年10月期、平成10年10月期及び平成11年10月期の各事業年度について、本件建物から生ずる賃料収入、経費を原告Aの益金、損金として会計処理をして法人税の確定申告をしたことになり、このようにしてされた申告が法人税法129条2項の「事実を仮装して経理したところに基づく」ことは明らかである。原告Aは、同項に従い、その後の事業年度の確定決算においてその事実を修正し、かつ、当該確定決算に基づく確定申告をしていないから、被告には本件各更正請求に応じる義務はない。

(原告Aの主張)

前述のとおり、原告らは、本件建物を譲渡する意思がなかったが、競業避止義務に関する戊の誤解から、原告Aにおいて申告書に本件建物の譲渡があったかのような記載をして法人税の確定申告をしてしまったのであって、原告Aの申告は、「事実を仮装して経理したところに基づく」ものに当たらない。

(6)  原告Aの平成9年10月期及び平成10年10月期の各事業年度に係る法人税の更正請求について、本件確認判決に基づき、国税通則法23条2項1号による更正請求をすることが許されるか。

(原告Aの主張)

本件確認判決は、戊の陳述書、不動産登記簿謄本等、原告らが本件訴訟において提出しているものと同様の書証に基づき、本件建物について譲渡の事実はなかった旨を確認した判決であり、客観的、合理的根拠を有するものであって、国税通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当する。また、原告らは、本件建物を譲渡し、又は譲渡を受ける意思がなかったが、競業避止義務に関する戊の誤解から、原告Aにおいて申告書に本件建物の譲渡があったかのような記載をして法人税の確定申告をしてしまったのであり、しかも、原告Aは、平成11年11月以降被告職員からの説明を受けて初めて、そのような誤解に気付いたのであるから、原告Aが、国税通則法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があったというべきである。

(被告の主張)

ア 国税通則法23条2項1号は、納税者において、申告時には予測し得なかった事態が後発的に生じたため課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を来し、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から1年を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となるから、例外的に更正請求を認めて納税者の保護を拡充したものである。したがって、同号により更正の請求をすることが許されるのは、同条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由がある場合に限られ、納税者が、申告時から、「判決」により確定された事実と申告等に係る課税標準又は税額等の計算の基礎となった事実とが異なることを知っていた場合に、更正の請求をすることは許されないというべきである(最高裁平成15年4月25日第二小法廷判決判時1822号51頁参照)。

本件において、仮に、本件建物が譲渡されていなかった場合、原告Aは、本件建物が譲渡されていないことを認識しながら、本件建物の譲渡があるかのように装って、平成9年10月期及び平成10年10月期の各事業年度に係る法人税の確定申告をしていたことになるから、国税通則法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとは到底いえず、原告Aが、本件確認判決に基づき、平成9年10月期及び平成10年10月期の各事業年度に係る法人税の更正請求をすることは許されない。

イ また、前述の国税通則法23条2項1号の趣旨からすると、申告後に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実について判決がされた場合であっても、なれ合いによって判決を得た場合等、その実質において客観的、合理的根拠を欠くものであるときは、同法23条2項1号の「判決」には該当しないというべきである。

本件では、原告Aは原告甲から譲り受けた不動産を運用して営業を行っている上、原告甲は原告Aの出資口数の過半数を出資し、設立当初から、本件確認訴訟の提起直前まで、原告Aの代表者を務めていた。本件確認訴訟は、このような原告甲と原告Aとの間の訴訟であって、原告甲の原告Aに対する本件建物の所有権の確認を求める請求が認容され、確定したというものである。また、同訴訟において、原告Aの監査役であった戊の陳述書が提出されたが、同人は原告甲の主張を裏付ける陳述をしている。このような事情からすれば、本件確認判決は、被告職員から本件建物の譲渡により特定転用に係る相続税の納税猶予期限が確定したことになるとの説明を受けた原告甲が、納税猶予に係る相続税の負担を免れる目的で、原告甲と実質的には一体である原告Aとの間でなれ合いにより得た判決であって、客観的、合理的根拠を欠くものである。したがって、本件確認判決は、国税通則法23条2項1号にいう「判決」には該当せず、同号による更正の請求は認められない。

第3  当裁判所の判断

1  争いのない事実等に加えて、本件の証拠(甲6、17ないし20、27、33、57、58、65、69、71、73、92、乙7、16、原告甲本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1)  戊は、丁の死後、相続税申告書作成の依頼を受け、以後、原告甲の所得税の確定申告書の作成の依頼を受けていた。

(2)  原告甲は、所有する不動産について、新たに会社を設立してその会社に不動産を譲渡して運用する方が課税上有利であると戊から勧められたので、平成8年12月26日、原告Aを設立した。

(3)  戊は、原告甲から原告Aへの不動産の譲渡について、譲渡所得税がかからないように配慮した。建物については、簿価で譲渡すれば譲渡所得税はかからないため、原則としてすべての賃貸建物を譲渡しようとした。土地については、相続してから3年以内であれば、相続税額のうちの一定の金額を土地譲渡の原価として算入でき、その範囲内の評価額の土地を譲渡すれば譲渡所得税はかからないから、算入できる相続税額(9325万8711円)を計算し、その範囲内の評価額であった別紙明細書番号1(8795万1200円)の土地について譲渡することとした。

(4)  原告甲は、本件建物を含む本件各譲渡申告不動産について原告Aに譲渡したとして平成9年分の所得税の確定申告をし、既登記不動産である別紙明細書番号1、2については、平成9年1月1日売買を原因として原告甲から原告Aに所有権移転登記をした。未登記不動産である別紙明細書番号3については現在も未登記のままであり、本件建物については、原告甲名義のままとなっている。

(5)  原告Aは、平成9年10月期、平成10年10月期及び平成11年10月期において、本件建物を含む本件各賃貸不動産の賃料収入及び経費を原告Aの益金及び損金として会計処理し、法人税の確定申告をした。このうち、別紙明細書番号4の土地については原告甲の所得税確定申告においては譲渡対象としておらず、登記名義人も原告甲のままである。

(6)  平成9年10月期及び平成10年10月期の原告Aの決算報告書及び確定申告書の資産及び負債には、本件建物及び本件建物に関する負債が含まれている。

2  争点(1)(原告甲が本件建物を原告Aに譲渡したか否か)について

(1)  被告は、本件建物が原告Aに譲渡され、原告甲が公社に対して本件建物の貸付けを行わないこととなったため、相続税の納税猶予が打ち切られ納税猶予期限が確定したとして本件督促処分を行ったのに対し、原告らは、本件建物を譲渡していないと主張するので、以下検討する。

(2)  ①原告甲は、平成9年分の所得税の確定申告において、本件建物を原告Aに譲渡した旨の譲渡所得明細書(乙7)を提出し、それまで不動産所得として計上していた本件建物の賃料収入を計上しなくなったこと、②原告Aが、平成9年10月期、平成10年10月期及び平成11年10月期において、本件建物の賃料収入及び経費を原告Aの益金、損金として会計処理し、確定申告したこと、③同じく平成9年10月期及び平成10年10月期において本件建物及び本件建物に関する負債が原告Aの資産及び負債として会計処理され、確定申告されたこと、④原告甲は、平成9年分の所得税の予定納税額について、原告Aを設立して法人成りし、原告甲は不動産賃貸業を廃業した旨の減額申請書を提出し、被告から承認されていること、⑤原告Aを設立したのは、原告甲が所有する不動産を原告Aに譲渡して運用する方が課税上有利であると戊に勧められたからであり、戊は賃貸建物については簿価で譲渡すれば譲渡所得税がかからないことから、すべて譲渡するつもりであったことなどの事情を考慮すれば、本件建物は原告甲から原告Aに譲渡されたことが強く推認される。

(3)  原告らは、譲渡がないことの理由として、本件建物の登記が原告甲名義のままであり、所有権移転登記がされていないこと(甲6)を挙げる。しかし、登記自体は所有権移転の対抗要件であり、登記が移転していないからといって譲渡がないとは必ずしもいえないこと、本件建物には公社との間に賃貸借契約が締結されており、同契約の内容として、当事者の地位の変更禁止が定められているところ、公示されている登記について所有権移転登記手続をすれば、公社にこれが判明する可能性があり、公社が本件建物の譲渡を覚知するのを恐れて、原告Aへの所有権移転登記をしなかった可能性も十分考えられることからすれば、移転登記がされていないことをもって本件建物の譲渡を否定することはできない。

(4)  原告らは、本件建物を譲渡することによって被る不利益を理解していた以上、本件建物を譲渡することはあり得ないと主張する。

確かに、公社との賃貸借契約の内容である当事者の地位の変更禁止の定めに反した場合、公社から毎月、満室時の賃料を得られなくなり、多額の助成金を返還しなければならない不利益を被る。しかし、公社との契約は、本件建物の譲渡自体を禁じるものではない上、前記のとおり移転登記をしないことにより公社が譲渡の事実を覚知するのを避けようとした可能性も十分考えられる。

また、本件建物の譲渡により、特定転用制度の適用を受けられなくなり、納税猶予の期限が確定することから、相続税だけでも約3400万円の負担を強いられる不利益を被る。しかし、納税猶予の期限が確定することを知った原告甲が、被告に納税猶予の継続を申し出るために作成し、提出した嘆願書案(乙13)及び嘆願書(乙3)には、被告担当職員から納税猶予打切りの説明を聞くまで、当該打切りを予期していなかった旨の記載があること、原告甲は、本件建物には特定転用制度の適用があり、譲渡できないことを戊に説明した旨供述しているのに対し、一連の確定申告書を作成した戊が平成9年に原告甲所有の不動産を譲渡した当時、特定転用制度のことは聞いていなかったと証言していることからすれば、甲の供述は信用し難く、原告甲自身も平成9年当時、本件建物を譲渡すれば納税猶予が打ち切られることについての認識を欠いていたことが推認される。

したがって、原告らの上記主張は採用できない。

(5)  原告甲は、新たに設立した原告Aにおいて不動産賃貸業をする場合は、商法上の競業避止義務の規定から原告甲個人の不動産賃貸業による収入及び経費も原告Aの益金及び損金として計上しなければならないという戊の独自の見解に基づいた会計処理を理解できないままそれに従ったことから、本件建物を譲渡したことを前提とした確定申告になったと主張する。

しかし、本件建物を原告Aに譲渡していないにもかかわらず、その賃料収入及び経費を原告Aの益金、損金に計上すること自体極めて不自然な会計処理であり、長年、経理業務に携わってきた戊がそのような会計処理をもって正しいとする見解を真に有していたかどうかも疑問であり、また、原告甲においてもその不自然さに当然疑問を抱くのが通常である。また、前記1(5)のように所得税の確定申告において譲渡対象としていない不動産の賃料収入及び経費も原告Aの益金、損金に計上するのであれば、本件建物についても譲渡を前提とする必要はなかったというべきである。さらに、原告Aの平成9年10月期及び平成10年10月期の確定申告において、本件建物の収入・経費のみならず、資産・負債についても原告Aに計上されているのであるから、戊の見解にそのまま従ったとする原告らの主張は不自然であり、採用できない。

(6)  原告らは、本件建物を譲渡するのに必要な社員総会の認許がないことを主張するが、譲渡当時、原告甲は原告Aの代表者であり、資本総額の60パーセントを出資していたこと、原告Aの社員は原告甲の他に原告甲の妻のみであり、実質的に原告甲の個人会社と推認されること、本件建物を除く本件各譲渡申告不動産については、原告甲から原告Aに対し譲渡がされたことは争いがないところ、少なくともこれらについては社員総会の認許があったものと解されることに照らせば、議事録等書類上の記載がないとしても、本件建物の譲渡についても社員総会の認許ないし社員全員の合意があったというべきである。

むしろ、本件建物については所有権移転登記をしていない以上、社員総会の認許を示す議事録等を作成する必要がなかったとも考えられ(この点は、本件建物について譲渡を証する契約書がないこととも整合する。)、議事録等の記載がないからといって、社員総会の認許がないということはできず、他に上記認定を覆すに足りる証拠はない。

(7)  原告らは、本件建物の賃料収入が、原告甲名義の預金口座に振り込まれていることを主張するが、原告甲は原告Aの代表者を務めていたものであり、原告Aが同族会社であること、公社に対しては譲渡の事実を明らかにしない方針を採っていた可能性が高いことからすれば、譲渡後も原告甲名義の口座に賃料収入が振り込まれていたとしても不自然ではない。

(8)  原告らは、原告Aに譲渡していない別紙明細書番号4の土地についても、原告Aの益金、損金に計上していることから、本件建物も譲渡していなかったと主張する。確かに、原告Aに譲渡していない土地の賃料収入を原告Aに計上することは、戊の見解に従った会計処理であるとみることができる。しかし、この土地は、前記のとおり譲渡すれば譲渡所得税がかかるもので、相続税の原価算入の限度額の点から譲渡の対象にすることができなかった土地であるのに対し、建物は簿価で譲渡すれば譲渡所得税がかからないのであるから、本件建物は譲渡し得たのであり、上記土地と本件建物を同列に論じることはできない。また、原告Aを設立した目的が、原則としてすべての賃貸建物を原告Aに譲渡し、課税上有利に運用するためであったことからすれば、上記土地の収入・経費が原告Aに計上されているからといって、本件建物も譲渡がなかったとはいえない。むしろ、前記のとおり、本件建物を譲渡していないのであれば、上記土地と同様、原告甲の所得税確定申告において譲渡対象としないことにした上で、その損益については原告Aの損益に算入することも可能であったところ、本件建物について譲渡対象としていることは、譲渡の事実があったことを推認させるものである。

(9)  以上のとおり、原告らの主張はいずれも採用できず、本件建物を譲渡したとの推認を覆すに足りる理由は他にないから、原告甲は原告Aに対し本件建物を譲渡したことが認められる。

3  争点(2)(譲渡が通謀虚偽表示に当たるか否か)について

前示のとおり、原告Aの設立目的、本件建物を含めた原告甲所有の不動産に関する譲渡申告の状況、本件建物に関する会計処理及び原告らの確定申告の内容によれば、本件建物は実質的にも原告Aに譲渡されたというべきである。

原告らは、税金対策のため本件建物の譲渡を仮装した旨主張するが、本件建物を除く本件各譲渡申告不動産については真実譲渡したことについて当事者間に争いはなく、既登記不動産については所有権移転登記手続もされているのであり、本件建物のみ譲渡を仮装したと認めることはできない。他に原告らが通謀して虚偽の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠はないから、本件建物の譲渡は通謀虚偽表示であるとは認められない。

本件建物の譲渡が通謀虚偽表示でない以上、原告の通謀虚偽表示の主張が信義則に反するか否かという問題(争点(3))も生じない。

4  争点(4)(譲渡が錯誤により無効といえるか否か)について

(1)  要素の錯誤の有無について

原告甲は、本件建物の譲渡により納税猶予が打ち切られることはないことを当然の前提として譲渡したのであるから、原告甲の意思表示に要素の錯誤があると主張する。

確かに、本件建物の譲渡により、納税猶予が打ち切られた場合、原告甲は相続税だけでも約3400万円の負担を強いられることになる。通常の一般人であれば、このような事情を知っていれば本件建物の譲渡をしなかったということはできる。

しかしながら、納税猶予の打切りは譲渡の意思表示の内容そのものではなく、譲渡によって原告甲が公社に対し本件建物の貸付けを行わないこととなったため生じる結果であって、その点の錯誤は動機の錯誤にすぎず、納税猶予の打切りがないことについて明示又は黙示の意思表示がなければ要素の錯誤に該当するものではない。

本件の場合、前記のとおり、原告甲は、本件建物の譲渡の際、本件建物について特定転用制度の適用があり、譲渡すれば納税猶予が打ち切られることについての認識を欠いていたものと認められる。よって、原告甲は、そもそも、その認識を欠いていた以上、そのことについて明示又は黙示の意思表示をしたとは考えられず、要素の錯誤に当たることを認めることはできない。

(2)  重過失の有無について

仮に、本件建物の譲渡が税金対策を目的とし、納税猶予の打切りにより多額の相続税の支払義務が現実化することなどないことを前提とするものであって、このような動機が黙示的に表示されており、原告甲に要素の錯誤が認められるとしても、①本件各譲渡申告不動産の譲渡は税金対策を目的とするものであること、②本件建物を譲渡すれば特定転用制度の適用が受けられなくなり、納税猶予が打ち切られることは法令に明記されていること、③原告甲は自ら本件建物を建築し、公社に賃貸することにより、特定転用制度の適用を受けてきたこと、④平成10年12月には特定転用の継続届出書(甲5)を提出し、当該届出書にも関連条文が明記されていたこと、⑤公社との賃貸借契約には当事者の地位の変更禁止の定めがあったことなどからすれば、原告甲には本件建物を譲渡しても納税猶予の打切りがないと信じたことにつき重大な過失があったというべきである。

(3)  錯誤無効の納税猶予打切りへの影響について

さらに、仮に原告甲が納税猶予の打切りについて錯誤があったとしても、相続税の納税猶予の打切りは、本件建物の法律行為としての譲渡自体を要件とするものではなく、本件建物の譲渡により、原告甲が公社に本件建物の「貸付けを行わないこととなった場合」に該当することになるため効果が生じるものであって、本件建物の譲渡が私法上無効であっても、原告甲が貸付けを行わないこととなったという事実自体は否定し得ないから、本件建物譲渡の錯誤無効を主張したとしても、上記譲渡に基づく事実行為を前提とした納税猶予の打切りの効果に直ちに影響があるということはできない。

(4)  以上によれば、原告らの錯誤の主張を採用することはできない。

5  以上のとおり、本件建物は原告Aに譲渡されたものであり、本件建物の譲渡により、原告甲が公社へ本件建物の貸付けを行わないこととなった場合に当たるとして、租税特別措置法の一部を改正する法律附則19条8項4号、租税特別措置法70条の6第7項により、納税猶予期限が確定したとして行われた本件督促処分及びそれに基づく本件差押処分は適法である。

6  原告Aに関する法人税の更正の請求について

(1)  更正の請求は、法定申告期限から1年以内に限ってすることができるとされているところ(国税通則法23条1項)、平成9年10月期は平成10年1月1日が、平成10年10月期は平成11年1月1日が、それぞれ法定申告期限であるから(法人税法74条1項)、平成9年10月期は平成11年1月1日までに、平成10年10月期は平成12年1月1日までに、更正の請求をしなければならない。

原告Aは、各事業年度の更正の請求を平成12年6月23日にしているから、平成9年10月期及び平成10年10月期については、請求期限を徒過している。他方、平成11年10月期の更正の請求については、請求期限内の請求である。以下、請求期限内の請求と請求期限経過後の請求に分けて論じる。

(2)  平成9年10月期及び平成10年10月期(争点(6)について)

両事業年度の更正の請求は、請求期限後の請求であるが、原告Aは本件確認判決をもって、国税通則法23条2項1号の「判決」に当たるとして更正の請求をしているので、更正すべき理由があるか検討する。

同条2項の趣旨は、申告時には予知し得なかった事由が後発的に生じたことにより課税標準等及び税額等の計算の基礎に変更を生じ税額の減額をすべき場合にも更正の請求を認めないと、帰責事由のない納税者に酷な結果が生じる場合等があることから、例外的に、一定の場合に更正の請求を認めることによって納税者を救済することにある。

このような同項の趣旨からすれば、なれ合い訴訟による判決等、客観的、合理的根拠を欠く判決は同号の「判決」に該当しないというべきである。

本件確認訴訟は原告甲及び原告Aを原告、被告とする訴訟であるが、同訴訟の提起の直前まで原告甲が原告Aの代表者を務めていたこと、原告Aは原告甲の主張事実に対し不知としていたこと(甲16の1)、原告Aの監査役を務めていた戊が原告甲の主張に沿う陳述書を提出し、証言をしていること(甲17、18)、一方、本件証拠からは、前記認定のとおり、本件建物が原告Aに譲渡された事実が認められることからすれば、本件確認判決は利害が対立する当事者間において実質的な審理がされた結果による判決とはいえず、客観的、合理的根拠を欠く判決というべきである。よって、本件確認判決に基づく更正の請求は、国税通則法23条2項1号による更正の請求の要件を満たさない。

(3)  平成11年10月期の更正の請求

原告Aは、本件建物の譲渡を受けた事実はないことを前提に、本件建物から生じる賃料収入、経費を原告Aの益金、損金として会計処理して法人税の確定申告をしたことは誤りであったなどとして更正の請求をしている。

しかし、前記のとおり、原告甲が原告Aに本件建物を譲渡したことが認められるから、「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるとき」(同法23条1項1号)に該当せず、原告Aの更正の請求は理由がない。仮に、本件建物の譲渡が錯誤により無効であったとしても、原告Aに対する法人税は、上記譲渡を要件として課税されるものではなく、これによって原告Aに生じた損益に対して課されるものであって、譲渡の無効が直ちに影響を与えるものではない。

(4)  以上のとおり、本件各更正請求はいずれも理由がないから、本件各通知処分はいずれも適法である。

7  以上のとおり、原告らの請求はいずれも理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川神裕 裁判官 山田明 裁判官 芥川朋子)

物件目録

1 所在 大阪市住吉区

地番

地目 宅地

地積 968・59平方メートル

甲・(有)A所有不動産の明細

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